2021.07.18
習い事最前線 山口真矢子

一度ハマったら抜けられない…? バレエ母の世界へようこそ!~第2回・発表会編~

【第2回】発表会の舞台裏、母の汗と涙とお財布事情

【第1回】「娘と共にバレエの扉を開いた母たち」はこちら

バレエ教室に子どもを通わせるママたちからのリアル体験談連載、第2弾は「バレエ発表会編」です。発表会のやり方は、教室によって実にさまざま。親にとっても思いがけない出費や裏方のお手伝いがあります。何も知らずにバレエを始めると「えっ、こんなはずじゃなかった」と後悔する羽目に……。先輩ママ10人に、今までの発表会での苦労について語ってもらいました。

発表会は、想像以上にお金がかかる!

出演料に衣装代、舞台スタッフやゲストダンサーへの謝礼まで

統計によると、バレエ発表会を行っている教室は、全体の87.5%だそうです(昭和音楽大学バレエ研究所『バレエ教育に関する全国調査2016』より)。つまり、ほとんどの教室で発表会があるということ。開催のスタイルは「年1~2回」「2年に1回」または「1年ごとに大規模なものと小規模なものを交互に行う」など、教室によってさまざまのようです。コロナで自粛期間中は、大規模な発表会は中止になったケースが多いようですが、このところ、少しずつ通常の活動が戻ってきています。

発表会で気になるのは、やはり費用面。ほとんどの教室では、通常の月謝とは別にお金がかかります。ホールを借りて本格的に行う場合、「出演料」「衣装代」はもちろん、本格的な発表会だと「舞台スタッフへの謝礼」「プロのゲストダンサーへの謝礼」がかかることも。

本番中は、客席での撮影禁止のケースが多く、後日、業者が撮った写真や動画DVDを購入するのが定番のようです。

7万~25万円まで教室によって変わる発表会の費用

バレエ母たちに、お財布事情について、根ほり葉ほり聞いてみました。

「うちの教室の発表会は、出演料5万5000円、衣装代入れると7万円ぐらい。本格的なホールでやる割には安い方だと思う。コロナで緊急事態宣言が明けて初めての発表会の時、ホールの隣のホテルの客室を何部屋も借りて更衣室にしてくれました。でも費用はいつも通りだったので、教室側が負担してくれたと思う」

発表会に1回出ると10万円は軽く飛ぶ。男性ゲストダンサーとパドゥドゥ(ペアダンス)を踊った場合は、謝礼込みで15万円ぐらい。保護者の後援会費の積み立てから、教室の先生への謝礼とお花を出している」

「会場は本格的なホールなので、1回でなんだかんだ25万ぐらいかかる。出演料10万円、衣装3着。レンタルだと1着1万円、購入すると3万円ぐらい。レンタル衣装を返す時はクリーニングが必須。レンタルの方が安いけど、サイズが合うのがなければ新しいのを買わざるを得ない」

「業者の写真は結構高い。大サイズが1枚数千円 普通サイズ1枚850円ぐらい。子どもが写ってるからつい買ってしまう。実家の親用にDVDも買う。本番前のゲネプロ(本格的な通し練習)の時も、会場費や裏方スタッフに謝礼を払った

バレエ母たちの話からわかったのは、「発表会は想像以上にお金がかかる」という現実。金額が心配なら、入会前に費用を教室に確認することを強くおすすめします(でないと、発表会のたびにバレエ貧乏という事態に…)

ある働くバレエ母は、達観した様子でこう話しました。

「お金の不満を言い出したら、娘はバレエを辞めるしかなくなるんですよ。私が仕事を続けてきた理由は、娘のバレエを支えるため。『なんでこんなにお金がかかるの?』と思ったら、働くのが辛くなる。だからなるべくプラスに考えて、子どものバレエを仕事の張り合いにしてます」

