2021.06.29
学びインタビュー 黒澤真紀

「読書感想文が嫌いだった僕からのメッセージ」ショートショート作家 田丸雅智さん

夏休みの宿題の中で、多くの人が悩む読書感想文の書き方のコツを、ショートショート作家の田丸雅智さん(33)に聞きました。田丸さんは作家活動をしながら、子どもから大人まで延べ2万人以上に、ショートショートの書き方講座を開催して、書くことの楽しさを伝えています。意外にも小学校のころは読書が苦手だったそう。「そんな僕が今、小説家になるくらい、衝動にまかせて書くのは楽しい」という田丸さんから、読書感想文が苦手な皆さんにメッセージを送ります。

絵本は大好き。読書は苦手。読書感想文はもちろん嫌い。

――子どもの頃から本が好きだったのですか?

絵本は大好きでした。0歳から親が読み聞かせをしてくれ、家に好きな絵本がたくさんあります。寝る前に母や祖母が話してくれる「ももたろう」などのお話を途中から僕が勝手にアレンジして、オリジナルストーリーにするのも楽しくて。それが僕の創作の原点です。

――小学校でも読書家だったのでしょうね。

それが真逆。小学校に入って活字だけになると読書が苦手になりました。絵本からうまく移行できなかったんです。たぶん、せっかちだからでしょう(笑)。じっくり読むのに耐えられず、本はいつも斜め読みでした。

――意外ですね。本が苦手となると、読書感想文は?

嫌いでした(笑)。読んでも何を書いたらいいかわからない。唯一覚えているのは、低学年のときに書いた『クワガタクワジ物語』の感想文です。当時虫取りが大好きだったので、クワガタと心を通わせるこの本はすっと心に入ってきて、せつなさや小さな命に対して感じるものがありました。ただ、それをうまく言語化できません。原稿用紙を前にどうやって書き出せばいいかわかりませんでした。結局、あらすじをまとめたような気がします。求められる感想文に合わせにいく気持ちが強く、書かされている感じが抜けませんでした。「こう書いたほうがいいんだろうな」と。

――それが今、ショートショート作家に(笑)

はい(笑)。なので、読書感想文が苦手な子どもの気持ちはよくわかるつもりです。

小学生の僕へ「感じたままを書けばいい」

――当時の自分にヒントをあげるとしたら?

「感じたままを書けばいいんだよ」と。読書感想文は、ストーリーのこの部分から自分はこんな連想をしたという視点で書くことができます。文章を作るということは創作なので、読書感想文だって創作です。創作であれば何を書いても構いません。感じたままを書けばいいのです。これを知っていれば当時の自分も書けたような気がします。

――読書感想文も、創作なんですね。

もう一つ、「本を読んだ後、心に残っていることを箇条書きにしてみよう」と伝えようかな。この本から何を学んだか、と考えるのは足かせになるので、シンプルに覚えている場面でいい。覚えているということは印象に残っている、つまり、心に何らかの引っかかりがあったということですから。

――感じたままを書くのは難しいですよね。

そうですね。模範解答をさがそうとする気持ちが、それを邪魔してしまいます。まじめな子ほど求められている答えに気づくので、自分の感想を優先するのが難しくなるのでしょう。僕もそちらのタイプだったかな。

でも、はずれてもいいんです。まずは、自分がその本から受けた衝動をつかまえてみること。いきなり文章にしなくてもいいんです。たとえば、本を読みながら音楽がよぎったとしたら、まずはそれを大事にしてほしい。絵を描きたくなったなら、描いてみればいい。自分の中でふくらんだものこそが創作の種。

読書って創作の種にあふれてます。僕も読書しながら「作者はこう展開したけど、僕はこういうふうにもっていきたいな」というところから創作が広がることはよくあります。

親は感想を言葉にするサポートをする

グループワークで人の意見を聞きながら、自分の考えを深める

――親は子どものために何ができるでしょうか。

先ほど、「箇条書きにしたら?」と小学生の僕にヒントを出しました。それを見ながら、読書感想文を書く前に親子で読書会をしてもおもしろいと思います。子どもの中であいまいだった部分が、「あ、私、そう思ってたんだ」と言語化できるのではないかと。

