2021.05.14
習い事Q&A 小元佳津江

子どもが空手を習うと心身が強くなるの? レッスン内容やメリット、費用まで解説

今夏の東京五輪で初めて正式種目に採用され、ますます盛り上がりを見せている空手。全日本空手道連盟和道会の東京空手倶楽部(東京都千代田区)の代表・瀧川英治さんに、空手の魅力や教室選びのポイントなどを聞きました。

今日のポイント

1. 空手は「動く禅」

2. 習い始める時期は早ければ2、3歳からでも

3. 空手の魅力は、集中力や克己心が身につき、身体能力が向上すること

4. 道場を選ぶときは、「寸止め空手」「フルコンタクト空手」のどちらかをまず決める

5. 親は子どもに敬意を持ち、やる気や実績をほめることが大事

空手は「動く禅」

空手とは、そもそもどのような武道 なのでしょうか。空手の歴史や道場で学ぶ内容をお伝えします。

空手とはどういうもの?

A. 空手は「動く禅」とも言われ、徹底的に「形(かた)」を形態模写することで、想像力や忍耐力を学ぶ武道です。

空手の愛好者人口は世界で1億3千万人以上いるといわれています(2021年現在)。また、空手の「空」の字は般若心経の「色即是空(しきそくぜくう)、空即是色(くうそくぜしき)」からその考え方を引用したと伝わっております。「空(空間)」と対峙する武道で、大きく分けて「寸止め空手(伝統派空手)」と「フルコンタクト空手」の2種類あります。

「寸止め空手」と「フルコンタクト空手」の違いは?

A. 相手に当てず、「空気」を打つことで「形」をきわめていくのが「寸止め空手」。直接的な人への打撃をするのが「フルコンタクト空手」です。 東京五輪で採用され、学校の部活で取り入れられているのは「寸止め空手」の方です。

寸止め空手は、技の正確性などに応じてポイントが入り、勝敗が決まります。形をより速く正確に美しく模写することから、ダンスやフィギュアスケートに通じるものがあります。私たちの道場も寸止め空手です。女子が約3割いますが、大会に出場する際には形を美しく見せるため、メイクや髪の毛のセットをする子もいます。一方のフルコンタクト空手は、相手に直接攻撃をしても良く、相手を倒せば勝利できる格闘技です。

 どんな流派があるの?

A. 寸止め空手には「剛柔流(ごうじゅうりゅう)」「糸東流(しとうりゅう)」「松濤館流(しょうとうかんりゅう)」「和道流(わどうりゅう)」の4大流派があります。フルコンタクト空手には「極真空手」などがあります。

うちの道場では和道流の形を学びます。4大流派の指導者は、大会でどの流派が競い合っても判定できるよう4流派の形を学んでいます。形は流派によって微妙に異なり、和道流では約15個ですが、4大流派全体では数百個あります。和動流の形の一つ、「クーシャンクー」には63挙動あり、形を披露するのに1分半ほどかかります。多くの子は、小学校卒業するまでにこの形を習得するイメージです。

稽古ではどんなことをするの?


A. まず、空手衣の着方や帯の結び方に始まり、座る、立つなどの所作を覚えます。それができたら形の稽古に入ります。

所作を覚えたら、拳の握り方、その場に立っての突き・蹴りなどを学びます。その後、移動しながら突いたり蹴ったりする「移動の稽古」となります。これらを終えると、初歩の形の稽古に入ります。ここまで1カ月くらいかかります。ちなみに木板を試合で割るのはフルコンタクトのほうです。当会では環境保護の観点から一切しませんが、寸止めでも演武会などでパフォーマンスとしてすることはあります。

段のしくみはどうなっているの?

A. 道場によって異なりますが、和道会の場合、たいてい級は1級からはじまり10級まで。段位は初段からはじまり、8段までです。

試験では、姿勢、目付け(目線)、重心移動がきちんとできているか、動作が一致しているかなどを見ます。未就学のときから始めたとして、小3で初段取得くらいです。ただし、個人差はあります。級のときの帯の色は道場によって多少異なりますが、うちの場合は白→黄→オレンジ→青→紫→緑→茶と進みます。初段以上は「黒帯」になります。

習い始める時期は早ければ2、3歳からでも

空手を習いはじめる適切な時期などについて解説します。

空手は何歳から始めるのがいいの? 

