2021.07.20
習い事Q&A 北川サイラ

運動神経は遺伝するの?運動能力を伸ばす基本動作24を元五輪トレーナーに聞く

公園で遊ぶ子どもたち=遠山健太さん提供

「運動神経が良い」と良く耳にしますが、運動神経ってそもそも何なのでしょうか。「運動神経が悪い」ことは遺伝なのか、はたまた対策できることはあるのでしょうか。「成長スパート期」とは、いつなのでしょうか。子どもの運動神経を鍛える方法などについて、2児の父で五輪選手のスポーツトレーナーも務めたことがある遠山健太さんに聞きました。幼児期に身につけたい24の基本動作と、運動神経を伸ばす公園のおすすめ遊具3選をお届けします。

<今日のポイント>

  1. 運動神経は遺伝よりも育つ環境で決まる!
  2. 運動神経を伸ばすには神経が発達する幼少期に様々な運動体験を積むこと
  3. 運動神経を伸ばす秘訣は、公園で24の基本動作をマスターすること
  4. 運動神経を伸ばすおすすめ遊具は「うんてい」「ぶらんこ」「ボルだリング」
  5. 親ができることは、子どもと一緒に運動を楽しむこと

運動神経は遺伝よりも育つ環境で決まる!

まずは、運動神経の意味や遺伝性について解説します。

運動神経とは?

A. 実は運動神経という名の神経は存在しません。運動神経とは、「打つ」などの指令が脳から筋肉まで送られる「回路」のことを指します。指令が送られることにより私たちは体を動かすことができるのです。

ボールを打つときは、後ろ足に体重移動し、体をひねるなど様々な動きが必要ですよね。運動神経の良い人は、「体をこう動かせば、こうできる」と頭の中ですぐに処理ができて、その動作を実現できる能力がある人のことをいいます。

運動音痴は遺伝するの?

A. 遺伝の影響はありますが、幼少期から様々な運動を経験できる環境を整えることで、子どもの運動神経はぐんぐん伸びます。親自身が運動音痴だから子どもも運動できないと思わないでください。

トップアスリートの子どもに運動環境を与えないとその子の運動能力が伸びないのと同じで、運動が「できる」「できない」は経験にかかってきます。そして、運動が不得意だとしても、ほかの子と比べないこと。自分の子の長所に目を向け、その子が好きなことや興味があることから取り組みましょう。

運動神経を伸ばすには神経が発達する幼少期に様々な運動体験を積むこと

運動神経が伸びる時期や運動能力と身長の関係について解説します。

運動神経が伸びるのはいつなの?

A. 個人差があるので何歳という明確な答えはありません。しかし、神経の発達が著しく発達する12歳ごろまでの幼少期は「ゴールデンエイジ期」といわれており、この時期に習得した運動は維持しやすいと考えられています。

「ゴールデンエイジ期」の定義は確立したものがなく、日本サッカー協会では8歳以下を「プレゴールデンエイジ」、9~12歳を「ゴールデンエイジ」としています。また、ゴールデンエイジ期はスキャモンの発育曲線をセットにして説明されることが多いです。この曲線によると、神経の発達は6歳までに90%、12歳ごろまでにある程度完了するといわれています。

引用:2013年文部科学省委託事業女性アスリートの育成・支援プロジェクト JSC「成長期女性アスリート指導者のためハンドブック」

神経の量が増えたとしても、運動能力の質が高まるというわけではありません。一番重要なのは、年齢ではなく幼少期をどのように過ごすかです。五輪選手を目指すのであれば、幼いころから一つの競技に専念する早期教育を考えても良いかもしれません。しかし、運動能力を開花して、将来いろんなスポーツをそつなくこなすようになりたいのであれば、一つの競技だけではなく、「投げる」「走る」「打つ」など様々な運動を体験することが大事です。

子どもの運動パフォーマンスには身長が関係している?

A. 最近の研究では運動パフォーマンスを上げるうえで子どもの身長の発育が注目されています。身長が急速に伸びる「成長スパート期」前までに運動体験を積むことが大事といわれています。スパート期に差し掛かると臓器が発達するとともに心肺機能も伸び、運動能力を吸収しやすいと考えられます。

イラスト:カワチハルナさん

スパート期に入ると骨の形成が進み、筋力などの運動能力が低下傾向になります。体に負荷をかけ過ぎるとけがにもつながるので、運動量の調整が必要になります。スパート期は女子が小学4、5年、男子は中学1、2年ごろで、1年で8センチ伸びる子も。個人差があるので、スパート期を知るには3カ月ごとに身長をはかって成長曲線をつくってください。スパート期の前に曲線(伸び率)が少し下がるので予測することができます。

運動神経を伸ばす秘訣は、「公園で24の基本動作をマスターすること」? 

自身の子どもと500以上の公園を巡った経験のある遠山さん。子どもの運動神経を鍛えるには親子で公園でおもいっきり遊ぶことが大事だと指摘します。

運動神経を鍛えるには、どうしたらいいの?

