2021.05.11
学びインタビュー 桜木奈央子

「a.school」岩田拓真氏と語る「浴びる学びから、探す学びに変える技術」

ガミガミ言わなくても勉強する子が育つ「戦略的ほったらかし教育」を発信する岩田かおりさん。招待制の音声配信SNS「Clubhouse(クラブハウス)」でゲストを招いた対談連続企画「岩田かおりのここだけの教育話」を、ファシリテーターの教育系ライター洪愛舜(ほん・すえん)さんとともに開催しています。3月18日は、アウトプット型の探究学習塾「a.school(エイスクール)」岩田拓真先生を招き、「浴びる学びから、探す学びに変える技術」について話しました。Clubhouseで事前に参加者に許可を得たうえで、対談内容を記事化しました。

学びをアウトプットする喜びを知る

岩田かおりさん(以下、かおり):今日来ていただいた岩田拓真先生には、実はうちの息子もお世話になったことがあります。岩田拓真先生、自己紹介をお願いします。

岩田拓真先生(以下、拓真):探究学習の教室「a.school(エイスクール)」の代表兼クリエイティブ・ディレクターの岩田です。

「a.school」は、子どもたちの探究心や好奇心を育む学びの場を運営しています。受験や学校の授業のためではなく、子どもが主体となって自分の興味関心を深めていく場所です。

僕たち講師がしゃべるのは2割くらいで、あとは子どもたちが実際に作ったり表現したり議論したり、動きながら学んでいます。

かおり:息子が通っていたのは6年前で、今までにない教育環境だったので彼が大きく変わるきっかけにもなりました。

岩田拓:まだ僕たちが駆け出しの頃でしたね。

かおり:当時、まだ「探究」という言葉もメジャーではなくて、でもなぜかa.school(エイスクール)の理念にピンときました。

小5、小6の2年間、息子は中学受験の塾に通っていました。彼に対して私は「想像力が豊か」「面白いこと考えるな」と思っていたのですが、塾に通って中学受験が終わった頃、「あれ、面白くない人間に育ってない?」と感じて…。彼の面白い個性を取り戻すためにと検索していたときにたどり着いたのが「a.school」でした。岩田先生はどういう思いで教育に携わるようになったのですか?

拓真:僕自身が息子さんに近い経験をしています。自分でなにかを作り、好きな事に徹底的にはまるタイプだったので、学校や塾でモヤモヤしていました。

「子どもがもっと好きなことを突き詰められて、伸ばすことができる場所があったらいいな」という思いで教室を作りました。

かおり:息子は「a.school」で歴史のワークショップをさせてもらいましたね。パワポでプレゼン資料を作ること自体、当時はすごく楽しかったみたいです。

拓真:自分でイベントを企画から運営をしましたよね。「歴史嫌いの友達に、歴史をもっと好きになってほしい」という趣旨のイベントで、実際に集客もして10人以上の人が来てくれました。

かおり:そのときにサポートしてくれた大学生とはずっと細く長く連絡を取っていて、いい刺激をくれるメンターのような存在になっているみたいです。彼がちょっと方向性を変えたいときに相談する相手で、そういう人に出会えたことにとても感謝しています。

拓真:関係がずっと続いていてうれしいです。僕たちの教室では子ども4人に1人のメンターがついて、学びのサポートをしています。

かおり:勉強が教科書の丸暗記ではないことを知ったおかげで、彼の学び方が変わりました。「a.school」で、インプットだけではなくアウトプットの学びの喜びを知ったようです。最近の「a.school」はどんな感じですか?

拓真:あの頃にやっていたことと、本質は変わっていません。「アクションしてアウトプットして、気づいたことを次につなげて学ぶ」というサイクルをカリキュラムに落とし込んでいます。

洪愛舜さん:これまでの蓄積がそのままカリキュラムになっているんですね。どんな子が対象なんでしょうか?

