2021.08.03
学びインタビュー 桜木奈央子

夏休み自由研究は「もっと自由に、もっと遊んで」わくわく系理科の辻義夫先生に聞く

夏休みの宿題の自由研究で、子どもはどんな力を身につけることができるのでしょうか。やっぱりちゃんとやったほうがいい? 親としては正直ちょっと大変だけど、どうしたら楽しく簡単に取り組めるでしょうか。 プラネタリウムの解説や中学受験の専門家として多くの子どもを指導し「わくわく系理科」を提唱する辻義夫先生に、夏休みの自由研究についてお話を伺いました。

自由研究は、疑問から結論まで「自由」に考えられる貴重な体験

――夏休みの自由研究って、正直ちょっと手がかかる宿題というイメージがあるのですが、そもそも自由研究ってどういうものなのでしょうか?

夏休みの自由研究は「ものを考える一式の行為」を経験する、唯一のチャンスです。
子どもが、自分なりの疑問を感じて「調べたい」と思って、その確認として実験や観察をして、結論を出すという一式の流れが自由研究です。

自由研究は、学校の理科の実験と違って、自分のペースで、好きなテーマを決めることができます。テーマだけでなく方法も「自由」ですからね。

――なるほど。じゃあやっぱり自由研究はちゃんとやったほうがいいですか?

やったほうがいいです!(きっぱり)

「疑問・仮説→実験・検証→結論」を、自分の好きな形でアウトプットできる、貴重な体験ですよ。

――去年は夏休み後半に子どもがあわてて自由研究に取り組もうとしていたので、つい「自由研究キット」に頼ってしまいました……。やっぱりよくないですか? 

そういう親御さんも少なくないかもしれませんね(笑)
じゃあ、キットを買うにしても「なぜそれを選んだのか」を掘り下げたらいいと思います。
まずは親が、自由研究はものを考える一式の行為という枠組みを理解して、子どもと一緒に研究キットを選ぶときに「なぜそれにしたの?」と動機を聞く。その理由は子どもなりの「疑問・仮説」ですからね。動機も自由研究の大事なパーツとなります。
最終的に、人に見せる=アウトプットする前提でテーマや方法を考え、キットを選ぶといいですよ。

子どもや家庭にとって「ラクな」自由研究を

――正直、自由研究はちょっと大変。でも親だから、ちゃんとさせないといけないという葛藤が……。

子どもにもラクしたい子とラクしたくない子の2タイプの子がいるように、大人も同じだと思います。親子のタイプに合った自由研究を選ぶといいですよ。

「ラクしたい」と考えるなら短期集中型でバン!と結果が出るテーマを選ぶ。
「ラクしたくない」というのはコツコツやりたいという意味なのですが、そういうタイプの子は毎日決まった観察を積み重ねていくような自由研究を。毎日やることがわかっていることがラクだと感じる子もいますから。

まずは子どものタイプに合う自由研究のテーマを考えてみましょう。

――具体的に、どこからどうやってテーマを選んだらいいですか?

子どもに「どんなことができそう?」「どんなことをやってみたい?」と声かけしてあげたらいいと思います。
それを出発点にして、親子で学校の理科の教科書をパラパラとめくってみたり、図鑑やインターネットで自由研究のテーマを探してみてください。

ちょっと散歩に出るだけで、都会でも植物や生き物に出会えます。体を動かすのが好きなタイプの子なら、ぜひ虫メガネを持って外に出てみてください!歩きながら植物に触れたり、生き物を虫メガネでのぞいたりしながらテーマを考えると楽しいですよ。

自由研究は、完璧じゃなくてもいい

――辻先生が出会った子で、特に印象に残っている自由研究はありますか?

数年前、植物採集の自由研究をした子がいたのですが、家の近所の道端でとにかく目についた草をかたっぱしから引っこ抜いて集めるというかなり自由な方法で……(笑)
その子は6年生で、中学受験の夏期講習でかなり忙しかったんです。かつ、親に「お金がかからない自由研究を」と言われていたみたいで、身近な題材を選ぶしかなかったんでしょうね。
でも、「そこらへんの草」でも数を集めるとけっこうすごいんですよ。何十種類か集めていましたね。模造紙にぜんぶ貼るとかなりの迫力でした。

――子どもならではの自由でシンプルな発想ですね。

彼はそれらの植物の名前を図鑑で調べて模造紙に書き込んでいました。最初は調べるのに時間がかかっていたのですが、試行錯誤を重ねて、最後のほうは調べるのがかなり上手になりました。
新学期に学校に持っていくころには、模造紙に貼った大量の草はぜんぶ枯れて茶色くなっていて「うわ、なんかゴミみたいなの持ってきた」みたいな反応をされたようですが(笑)。
でも、本人には達成感もあったようです。自分で考えてやった、というところがポイントです。彼はそれ以降、調べものが得意になったみたいです。

――辻先生は子どものころ、どんな自由研究をしましたか? 

5年生のころに光合成の実験をしました。あたためたエタノールで葉っぱの色素を抜くつもりだったのですが、うまくいきませんでした。
でも、うまくいかなくても「なんでうまくいかないんだろう」「どうやったらうまくいくだろう」と考えたことはずっと覚えていますね。

――今だったら、辻先生はどんな自由研究を選びますか? 

今はもう性格的におっさんになったので定点観察系ですかね(笑)。
近所を散歩して、身近な植物や生物を観察するだけでも、毎日たくさん発見があります。夏だったらやっぱりセミの孵化とか観察したいですね。
地域の児童館などで植物や生き物の観察イベントをやっているところもあるのでチェックしてみるといいかも。大人も楽しいし、勉強になりますよ。

もっと自由研究で遊んでいい。ゲームや漫画でも?

