2021.07.20
学びをはぐくむ 黒澤真紀

「地球に似た惑星を調べたい」小3で天文宇宙検定2級に合格・岡山市の沖本正太郎さん

沖本正太郎さん。2級合格証には松本零士先生のオリジナルイラスト、銀河鉄道999のメーテルがデザインされています。

自分の好きな世界のことを深く知る。どれだけ詳しくなったかを試すために、検定を受ける子どもたちがいます。知識や能力を試す「検定」の世界は、いま様々な分野に広がり、小さな子どもも挑戦しています。好きな分野の検定に合格した「検定キッズ」を紹介します。第1回は、小学3年のときに天文宇宙検定2級に合格した岡山市の小4、沖本正太郎さん(9)に話を聞きました。正太郎さんが、大人の想像を超える力を発揮することができたのはなぜでしょうか。

最年少受験者。2級、3級にダブル合格。

 勉強に使ったテキスト。5歳からの愛読書『宇宙 講談社の動く図鑑MOVE』の内容はすべて頭に入っています。

岡山市に住む沖本正太郎さんは2020年11月、小学3年生のときに第10回天文宇宙検定で2級と3級をダブル受験し、両方に合格しました。第10回の2級受検者の中で8歳は最年少。合格率は36.2%という難関の中、10歳未満の2級合格者は4年ぶりでした。

受検のきっかけは、2020年4月のコロナでの緊急事態宣言に伴う休校中、時間が出来たため、「学校での宿題以外にも、天文宇宙検定っていうのがあるよ」とお母さんに薦められたこと。5歳から「宇宙 講談社の動く図鑑MOVE」(講談社)を愛読し、ほぼ暗記していた正太郎さんにとっては、絶好の力試しになりました。

「合格の自信は60%くらいだった」。2級の出題範囲は「宇宙」で「MOVE」の内容と全て重なっていたため自信満々。3級は「星座」がメインで、少し不安でした。難易度は2級の方が高いのですが、正太郎さんにとっては3級の方が難しく感じました。結果はどちらも合格。「本当に嬉しかった!」。

母も同じ級を受検。「勉強も一緒だと楽しい」

お母さんと勉強するのが大好き。試験勉強も楽しい時間に。

「僕は競争が大好き」。正太郎さんのモチベーションを高めようと、競争相手になったのは母親の敦子(あつこ)さん。「機動戦士ガンダム」のアニメがきっかけで宇宙が好きだったこともあり、親子で受検に挑戦しました。

検定の勉強は週末に集中。4歳の弟を父親の正宣(まさのり)さんに預け、公式問題集を開いたら「よーい、ドン!」。どちらが早く解き終わるか、正答率はどちらが高いか競争です。「今日は勝った!」「負けた!」「次は負けない!」のやりとりは試験まで続きました。

ケプラーの法則やシュテファン=ボルツマンの法則など、高校の地学で習うような難しい計算式では、「3乗」や「4乗」をしなければなりません。計算間違いをしないように気をつけて、繰り返し問題を解きました。

正太郎君は通っている「公文」で、連立方程式を解くほど算数が得意です。最初は苦戦しましたが、一度計算のコツをつかむとすいすい計算できるように。初めて2級の過去問を解いたときは34点だったのが、5か月後、試験前には合格ラインに届くほどになりました。

敦子さんは、2級は2点足りずに不合格に。「一緒に勉強をしたことで正太郎の話がよりわかるようになりました。漫画やSF作品を見る時に一緒に考証するのが楽しい。次は正太郎よりも高得点での2級合格を目指します!」と話します。

「僕一人だったらやる気が出なかった。宇宙のことを考えたり図鑑を読んだりするのは好きだけど、検定の勉強となると別だから。一人で問題を解くのはしんどいけど、お母さんと一緒にやるほうがずっと楽しい」と正太郎さん。合格できたのはお母さんとの二人三脚のおかげでしょう。

お父さんと天体観測。「星を見ていると、自分の悩みはちっぽけなこと」

流星群がくる情報を入手するとみんなで観測会です。

小学1年の誕生日プレゼントでもらった天体望遠鏡は正太郎さんの〝相棒″です。「初めて月のでこぼこを見たときの感動は今も心に残ってるよ」。最初は正宣さんが使い方を教えましたが、今は自分で、月、土星、木星にピントを合わせることができます。お父さんと「月や星を見ていると、自分の悩みもちっぽけなことに思えるね」と語り合うそうです。

小さいころから探求心のかたまり

2、3歳でひらがなやアルファベットを覚えた正太郎さんは、幼稚園のときには「MOVE」を1人でスラスラ読んでいました。最後まで読んだらまた最初から、というように、繰り返し読み込みました。「知識をボンと放り込んだら吸収する」タイプの正太郎さん。彼が興味を持ったものに、両親も関心を持ち、子どもの好奇心が絶えないようにしてきました。

1年生のときに正太郎さんが惑星を構成している物質が知りたくなったときには敦子さんも一緒に元素検定に挑戦しました。お母さんは合格し、正太郎さんは合格にはあと3問足りませんでしたが、今も、1番水素から14番ケイ素まで覚えています。

「ニホニウムの原子量が本によって違うのはなぜ?」と正太郎さんに聞かれた敦子さんは、理化学研究所にSNSで質問。疑問はそのままにせずに、子どもと一緒に解決しようと積極的に行動します。丁寧な返事が研究所から届き、それを題材にして、小1の夏には自由研究にまとめたこともありました。

