2021.07.27
学びをはぐくむ ちゃみママ

発達障がいの子の習い事、向き不向きはあるの? 鳥取大大学院・井上雅彦教授に聞く㊥

はじめまして!発達障がいの子ども(小4)の子育てに奮闘しているちゃみママです。診断されたものの、まだまだ発達障がいについてはわからないことだらけ。発達障害の子の特性を生かして、個性を伸ばしていく方法について、話を聞くシリーズの第1回目。「発達障がいの子と習い事」をテーマに、鳥取大学大学院で発達障がいの研究をしている、臨床心理相談センター長の井上雅彦先生にお話を聞いています。今回は、親はどこに相談したら良いの?「合理的配慮」や「ペアレント・メンター」について、詳しく説明します。

習い事にも「合理的配慮」を求めることができる

第1回目では、発達障がいの子どもに習い事をさせる場合は、本人がやりたいものを選ぶのがいいということ、コーチや指導する人に子どもの特性や配慮してほしいことをまとめた「サポートブック」を作るといいとわかりました。頭ではわかったんですが、ちゃみママとしては気になることがあるので、井上先生に聞いてみたいと思います。

――子どもの特性について伝えるのがいいことはわかったんですが、モンスターペアレントやうるさい親だなって思われないかと心配です……  

ちゃみママさんが心配する気持ちはわかります。習い事は確かに学校と違って義務じゃないですものね。でも現在は、「合理的配慮」を、公立の機関以外でも努力義務としてしなければいけません。例えば障がいのあることを理由にして、単純に参加を断ってはいけないのです。「障がい者差別解消法」という法律があるので、塾でも習い事でも、合理的配慮を行っても参加困難などの理由がない限りは、障がいを理由にして入塾を断ることはできない仕組みになっています。

――すみません、「合理的配慮」って何ですか?

解説メモ:「合理的配慮」とは

障がい者の特性や困りごとなどに対して、できる限り配慮すること。2016年4月に施行された法律(障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律)によって、学校や企業(習い事を運営する会社を含む)、行政などは、合理的配慮を提供することを義務付けられています。逆にいうと、障がい者や障がい児の親は配慮を求める権利があります。

内閣府のHP「合理的配慮を知っていますか」

――合理的配慮という言葉を、今、ようやく知りました。これって民間にも求めることができるのですか?

努力義務があります。障害を理由に入塾・入会を断られることは、そんなにないはずですね。

――ちょっとホッとしました。でも実際、例えばサッカーのコーチで、発達障がいに対して知識がある方って増えていますか。

発達障がいの子は増えてきているので、できるだけ対応していこうと考えている団体や指導者は増えていると思います。

――習い事でも、サポートをお願いして良い社会になってきているのですね。

そうですね。発達障がいの子にも対応できる習い事教室は増えてきているので、まずは親が子どもの特性をうまく伝えることがカギになってきますね

――うまく伝える……。イマイチ自分の子どもの特性がつかみ切れていない、って私だけかな?!

いやいや。診断を受けた直後とかだと、それが特性なのか?とかがまだわからないことってあると思います。

住んでいる地域で「ペアレントメンター」を探す

――自分の子どものことを、どういうふうに伝えたらいいかなって一緒に考えてくれる人たちがいてくれたらいいけど。なかなかいないですよね。インスタとかで仲間を見つけるとか?

あの、地域のペアレント・メンターって知っていますか。

――何ですか?!初耳です

解説メモ:「ペアレント・メンター」とは

発達障がいの子どもの子育てを経験し、相談や支援をするための一定のトレーニングを受けた親のこと。同じ立場を経験した者として寄り添ったアドバイスができ、地域ごとに組織されているので、地域ごとの情報を提供することできる。

日本ペアレント・メンター研究会

専門家や有識者ではなく先輩の親がサポーターになり、「こっちの習い事よりもあっちの教室の方が、発達障がいに理解がある」などの地域の情報や、「こうやって言った方が伝わりやすいのでは?」など子育ての経験をもとに一緒に考えてくれる組織です。

――へぇ~そんな組織があったなんて。

地域ごとに組織されているので、同じ診断を受けた子どもを持つ先輩の親御さんたちから地元ならではの情報とかも教えてもらえるかもしれません。

――地域ごとっていうのがいいですね。ネットで検索して「発達障がい児にも対応」とあって、おっ!と思っても遠方だと通えないし。

例えば、東京は区や市ごとに制度があります。都内のすべての市区町村にメンターがいるわけではないですが、徐々に広がってきています。基本的にボランティアのような活動です。