――自由研究に取り組む子どもへの接し方をおしえてください。

とにかく邪魔をしないこと。教育熱心なお母さんは「こうしたほうがいいんじゃない?」「こんなやり方があるよ」と、あれこれ口出しして子どもの邪魔をしがちな傾向があります(笑)。
それよりも大切なのは、なにかに熱中する子どもの姿をよく観察すること。
子どもが熱中するには、なにか理由があるはずです。
「なにがそんなに面白いのか、お母さんにも教えて」と聞いてみてください。きっと子どもは目を輝かせて語ってくれます。
子どもがどんなことに熱中しているかを知ることは、親にも大きな財産になります。

――つい、口出ししてしまうので反省です……。でも、子どもの熱中が親の期待と違うもの、たとえばゲームや漫画だったらどうしたらいいですか。

それを自由研究のテーマにしてみるのはどうでしょうか?
そのゲームのどこがそんなに面白いのか。どんな人がいつ作ったゲームなのか。これまでのゲーム史の中でどのような位置付けなのか。時代設定や物語の伏線の張り方は?
ゲームも、その裏側を調べるだけで深いものが見つかるかも。親にとっても「ゲームもマイナスばかりじゃないな」という発見につながるのではないでしょうか。
もっとシンプルに、ゲームの攻略法を図やグラフでまとめるとか、好きな漫画が面白い理由などを読書感想文として書くだけでもいいですね。

普段やっていることにちょっと疑問を持ち、改めて深掘りして検証してみる、という視点は大事です。

「収集」は熱中を見つけるヒント

――子どもが熱中するものを見つけるためのヒントはありますか?

石や貝殻などを集めて、それを色や形にわけて並べたりしているときは、そーっとしてあげてください。
「収集」って、根本的に多くの子が持っている性質というか、欲求だと思うんです。
子どもだけじゃなくて大人にとってもそうなのかもしれません。集めて、並べて、仕分けるのは人間の本能だと思います。

収集によって、分類や仕分けの技術を身につけるのですが、これは勉強にも役立ちます。なぜなら、その中で無意識に共通点と相違点を見出すからです。
たとえば、ヒトとネコの骨格を並べて、踵(かかと)がどこなのか、どうして骨格がちがうのか、なぜネコは踵を地面につけないのかなどを検証するのは生物の分野ですが、このように「共通点と相違点」は学習の重要なポイントです。

――なるほど。集めるって大事なのですね。

普段の生活の中で子どもがなにかを拾ったり集めたりしているのを、「またそんなもの集めて!」と止めたり否定しないで、むしろそういう時間をつくってあげることが大切です。
じっくり集めて、分類して、共通点や相違点を見出す。この経験が普段できていないなら、夏休みの自由研究は絶好のチャンスです。

――集めて並べるのは楽しそうですね!ほかにもなにかありますか?

リトマス紙を持ち歩いて、ジュースなどいろんな液体に浸して色の変化を観察することもできます。リトマス紙は薬局やドラッグストアでも売っていますよ。色が変化したリトマス紙をずらっと貼って、どの液体に浸したかを書いておけば、その液体が酸性かアルカリ性かが一目瞭然。これも立派な研究になりますよね。

自由研究は論理的に考える力と表現力が身につく

――自由研究を通して、子どもはどんなことを体験できますか?

「なにかについて考える」手順に子どもが気づきます。
そして、因果関係のとおりにしか物事が動かないということも理解できるのではないでしょうか。

どういうことかというと、自分が期待したことと結果がちがう、つまり「思考と感情が別」だということです。
こうなってほしい、といくら願っても、因果関係どおりの結果になりますから。

――自由研究は論理的なものの考え方を知るチャンスということですね。

はい。自由研究は、断片的にではなく、一連の流れとして思考する経験ができますからね。
そして、その思考を表現=アウトプットするまでが自由研究なので、どう表現するかを考えるきっかけにもなると思います。ここはサポートする親のスキルやセンスも問われるかもしれませんけど。

――自由研究、奥が深いですね。夏休みに限らず取り組んでみてもいいかも、と思いました!

そうですね。ふだんから「疑問ノート」をつくって、なんでもいいので「なぜ?」と湧いた疑問をノートに書き留めておくといいですよ。
ちょっと散歩に出るだけでも、たくさんの「なぜ?」があるはずです。そうやって日ごろから疑問のアンテナを立てておくことが、子どもの探究心や夢中になる気持ちにつながると思います。

夏休みはせっかくたくさん時間があるので、できたら、子どもをせかさずに、じっくり思考する経験をさせてあげてください。
自由に研究するのが自由研究。遊びの要素もたくさん入れて、楽しく取り組んでくださいね!

【プロフィール 辻義夫(つじ・よしお)さん】

家庭教師集団「名門指導会」副代表。理科が知らない間に好きになる「わくわく系理科」を提唱し、子どもが楽しみながら直感的に理解できる指導法が多くの親子に好感を得ている。著書『中学受験見るだけでわかる理科のツボ』など多数。プラネタリウムでの人気講座で講師も務めている。

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

夏休みの自由研究と読書感想文の記事一覧


桜木奈央子
桜木奈央子

写真家、ライター。2001年からアフリカ取材を続ける。著書『世界のともだち ケニア』『かぼちゃの下で』。雑誌や新聞にフォトエッセイや書評を執筆。「cinema stars アフリカ星空映画館」代表。最近の趣味は息子2人のサッカー撮影。小学生の頃は本の虫、星野道夫さんに憧れ17歳でひとり旅に。

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