衣装サイズ直しに必須「ムシ」作り

発表会の演目や子どもの役や衣装が決まり、親子ともに気もそぞろになる頃、バレエ母に新たな準備作業が発生します。

それは、バレエ母なら必須のお裁縫「ムシ付け」。衣装の留め金(ホック)をひっかける紐を、通称「ムシ」と呼び、針と糸で作ります。教室から衣装を預かったら、子どもの体に合わせてムシの位置を決め、背中に何カ所も縫いつけます。

「初めての時は、ムシの位置がわからなくて失敗。美意識の高い先生に『ウエストは細めの方が可愛いからやり直し』と言われて、全部ほどいて縫い直しました

「ムシ付けは慣れれば簡単。1着30分ぐらいでできる。リハーサルでも本番でも母は必ず裁縫道具を持って付き添う。何かしら衣装直しを要求されるので、裁縫道具は常に持参が当たり前

「ムシ」がわからない方は、ぜひネットで「バレエ ムシ」で検索してみてください(虫、ではなくムシです)。おびただしいほどの情報が出てきます。もちろんYouTube動画だってばっちりです。

舞台裏の激務を担うのは「母の会」

運営スタッフでわが子の出番が見られない場合も

いよいよ発表会。バレエ母にとって、楽しみなわが子の晴れ舞台。ところが、母たちを待ち受けるのは、発表会の「運営スタッフ」という大仕事。受付係、花や祝電、贈り物の管理係、楽屋係、衣装・ヘアメイク係など、たくさんの係に分かれて仕事をこなします。

「初めての発表会で、母親は舞台を一切見られないと知り、衝撃を受けました。夫は客席に座れるのに、私は観られないなんて……。せっかくのわが子の晴れの舞台なのにガッカリ」

「発表会になると、『母の会』のメンバー総出で働きます。私は今まで受付、席案内、花束預かり係をやりました。幹部になるとさらに大変で舞台全体の進行役や司会役。リハや発表会の会場を押さえるのもママたち。ママはバレエのためなら犠牲になって当たり前。大金はらって奴隷のような扱いです

「リハの時、母親たちは舞台袖でぎゅうぎゅう詰めで立ったまま待たされた。床が響くので音のしない靴を履いてこいと言われた。パパの付き添いは不可。こんなのおかしい……」

メイクから誘導係まで

「コロナの影響で発表会ではメイクさんを呼べず、化粧品一式とメイクのマニュアルが教室から届いた。『各ご家庭でメイクしてきてください』と。YouTube見ながら練習したり、バレエに詳しい妹にチェックしてもらったり。でも素人がやるので、仕上がりがバラバラ。当日、楽屋で先生がみんなのメイクを直していた」

「今まで一番大変だったのは、誘導係。子どもたちが出番になった瞬間に、舞台に送り出す仕事なんだけど、これが超大変。どの子が何の曲中で、どのタイミングで舞台に出て、はけるか、上手からか下手からか。子ども全員分把握するため、エクセルで細かいマニュアルを何枚も作った。暗い舞台裏でマニュアル見つつ曲の拍をカウントし、“はいっ!○○ちゃん××ちゃん出て!”とタイミングよく合図。リハで出番のタイミングを間違えたら、『お母さんたち何やってるの!』と先生から檄が飛んだ……」

すさまじい。まるで舞台監督と裏方スタッフのよう。バレエ母として裏方をこなせば、事務処理能力や音楽の理解力がアップしそうです。

「今まさに発表会の準備が始まってます。娘は上の学年なので、私も母の会の幹事メンバーに入ってしまった。先生からの連絡事項を母の会メンバーにLINEで伝える役をやってます。逆に、母の会から先生への質問をとりまとめて伝えることも。まるでPTAの役員のような忙しさです

「うちの教室は、発表会終了後のレセプション用に、母の会で食べ物を出すんです。子どもの準備だけでも忙しいのに、料理を何品か作らねばならず本当に苦痛です」

バレエ母の世界は大変すぎて、想像するだけでめまいがしそう。ただし、発表会の運営は教室によって違うため、中にはもっと楽なケースもあります。「うちにはそもそも母の会がない。後援会費もない」「発表会の裏方は、先生のバレエ団人脈のボランティアがやってくれるから、親は一切不要。当日は衣装運びと子どもの送迎だけで済む」「うちは裏方の係はあるけれど、子どもの出番が来たら係を抜けて客席で観られる」という声もありました。

