2021.06.08
習い事Q&A 高橋知寿

剣道を習いはじめるならいつから?稽古内容や身につくスキルなどを紹介

鬼と戦う剣士たちが登場するアニメ「鬼滅の刃」が空前の大ヒットとなり、剣道は子どもが憧れる習い事のひとつになりました。でも「稽古ではどんなことをするの?」「道具を揃えるのにお金がかかりそう…」など、わからないことや不安に思う親もいるでしょう。そんな親のために1918年から剣道場を運営している東京修道館(東京都中野区)、3代目館長の中村福義さんに剣道の魅力について聞いてみました。

今日のポイント

  1. 剣道は、体力だけでなく自らの精神力を鍛えられる武道
  2. 剣道のはじめどきは3~6歳ごろ
  3. 剣道の魅力は、礼儀作法、集中力、強い心が身につくこと
  4. 教室選びのポイントは、指導者の人柄と指導法、通いやすさ
  5. 親がやることは、稽古日に子どもを安全に送り迎えすること

剣道は、体力だけでなく自分の精神力を鍛えられる武道

日本の伝統文化でもある剣道は、いつごろから始まったのでしょうか。稽古の内容とともに解説します。

剣道とは?

A. 剣道は、江戸時代の武士の生き方をもとに、自分の心と体の両方を鍛えられる武道です。 

剣道は、戦国時代に相手を倒すための剣術として始まりました。江戸時代初期に剣術流派のひとつ、一刀流中西派を興した中西忠太氏が防具や竹刀を考案し、現在の剣道の原型が出来上がりました。次第に戦のない世の中になり、相手を倒す目的から相手を敬い感謝するなど、武士としての生き方を学ぶ武道に変化。現在は、心と体を鍛えられる武道として世界中で親しまれています。 

稽古ではどんなことをするの?


A. 構えや蹲踞(そんきょ)の姿勢、すりあしや足の踏み込みなどの基本動作を学び、竹刀を持って素振りや面の打ち込みの稽古などをします。

稽古は正座をして指導者に礼をし、黙想するところからはじまります。試合では、相手の面、小手、胴を正しく打つと1本になります。有効打突となっているかが勝敗の分かれ目になります。 そのため、打つ位置を意識しながら繰り返し竹刀を振ります。私たちの道場の初心者向け稽古は1回1時間程度です。

昇級、昇段のしくみは?試合にはどれくらいの頻度ででるの?

A. 全日本剣道連盟の段級位審査は、初段の前段階として「一級から三級」を定めており(四級以下は地方代表団体)、最高段位は八段です。また、試合には基本的に小学1年生から出場でき、個人、団体あわせると年間で7回ほど出場できます。

全日本剣道連盟 で定めた段級位審査は、ある程度経験を積んでいないと受けることが難しいため、私たちの道場では、独自の昇級、昇段審査を設けています。審査は年に1回実施し、熟練度を見て決定。10級~1級まであり、3歳から受けられます。試合は、選抜メンバーで出場するものもあれば、全員参加するものもあります。大会に出場すると、「もっとうまくなりたい」と、自発的に稽古に励む子が多くなります。

剣道の始めどきは、3~6歳ごろから

子どもを指導する見市さん(左)は、ひとつ注意したら、3つほめるようにしており、ほめる際には「前よりも声が出ていて良かったよ」と具体的に伝えるように工夫しているといいます。「剣道を通して思いやりのある優しい子どもに育ってほしい」。

礼儀を重んじる剣道。礼儀を身につけるためには、ある程度大きくなってからでないと難しいのでしょうか。剣道を習いはじめる時期についても聞いてみました。

剣道って何歳から始めたらいいの?

A. 3~6歳ごろからはじめるといいでしょう。ただ、一般的には小学校1年からはじめる子が多いです。

私たちの道場では、3歳から通えます。3~4歳の子どもは、人の動きをまねるのがとても上手です。上級生や先生の動きをまねることで、自然と剣道の基本動作を習得できます。「試合に勝ちたい」「昇級試験に合格したい」という意識や、そのためにたくさん稽古をしたいという気持ちが出てくるのは、小学校入学以降になるでしょう。

どんな理由で習いはじめるの?

