2021.07.28
学びをはぐくむ ちゃみママ

発達障がいの子の習い事、向き不向きはあるの? 鳥取大大学院・井上雅彦教授に聞く㊦

はじめまして!発達障がいの息子(小4)の子育てに奮闘しているちゃみママです。診断されたものの、まだまだ発達障がいについてはわからないことだらけ。鳥取大学大学院で発達障がいの研究をしている、臨床心理相談センター長の井上雅彦先生に、発達障がいの子の特性を生かして、個性を伸ばす方法について話を聞きます。息子が英語教室の習い事をやめてしまったことについて、アドバイスをいただきました。

英語教室で、ほかの保護者からのクレームが…

――先生、前回、ペアレント・メンターのことをお伺いし、「もっと早く知っていたらな……」と思いました。

初めてのお子さんが発達障がいだったり、仕事の関係で引っ越しして知らない土地に来たりしていると、地域の情報がわからないですよね。

――本当にそうです。うちもペアレント・メンターとかに相談すれば、あんなコトにならなかったかも……

あんなことって、どんなことがあったんですか?

――実は、うちの息子、英語教室に通っていたんですが、小2のとき、同じクラスの保護者から「ちゃみママさんちの子の授業態度が悪いので、うちの子が落ち着いて授業を受けられない」とスクールにクレームが……。そのことで塾をやめさせたことがあるんです。

そんなことがあったんですね。

――もう、私がいたたまれなくなって。確かに授業中に頻繁にトイレへ行ったり、違う子が答える番なのに勝手に答えたりと、授業態度が悪かったことはありました。

お子さんはどう思っているんでしょうか。

――彼にしてみると「楽しくやっていたのに、なぜか急に英語をやめさせられた。なんで?」と思っているようです。私も、うまい返事ができず……。

スクールや先生からは、何て言われたのですか?

――「他の保護者からこういうご意見がありました。それで、どうされますか?」と言われ、その聞かれ方に私がビビってしまい、「わかりました。そういうことなら、いったんやめます」ってやめちゃったんですよ。

特性に合わせた対応を交渉するのはエネルギーが要りますよね。理解がありそうなスクールや先生だったらいいんですが、今のお話だとほぼ引導を渡されたに等しい感じですが。

先生に理解してもらえない場合は、やめて正解

――引導、まさにそんな感じです。

本来なら、先生やスクールに理解してもらって一緒に解決案を考えることがいいんですけどね。でも今回のケースだと、親であるちゃみママさんの当時の心身の健康も考えて、やめて正解だったと思います。

――先生に「やめて正解」っていっていただき、ちょっとホッとしました。

いやー、その状態で通い続けるのは心身の健康上、良くないと思います。

――息子が小さくて、発達障がいの診断がされる前にも、似たようなことが別の習い事でもありました。その時は、教室の先生が「息子さんの気持ちを一番に考え、対応を考えましょう」と寄り添ってくれたので、相談しやすかったです。

僕のところにも、同じように先生との関係に悩んでしまったという相談、多いです。例えば、音楽関係とかで……。

――うちも以前、悩みました。ピアノの先生との関係で……

「この先生に習わないと、コンクールでいい成績がとれない!」みたいなケースがあるじゃないですか。それで、遠くまで習いに行く。そしてその先生は生徒にも親にも厳しい。「もっと頻繁にレッスンに来ないとダメ」なんて言われることもあります。そのようなケースでは親のほうが精神的にも疲れ切ってしまいます。

――え~っ、その方はどうされたんですか?

その方は、教室を変わるという選択をされましたね。親に寄り添ってくれるタイプの指導者だと、一緒にやっていこうという気持ちになりますが、指導者のペースで一方的だと親のメンタルがやられちゃうんですよね。教室を変えるという選択も全然アリだと思います。

――先生に「やめるのもアリ」って言ってもらえるだけで親としては救われます。ただ、子どもにはなんと説明するのがいいんでしょうか?

