2021.08.05
学びインタビュー 菅野浩二

「日本文化って面白いな、と思ってほしい」長唄演奏家・七代目吉住小三郎さん

PR by 芸団協

長唄吉住流 七代目家元 吉住小三郎

7月23日から8月7日まで、親子で伝統芸能に親しんでもらうイベント「江戸東京の芸能~DISCOVER TOKYO」(主催:日本芸能実演家団体協議会=芸団協)が東京・両国の江戸東京博物館で開かれ、7月24日には「長唄」の解説付き初心者向け舞台公演が行われました。長唄は300年以上の歴史を持つ三味線音楽で、現在も伝統芸能として受け継がれています。「古典芸能だからといって、とっつきにくいと感じてほしくはないですね」と話すのは、一般社団法人長唄協会のメンバーとして今回の公演に参加した長唄演奏家の吉住小三郎さん。江戸時代から続く吉住流の七代目として長唄の普及に力を注いでいます。子ども向けのワークショップや教室も精力的に行う吉住さんに今回、長唄の魅力や長唄三味線を習うことのメリットなどをうかがいました。

自分の得意なことがうまくなっていく達成感

長唄吉住会 創設100周年記念演奏会(令和元年、国立劇場にて)

――吉住さんは2008年に吉住流七代目家元を襲名されました。
私は江戸時代から続く長唄の家に生まれたのですが、子どものころはあまり乗り気じゃありませんでした。「なんでお稽古をしなきゃいけないんだ」という義務感のようなものがあったんですね。ただ、「うちは他の家とはちょっと違うよね」と感じていて、日本全国を演奏で回っていたり、三味線を教えたりと、なんだか面白そうだなという思いもあったんです。

――初舞台はいつでしょう。
8歳ぐらいだったと思います。小学生の小さい子どもが舞台で唄うと、それだけで周りの大人がほめてくれるんですよ。今思うとほめるって本当に大事だなと思うんですけど、おだてられてやる気になっていったような部分もあったと思います。もう少し大きくなると、人前で発信したという達成感を感じられるようになりました。

――いわゆる成功体験ですね。
そうですね。他の習い事でもそうだと思うんですけれど、やっぱりうまくできたときというのは一つ階段を上った充実感を得られます。子ども心にも、一つずつステップを上がっていく感覚というのが非常に心地よかったんですよね。もちろんブレイクスルーするまでには苦労もあるんですが、自分の得意なことがどんどんうまくなっていく達成感はとても気持ちがいいものでした。

――今は子どもと接する場面も多いですよね。
おかげさまで、私自身が副理事長を務める三味線音楽普及の会で出張授業を行ったり、「江戸東京の芸能」のような体験プログラムで指導したりと、小学生や中学生と触れ合う機会に恵まれています。三味線を教えることが多いのですが、目の前に楽器があるとどうも本能的に音を鳴らしたくなるみたいですね。「弾いてみたい」という最初の感覚を大切に、まずは楽しかったと思ってもらえるように心がけています。

――三味線は15世紀くらいからある伝統楽器ですが、子どもたちにとっては目新しいものなのかもしれません。
それはあると思います。今、宮地楽器さんの音楽教室で長唄三味線を教えているんですが、ピアノやバイオリンを習っている子たちが物珍しそうに三味線に触っていくんです。なかなか出合うことがない三味線という楽器に子どもが興味を示してくれると、本当にうれしく感じます。

まずは気軽に三味線と長唄の音楽を感じてほしい

――オンライン公演を拝見しました。迫力がありますね。
長唄はもともと歌舞伎の演奏として生まれた三味線音楽です。安土桃山時代の後期から江戸時代の初期にかけて形になったもので、10世紀くらいから続く雅楽と比べると、伝統芸能としては比較的新しい。オーケストラのように大人数で演奏することが多いので、音の分厚さや躍動感を楽しんでほしいと思います。

――吉住流は江戸時代から続く家元ですね。初代の吉住小三郎さんは1698年生まれという記録が残っています。
うちの流派の特徴を少しお話ししますと、本来は歌舞伎の伴奏だった長唄を歌舞伎から切り離したという点が挙げられます。歌舞伎の演技から分け離して、唄と三味線だけで風景が浮かぶような曲を作り始めたのが吉住流でした。長唄を音楽の一つのジャンルにしたのは、講談のように机をたたいて調子をとりながら語っていく古典音楽の原点から発展し、メロディーを奏でる三味線が非常に音楽的なものだったからということもあると思います。

――なるほど。一方で、歌詞はなかなか理解しにくいという部分もあります。
基本的には江戸時代の言葉ですから、唄の意味を完全に理解するのは正直なかなか難しいです。演奏会では歌詞を書いた紙を配ることもありますが、それでも「わからなかった」という人が少なくありません。ただ、だからといってハードルが高いと思ってしまうのではなくて、まずは気軽に三味線と長唄の音楽を感じてほしいです。たとえば洋楽には歌詞がわからなくても心が揺さぶられる曲がたくさんありますよね? 海外のオペラを観て感動したことがある人も多いと思います。長唄は10人や20人の大編成を組んで三味線で一つの音を鳴らしたり、ソロのパートがあったり、多様なメロディーを奏でたりと、音楽的にとても豊かであることを知っていただきたいですね。