A. 私たちの道場に通う子どもの約半数は、「お友だちがやってるのをみてかっこいいとおもったから」「アニメがきっかけで剣道に興味を持ち、体験に来て面白そうだったから」などの理由から、本人がやりたいと思って習いはじめます。次に多いのは剣道を習っていた親の勧めです。

(編集メモ)社会現象になった「鬼滅の刃」に登場する剣士たちに憧れて、剣道を習いはじめる子もおり、競技人口の拡大に期待が寄せられています。

夏は面の中が暑く、冬は裸足で寒そう…自分の子も稽古についていけますか?

A. 大丈夫です。寒い、暑いと感じても周りで一緒にがんばる仲間の姿を見て、触発され、乗り切る力が芽生えます。

また、子どもの中には最初はじっと正座をして指導者の話を聞けない子もいますが、何回か稽古に通ううち、同学年の友達やまわりの大人の様子を見て学び、次第にある程度の時間は正座をして話を聞けるようになります。

剣道の魅力は、礼儀作法や集中力、強い心が身につく

中村さんに剣道の魅力を5つまとめてもらいました。 

①礼儀正しくなる

剣道では、礼儀のない剣道は暴力と同じと考えられています。そのため、礼儀は時間をかけてしっかり教えます。指導者、仲間には大きな声できちんと挨拶する、道場に入る時は後から来る人のことを考え脱いだ靴をそろえるなど。剣道で学んだ礼儀は、学校生活や部活動、友だちの家に招かれたときなど、日常生活でも役に立つことが多いです。なかなか身につかない子には、根気よくくり返し教えていきます。

②克己心が育まれ、自信がつく

子どもたちも、ときには「稽古をサボりたい」「ラクしたい」と思います。そんな気持ちを乗り越えることで克己心を育むことができます。そのためには暑い日も、寒い日も道場に来て、技を極めるために反復練習をすることが重要です。それが自信につながり、「たくさん練習したから試合も上手くいくはず」と、自然に考えられるようになります。私たちも「前より姿勢が良くなったね」とほめてサポートしています。

③相手の心を読む観察力と集中力がつく

剣道の試合に勝つためには、平常心を保った状態で、相手の動きを先読みし、先手を打つことが重要になります。試合になると相手は打つフリをするときと、本当に打ち込んでくるときがあります。フリかどうかを見極めるには、相手の目や剣先、こぶしや足のつま先の動きを集中して観察することが大切だといわれています。

④相手に感謝できる

私の祖父、父が言っていた言葉に「剣術を習う者ほど馬鹿はなし 頭叩かれ禮(れい)を言うなり」という言葉があります。相手がいてこそ稽古ができます。子どもたちには、相手が打ってくれたことで自分の弱さに気づくことができるので相手に感謝する気持ちを持つように伝えています。だから剣道では試合に勝ってもガッツポーズは禁止されています。 日常生活でも自然に相手への感謝の気持ちが育まれます。 

⑤思いやりの心と社会性を培える

防具をひとりで付けることができない子に防具の付け方を教える門生=東京修道館

私たちの道場では、中学生以下は同じ稽古に参加しています。そして指導者の中には子どもたちの親も多くいます。下級生は上級生から防具の付け方を教えてもらい、稽古の相手をしてもらいます。上級生は大人たちと組んで打ち込みの稽古をします。稽古を通し、下級生の面倒をみる思いやりの心や、指導者や親を敬う気持ちが自然に芽生えるようになっています。

親の負担は?

親の負担としては、まず道場への送迎があります。さらに、剣道着や防具一式をその都度持ってくるとなると大荷物になるため、自転車での送迎の場合、荷物が乗り切らないこともあります。ただ、防具を置いて帰ることができる道場もあります。あと剣道着や防具の手入れが大変そうと考える親もいるようですが、剣道着はお家で手洗いもしくは洗濯機で洗えますし、防具は定期的に陰干しすれば大丈夫です。

教室選びのポイントは、指導者の人柄と指導法、通いやすさ

実際に通うにあたり、教室の選び方や必要な持ち物、月謝などの費用についてまとめました。 

教室を選ぶときのポイントは?