一人で書かなくてもいいじゃないですか。アイデアを出すとき、僕も誰かに話を聞いてもらうことがあります。

――子どもにどんな質問をすればいいでしょうか。

まずは本の印象を聞いてみたらどうでしょう。面白いと思ったか、そうではなかったか。次は、覚えているシーン。その覚えているシーンをお互いやりとりして、なんで覚えているのかを考えると、何かしらの感情とくっついていると思うのでそこを掘り下げると話が広がりそうですよね。

――親と子どもで意見が違ってもいいんですよね。

もちろんです。それを親は楽しんでください。「へえ、面白いね」と。人と違うことを大事にしてほしいんです。気をつけていただきたいのは、「普通、そんな感想なんて思わないよ。この本のいいたいことはこうでしょ」という言葉。その途端、子どもはブレーキを踏んでしまいます。「その考え方もいいよね」という視点で話をしてあげてください。

――模範解答に導いてはいけない(笑)

それは危険です(笑)。いいことの方に導こうとすると、子どもは書くのがつまらなくなります。

――「いいことを書かなきゃ」と思えば思うほどつまらなくなる?

まさにそうです。読書感想文に求められているものを、子どもは分かっています。例えば家族の話だったら自分の家族のことを振り返るとか、教訓とか。だから子どもは身構えてしまい、追い込まれる (笑)。

でもいったん、そこは置いておきましょう。家族がテーマの話でも、自分は飼っている猫のことを思った、なぜだかわからないけど友達のことを考えた、でもいいのです。良い子ほど「親の意見を取り入れなきゃ」、「いいこと書かなきゃ」と考えてしまうので、それこそが感想文をつまらなくする。なので、衝動に寄り添うためには、子どもの意見を否定しないことです。

衝動が湧きあがれば手は走り出す

ショートショートの書き方を習う生徒たち

――子どもに「自由に書いていいよ」と言うと嬉しそうですか。

そうですね。最初に子どもは、「何を書いたらいいかわからない」と言う。なぜなら、「こんなこと書いちゃいけないんじゃないか」と思うからです。「創作の世界だと書いちゃいけないことはない。何を書いてもいいんだよ」と自由に書かせてみると、目がカッと見開く瞬間が来ます。そうなると自動筆記状態。みんな書けます。「今日はここまで」と僕が言っても止まらないくらい、文章が書けなかった子が書けるようになるんです。

――子どもたちに何が起きたのでしょうか。

書くのが楽しくなったんだと思います。手が追いつかないくらいに。伝えたい衝動さえ芽生えれば、文章は書けます。読書感想文も同じです。つたなくていい。それでもいいから、内から湧きあがった衝動にまかせて書く。衝動から書いた文章は読み手に伝わります。テクニックは後でも学べます。「心の底から書きたいことが書けた」、「書くのが楽しかった」という経験は、必ずその後に生きてくるはずです。

――伝えたい衝動はどうすれば芽生えますか?

手が止まっている人への声がけで大切にしているのは、待つことです。想像を膨らましている過程で、僕が「それってこうじゃないの?」というのは楽。でもそうすると、子どもは言ってもらったことを書こうとしてしまいます。

子どもの言葉を待ちましょう。言葉が出てこないとき、悩んでいる沈黙なのか、わからなくてパニックになっているときの沈黙なのか、もしくは考えているだけなのか。親の見極める努力が必要です。どこで悩んでいるのかを深堀りして、感想を言語化してあげることが大事ですね。

「おもしろくなかった」から始まる感想文もアリ

――本の印象が「つまらなかった」という場合は?