――サポートブックも、何をどう書いていいかわからない場合、ペアレント・メンターに相談することもできるのでしょうか。

とてもいいと思います。ペアレント・メンターは先輩の親だったら誰でもなれるというわけではなくて、一定の訓練を受けた方々がなっています。

我々が約2年前に作ったガイドブックがあります。メンターになるには、小学校の中学年以上の発達障がいのお子さんを持っている親を対象にして、研修会を受けてもらいます。

☆ペアレント・メンターガイドブック家族による家族支援のために

――どんな研修を受けているのでしょうか。

例えば、相談内容に関する守秘義務のことや、傾聴や共感の重要性、自分の意見や経験を強制しないといった相談者の主体性の尊重などです。自分と価値観が違う親がいることもあるから、地域の情報や自分の体験は提供しつつも、こうしたほうがいいというのは、それぞれの親が判断することですからね。

――なるほど。確かに相談したいけれど、メンターさんと相性が合うかなどもありますよね。

メンター自身も相談を受けることで傷つく人も出てきちゃうリスクもあるので、2日間の研修を受けることが必要です。東京の場合も、ちゃんと修了証が出ます。

――修了証が出るなんて本格的ですね。自分の地域のメンターを探すにはネットで探すのですか。

お住いの地域で検索して出てこなかったら、都道府県の発達障がい者支援センターのHPなどを探すと、見つかると思います。

――地元の情報を教えてくれる存在ってありがたいです。診断してくれた医師や病院ではこういった情報は教えてもらえないですからね。

地域の「発達障がい児の親の会」なども情報を持っていると思うのですが、親の会に入会するってちょっとハードルが高いですよね。

――井上先生、よくわかっていらっしゃる!なんだか、悩みます……

そういった親御さんに、メンターさんへの相談を活用してもらえるといいのかなと思います。

本人の気持ちが大事。無理やり続けさせないこと

――さっそく相談したいです!

メンターさんから、習い事などの情報収集や、どう言うと先生に伝わりやすいのか、実際に習わせてみてどうだったかなども聞けると思いますね。

ただし、情報集めて選ぶことは大切ですが、肝心なのは本人です。

大切なことは、やってみて本人があわないこともある。そういう時は無理やり続けさせてもうまくいかないと思います。

――親としては「せっかく探してきたから、ステージがあがるまでがんばって」とか言いがちかも……。

「発表会に出られるようになるまで続けよう」「●級になるまではやろう!」と子どもを励ます親がいますよね

――私もそういうタイプです。

でも本人にとってみれば、試合に出ることや、級があがるなどはどうでもよくて。

楽しければいいってこともあるので、本人の気持ちを大切にしてあげたいですよね。

――あー、先生の最後の言葉が胸にグッサリ刺さりました。

今日はありがとうございました!

実は先生、習い事の体験でもっと相談したい事があるんです……

えっ、具体的にどんなことですか?

――うちの息子の悩みを、詳しく聞いてもらっても良いですか?

(次回に続きます)。


プロフィール 井上雅彦(いのうえ・まさひこ)さん

鳥取大大学院 医学系研究科臨床心理学専攻 臨床心理学講座 教授。臨床心理士、公認心理師、認知行動療法スーパーバイザー、自閉症スペクトラム支援士(エキスパート)の資格を持ち、長年、発達障がい児本人に寄り添ったアドバイスなどをしている。発達障がい児の親を支えるための活動も精力的に行っている。

感想

親としては子どもが「やりたい!」と思うことはさせてあげたいものの、習い事の先生やコーチに対して、特別にケアをお願いするのはちょっとおこがましいのかな……。でも言わないでいてトラブルになったら……と常にモヤモヤしていました。でも、「合理的配慮」のことが聞けて、迷いがなくなりました!「ペアレント・メンター」の存在を知ったのも大きいですね。習い事に通った実際の体験とか、カドの立たない配慮のお願いの仕方など、聞いてみたいです。


イラスト:カワチハルナ

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ちゃみママ
ちゃみママ

「乗り物オタクだなと思っていた小学4年生の息子が、ADHDと判明。確かに、小さな頃から算数と乗り物のこと以外は集中力がなく、シャツから下着が出ていてもおかまいなし。他の保護者からは、自分勝手な子、だらしのない子と見られることも……。学校などからかかってくるトラブル報告の電話におびえつつ、子育てに奮闘中。外では明るく振る舞っているものの、トラブルが続くと、「私の子育て、間違っているのかな」と自問自答を繰り返してしまう。相談ができて、背中を押してくれる人やサービスを常に探し中!

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