A. まずは指導者との相性を、体験に参加して、人柄をみて確認しましょう。子どもにどんな声かけをしているか、継続して楽しく通えるかどうかが大事です。

補足として、週に1回以上は送迎することになるので、自宅からの通いやすさも重要です。また、全国では各地区の警察署で剣道を教えているところがあります。しかし、警察署の指導者は仕事の関係で数年ごとに異動する可能性があります。指導者に馴染むまでに時間がかかる子どもは、できるだけ指導者が変わらない教室を選ぶことが大切です。

初期費用や月謝はどれくらいなの?

A. 月謝は週3回で5,000円が相場です。他の習い事に比べて月謝はリーズナブルです。

私たちの道場は月謝が週5回で5000円です(ただし、今は新型コロナウイルス感染症対策のため、週に3回)。このほか別途入会金5000円が必要です。※値段は全て税込み

用意するものと道具の値段は?

A. 剣道着、袴、 竹刀、鍔(つば)、竹刀袋、剣道具(面、小手、胴)、防具袋、面手ぬぐいが必要で、一式そろえると5万5000円程度かかります。

道具は、剣道具の専門店のほか、インターネットでも購入できます。私たちの道場では小学校1年生から面、小手、胴を着用します。そのため未就学児については、最初はそろえなくても大丈夫です。また、小学校低学年のうちは、上級生が使った剣道具をおさがりで使うという方法もあります。

親がやることは、稽古日に子どもを安全に送り迎えすること

親が子どものためにできることは?

A. 稽古のある日に安全に送り迎えをすることです

当館では、道場に入ると上級生が下級生のお世話をするのが基本なので、普段、親の出番は、稽古日の送り迎え程度です。お迎え後、稽古であったことを子どもが話したらじっくり聞いて、できることが増えたら一緒に喜び、たっぷりほめてあげてください。剣道着の洗濯も親の仕事になるでしょう。また、教室によっては、剣道着への着替えや面をつける際に親にサポートをお願いしている教室もあります。 

剣道を習う子どもや親の声は?体験談を聞いてみました!

習いはじめたきっかけや、子どもの変化を、東京修道館に通う親と子どもに話を聞いてみました。

江口章子さんと息子の賢一さん(小6)は親子で道場に通っています。江口さんは息子さんについて「最初はずっと泣いていましたが、根気強く稽古に連れて来るうちに、剣道を楽しんでいる私を見て、ピタッと泣かなくなりました」と話します。
試合が何よりも楽しみだという菅亜里沙さん(小2)も、「前は負けるとすぐに泣いていたけど、勝つには泣いてたらダメだと思い、2年生になってから泣くのをやめました」。
サッカーも習っているという中村泰智さん(小6)。サッカーの勝ちは、監督の指示や仲間と協力した結果だけど、剣道の場合は自分だけで考え、判断した結果の勝ちだといいます。「勝ちの意味が違う。だから剣道で勝つと、自分の成長を一番感じられます」。

東京修道館・中村福義さんからのメッセージ

剣道は体を鍛え、心を磨くことができる貴重なスポーツです。ただ、剣道だけをやっていてもダメで、学生の本分である勉強、未就学児なら遊びもしっかりすることがとても重要です。勉強で知力を、剣道で心と体力を磨いて魅力のある人間をめざし、将来、いろいろな分野で活躍して日本を支える人になってほしいと考えています。

【プロフィール:中村福義さん(なかむら・ふくよし)】

1948年生まれ、東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学商学部を卒業。剣道は4歳から始め、1998年、50歳のときに東京修道館3代目館長に就任。2008年に八段を取得。少年部、青年部、居合部あわせて約240人の門生の指導をしつつ、各地で剣道の講習会にも出演している(コロナ禍のため、全国規模の講習会は休止中)。


写真撮影:篠田英美

動画撮影:北川サイラ

高橋知寿
高橋知寿

子育て情報誌、不妊治療情報誌などをメインにライティング、ページ制作を行っている。そのほか、旅行情報誌、ライフスタイル情報誌などの編集、原稿制作も手がけている。自身も夫もひとりっこなので、戸惑いながらきょうだいの育児に奮闘中。子どものころに熱中していたのは、自分の新しい名前を考えること。最後に「子」が付く名前に憧れ、四六時中、考えていた。小学校低学年当時、自分で考えて気に入っていた名前は「ごだいごはなこ」。

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