2021.07.21
学びをはぐくむ 曽田照子

うちの子グレーゾーン?気になる子どもの発達特性を伸ばす方法 教育家・小川大介さん

とても敏感だったり、マイペースすぎたり、こだわりが強かったり……強すぎる子どもの個性や特徴に手を焼いている親は少なくありません。うちの子、発達障がいかも。グレーゾーンかな?子どもの発達が気になるとき、私たちはどうしたらいいのでしょうか。教育家の小川大介先生にお話をうかがいました。

特性のある子が増えている?

世界的に増えている発達障がい

現在、ADHD、自閉症スペクトラムといった発達障がいに当たるのは約3%、明確に発達特性はなくとも、そういう傾向がある子は約10%、つまり10人に1人くらいがグレーゾーンだといわれています。発達障がいの子どもは世界的に増えています。デジタル化の影響や自然体験が減っているからだなど、色々いわれていますが、原因は不明です。

発達障がいというものの存在が知られるようになり、昔だったら「個性的な子」「ちょっと変わった子」とされていた子が含まれるようになった、ということもあるでしょう。

発達障がい、グレーゾーンという言葉や認識が広がること自体はいいことだと思います。子どもたちそれぞれを理解することにつながりますからね。しかし、なかには、その子の単なる特徴、学習上のアプローチスタイルでしかないのに、親の思うとおりの動きをしないことから「うちの子はきっとグレーゾーンだわ」と拡大解釈している親御さんもいます。

「この子はこういう特徴があるから、大人はこう関わってあげるとよさそうね」と工夫することにつながればいいのですが……。「問題のある子だから」とレッテルを貼って終わり、とならないようしていただきたいと思います。

学校教育が合わない子

学校生活でひどく苦労しているから発達障がいのように見られてしまうけれど、実際はそうではなく、そもそも学校のしくみが合わないという子もいます。

学校は7割くらいの「標準ゾーン」の子に向けた授業を展開する必要があります。すると3割くらいの子には、学校は居心地の悪い場所になる場合があります。

数十年前は「ついていけない子は、ついていけないなりの人生でいいじゃないか」と、勉強面をあきらめ、別の道に進むことも多々ありました。でも、世の中が変化して、だれもが当たり前のように大学に進学する時代です。

少子化で親の目がしっかり行き届き、情報も豊富ですから、旧態依然とした学校の制度と子どもの個性とのミスマッチが、より一層目立つようになっているのです。

気になるなら検査を

生活や学習に支障が出ているのであれば一度きちんと検査を受けることをおすすめします。「障がい」を検査するのではなく「特性」を調べる、検査名も「発達特性検査」です。

子どもによって特性の強弱、個性があるので、その子の伸ばしかた、頑張らせ方は1人ひとり違います。どういう関わりをしていくのか、選んで、工夫や調整をしていくために、特性を詳しく知るのは非常に建設的だと思います。

障がいという言葉を気にする親御さんもいますが、検査結果などから発達障がいという診断が出れば、障害者手帳をもらえ、必要な支援が受けられるメリットもあります。

すべてが標準だったら、その人に光は当たりません。ノーベル賞を取る天才だって、デコボコしているから光が当たるわけです。私の出身校である京都大学のキャンパス内にも、今思えば発達障がいらしい人がゴロゴロいました。

特性を殺す側にいくのか、発揮する側にいくのかだけの違いかもしれません。

安心で安全な空間で受け入れる

「治療」「矯正」はしないでください

子どもの特性が気になる親御さんの多くは、子どもを「治そう」と考えがちです。私も子を持つ親ですから「うちの子がなんとかうまくやれるようにしたい」という親心は分かります。

でも、子どもの立場に立ったとき、どうでしょうか。

すでにその子はその子の個性としてそこにあり、本人ならではの傾向や力の使い方の癖を持っています。それを直そうとするのは、その子自身の特性を認めず、個性を否定することです。矯正しようとするほど、大きなストレスがかかり、防衛反応でさらに特性が強く出たり、無気力になったり……。結局は逆効果になってしまいます。

もともと「発達障がい」はある部分の反応が強く出るとか、ある部分の反応をあまり使わない、という特徴を表す言葉。つまり「欠損」ではなく「傾向が顕著な人たち」という意味です。

苦手なことに無理に取り組ませるのではなく、本人の特性を認めながら「できること」を増やす方向、得意な部分を増やしつつあまり意識が向かなかったことにも意識を使えるように待ってあげる方が、結果うまくいきます。

勉強についても、全てに思い通りの結果を求める必要はありません。学ぶ素材に対する向き合い方に、その子なりのスタイルを見つけることの方がはるかに重要です。そして、スタイルが見つかってきたなら、学ぶ内容自体も取捨選択して、その子の光るところを伸ばしてあげればいいのです。

