2021.08.14
学びインタビュー 真貝友香

プログラミングで世界を変えた真鍋大度さんが語る「やりたいことを形にするために」

子どもの習い事の中でも最近、人気が高いプログラミング。2020年度から小学校で必修化されたこともあり、その勢いは増すばかり。今やエンジニアの世界だけではなく、エンターテインメントや芸術などにも密接に関わっており、今後も大きな可能性を秘める分野です。Perfumeのライブの演出技術開発や映像制作で知られる「ライゾマティクス」は、その先駆けとも言える存在。代表を務める真鍋大度さんに、プログラミングを学ぶ子どもたちに伝えたいことを聞きました。

初めて作ったのは先生を倒すシューティングゲーム

―プログラミングを始めたきっかけは何でしたか?

とにかくゲームが大好きだったので、自分でゲームを作りたいと思いました。小学校4、5年生の頃、親が持っていたパソコンを使って見よう見まねでゲームを作り始めました。

―どんなゲームを作ったのですか。

当時のプログラミング環境では簡単なことしかできませんでしたが、シューティングゲームやインベーダーゲームの発展版みたいなものは結構作りました。
小学生だから、舞台は学校で、主人公も友だちという設定で、先生を倒すみたいな内容でしたね。

―先生を倒すゲームはウケたでしょうね。友達にもプレイしてもらったのですか?

ウケようと思って作っていた気はします。友達には「全然面白くなかった」と後々言われましたけれど(笑)。ゲームを作ったことは物を作る楽しさの原体験になっています。プログラミングはあくまでも趣味の延長。今の自分に繋がるアドバンテージになっているのは数学を続けてきたことかもしれません。

早く解けるのが楽しい。ゲーム感覚で楽しんでいた数学

―数学が得意だなと気づいたのはいつ頃ですか。

小学校5年生くらいですかね。公文式に通っていたのですが、できる子はどんどん進んでよいので、小学生のうちに微分積分の問題も解いていましたよ。

―すごいレベル!!微分積分って実際に習うのは高校2年生くらいですよね。

ルールが分かるとパズルのようにどんどん解けてしまって。小学校時代は早く解くことにアスリート的な快感を覚えていましたね。中学に入ると偏差値が出るので、いいポイントを叩きだしていましたよ。

―ポイントを叩きだすって表現がいかにもゲームっぽいです。そこから数学を極めようとはならなかったのですか。

ならなかったですね。東京理科大の数学科に進学したのですが、大学に入ってからはかなり内容が難しくなっていきました。自主的に勉強しないとついていけないし、音楽やDJなど趣味の活動が広がっていったので、勉強はおろそかになってしまいました。

周囲から神と崇められたインターネット黎明期

―大学時代もプログラミングはしていたのですか?

大学に入学した1995年はちょうどインターネット黎明期だったので、授業でホームページの制作やサーバーサイドのプログラミングをやっていました。学校でプログラムを書ける環境があったのは大きかったです。

―インターネットの面白さに気付いた印象的な出来事はありますか。

レコード屋のバイヤーのアルバイトをしていたのですが、インターネットを駆使すると日本にいて海外の情報が取得できるようになりました。オンラインのコミュニティとの出会いも印象的でした。Hiphopのサンプリングのオリジナルネタの情報をシェアするコミュニティで、「自分と同じ趣味や同じ価値観を持っている人がこんなにもいるんだ!」と嬉しくなりました。

―それは衝撃ですよね。

衝撃でしたね。今は誰でも同じように情報にアクセスできる時代ですが、90年代後半は、インターネットを活用してレコードを買っている人は限られていました。その中で僕はめちゃくちゃ詳しくなっていたので、周りからは神のように崇められていたんです(笑)。
わざわざレコード屋さんに行って口コミで入手しないといけない時代に、オンラインで情報を取得できていたわけですからね。

―それをいち早く知っている俺ってカッコいいみたいな優越感も…

かなりありましたね(笑)。DJをやりながら、1ヵ月に1回イベントを開催していたのですが、僕のレコード自慢大会のようなかんじでした。ニューヨークに買い付けにいっても、現地のコレクターより僕の方がより情報を持っていることもありましたし。

父親には「DJを続けたいなら大学は辞めてニューヨークに行け」と言われる

―DJで生計を立てようとは思わなかったのですか?

これを仕事にするのは難しいかなと感じることが色々あったんです。数学やプログラミングにも未練があるし…ってどっちつかずでした。父親はミュージシャンなので、「プロの道は甘くないんだから、DJを続けたいなら大学は辞めてニューヨークに行け」と言われました。僕は音楽で飯を食っていけない場合はエンジニアの道があるな、とか塾講師のアルバイトもしていたので、教えることもできるな…とか。

―何でも上手に、早くこなせてしまうゆえの悩みでしょうか。

まだ大学生のときはリスクを取れなかったんです。自分にはもうこの可能性はないって見切るとか、消していくほうが難しいじゃないですか。サラリーマンを辞めて、これでやっていくぞと決めたときに、やっと踏ん切りがつきました。

ハマる子はどんどんやればいいけど、小学生から無理してやる必要はない

―「これ一本で行くんだ!」って思いこめる方が少数派かもしれませんね。最近はプログラミングが「先行きの見えない時代に必須のスキル」のように捉えられてもいますが、どのように思いますか?