A. 空手で大事なのは相手の動きをマネできる力。動きをマネするのが得意な子なら2~3歳ごろからでもはじめられます。基本的には、その子が「やりたい」という意思表示をしたときがはじめどきだと思います。

空手をするにあたって、股関節や肩甲骨まわりなど、子どものうちに良く動かしておいた方がいい体の部分があります。その意味では、未就学児や小学校低学年から始めた方が良いといえるかもしれません。

どんな理由で始める子が多いの?

A.「いじめられないように」と親御さんや子ども自身が考えて、空手を始めることが多いですね。また、女の子の親御さんなどに多いのが「護身術として習わせたい」というケースです。

「いじめられないように」という声は、内向的な子や自分に自信がない子を持つ親から寄せられることがあります。空手と向き合う中で自信をつけて、そのような心配がなくなっていくと聞きます。護身術用にと考えるのは大間違い。「いざ」というときに使えばいいと思うかもしれませんが、相手は1人とは限りません。けっして護身術用にとは考えないでください。

空手の魅力は、集中力や克己心が身につき、身体能力が向上すること

空手を通して身につく力とはどんなものでしょうか。空手(寸止め)の和道流の形を指導する瀧川さんに空手を習う魅力を5つ挙げてもらいました。親の心構えについても聞きました。

①集中力が養える

寸止め空手では、空気など目に見えないものを相手に、真剣に取り組むことを高く評価するので、自然と集中力が身につきます。子ども自身も「集中することはいいことだ」と感じるようになり、学校生活などでも集中できるようになります。うちの道場では集中力が続くよう、同じ動きは10回までにして動きを変えて、「斬新性」や自然とピリッとした気持ちになる荘厳な雰囲気づくりを大切にしています。 

②想像力や克己心が育つ

空手で対峙するのは「空」、つまり見えない自分の敵であるともいえます。東日本大震災が起きたあと、「自分は空手の形を打って地震をやっつける」と話している小1の男児がいました。心の中の見えないものと戦う、これぞまさに空手の力だと思うんです。子どもたちはこれから、人間関係や自分自身、様々な困難に立ち向かっていかねばならない場面が出てくるでしょう。そんなとき、空手で育んだ想像力や克己心が助けになると思います。

③正しい体の使い方を学べる

空手ではへその下の周辺「丹田(たんでん)」に力を入れ、ほかの部位に余計な力を入れないことを学びます。物を取るときはきちんとしゃがんで取る、座るときは骨盤を正しく立て、丹田を意識して正座するなど、基本の所作を身につけることで、負担をかけない正しい体の使い方が身につくのです。また、それに伴い自然と体の柔軟性も上がります。

④身体能力が伸びる

空手は、野球やサッカーのように利き手・利き足に偏ることなく、両手両足を均等によく使うことからバランスがとれた体になります。重心を落として股関節を開閉する動きが多いため、エネルギー消費も高いです。また、首は「全身の司令塔」で、首が柔らかいと体も柔らかくなります。空手では首をよく動かすので、体の柔軟性が向上し、運動神経が刺激され、ほかのスポーツにも容易に取り組むことができます。

⑤礼儀作法が身につく 

道場では挨拶や忘れ物をしないことも重視しています。道場に入るときは必ず「お願いします」、帰るときは「ありがとうございました」といいます。毎回の習慣にすることで自然と身についてくので、道場以外の場でも自然に挨拶ができる子になっていきます。また、場の雰囲気を敏感に察知し、節度をわきまえることができるようになるため、多少落着きのない子も、きちんと正座できるようになります。

親の負担は?

A. 道場が遠い場合もあるので、そのときに送迎をしていただくということくらいでしょうか。

ケガの心配をされる親御さんもいますが、寸止め空手の場合、基本的に直接攻撃はしないので大きなケガはあまりないでしょう。空手は板の間でやるケースが多いのですが、うちの場合は絶対にケガをさせないよう、畳やマットの上で稽古をします。フルコンタクトの場合は直接攻撃するので、ケガのケアは必要になってくると思います。

道場を選ぶときは、「寸止め空手」「フルコンタクト空手」のどちらかをまず決める

道場選びのときに気をつけたいことや月謝などをまとめました。

道場を選ぶときのポイントは?