難しいですよね。本人が一番納得する理由を考えるのがいいですよね。ちゃみママさんの場合は、事実をそのまま本人には伝えられないですよね。

授業中の約束を決める

――そうなんです。他の生徒さんの気が散ることをやってたのは事実なんですが、本人としては「授業を妨害してやろう」みたいな悪意はないんです。

教室の先生に「授業中のお約束」を決めてもらうのがいいですよね。例えば、「ドリルをやっている間は友だちに話しかけないよ」とか。できれば都度、決めておいた合図を送って約束を確認するとか。

――お約束か……。たくさんあると難しいんですが、まず1つだけということなら守れたかも。

それで一度やってみる。それでも話しかけるようなそぶりがみられたら、いったん、ちゃみママさんのお子さんを別の部屋へ移動させてもらうなど、課題によって環境そのものを変えてみるのも手かと思います。

――そんな考えに私も教室側もならなかったですね……。

それでもやっぱり難しそうなら、お子さんには「今の教室もいいけれど、もう少し別のタイプで、もっとあなたに合いそうな教室があるみたいだから探してみようか」って言うとか。

――結果は同じ「やめる」ことになっても、そこまで教室側が対策を講じてくれたら心証は違いますし、子どもにもモヤモヤせずに「違う教室、探してみようか」って言えそうです。

何も対策を講じない状態で、「どうされますか?」って聞かれたら、親は悲しい気持ちになるし、本人は「なんでやめるの?」って思いますよね。

――通っていた英語教室はアメリカ人の先生で、うちの子がダランと寝そべったような格好で話を聞いてても、あまり気にしない。あてた時にパッと回答できればOKだったので、先生との相性は良かったんですが……。日本人の保護者からみると「あの子は迷惑者」って思われたんです。 

親御さんとしてはつらいですよね。トラブルになって微妙な立場になっても、送り迎えして、お金も払わなきゃいけないし。

――「迷惑な子って思われているのかな」と感じても、親が送迎しなきゃいけないですからね……。

他の親とのお付き合いが必要になる習い事もありますよね。親の負担は無視できないです。しんどい状況で毎回連れて行くと、ストレスをためこむことに。

習い事が、親の癒やしにもなると良い

――そうそう。連れてくたびにトラブルが起きるとこっちもイライラするし、子どもにも怒っちゃう。毎回嫌な気分になるなら違うことやった方がいいってことですよね。

その勇気は持っていてもいいと思います。お子さんのためにだけじゃなくて、親にとっても癒しである方がいいですね。

――「習い事が親にとっても癒しである方がいい」ってステキな言葉ですね!

だって毎週のことですよね!そこにお子さんを連れて行くと、例えば、親は近くの喫茶店でお茶飲んで、至福のひとときを過ごせる、というのも大事。お子さんと一緒に親も英会話を習ってもいいし。親にも良いことがないとつらいと思います。

――うちの場合は大変でしたが、逆に「学校じゃ落ち着きないのに、この習い事を始めてから集中力がついた」とか「新たな一面を発見できた」という話を聞きます。よくプログラミングでそういった話を聞くんですが……

そうですね。特に「プログラミングは発達障がいの子と好相性」というデータはありませんが、自分のやったことに対してわりとすぐに結果が出るのが良いのかもしれません。

マンツーマンの習い事なら、のびのび出来る

――自分の行動がすぐに結果にあらわれるのは、大きな励みになりますよね。

民間で言うと、最近僕の知り合いで、「Branch(ブランチ)」というインターネットを使った個人レッスンのマッチングサービスをやっておられる中里祐次さんという方がいるんです。

――「Branch」、初めて聞きました。どんなところですか。

特定のものに興味や関心の高い子どもと、それをサポートしてくれる大人をオンラインでマッチングするサービスです。特に発達障がいに特化したサービスではありませんが、マンツーマンなので、のびのびと習えます。

――へぇ~、子どもが好きな分野に取り組めて、1対1で面倒を見てくれるんですね。個別の習い事なんて楽器系か、家庭教師ぐらいしか思い浮かびませんでした。確かにマンツーマンなら、他の子とのトラブルはないかも。 

いままでにないような形です。個人にあった習い事のサービスをインターネットを使って経験できる時代になっていますね。

特性と向き不向きは関係ない。好きかどうかが大事

―― 一般的にADHDは多動症状があるとされているので、静かに座ってやる習い事より、サッカーとか野球、水泳とかの活発に動く習い事が向いているのかと思い込んでいました。同じADHDでも子どもによってだいぶ違うのですね?

