2021.07.12
学びインタビュー 小内三奈

増える小学校受験、変わる入試 こぐま会の久野泰可代表が語る「正しい受験対策」

幼児教室「こぐま会」の久野泰可代表による講演会、「幼児期の基礎教育と小学校受験」が6月27日、オンラインで開催されました。久野代表は「みらのび」での連載「小学0年生の考える力」で、将来の学習につながる幼児期の学びの大切さを伝えています。今回の講演会では、最近の小学校受験の傾向、コロナ禍の昨年の小学校入試はどのようなものだったのかを振り返った上で、思考力を育てる正しい受験対策についてお話されました。その内容をレポートします。

最近の小学校受験の傾向は?

コロナ禍でも受験者は増加傾向

コロナ禍で行われた昨年秋の小学校受験。受験者数は増加傾向となりました。1人のお子さんが受験する学校の数は、こぐま会でも平均で7校、多い方では13校に願書を出されています。1人のお子さんが受験する学校が増えたことで、全体の受験者数の増加につながっているのではと思っています。

その原因ですが、日本のこれからの教育改革と関係していると考えています。

1つは、英語教育。特に私立小学校では以前から実践していることによる信頼があります。

2つ目が、コロナ禍で注目されたオンライン授業です。教育環境の整備という点で、私立小学校、国立小学校が良いのではと感じた方が多かったことです。

3つ目が、働く母親に寄り添った様々な改革が進んでいることです。小学校受験では母親が働いていると不利なのではとの噂話が流れていましたが、現在では多くの私立小学校で放課後の学童保育を用意し、学校によっては夕食まで提供してくれるところもあります。

このようなことが小学校受験への期待につながり、受験者が増えているのではないかと考えています。

受験する保護者の意識に変化が

一方、保護者の意識の変化として、小学校の選び方が多様化していると感じています。昔は、伝統校に入学し、小学校から大学までの一貫教育を受けさせたい、という希望が多かったわけです。ところが今は、たとえ一貫校に通っても高校時点での本人の希望、将来進みたい分野などの理由で他校を受験する、また海外の大学への進学を視野に入れておられる方も多くいらっしゃいます。今後もそういったケースが増えていくのではと思います。

小学校入試問題の変遷

昔は知能テストが主流で行われていましたが、経済成長の中で大勢の方が小学校受験を希望されるようになり、大量のペーパーを使った試験に変わりました。30枚、40枚ものペーパー試験をこなすためのトレーニングによってストレスを抱えるお子さんが出てきて、心療内科などの先生から、警告メッセージが出るようになりました。

その後、ペーパー試験をやらない時期もありましたが、ペーパーなしで子ども達の能力を測るには試験が1週間以上かかってしまいます。そこで今の形である、少ないペーパー試験と行動観察、面接で総合的に子どもの能力を測る形式になってきました。

小学校入試というと、今でも毎日何十ページものペーパー対策をするような動きがあります。しかし、現在のペーパーは、機械的なパターン学習や教え込んで解けるような問題ではなくなってきていて、「考える力」が求められています。ペーパーをたくさんこなすのではなくて、1つ1つの学習を深く、色々な角度から学び、柔軟な思考力をつけることが小学校受験の対策として大事となっています。

小学校入試は今後どう変化していくか?

現在の入試は、ペーパー以外に行動観察といわれるような特殊な試験が取り入れられています。そして、教育全体が大学入試を含め色々と変革しなくてはいけない時代です。

大学入試が変われば高校の学習が変わり、高校が変われば中学が、中学が変われば小学校と、子ども達の能力をどのように見ていくかという考え方も変わってきている中で、小学校の入試がどう変化していくのか?そこを読んだ上で、これからの対策を考えていかなくてはと考えています。

コロナ禍の入試で変化したこと、しなかったこと

学校が求めるのは「自分で考え、自分で判断し、主体的に行動できる子」

昨年はじめて行われたコロナ禍の入試ですが、基本的には大きな変化はなかったものの、問題の中身を見るとやはりコロナを考慮した学校の配慮が見られました。

ペーパー試験に代表される学力を測る問題は、基本的な事項が理解できているかを見ようとする基礎的問題が多かったように思います。中には、ここ最近ずっと続いていた難問化の流れを引き継いだ問題も出題されています。行動観察は、子ども同士が相談する密を避けるため、運動系の命令指示行動と言われる問題が増えました。