負担度に差はあれど、あの華麗なる発表会は、陰で懸命に支える母たちの力があってこそ。それは、どこの教室にも当てはまるようです。

発表会の役をめぐり、思いがけない悲劇が…

バレエ発表会で気になるのは、何の曲をやるか、わが子がどんな役を踊るか。いい「お役」をもらえたら、親子ともにうれしいし、準備にもいっそう気合が入ります。ところが、この役をめぐる悲劇が起きるのも、バレエ教室あるあるです。

「本番直前の全体リハの日、うちの娘は別の習い事の発表会と重なりあえなく欠席。そしたら娘は、発表会のフィナーレに出る少人数グループから外されてしまった。せっかく練習してきたのに、本番は舞台袖で一人だけ待機させられ、本当にかわいそうで……。私は腹が立ってしまって、母の会の反省会で一人ずつ感想を言う時、『今回の発表会は、うちの子のいいところが一つも出てなくて残念でした』と言ってしまった。みんなシーンとしてどん引き……」

「娘が小6の時、役をめぐって教室と揉めました。先生の方針で、“じゃんけん”で決めることに。娘がじゃんけんに勝ち、喜んだのもつかの間、先生から『負けた○○ちゃんがかわいそうだから、主役は譲ってあげて』と言われ……。娘は教室から帰ってきて悔し泣き。『発表会出たくない。バレエ辞めたい』と。私はその場にいなかったので事情がよくわからず、先生に確認しようとしたら『お子さんはもう6年生ですから、何か疑問があれば、お子さんが直接私に聞きにいらしてください』とピシャリ。長年お世話になった先生だったのでショックでした」

そんなやりとりの後、そのママが、先生のFacebook を何げなく開いてみると、衝撃の一文が……。

「先生の投稿に『うちの教室に、子どもの役のことで口出ししてくるモンスターペアレントがいる』と書いてあったのです。本当に悲しかった…。私は、先生の役の“決め方”に納得いかなかったのです。当時私は、母の会の会長だったので、その年の発表会はグッと我慢して最後までサポートしました。でもその発表会を最後に、別の教室に移りました

あぁ、そんな壮絶なドラマが……。何だか胃が痛くなってきました。バレエは、舞台上よりも、舞台裏のドラマの方が激しいのかもしれません。

主人公に選ばれたら、みんなから無視

あるベテランバレエ母も、子どもの役をめぐる、辛い思い出を語ってくれました。

「あれは娘が小3の頃。娘が『くるみ割り人形』のクララ役に抜擢されたんです。全3幕を一人で踊るのは大変なので、年が違う女子3人が幕ごとに交代で踊ることに。うちの娘は3人のうち最年少でした。ところが、クララ役に決まった直後から、お友だちやお母さんたちの当たりがきつくなって……。娘は教室でみんなに無視され、私までお母さんたちから挨拶してもらえなくなりました

辛い思いをしながら親子で練習に通い、いよいよ本番当日、舞台袖にクララの姿をした娘がスタンバイ。ちょうど舞台裏でスタッフをしていた母親が娘の背中を触ると、ものすごく熱くガタガタと震えている。この時初めて母は娘の発熱に気づきます。娘は、朝から頭が割れるように痛かったのに、「ママに言ったらみんなに知れ渡り、クララを降ろされてしまう……」と、ずっと我慢していたのです。

「きっと娘は、それまでのストレスや疲れが一気に出たのだと思います。でも、出番直前に『熱があるわよ』なんて言ったら、よけいプレッシャーになって逆効果。私も動揺してパニック状態でした。

