2021.07.26
学びをはぐくむ ちゃみママ

発達障がいの子の習い事、向き不向きはあるの? 鳥取大大学院・井上雅彦教授に聞く㊤

はじめまして!発達障がいの子ども(小4)の子育てに奮闘しているちゃみママです。診断されたものの、まだまだ発達障がいについてはわからないことだらけ。そこで、発達障害の子の特性を生かして、個性を伸ばしていく方法について、専門家などに話を聞くシリーズを始めます。第1回目は「発達障がいの子と習い事」をテーマに、鳥取大学大学院で発達障がいの研究をしている臨床心理相談センター長の井上雅彦先生にお話を聞きました。3回に分けてお届けします。

プロフィール 井上雅彦(いのうえ・まさひこ)さん

鳥取大大学院 医学系研究科臨床心理学専攻 臨床心理学講座 教授。臨床心理士、公認心理師、認知行動療法スーパーバイザー、自閉症スペクトラム支援士(エキスパート)の資格を持ち、長年、発達障がい児本人に寄り添ったアドバイスなどをしている。発達障がい児の親を支えるための活動も精力的に行っている。

特性によって、習い事のジャンルの向き不向きはあるの?

――先生、発達障がいの子に習い事をさせたい時、特性によってジャンルの向き不向きってあるんでしょうか。例えば、元気が良くて落ち着きがあまりない傾向があるADHD(注意欠如・多動症)の子にはスポーツ系が向いているというような……

発達障がいもいろいろなケースがあり、習い事もいろいろあるので、事例によってこれが向いていて、あれが向いていないというのはないですね。

――発達障がいの子、例えばADHDの子に習い事をさせる場合、注意した方がいいことってありますか。

やっぱり本人が興味を持つことが一番重要だと思います。ADHDに限らず、誰でもそうなんじゃないですかね。

ただ習い事って学習塾も含めた意味ですか?それとも塾以外とかですか?

――例えば、サッカーとか。

そういうふうに言ってもらえるとわかりやすいです。ADHDの子の場合、サッカーだと一番難しいのが、チームメイトやコーチとのやりとりですね。

――あ~、想像できる!確かに人の話を聞くとかは苦手なんです。

例えば、視野が狭くなっちゃって、自分でボール持ったら一生懸命走るんだけど、パスができないとか。何度コーチがパスを出せと言ってもなかなか聞けないことがあると思うんですよね。

――そう考えると、サッカーをやるのは厳しい…っていうか無理?

いや、そんなことはありません。ADHDと言ってもいろんな子どもたちの特性があるので、それを理解して対応してくれるコーチや先生がいるかどうかが、最も重要なポイントだと思いますね。

――なるほど~。それってサッカーじゃなくても同じですよね。

そうです。その教室の先生たちが、本人の特性を理解してくれているかどうかが、何より大事ですね。僕が親だとしたら、そこを1番最初に見ると思います。

子どもの特性のことは話しておいた方が良い

――う~ん……。先生がおっしゃっていることはとてもよくわかるのですが、先生が理解してくれるかを見極めるためには、子どもの特性というか、発達障がいってことをまず言わなきゃですよね。

まぁそうですね。

――そこがちょっと躊躇してしまうんですね…。習い事の先生に言うと、色眼鏡で見られないかなとか……。でもやっぱり最初に「うちの子はこういうタイプなんです」って、言ってしまった方がいいんでしょうか?

基本的には僕の考えでは支援者(ここでいうと、習い事の教室で子どもの発達障がいについて相談できる人を指します)には、伝え方はともかく「言った方が良い」と思いますね。言わないでトラブルになることは、できるだけ避けたいですね。

――確かに私が習い事の先生で、教室内でトラブルが起きたら「最初に言ってくれれば……」と思うかも。

そうなんですよ。でも支援者に伝えるとき、親にとっては、「子ども本人が自分の障がいや診断を、どう考えているか」などの不安がいろいろあります。思春期に入ると、自分のことや診断について言わないでほしいという子もいるし。

――あ~、なるほど。

低学年だと自分の特性や症状のことを理解していないお子さんの方が多いと思いますね。その場合はやっぱり親が、事前に習い事の先生に伝えて相談してから入れたほうが良い気がします。

――マンツーマンでも必要ですか?例えば、英会話とか?

その場合は「書くのがすごく苦手なんです」とかは伝えた方が良いですね。

――集団で習うものには、より注意が必要ですか?

特に集団でやる習い事の場合は、先生が本人を理解してくれているという前提で入れたほうが、親も最終的には安心でしょう。

――確かに。でも先生に聞いて「無理です」と拒否されたらと思うと怖いというか、凹むというか……。

わかります。例えばサッカーにしても、「みんなに迷惑かけるなら、そういう子は……」となったら困るから、なるべく言わないでおこうと思ってしまうってことですよね。

――そうそう!まさに! 