全体を通して求められている能力について変化はありません。
まず「聞く力」、そして指示を受けて「作業する力」、そこから答えを導き出す「考える力」。この流れは変わっていないということです。

学校が求める子ども像は、「自分で考え、自分で判断し、主体的に行動できる子」。1人のお子さんが4校も5校も合格するケースがありますが、好まれる子ども像、家庭像に大きな変化はなかったと思います。

なぜペーパートレーニングだけではだめなのか?

最近の入試で求められるのは、自ら獲得した「考える力」

ペーパー試験が基本問題に戻った中で、「考える力」が求められた問題例として、積み木の数当ての問題と、どこからどう見えるかという問題の複合問題があります。1つの領域の学習だけでなく、いくつかの領域が合わさって作られている問題です。最近の入試問題の多くは、機械的なペーパートレーニングだけでは解けず、自ら獲得した「考える力」がベースとして必要となります。

2021年度小学校入試問題の一例

こぐま会で実践しているように、まず具体物を使い、カードを使い、指示を受けてその答えを導き出すために子ども自身が試行錯誤することで、学んだ力を応用できる力、転移する学力に発展させること。

転移する学力とは、たとえば、100個の課題に対して100通りの練習をするのではなく、10の基本的なトレーニングをすれば残りの90を解けるようにする学力のことです。「応用力をどうやって身につけていくのか」、そういう発想で学習を行っていくのがよいと思います。

受験のための学びが将来の学習の基礎作りに

幼児期の基礎的学びを徹底することが入試対策に

こぐま会では、「受験のための学び」が「将来の学習の基礎作り」になるような学びを進めています。基礎教育の内容と受験教育の内容を分けず、まず基礎教育をしっかりやった上で、実際に出される入試問題の対策を行っています。

無理なく「考える力」を身につけるために、まずはゲームやごっこ遊びなどの体を使った集団活動を行い、それからカード教材や具体物を1人ずつが操作し試行錯誤する経験をし、最後にペーパートレーニングを行うという3段階の学習を行います。

ペーパーだけで対応できる時代は終わりました。自分で考え、自分で判断し、主体的に行動するためには、幼児期の基礎教育の先に小学校受験を考えていくという時代になってきていると思います。

「ひとりでとっくん」がなぜ受験の教科書的役割を果たしているのか?

ぜひ皆さんに知ってほしいのが、私が20年かけて作った100冊(300問)の問題集の存在です。これを系統立てて優先すべき学習の順序にしたのが「ひとりでとっくん365日」シリーズで、12冊にまとめました。

全国200以上の書店においていただいていて、首都圏だけでなく色々な地域でこの問題集を使って学習されています。学校側で入試問題の参考にしているケースもあり、これが今現在、小学校受験をする方々の教科書的な役割をしているともいえます。

受験のために作ったものではなくて、幼児期の基礎教育を実践するための素材として作った問題集です。それが実際の入試問題のベースになっていると知っていただければ、小学校受験の対策と幼児期の基礎的な学習が別ではないということがわかっていただけると思います。

子育ての総決算としての入試

2つの小学校からのメッセージを紹介します。1つは「子育ての総決算として入試を受け止めてください」というもの。もう1つは、「受験塾に預けて型にはめた子どもを送らないでください」というもの。

間違った受験対策で子どもの成長の芽を摘み取ってしまう、精神的に追い詰められた子どもが大勢います。

つらい学習をして、学ぶ喜びを感じられなかった子ども達が小学校に行ったらどうなるでしょう?勉強嫌いになります。合格した小学校で、学ぶことに魅力を感じない子どもが大量に生まれてしまいます。私はそういったマイナスの点をできるだけなくす方向に向かっていくべきだと思っています。

最初からペーパートレーニングをするのではなく、遊びや生活でいっぱいの学びのチャンスがありますので、そういうことをベースにした正しい教育を実践していただきたいと思います。

「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可室長」の記事一覧

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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