いいじゃないですか!「なぜ私の心にささらなかったのか」と考えることが感想文の道筋になります。そもそも、読んだ本を「つまらない」だけで終わらせてしまうのは、あまりにももったいないなと思います。なぜつまらないと感じたのか。そこを突き詰めることは、自分と向き合うことにもなります。

――最初はつまらなかった、だけだったのが、こういうところが私はおかしいと思った、というふうに変わっていくかも知れませんね。

つまらなかった過程について書き出して話しているうちに、「つまらなかったポイントは、こういう見方ができるんじゃない?」と否定するのではなく、親子で共有する。「お母さんはそういうけど私はやっぱり違う」と言われたらそれはそれでいいんです。いろいろな視点を提供するうえでも、先ほどの読書会はいいと思います。

――何を書いても読書感想文になるんですね。

つまらなかったということでも、きちんと掘り下げることができたら立派な感想になりますからね。ただ、悪口になったら意味がないので、そこだけは気をつけてください(笑)。感想文だと、ポジティブな内容でなければと思うでしょうが、ネガティブなことを書いてもいいと思って気楽にいきましょう。

書き方のルールにはこだわらない

――あらすじは書いた方がいい?

正直、どちらでもいいと思います(笑)。入れたければ入れればいいし、自分で感じたことを書きたいというなら入れなければいい。選択肢の一つとして考えればいいのでは。

――出だしや終わりの書き方にポイントはありますか?

ないと思います。小説でもそうです。こうすべきというルールは一切ありません。なんなら、こうしたらいけないってことを全部やったらいいというくらい(笑)。もちろん、不安に思ったときは何かを参考にしてみるのもいいとは思いますが、特に衝動が先に走って書いている時は考えなくてもいいです。

――ルールにこだわるからつまらなくなるのですね(笑)。

まずは衝動から入る。なんなら、1作目で衝動を解放させて、2作目で書き方のルールに気をつけながら書いてみる。そんな方法をとってもいいくらいです。書き上げた後に読み直すのは大切です。でも、スタイルにこだわりすぎるとつまらなくなってしまいますよね。

書くことが楽しくなれば読むのも楽しくなる

書けるようになると「もっと書きたい」と手を走らせる

――思ったことが書けたことが、一番大事な経験になりますね。

最初は本が嫌いだった子が、読書感想文を書くのが楽しくなって、読むことが嫌じゃなくなった、ってなるのが最高ですよね。読書感想文の本当の目的はそこだと思うんです。

――本を好きになってほしいですもんね。

僕も小学生の頃の自分に、「本っておもしろいし、自分の肌に合った本が必ずあるから」と言いたいです。僕が大人になっても『クワガタクワジ物語』の名前を覚えているように、みなさんも心にささる本に必ず出会えます。

――最後に、読書感想文が苦手な小学生にメッセージをお願いします。

ぼくも当時苦手だったので、気持ちはとてもわかります。そんな人間が今、小説家になるくらい、本は魅力的です。また、「読む」だけではなく、「書く」という行為もとても面白いもの。小学生のぼくは気づけていませんでした。このインタビューを読んで、みなさんのこれからの作文人生が少しでも楽しいなと思ってもらえたら嬉しいです。

読書感想文を楽しく書くポイント

  1. 心に残っていることを、箇条書きにする
  2. 親子読書会で感想を言語化する。
  3. 感じたままを書けばいい。つまらなかった、から始めてもいい。

プロフィール:田丸雅智(たまる・まさとも)さん

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。ショートショートの書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など、児童書に『やがらす魔道具店と黒い結末』『転校生 ポチ崎ポチ夫』『ショートショート とってもふしぎな創作ドリル』『ショートショートでひらめく文章教室』など多数。メディア出演に情熱大陸、SWITCHインタビュー達人達など多数。

田丸雅智 公式サイト:http://masatomotamaru.com/

写真提供:田丸雅智さん

夏休みの自由研究と読書感想文の記事一覧

黒澤真紀
黒澤真紀

1977年生まれ。愛媛県出身。旧姓、井上。都内の学習塾に勤務した後、結婚、出産を経てフリーライターに。教育を専門に学びたいと、中学生と小学生の息子を育てながら都内女子大の修士課程を修了。大人になっても「学びは楽しい」と実感する。海と山に囲まれて育ち、虫が全然怖くない。子どもの頃は自然の中で遊ぶのに夢中で、得意だったのは押し花と走ること。

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