親からみてトラブルが起こりそうな場合ほど言った方がいいと思いますね。例えば、最初は診断名などを出さずに「やんちゃなんですけど、うちの子は」など普通の子にも使いそうなトーンで、まず言ってみたらどうですか。

配慮してほしいことは「サポートブック」を作る

――そんなトーンでなら言えるかも。

支援者が前向きな反応を示したら、その後に診断があることを伝えたり、具体的に何か配慮してほしい点があれば、サポートブックを作ったりして、それを見せるとか。

――サポートブックって何ですか?

サポートブックとは

学校や習い事の先生にあらかじめ知っておいてもらいたい特性や関わり方の情報をまとめ、共有するために自分で作るシート。主に生育歴や性格の特徴、アレルギーの有無などを記載します。何を書いたらいいか迷う場合は、各自治体がホームページにサポートブックの例を載せているので、それを利用するのがいいでしょう。

記載する項目が多いと、親も先生も大変。その子の「良いところ」と「気になるところ(配慮が必要なところ)と対応事例」だけでもOK。
例えば、「気になるところ:気が散りやすい⇒座席を前にすると集中できる時間が長くなります」という感じで記載します。
どの先生からも同じような対応をしてもらえる可能性があり、安心して生活や習い事ができるメリットがあります。

――サポートブックって親が作るものなのですか?

そうです。基本的には親が作るものです。

――習い事の場合、どんなことを書けば……

サッカーなどのスポーツでいえば、頭ごなしに、「お前何やってんだ!」っていう注意のされ方、ありますよね。でもその注意の仕方だと、字義通りにとらえてしまう特性がある子だと「何をやってるのかって? 今、サッカーやってます」という応答になってしまうかもしれませんね。

――あはははは~。なんか言ってる様子が目に浮かぶわぁ(笑)。

その場合はサポートブックに「具体的に注意しないと、怒られたことはわかっても内容が理解できていない」「例えば、注意する時は『今日の練習はボールをもらったらゴールするのではなくて、パスをする練習だよ』と具体的な指示を伝えてほしい」というようなことを書いておくんです。

――なるほど~、イメージ湧いてきました。

そう。前もって伝えてないと、コーチからすると「あいつ、注意しているのにやる気ないのか!」とか「反抗的な子」って思ってしまうこともある。本人はやる気あるのに。

――そうですね。確かに普通は、そう思っちゃいますよね。

だからそういった行き違いを失くすための方法の1つとして、サポートブックというツールがあるのです。

――これ、習い事だけじゃなく学校や塾でも役立ちますよね。作ってみます。

そうですね。トラブルが起こりそうだと予測できるのであれば、勇気を出して相談した方がいいと思います。そこであまり対応がよくない、「個別対応は一切しません」みたいな習い事や塾であれば、僕が親だったらあまり良い印象をもたないと思いますね。

――そうですね。入ってからわかるよりもいいかも。

ここはやめとこうとなるような気がしますね。

また親自身がコミュニケーションとりづらいと感じる先生だと、入会後、つらくなってくると思いますよ。

――そうですね。なんとなく話しづらい先生の場合、トラブルがあった時も相談しづらいかも……

その習い事が、子どもの人生にどうしても必要な場合もあるかもしれないけれど、そうでないなら、そこまで頑張って通わなくてもいいのかなと思いますよ。

感想

なるべく先入観を持たれたくないので、息子の発達障がいのことは、周りの人には言わない方がいいと思っていました。おとなしいお子さんに比べると、目立ったり、個性的だったりするので、習い事の先生に「うちの子、特別なんで……」と伝えるのはちょっと気がひけると思っていたんです。でも井上先生の話を伺って、指導する側のコーチや先生にとっても、きちんとこちらから子どもの情報を伝えた方が良い、上手に伝えるために「サポートブック」というものを作成すると良いとわかりました。

でも学校と違って、習い事の先生にどこまでお願いしていいものか。親子で「モンスター」と思われても困るし……。
次回は、習い事の先生に発達障がいの子どものケアを、どの程度お願い出来るのか。
チラッと聞いたところによると前よりも制度が整い、相談しやすくなっているそう。ちゃみママもそのあたり無知なので、井上先生に発達障がいの子どもと親をサポートする制度などについて聞きたいと思います。

 

イラスト:カワチハルナ

関連記事:うちの子グレーゾーン?気になる子どもの発達特性を伸ばす方法 教育家・小川大介さん

ちゃみママ
ちゃみママ

「乗り物オタクだなと思っていた小学4年生の息子が、ADHDと判明。確かに、小さな頃から算数と乗り物のこと以外は集中力がなく、シャツから下着が出ていてもおかまいなし。他の保護者からは、自分勝手な子、だらしのない子と見られることも……。学校などからかかってくるトラブル報告の電話におびえつつ、子育てに奮闘中。外では明るく振る舞っているものの、トラブルが続くと、「私の子育て、間違っているのかな」と自問自答を繰り返してしまう。相談ができて、背中を押してくれる人やサービスを常に探し中!

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