ゲームや漫画も大好きで、「モンスターハンター」や「ワンパンマン」がお気に入り。でも、「宇宙のことがダントツに楽しい」と笑います。

好きな星のことを考えるとワクワク

正太郎さんが今夢中になっているのは地球に似ている星を調べること。中でも一番好きなのは、類似度95%で地球と一番似ている惑星の「ティーガーデン星b」。「可能性は低いけど、生命が産まれる条件はそろっているんだ」。

恒星で一番好きなのは、宇宙で一番エネルギーが高い星の「R136a1」。太陽の870万倍のエネルギーがあるそうです。好きな星のことを聞かれると話が止まりません。

「ティーガーデン星bには生命が住んでいるかも。どんな環境なんだろう」と考える時間が楽しくて仕方ありません。

最年少で1級に合格するまで、毎年チャレンジしたい

次の目標は1級。大学の理工学部卒業レベルで、合格率1%の超難関です。最年少合格を20歳でクリアするのが正太郎さんの目標です。2021年11月の試験も受検する予定。「受からないかもしれないけど毎年チャレンジする」と、正太郎さんは力強く話してくれました。将来は宇宙の研究者になりたいそう。「ノーベル賞を目指してるんだ!」。

「何でもチャレンジすることが大事」。正太郎さんの挑戦はまだまだ続きます。

「好き」をとことん突き詰めるポイント

  1. 家族が一緒になってがんばってくれる。
  2. 宇宙のことを考えていると楽しい、という気持ちをじっくり味わう。
  3. 結果に満足せず、常に挑戦する気持ちを持ち続ける。

父親の正宣さん・母親の敦子さんの話 以前は図鑑の内容をなぞって話していたのですが、天文宇宙検定を受けたことで理解がさらに深まり、説明が上手になりました。視野が広がったのでしょう。難しいことも最初はサポートしますが、完成する最後の良い部分は正太郎に譲って、「出来た」という気持ちを持たせます。宇宙は家族共通の趣味で、時間を作って宇宙の話をするように工夫しています。息子の興味が仕事や進路につながるよう、これからもサポートしていきたいですね。

★天文宇宙検定について

天文宇宙検定は、一般社団法人「天文宇宙教育振興協会」が2011年から年2回実施しています(第10回までは年1回)。同協会の片岡一成さんが解説します。

Q.出題範囲は?

小学生からお年寄りまで楽しんでいただけるように1級から4級まであります。1級は最難関で合格者はこれまでに数十名しかいません。2級から4級は、小・中・高の学習指導要領の範囲に対応しています。


合格基準出題範囲
1級(天文宇宙博士)70点以上理工系大学で学ぶレベルの天文学・宇宙物理学など宇宙科学全般
2級(銀河博士)70点以上高校生が学ぶ程度の天文学知識を基本とし、天文学の歴史や時事問題等
3級(星空博士)60点以上中学生で学ぶ程度の天文学知識を基本とし、星座や暦などの教養
4級(星博士ジュニア)60点以上小学生が学ぶ程度の天文学知識、天体観測や宇宙についての基礎的知識

*全てマークシート形式

Q.どのような問題が出題されますか?

天文系、工業系、観測系とバランスよく出題します。興味をもって学べるように4級のテキストはギリシャ神話があります。なるべく暗記ではなく、考える問題にしたいと思っています。

Q.勉強方法を教えてください。

2級から4級は公式テキストと公式問題集の中からしか出題しないのでそれを繰り返し解いて下さい。難しい言葉は問題集の最後の用語集で確認し、日本天文学会のホームページの「天文学辞典」で調べることもできます。国立天文台のホームページも充実しているので、眺めるだけでも楽しいですよ。1級は公式問題集のみです。

Q.合格証のイラストはなぜ松本零士先生なのですか?

松本零時先生は、当社と深いつながりがあった京都大学教授の故・荒木俊馬先生が執筆された本「大宇宙の旅」 からインスピレーションを受けて、漫画「銀河鉄道999」を描かれたそうです。各級の合格証に、それぞれ違う「銀河鉄道999」のイラストを書いて下さいました。合格証をコンプリートしたい大人が小学生に混ざって4級を受けることもあります。

Q.受験を考える親子にメッセージをお願いします。

知識は持っていても荷物になりません。落ちるのが怖いかも知れませんが、やらないよりは挑戦してほしい。いまはJAXAなど、様々な機関が力を入れて情報発信をしています。まずは動画を見るところから始めたら良いでしょう。天文宇宙検定は、親子で受験する人が多いです。親子で星空をみながら話をするなど、豊かな時間のきっかけにしてください。


天文宇宙検定ホームページ

公益社団法人 日本天文学会ホームページ「天文学辞典」

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構国立天文台ホームページ

黒澤真紀
黒澤真紀

1977年生まれ。愛媛県出身。旧姓、井上。都内の学習塾に勤務した後、結婚、出産を経てフリーライターに。教育を専門に学びたいと、中学生と小学生の息子を育てながら都内女子大の修士課程を修了。大人になっても「学びは楽しい」と実感する。海と山に囲まれて育ち、虫が全然怖くない。子どもの頃は自然の中で遊ぶのに夢中で、得意だったのは押し花と走ること。

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