居心地のいい空間を作って関わる

不安感や落ち着きのなさがあると、偏りがより強く表れやすくなります。関わる大人が安心で安全な空間を提供することが重要です。

大人が笑顔でゆったり構え、本人が心理的に落ち着いて居心地がいいと感じられる場で、分かりやすく整理された課題を与えるとすごく頑張れます。

「うちの子の特性に合わせた工夫って何があるかな」と特性に応じて伸ばしていってあげる、という視点を持つことが大切です。

特性は「こういう風に整えてあげるとこの子はもっと力を発揮しやすいんじゃないか」という、ひとりひとりへの向き合い方を工夫するための、ヒントでもあるのです。

本人の身体の成長に従って特性の現れ方も変わってきます。知識を適切に持って、その子に応じた伸ばし方を工夫していきましょう。

たとえば、自閉症の傾向がある子は、ある部分についてはすごく集中しますが、逆に見落としもとても多い。その見落としに目を向けると「劣った子」に見えてしまいますが、ゆったり時間を与えて、定まった内容のものを、納得いくように取り組ませてあげることで、集中力をいい方向に発揮できます。

逆に多動、ADHD傾向の子は、落ち着きがないですが、言い換えれば、アンテナが敏感です。好奇心が豊かで行動力がある。ただ、自分自身の意志で1つにとどめられないほど、さまざまなことに関心が向いてしまう。

だから、何かに取り組むときは、気が散りにくいように大人が環境を整えてあげる。落ち着きやすい時間帯を選んであげるとか、先に身体を動かす遊びをさせてから集中させるとか、工夫によって集中しやすい状況を生み出せます。

「力の使い方の癖」ととらえたとき、特性は強みに変わります。しかし1人の視点では、それを見つけるのは難しいかも知れません。友だちや夫婦、先生たちと会話をして「でも◎◎君には、こういう強みがあるからいいんじゃないの」と違う角度からその子の持ち味を見つけてもらうということも大切です。

特性のある子を伸ばすには

遊びを観察する

特性に応じた手伝い方を見つけてあげるためには、子どもが遊んでいるときのようすをよく観察してください。その子が何を心地よく感じるのか、どういったときに集中できるのか、なぜその時に集中しやすいのか、そういう視点で見ればいくらでもヒントが見つかるはずです。

例えば、子どもが電車を畳のふちに一列に並べて遊ぶのを見て「この子は自閉傾向があるのでは」と心配する親御さんがいます。

見方を変えると、ものごとを序列立てて覚えたり、名称を確認したりするのが好きな子です。知識欲も旺盛だし、社会や理科が得意になりやすい。

ただ、すべての情報を全部入れたくなるので、話し始めるとそのジャンルについて1人で延々しゃべり続け、覚えことの全部を口に出さないと落ち着かない、ということも多いでしょう。そこだけを見て、共感力がない、合わせられないと問題視する人がいますが、それはあまりに視野が狭い。それだけきちんと覚える力があるという才能に、目を向けないのはもったいないことです。

グループ分けをして小さな塊に区切ってあげると、話す時も一つひとつのグループごとに話せばいいので、落ち着きが出ます。また、カテゴリごとにカラフルな付せんをつけて、口に出していわなくても目で見るだけで満足をするようにさせてあげるといった工夫もできます。

「そういう力があるんだね」

もうひとつのコツは、一見困った行動に対しても「この子はそういう力がある」と考えることです。

「すぐ目移りをして集中できない」を、力としてとらえたら「他のことを見つける力」があるということです。

授業中静かにできないのは、気付いたことを言葉に出せる力があるということです。気付いたときに発言するのではなく、メモを書くという技法を教えて練習させたら、着眼、着想が集まってすごいアイディアが生まれる可能性があります。

そういう力があるんだね、ととらえ方を変えると、どう伸ばしてあげたらいいかという次の発想にいけます。

親の気持ちが変わることで、子どもが落ち着いてきます。

学ぶ環境選びも大事

「そういう力がある」ととらえたあと、大切なことは、周囲のとらえ方です。

いくら親御さんがとらえ方と関わり方を工夫しても、学校や塾や習い事などの先生たちの理解が追いついてこないと、苦しい。ですから学ぶ環境を選ぶ際には、「そういう力がある」というとらえ方を受け入れてくれる環境かどうか、点検することも大切です。

さまざまに気持ちが移りやすい子には、決まりや校則にうるさいタイプの学校は間違いなくしんどいでしょうが、序列を大事に決まったことをきちっとしたい子は、校則が厳しい学校の方が居心地いい可能性もあります。

学校見学や相談会を通して、相性を考え、その子に合った環境選びをしていくようにしましょう。

・ポイント

子どもの個性、特性をネガティブにとらえるのではなく、その子の持ち味を活かせるように関わることが大切。


プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)

教育家、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。京大法卒業後、受験指導、幼児期からの才能発掘、親子関係カウンセリングなど幅広く活動。6000回以上の学習相談、子育て相談で培った洞察力と的確な助言が評判。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』など著書は20冊以上。新刊「自分で学べる子の親がやっている『見守る』子育て」が好評発売中。見守る子育て研究所 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

「夢中を「見守る」子育て 教育家・小川大介」の記事一覧

曽田照子
曽田照子

ライター。広告制作会社を経て20代前半でフリーに。「親から子への言葉かけ」をメインテーマに、書籍やWEBで書いています。小学5年生で手芸クラブに入部、フェルトをちくちく縫ってマスコット人形を作っては周囲にプレゼントをしていました。今は和裁を習っています。娘3人+猫の母親です。

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