遠山健太さん提供(イラスト:湯沢知子さん)

A. 幼少期については、年齢や発達段階に合わせて上図の24種類の基本の動きを体験してください。例えば、「逆上がり」には「(地面を)蹴る」「ぶら下がる」「回転する」「着地する」の動作が組み合わさっています。基本動作を習得することは「鉄棒」「縄跳び」「跳び箱」などの学校の体育種目のみならず、様々な運動ができることにつながります。

遠山健太さん提供(イラスト:湯沢知子さん)

基本動作には、大きくわけて「移動系」「操作系」「バランス系」の3タイプがあります。得意な動きだけではなく苦手な動きも取り入れるようにしましょう。また、「浮く」は水難から身を守るときに必要になってくる動きです。命を守るうえでもこれらの動きを経験しておくことが大事です。

基本動作を身につけるにはどうすれば?

A. 習い事に通うのも良いことですが、子どもを公園に連れていけば事足ります。思い切り遊べて、基本動作のバリエーションも豊富に経験できるので、運動能力は十分に伸びます。財布に優しいのも魅力ですね。

ロボット型の滑り台=遠山健太さん提供

私も子どもと500以上の公園を巡りましたが、ロボット型の滑り台、人形型のブランコなど、面白い形状の遊具がたくさんあります。公園にも個性があり、見知らぬ遊具を見たとき、子どもはワクワクで目が輝きます。だからいろんな公園に連れていってください。そうすると、子どもも自主的に遊具に向かって体を動かすようになります。遠出をして「マイ公園」を増やし、「公園はしご」にも挑戦してみてください。

運動神経を伸ばすおすすめ遊具3選は?

遠山さんにおすすめの遊具を3つ選んでいただきました。

①うんてい

棒にぶらさがるには、自分の体重を支える腕力と握る力が必要です。一瞬片手になるので恐怖心もありますが、前に進むことで体幹が鍛えられます。また自分と物体(棒)の距離間をはかる「空間認識能力」も養うことができます。

②ぶらんこ

人形型のぶらんこ=たまたま子育てネットワーク提供

浮遊感を体験する中で、チェーンを握る力や足の蹴る力などがつきます。まっすぐこぐために体の姿勢を整えたり、高さを出すために足の振りの強さを調整したりするので、全身の使い方を学べます。慣れてきたら安全面に配慮して立ちこぎにも挑戦してください。

③ボルダリング

ボルダリングで遊ぶ子ども=遠山健太さん提供

壁の石(ホールド)をつかみながらのぼる全身運動の遊具です。不安定なホールドで体の体勢を調整する必要がるので、バランス感覚も養えます。また。壁をのぼるにはどの石をつかもうか、頭の中で考えながらルートを確認するので、動きながら思考する力も身につきます。

親ができることは、子どもと一緒に運動を楽しむこと

公園で遊ぶ子ども=遠山健太さん提供

子どもが運動に対して消極的・・・どうすれば?

A. まずは親がガイドとして、率先して動作の手本を子どもの前で見せてあげてください。嫌がっているときは、無理にさせるのをやめてください。スポーツ観戦をしてそこから興味を広げるのも良いです。

公園に連れて行くことがゴールになっている親もいますが、スマホをいじっている場合ではありません。幼児期の子どもは大人のマネが得意です。子どもに動作を見せて一緒に真剣に「楽しむ」ことが子どもを運動好きにさせる近道です。運動をするにあたって「完璧にできないといけない」と思う親もいますが、完璧にできなくても別にいいのです。ある程度、10回のうち6回できればいい、という気軽さが理想です。

運動をさせるうえで注意することは?

A. やりすぎによるけがに気をつけてください。

野球でも投手は投げ過ぎで肩のけがをしてしまうことが多いです。なんでも「そればかり」は良くないです。痛くてもつい我慢して、親やコーチにいえない子もいます。親が子どもに体のことを普段から聞いて、子どもが「痛い」といえばすぐに受診しましょう。「身長が伸びているから運動量を少し減らそう」など、子どもの発育発達やスポーツ医学に関する知識をつけることも大事です。

親へのメッセージ

様々な運動体験をすることは、体の健康面だけではなく、けがなどで一つのスポーツが出来なくなったときに、ほかのスポーツに挑戦する選択肢が増えるという意味でも良いことです。親には子どものために運動環境を少しでも整えていただき、生涯にわたって運動が大好きな子がひとりでも多く増えればうれしいです。

【プロフィール:遠山健太(とおやま・けんた)】

1974年生まれ。ウィンゲート代表取締役。ワシントン州立大学教育学部卒業。フィジカルコーチとして、国立スポーツ科学センター(非常勤職)や全日本フリースタイルスキーチームを歴任。著書に「スポーツ子育て論」(アスキー新書)、「コツがつかめる!体育ずかん」(ほるぷ出版)など。子どもの運動教室「ウィンゲートキッズ」と「リトルアスリートクラブ」を展開しながら現在は大学院で幼少期の体力測定の研究をしている。

関連記事:「ゴールデンエイジとは?子どもの運動神経を鍛える方法を年齢別に紹介」

みらのび掲載中のスポーツ関連の習い事一覧(無料体験受付中)

北川サイラ
北川サイラ

1992年生まれ、神戸出身。2016年に朝日新聞社入社。静岡、大津総局を経て、2020年10月から現職。小学生のころは器械体操に夢中でした。趣味は家庭菜園、寺社や銭湯めぐりなど。

関連記事 Related articles

新着 New!

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す