やってみて、すごくハマる子はどんどんやればいいし、そうでなければ無理してやる必要はないと思います。
小学生のうちからやる意味はあるのかなあ?

というのも僕は最近機械学習とかAIの勉強のために、大学のときに学んでいた位相幾何学の教科書を買い直したんですが、20年前とあまり内容は変わっていないんですね。数学はとても普遍的ですから、これから先もずっと学ぶ価値があると思います。

だけど、プログラミングは僕が大学の時に学んでいた時よりモダンになっているしクラウドで色々やるようになっていて概念的にも変化がたくさんありました。ツールとしてのプログラミングを学んでもあまり意味ないような気もします。数学のように普遍的なものではないので教養として知っておく程度で良いのかもしれないですね。

―今は自分でコードを書かなくてもアプリの開発ができますよね。アルゴリズムの基本が理解できていればいいのかな?とも思います。

今は映像やゲームを作るのも、ボックスとボックスを線で繋いでいくビジュアルプログラミングという手法が増えています。もちろんプログラミングや3D数学の基礎を理解する必要はありますけど。

―表面的なことだけ教えてもダメですね。

小中学校に教えに行くこともありますし、先生向けの教材を作ったこともあるんですが、プログラミングは教えるのがすごく難しい分野だと思います。
本質的なことは小学校でやるにはかなり高度ですし、簡単にしようとすると本質はブラックボックス化して、「プログラミングをやった」気になってしまいます。

―プログラミングが読み書きそろばんレベルになるには時間がかかりそうですね。

プログラミングとひと言でいってもとても範囲が広いので、やりたいことや作りたいものを先に見つけて、そこに対してどう学んでいくかが必要です。ゴールが明確になっていないとモチベーションも上がらないですよね。

プログラミングは誰もやったことないことをやるためには必須

―全員がやる必要はあるのかな?と考えてしまいますね。しかし、エンジニアになるわけではなくても、ライゾマティクスの作品を見ていると、色んなことができる可能性を感じます。

誰もやったことのないことをやろうとしたら必須なのかもしれないですね。たとえばPerfumeのコンサートではカメラで衣装の形を解析して、映像を投影する演出をしました。そのほかにも、ドローンを振り付けに合わせてコントロールするとか、能楽とのコラボレーションで野村萬斎さんの動きを解析することは、自分たちでハードウェアもソフトウェアも作ったからできたことなんです。

実現したいことがある時に「既存のソフトではできないから諦めよう」とはならないですから、「だったら自分たちでツールを作ればいいじゃないか」ってことを僕たちはずっとやってきているんですよ。

―ないんだったら自分たちで作ればいい、はすごいことですね。

昔はプログラミングをやってクリエイティブなことをしようと思ったらゲーム会社に就職するしかなかったのが、スポーツ×テクノロジーとかエンタメ×テクノロジーとか今は色んなオプションがあります。

プログラミングを「お勉強」にしちゃうのはもったいない

―今までにない「ジャンル」を作ってこられたんですものね。

プログラミングを使って絵を作りたいのか、音楽を作りたいのか、スポーツや身体と組み合わせたいのか、メカやロボットを作りたいのか、はたまたメイクや顔の表情と組み合わせて…と、ぱっと言っただけでもこれくらいのジャンルには展開できて、使うツールだって異なります。最初の基礎は全員同じことを教えてもいいけど、せっかくなら成果物は、それぞれ生徒の興味に沿ったものがいいんじゃないかな?と思いますね。

―何を作りたいかを先に見つけた方が良さそうですね。

こんなに面白いことなのに「お勉強」にしてしまったらもったいない。

―やりたいことを見つけることが先決かもしれないですね。

プログラミングを使えば、例えばこんなことができるよって事例をいくつか見せてあげて、何がしたいのかを引き出すことが大事ですね。
実現したいことがあったときに、プログラミングが必要になるんだと思いますよ。
子どもが好きなものと結び付けられると良いですね。


【プロフィール 真鍋大度(まなべ・だいと)】

アーティスト、プログラマー、DJ。1976年生まれ。東京理科大理学部数学科卒業。大手電機メーカーでSEとして働いたあと、2006年、友人と「株式会社ライゾマティクス」を設立。Perfumeのライブの演出技術開発や映像制作の他、表現する研究機関として、高度な技術力と表現力を武器にアートからエンターテイメントの分野を行き来しながら、企画からソフトウェア、ハードウェアの開発、オペレーションまでプロジェクトのほとんどの工程を手がけています。プログラミング技術などを駆使して、見る人を驚かせるアート活動の場を世界的に広げています。

撮影:篠田英美

動画撮影:平岡妙子

真貝友香
真貝友香

ライター。携帯向け音楽配信事業にて社内SE、マーケティングに従事した後、妊娠・出産を機にフリーライターに転向。子育て、教育、テクノロジー、映画など好奇心の赴くままに取材・執筆中。ほぼ毎日習い事に通っていた幼少期に唯一好きだったのは公文式(英語)でした。オンライン英会話のレッスン中、喋りたいことが多すぎて口が追いつかないことが目下の悩みです。

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