2021.06.28
学びインタビュー 川口香織

夢中の力 #003 指示通りが嫌いな子には創造の種がある ロボット開発者・林要さん

子どものころに夢中になって何かに取り組んだ体験や習い事は、どのように人生に影響を与えるのでしょうか。好きなことに没頭した経験が、自分を形づくり、個性を育てていきます。それぞれの分野で活躍している著名な方々に、小さいときの「夢中体験」について話を聞きました。家族型ロボットのLOVOT(らぼっと)くんをはじめとするロボット開発をされている林要さんが、夢中になったことは?

とにかく「指示通り」が嫌いだった子供時代

ーー林さんが小さい頃に夢中になったことはなんですか?

家の中ではひたすらレゴやミニカー、外ではひたすら自転車に乗って遊んでいました。

ーーレゴはいつの時代も子どもに人気ですよね。どんな風に遊んでいましたか?

「お城セット」や「戦車セット」のように完成形があるものに従うのではなく、気ままに組み立ててるのが好きでした。レゴのような手触りがあるアナログなものは、想像力が膨らんで楽しかったですね。

設計図の通りにやるのって、結構大変なのに「できて当たり前」な感じがあって、あまりモチベーションが上がらないんですよね。それよりも、何もないところからものをつくったり、自分の思いついたことを実現させたりするのが好きでした。

小学生の頃は、エンジンの構造にも興味をもっていました。

ーー小学生の頃からですか!それはどういうきっかけで?

エンジニアの父が少しずつきっかけをくれていたのが大きいと思います。内部の構造を実際に見たり、考えたりするのが楽しかったんです。小学校高学年の頃には稚拙ながら「自分が考える最強なエンジン」を考えたりもしていましたね。

自転車を改造、10段変速にチャレンジ

 

ーーお父様とのやり取りの中で興味をもち、だんだん自分でも考えるようになっていったのですね。

もうひとつは自転車ですね。走っている時の疾走感がたまらないんですよね。乗れば遠くまで行けて、冒険みたいなところもある。夢中になりましたね。自転車は、改造にも夢中になりました。

ーー改造ですか!詳しく教えてください。

小4の頃、父が5段変速の自転車を改造して、10段変速の自転車を作ったんです。父はそうやって、自分で思いついたことを形にできてしまう。すっかり影響されて、ぼくも自転車の改造に没頭していた時期がありました。

ーー面白そうですね。実際、スピードって上がるものなんですか。

実は、変速段階が増えても、たいして最高速度は変わらないんです(笑)。でも、こうやったら改造できるんだ、ということがわかって面白かったですね。

それ以前は他人がつくった自転車を与えられて使っていたのが、モノは自分で変えられる、仕様をコントロールできるものだという感覚をつかみました。

「ナウシカ」のメーヴェに憧れて

 ーー習い事は何かしていましたか?

幼稚園の頃にエレクトーンを習わされたことがありますが、練習もあまりしなくて、すぐにやめてしまいました。水泳には週に一度、何年か通ったのですが、それほど頑張っていませんでした。

ーーレゴや自転車とはどこが違ったんでしょう。

楽器も水泳も、同じことを何度も繰り返して上達していくものですよね。そういうものが、僕にはあまり向いていなかったんだと思います。それよりは、何もないところから自分で考えてものをつくることの方が好きでしたね。

飛行機にも興味があって、一時期「風の谷のナウシカ」に出てくるメーヴェ(グライダーのような飛行道具)に憧れていたんです。ところが、乗りたくて仕方がないのに、一向に開発される気配がない(笑)。

ーーたしかに、発売されませんでしたね(笑)。

「それなら自分でメーヴェを作るしかない」と思い、実験を始めました。ところがそれを見ていた父に「メーヴェは(構造的に)飛ばないよ」と言われて、なにくそ!と。「絶対自分が作ってみせる!」とやっきになって、模型を改造して飛ばすことに挑戦していましたね。

ーーお父様の言葉で、むしろチャレンジ魂に火がついた。

飛行機はその後もずっと好きで、大学ではグライダー部に入りました。メーヴェを飛ばそうとした体験は、トヨタで「フォーミュラ1」の開発に携わったことや、「LOVOT(らぼっと)」の開発など、その後の仕事にも生きています。

大切なのは「やってみたい」という内発的動機

 ーー林さんはどこにもない新しいものをつくり続けていますが、そのためには何が必要だと思いますか。

ものづくりをするうえで何より大切なのは、内発的な動機だと思います。「これをつくりたいんだ」という思いがあれば、動くことができますから。

ーー自分の中からわきあがってくる「やってみたい」「つくってみたい」といった気持ちが大事なんですね。一方で、何かひとつのことに没頭するタイプのお子さんを持つ親は、「もうちょっと友達と遊んで欲しい」とか「チームワークも学んでほしい」と思うことが多いようですが。