チームプレイが難しい子も、ボール持ったらゴールまで自分で行かない気が済まない感じの子もいます。一方で、のめり込みつつもチームプレイの重要性を理解してできる子も、ADHDのある子どもさんで野球を続けて甲子園を目指している子もおられましたよ。

――本人が好きで環境を整えてあげれば、「やれる・できる」こと、あるんですね。

多動がある子でもプログラミングが好きだったら、ずっと座ってやり続けるじゃないですか。ゲームも好きならやり続けるしね。

――「じっとしていられない子なら、英語教室よりもスポーツやらせた方が発散できていいかも」と考えなくてもいいってことですね。

大切なのは本人が好きか、興味があるかだと思います。

――先生の話を聞いてスッキリしました。うちの子、落ち着きがないのに、なんで英語教室とか座学系の習い事させちゃったんだろうと悩んだこともあったので……。

オンラインの英会話、調べてみるといいと思いますよ。

積極的に発言する子は、場所が変われば、ほめられる

――マンツーマンなら当てられてないのに答えても、怒られる心配ないので親としても安心です。

積極的に発言するって、いい子ですね(笑)

――えっ、いい子ですか? 学校でも習い事でも先生に怒られることが多くて……。でも特性だからか、怒られてもシュンとならずニコニコしていて、先生も「あれ?」って思うみたいです。

でも、それ、大学だととても良いことですよ。僕、大学院の講義をしていますが、たとえそれが多少的を得ていなくても、積極的に自分の考えを発言してくる学生さんは大歓迎していますよ。

――場が違えば、ものすごく褒められるってことなんですね!

小中高までは困ったとしても、大学入ったら一番前に座ってグイグイきていただける方が、いいと思いますよ。

――子どもの特性をほめられることがなかったんで、とってもうれしいです!!

その子に合ったパーソナルな環境を与えると、どんどん伸びる子は多いと思います。

興味関心が分かりづらい子は、とりあえずやってみて、合わなかったら無理に続けさせない。「継続は力なり」って言葉がありますが、本人が合わないもの、やりたくないものを続けてもあまりいい結果にならないと思うので。

――なるほど~。わかりました!

学齢期は苦手なことを克服させることに目が行きがちですが、本人が好きなことをいろいろ試してみて、飛びぬけたことを1つか2つ作ることが大切だと思います。 

――本人がやりたいことに習い事をうまく活用できれば、ぐんぐん才能を伸ばすことにつながりますよね。

本人がやりたいことや特技に出合うためにも習い事を活用し、もし見つかったらそれを伸ばす機会にするのがいいと思います。

あと親のメンタルも大事。「子どものためだから」と我慢しないほうがいいと思いますね。習い事のお金も出して、メンタルも消耗したら、悲しすぎますよね(笑)。

――先生のおっしゃる通りですね。お金出して精神的な苦痛を味わってるんじゃ、やってられないです~。

習い事をお子さんの得意なことや好きなことの発見の場と捉えると、親自身も少し肩の力を抜いて、習い事に向き合えると思います。

――いや~、本当にそうですね。興味、関心の方向ははっきりしているので、習いごとの環境を整えてあげて、ぐんぐん伸ばしてあげたいです。

これからも子育てがんばってください。

――本当にありがとうございました!

プロフィール 井上雅彦(いのうえ・まさひこ)さん

鳥取大学 大学院医学系研究科臨床心理学専攻 臨床心理学講座 教授。臨床心理士、公認心理師、認知行動療法スーパーバイザー、自閉症スペクトラム支援士(エキスパート)の資格を持ち、発達障がい児本人に寄り添ったアドバイスなどを長年行っている。発達障がい児の親を支えるための活動も精力的に行っている。

感想

「習い事が親にとっても癒しであった方がいい」という言葉。私自身が本当に救われました。あの時、英語をやめてよかったのか……、もっと上手な立ち回り方があったんじゃないかな…と、同じことばかりくよくよ考えていました。先生の言葉で、とてもスッキリしました。いまはトラブルが多いうちの子も、場所が変わると「いい子」になるんだと知ることができて、とても晴れやかな気持ちになれました。

井上先生に教えていただいた「Branch(ブランチ)」。子どもが好きなことで自信を創り、社会とつながるためのWebマッチングサービス、かなり興味を持ちました!

次回はBranch(ブランチ)の中里祐次社長に、この事業を始めたきっかけやどんなサービスなのか、詳しく聞いてみたいと思います。


イラスト:カワチハルナ


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ちゃみママ
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「乗り物オタクだなと思っていた小学4年生の息子が、ADHDと判明。確かに、小さな頃から算数と乗り物のこと以外は集中力がなく、シャツから下着が出ていてもおかまいなし。他の保護者からは、自分勝手な子、だらしのない子と見られることも……。学校などからかかってくるトラブル報告の電話におびえつつ、子育てに奮闘中。外では明るく振る舞っているものの、トラブルが続くと、「私の子育て、間違っているのかな」と自問自答を繰り返してしまう。相談ができて、背中を押してくれる人やサービスを常に探し中!

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