拓真:「興味関心を広げる学び」をしたい子どもです。自分たちでイベントを企画し、チームで学んでいきます。

かおり:チームでやるから人との繋がりができるのもいいですよね。

拓真:はい。少人数にメンターがついているので関係性もよく、卒業生も遊びに来ます。卒業生にみんなの前で話してもらい、メンターをしてもらうこともあります。

洪:帰ってくる場所があるのもいいですね。

拓真:先輩からいろいろ学んでいるようです。進学の話題ではなく「どんなことをやりたいのか」「どうしてそれを選んだのか」という会話をしていて、いい雰囲気だなーと思いながら見ています。他人のストーリーは参考になるし、その人の人生から学べますよね。

家庭に探究文化があるかどうかが重要

メンターと一緒に授業に参加するa.schoolの子どもたち。

洪:先輩が歩んでいるストーリーを参考にできるのはいいですね。進学先や進路を考えるとき、親だとどうしても頭が固くなって視野が狭くなってしまうかもしれません。親自身が視野を広げるためには、どうしたらいいのでしょうか?

かおり:偏差値軸から一旦離れるのは大切だと思います。偏差値よりも、子どもが「なにをやっている時がいちばん心地いいのか」を考えるべき。

例えば、息子は歴史が大好きなのですが、最初は日本の歴史から始まって、人や人類に興味を持ち、自分が学びたいことをどんどん掘り下げていって、今は社会学に関心があるみたいです。親は、テストの点数を気にするより、なにが好きかという「興味のとっかかり」を邪魔しないことが大切です。

拓真:大人はどうしても「What(なにを)するか」や「どうやって(How)するのか」から考えがちだけど、「Why(なぜ)それを選ぶのか」の方が大事なんです。

洪:子どもがなぜそれに興味を持つか、ということですね。

拓真:子どもの探究学習がうまくいくかどうかは、家庭に探究文化があるかどうかが大きな要素になります。家庭と外のいろんな場がつながっていくことが重要です。

かおり:そういう意味では、うちは探究心豊かな家庭なのかもしれません(笑)

拓真:当時、とても印象的だったのが「『かおりメソッド』がこんなに広がった!」とおっしゃっていて。それを「私がやりたくて」と「私」を主語にしていたことですね。

かおり:母親である私も1つのことに夢中になるのが好きなので、その時は事業構築に暴走中でした(笑)

拓真:子どものことばかりを見すぎると「どうなってもらいたいか」ばかりを考えてしまいます。それより、親が学ぶ姿勢を見せると、学ぶって面白いんだと子どもが自分で感じます。何かをさせるより、大事なことです。

洪:子どもに前のめりになりそうになったら、親自身が何か自分の興味のあることをやってみるといいのかもしれませんね。

余白があるから自分で考える

アウトプットを重視しているエイスクールの授業では、一人ひとりの個性が伸びる!

かおり:完全にすべてを提供しないのが「a.school」のいいところですよね。

プレゼンのときに「こうやりなよ」という誘導もなくて、余白を確保してくれています。

余白があると自分で考えられるのですが、余白がないとただ「浴びる学び」になっちゃいますよね。そこがうまく設計されていると感じます。

拓真:それはすごく意識していますね。受け身の学習に慣れた子は、余白があると心配になって「先生、この時間、何をすればいいですか?」と聞いてくる子もいます。

洪:確かに親の方も、びっちりと完ぺきに設計されたプログラムの方が良い学びなのではと考えてしまいがちですが、プログラムの中にある余白の重要性を知る必要がありますね。

拓真:余白が楽しくなってくると、自分で考えて行動できるようになります。でもここで難しいのが、余白を作りすぎるとただの放置になってしまうというところ。ですので、場所や子どもの状態によって、日々考えながら、余白のレベルを調整しています。

洪:実際に教室ではどんなカリキュラムをやっているのですか?