私のもともとの性分も、一人で黙々とモノをつくる職人肌だと思います。ただ、そうやって一人でやっていくと、いつか限界が来ます。そうなったときに、自然にチームを選ぶようになるんじゃないでしょうか。僕も、フォーミュラ1の開発の時にチームワークに目覚めました。

ーーチームワークの大切さは成長してからでも学べる、ということですね。

内発的動機を育てずにチームワークだけを育てても、何かを実現するための原動力にはなりません。推測ですが、きっとノーベル賞学者のように自己実現している人も何かに没頭して、周りを気遣えなくなっちゃう人ばかりだと思いますよ。

チームワークよりも個人技が好きなら、それは悪いことではない。褒める必要も叱る必要もない。単に「そういう人だね」と受け止めればいいんです。

楽しそうな親の姿を見ていることが大事

ーー子どもの内発的な動機を育むために、親は何をしたらいいと思いますか。

親は得てして、優秀な子になってほしくて百科事典を与えたりしますよね。けど、僕自身はそういうアプローチにはまったく興味がなかったです。

ーーたしかに、そういうアプローチには、子どもは乗ってきませんね(笑)。

そもそも、子どもは親の意図通りには成長しませんよね。それよりは、親が楽しそうに何かしている様子を子どもが見ていることが大事なんじゃないでしょうか。

ーーまずは、親自身が楽しそうにやっている姿を見せるということでしょうか。

親自身が本当に好きなことをやる、ということですね。算数の宿題をやらせたいから親が楽しそうにやってみせる、と言ってもそうはいかないですから(笑)。僕が車や自転車の改造に興味を持ったのも、父自身が楽しそうにやっている姿を見ていたからです。

親の言うことを聞かない子ほど、新しいものを作れる


ーー無から何かを作る力が、今の時代にすごく求められていますよね。でも一体どうやったらその力を持てるのかわからなくて、親は「まずは型を身につけなさい」と言いがちだと思います。

もちろん、親に言われた事をちゃんとやる子もいます。優等生としていろんなところで活躍の場もありますし、親としても安心です。でも、親の意に沿わないことをする子ほど、何か新しいものをつくる力があるんだと思います。

ーー「子どもが言うことを聞かない」と悩む親たちにとっては心強い言葉です。

「親の言うことを聞かない」というのは、何か自分なりにやりたいと思う、内発的動機が強いからです。それは、新しいものを生み出す種になります。

ーー親の言うことを聞かないぐらいの方が、何か新しいものを作り出せる、と捉える方がいいんですね。

そうですね。「あれは飛ばないよ」と言われて諦めるのではなく、自分なりにやってみる。それは、常識の裏に隠れている真実を見つけることでもあるんです。

常識は時代とともに変わる

 

ーーそもそも、親自身が常識にとらわれがちなのかもしれません。

まずは、親が「常識とは、今の時代における常識にしか過ぎない」と理解していることが大切だと思います。常識は時代とともに変わります。常識を絶対的なものだと捉えると、そこで思考停止してしまいます。

そうすると子どもの方も、何か疑問に感じてもそれを飲み込んでしまう癖が付きます。そうなると、新しい何かを見つけよう、つくろうとはなりにくい。

私の父は常識を絶対的なものと捉えない人でした。なんでもまず自分の頭で考えて判断する姿を身近に見て育ってきた影響は大きいと思います。

ーー常識を疑うお父様に育てられたからこそ、林さんは、今までにない何かを生み出す原動力を持てたのですね。私もまずは、自分の持っている常識を疑ってみることから始めてみようと思います。林さん、ありがとうございました。


プロフィール 林要(はやし・かなめ)さん

GROOVE X代表取締役社長
1973年愛知県生まれ。98年トヨタ自動車入社、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」、トヨタF1(Formula 1)開発、量販車開発マネジメントを担当。11年「ソフトバンクアカデミア」外部第一期生に選出。12年ソフトバンク入社、「Pepper(ペッパー)」プロジェクトメンバー登用。15年、GROOVE X設立。19年末、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」出荷開始。


写真撮影:家老芳美

動画撮影:平岡妙子

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川口香織
川口香織

mugichocolate株式会社 元IT企業会社員。趣味で続けている育児ブログをきっかけにライターとして活動開始。現在は理系ファッションアドバイザーとしても活躍中。幼い頃は、レゴ・テトリスなどのパズル系とお絵描きに夢中でした。手紙が大好きで、留学中に書いた手紙は100通以上。

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