A. まずは「寸止め空手」「フルコンタクト空手」のどちらをやらせたいか決めてください。あとは道場に見学に行き、指導者の考え方が自身の子育ての理念に合うところを選びましょう。 

競技に出ること、勝つことを重視している道場もありますがどちらかというと少数。多くの道場では子どもに寄り添い、心身を真剣に育てたいと考えています。そのため、道場の考えが自身の子育ての理念と合っていることが大事です。また、指導者が自分の道場を持っているところは、維持費などのリスクを負ってでも子どもの練習環境を整えようという覚悟があるので、熱心に教えてくれるでしょう。

初期費用や月謝はどれくらいなの?

A. 専用道場を持っているところは、一般的には初期費用は数万円、月謝は5000円以上が目安になると思います。

初期費用の内訳はたいてい、入会金1万円、空手衣1~1.5万円、年会費5000円程度だと思います。公共の体育館などを借りて活動しているようであれば、施設利用費などとして月2000円程度が多いのではないでしょうか。上達すると、防具をそろえる必要があり、ヘッドギア、ボディプロテクター、レッグガード、シンガードなどは4万円程度かかります。

親が稽古に用意するものは?

A. 最初は空手衣くらいだと思います。上達すると、防具もそろえます。

親は子どもに敬意を持ち、やる気や実績をほめることが大事

親が子どものためにできることは?

A. 厳しい稽古に励む子どもの姿に敬意を持ち、帰ってきたら思いっきりほめてあげてほしいと思います。

空手の動作や礼節を身につけることは、簡単なことではありません。そのため、自らそんな環境を選んで稽古に取り組む子どもに、敬意を持っていただき、帰ってきたら賞賛の言葉をかけるなど、ほめてあげてほしいです。いまは時節柄、空手もオンラインで行うことがあります。そのときは動画を見るように促し、子どもが頑張ろうと思える声かけなどをしていただけると良いと思います。

空手を習う子どもや親の声は?体験談を聞いてみました!

空手を習って良かった点などについて、「東京空手倶楽部」に通う子どもと親に話を聞いてみました。

空手を習って良かった点は? 習い始めて感じる変化は?

空手歴5年目の青木利桜さん(小5)は「できなかったことが練習でできるようになり、ほめられるとうれしくて達成感がある。空手が大好きです」。母・幸恵さんは、「空手を始めてから勉強でも遊びでも集中できるようになった。相手を想像することから、考える力や自分を律する力もついた」と語ります。
3歳から習う海老原悠智さん(小3)は「空手をやって筋肉がついて、みんなに『強い』といわれるようになった」と笑顔を見せます。母・麗子さんは「道場に来ると息子も背筋がピンと伸びます。周りの人に挨拶をしたり、忘れ物がないように準備したり、良い意味で緊張感を持って稽古に励んでいます」と話しています。

東京空手倶楽部・瀧川英治師範からのメッセージ

自分のことだけでなく、まわりにも思いやりを持てるような優しい人間に育ってほしいです。空手は自身をコントロールし、相手を尊重する武道。「最強の武力を持っても永遠に行使しない」――それこそ空手修行者の理想です。稽古に励むことで、様々な社会問題を解決し、世界をより良くするための糸口を見つけてほしいと願っています。

【プロフィール:瀧川英治(たきがわ・えいじ)】

1963年生まれ、長崎県出身。大阪体育大学卒業。同大空手道部総監督、同大空手道一般公開講座講師。和道会東京空手倶楽部」「浮岳道心流深大寺(調布)空手の会」師範。東京都認証NPO法人和道教育武道振興会専務理事。全日本空手道連盟和道会空手道六段。日本スポーツ協会公認空手道コーチ4(旧上級コーチ)。約25年間で、2~92歳までの幅広い年齢層のべ2000人以上を指導し、空手の普及に努めている。

写真撮影:篠田英美

動画撮影:北川サイラ


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小元佳津江
小元佳津江

出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。ジャンルは、健康・育児などの実用から文芸、人物インタビューまでさまざま。執筆本は『ストーリーで学び直す大人の日本史講義』(祥伝社)など。現在、女児2人の子育てに奮闘、尽きない悩みと愛おしさを満喫中。子どものころに夢中になったものは、小6でたまたま手にした『源氏物語』。その雅な世界に惚れ込み、一時は研究者を目指した。今も、悩んだら駆け込む座右の書。

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