……と、そこへ、1幕目でクララを踊り終わった6年生のお姉さんが、舞台袖の娘に近寄ってきました。ガタガタ震えている娘を見て、緊張のせいだと思ったのでしょう。『大丈夫。○○ちゃんも次ちゃんと踊れるよ!』って、ぎゅっと抱きしめてくれたのです。娘もそれで落ち着いたのか、笑顔で舞台に出ていき、2幕目のクララを踊り切ることができました。あの時のことを思い出すと、今でも涙が出てきます……」

発表会で喜びをかみしめるバレエ母たち

あぁ、なんて辛い…。辛すぎる……。バレエを踊る子どもたちも母たちも。これはもはや趣味の領域をはるかに超えた精神修業、いいえ、ガマン大会の世界です。

バレエ母たちは、なにゆえこんな苦しい思いをしてまで、子どもにバレエを続けさせ、発表会に出させるのでしょう。そこにはどんな喜びがあるのか。最後に聞いてみました。

「私の娘もここまで踊れる…」と感動

「子どもが発表会を通して学ぶことは、たくさんあります。自分が役をいただけたら、その一方で、いただけなかったお友だちがいるわけで……。だからこそ、役を踊る責任やお友だちへの気配りなど、大事なことを学ぶ機会だと思います」

「バレエの世界を一度知ってしまうと、抜けられないんです。バレエは、踊り、音楽、舞台演出…最高に美しいものが集まる総合芸術。子どもがバレエの世界にハマり、美しく踊ってる姿を見てると、こちらも幸せになります。自分には絶対できないことが目の前で繰り広げられていて、私の娘もここまでできるんだ…と感動もひとしお」

「娘が舞台で踊っている姿を観ると、あぁ報われたな…って思います。バレエはやっぱり美しい。子どもなのに大きなホールの舞台に立って、人前で堂々と踊ってすごいと思う。普段は文句ばかり言ってる私も、本番ではいつも号泣。娘にはバレリーナにならなくてもいいから、できるだけ細く長く続けてほしい」

「バレエはお金はかかるけど、積み上げたら積み上げた分だけ花開く世界。姿勢がよくなるし、柔軟性も保てる。美意識が育つ。すごく大変だけど、リターンも大きい。バレエをやっている子は、立ち居振る舞いが本当にきれい」

「私も小さい頃、バレエに憧れていたけれど、実家が経済的に苦しくて思うようにやらせてもらえなかった。自分がやりたかったことを娘がやっていて、やるたびにスキルが高まっていくという喜びがあります


★わが子の発表会を経て、さらに深まるバレエへの愛。さらに沼にハマる母たち。
次回(最終回)では、「受験で辞める? 海外目指す?バレエのわかれ道」をお届けします。

バレエ発表会を迎えるに当たり、注意すべきポイント

・発表会の開催頻度や総額費用を確認しておく。
・衣装の手入れ(ムシ付け、クリーニングなど)が必要かどうか確認する。
・リハや本番当日の母親の裏方作業は「あって当たり前」と覚悟する。
・本番当日、「母親は子どもの出番が見られるかどうか」を確認する。
・最終リハやゲネプロ(通し稽古)に、他の用事が重ならないようにする。
・写真やDVDは何点、いくらまで買うのか、だいたいの予算を決めておく。
・本番当日を万全な態勢で迎えられるよう、親子ともに体調管理をする。


関連記事:一度ハマったら抜けられない…? バレエ母の世界へようこそ!~第1回~

関連記事:バレエを習いはじめるならいつから?レッスン内容やメリット、初期費用を紹介

山口真矢子
山口真矢子

朝日新聞社に入社後、子ども向け学習誌・教材、就活サイトなどの編集を担当。CSR事業で小中学校・高校・特別支援学校・大学などで授業を実施。小6で始めた鼓笛隊がきっかけで中高・大学時代はブラバンで打楽器に熱中。今でも音楽を聞くとリズムがいちばん気になります。12歳差姉妹の母親です。

関連記事 Related articles

新着 New!

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す