拓真:「なりきりラボ」と「おしごと算数」です。

「なりきりラボ」では、エンジニアや建築家、起業家・経営者などの職業を疑似体験します。「おしごとさんすう」は、世の中につながっている数字を体感してもらいます。

洪:いろんな職業があるんですね! 身近なものから子どもが想像できないようなものまであって、選ぶのも楽しそうです。

かおり:子どもには、こういう柔軟で主体的な学びを体験してほしいなって本当に思います。

座って先生の話を聞くだけじゃなく、暗記だけでもない学びを、早い段階で体験してもらいたいです。そんな学びを小学生のうちに体験するかどうかによって、子どもの価値観が変わるのではないでしょうか。

洪:算数などの勉強が社会でこうつながるんだ、と実感できるようになりますよね。

拓真:そうすることで、少しずつ物の見方が変わってくると思います。

洪:勉強を楽しいものとして捉えられたら、子どもも幸せですよね。

「アウトプット」は個性的でおもしろい

かおり:探究というスキルさえ身につけたら、無敵ですよね。好きなことを自分で深めていくことができるから。

拓真:そうですね。僕も、自分にとって勉強は遊びなのかもしれません。

かおり:楽しくやる人と嫌々やる人に分かれるのは、仕事も勉強も同じですよね。

洪:どんなコミュニティに身を置くかってすごく大事なので、拓真さんをはじめスタッフさんもメンターも受講生も探究心がある人だから、そんな集まるコミュニティにいられることは、子どもにとっていいですよね。

かおり:「a.school」は「アウトプット型」にこだわっていますよね。それについても教えてください。

拓真:僕自身、いろんな分野で活躍されている人、何かに向かってエネルギーを注いで形にしている人に惹かれます。

大人になったらインプットとアウトプット両輪で仕事しますよね。インプットは良い材料がたくさんありますが、アウトプットは少ないのではないでしょうか。

でも、個性が出るのはアウトプットの方で、そっちの方が面白味を感じます。

かおり:インプットの方が提供すること自体は楽なんですよね。アウトプットの方が大変そうです。でも、だからこそアウトプットの方が楽しいし、その方法を学ぶ価値はあると思います。

拓真:極端に言えば、学びのインプットはひとりのカリスマの授業でも与えられますが、アウトプットは近くで寄り添う少人数型授業の方が向いています。アウトプット型学習でひとりひとりの個性を伸ばしていくことを大事にすると、このスタイルになります。

かおり:今の時代の変化で、アウトプット型学習の価値に気づいている親御さんは多いと思います。みんな、既存の従来型教育はこれからの時代に合わないと感じているのでしょうね。

プロフィール

岩田拓真(いわたたくま)
a.school代表兼クリエイティブ・ディレクター。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。父親2年生として日々試行錯誤中。経営コンサルティング会社Boston Consulting Groupに新卒入社後、コンサルタントとして修行を積みつつ、週末起業として教育NPOの運営に携わる。2013年に「a.school」設立、2014年より本郷校開校。

岩田かおり(いわたかおり)
株式会社ママプロジェクトJapan代表。ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる親子講座「かおりメソッド」「天才ノート」主宰。子ども教育アドバイザー。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の想いから、独自の教育法を開発。3人(1男2女)の母。

洪愛舜(ほんえすん)
子育て・教育系ライター。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。編集プロダクションecon主宰。目黒駅前新聞編集長。著書に「もやもやガール卒業白書」(MMR)、絵本「すき!I like it!」(教育画劇)がある。立命館大学理工学部卒。1女1男2児の母。

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桜木奈央子
桜木奈央子

写真家、ライター。2001年からアフリカ取材を続ける。著書『世界のともだち ケニア』『かぼちゃの下で』。雑誌や新聞にフォトエッセイや書評を執筆。「cinema stars アフリカ星空映画館」代表。最近の趣味は息子2人のサッカー撮影。小学生の頃は本の虫、星野道夫さんに憧れ17歳でひとり旅に。

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