――音楽的な部分でいうと、六代目の吉住小三郎さんが洋楽にも精通しており、よりリズミカルで、メロディーを重視した長唄を数多く生み出したと聞いています。
そうですね。先ほど話したように吉住流はもともと歌舞伎から離れたという歴史を持っていますから、新しい道を探ることにあまり抵抗がないんだと思います。もちろん、伝統を守ることは大切です。ただ、今長唄を聞く人たちは100年、200年前の人とは常識も感性も違いますよね。長唄はエンターテインメントですから、楽しんでいただくことを何よりも優先しないといけない。オンライン公演もその一つですが、時代に合わせて変化させながら日本文化を受け継いでいくことが重要だろうと考えています。

合奏を重ねることで協調性がどんどん高まっていく

ボストンでの三味線ワークショップ(昭和女子大学ボストンキャンパスにて)

――長唄の三味線を子どもが習った場合、どんな成長が期待できますか。
まずは音楽ですから、音楽的な感性が磨かれますよね。あとは古典ですから、日本文化といいますか、日本ならではの所作や礼儀作法も身につけられると思います。歌詞には江戸の風情が入っているものもあるので想像力が育つことも期待できます。

――習い事としての幅が広いですね。
ずっと続けていくと、協調性やいい意味で空気を読む力も養われると思いますよ。と申しますのも、合奏する場合、長唄三味線はいわゆる指揮者がいないんですよね。立三味線(たてしゃみせん)というリーダー的な存在の人間が主にかけ声で全体を引っ張っていきます。演奏を成功させるためには、必然的に立三味線の声や隣の人の気配から周りと息を合わせなければなりませんし、合奏を重ねることで協調性がどんどん高まっていくはずです。

――協調性は日本人の特徴ともいわれています。
三味線を学ぶことで、社会でも必要な力が伸ばされる部分はあるかもしれません。古典芸能は口頭伝承が多いですから周りの意見を受け入れる姿勢も養われますし、三味線を通してなんとなくでもいいので「日本ってやっぱりいいよね」と思ってもらえるとうれしいですね。私自身は演奏者ですからもちろん自分の演奏を見ていただいて「楽しかった」と言っていただけることが大きな幸せを感じる瞬間ですけど、教える側として日本文化に興味を示してもらえるのも家元としてのやりがいの一つです。

――教えながら伝統を受け継いでいくということですね。
おっしゃるとおりです。私が関わっている三味線音楽普及の会についていうと、長唄普及の会という名前にしなかったのは、長唄に限定して可能性を狭めたくなかったからなんです。芸団協さんのワークショップや宮地楽器さんの音楽教室で三味線を教えていますが、それをきっかけに何か日本文化に興味を持ってもらえればいいという考えです。歌舞伎や能楽、日本舞踊に関心を持ってもらったり、着物に魅力を感じて、そこから茶道や華道に好奇心を示してもらったりしてもいいんです。子どもたちが「日本文化って面白いな」と思ってくれることを常にめざしています。

プロフィール:吉住小三郎(よしずみ こさぶろう)さん

長唄演奏家。1964年東京都生まれ。2008年に吉住流七代目家元を襲名。長唄研精会の主宰、三味線音楽普及の会の副理事長、長唄協会の常任理事なども務める。
吉住会 https://nagauta-yoshizumi.github.io/

芸団協は子ども向けに伝統芸能の体験や素養を身につける以下のプログラムを実施します。日本の伝統文化とじっくり向き合う経験は、お子さんの感性や表現力を磨いてくれるに違いありません。

日本舞踊、三味線、落語も体験できる伝統文化総合コース「芸能花伝舎クラブ」第1期生募集中

実施日

10月~3月の毎週火曜日
21年10月5日、12日、19日、26日、11月2日、9日、16日、30日、12月7日、14日、22年1月11日、18日、25日、2月1日、8日、15日、3月1日、8日(予備日)、15日(予備日)
*上記日程は、芸能花伝舎で行う講座17回の予定日程です。このほか、都内劇場にて公演鑑賞ツアー等を実施予定です。

時間

16時20分~17時20分 

場所

芸能花伝舎(東京都新宿区西新宿6-12-30)
※地下鉄丸の内線西新宿駅、大江戸線都庁前駅下車

料金

25,000円(税込)
※一期分(2021年10月~2022年3月)の参加費です。別途費用はございません。
※お支払いは、原則として一括前払いとなります。
※お稽古は、各自、お手持ちの浴衣、足袋でご参加ください。
詳細は参加登録の際にご案内いたします。

対象

小学校4年生~6年生

申込締切

2021年9月10日(金)
*申込み多数の場合は抽選になります。参加可否の結果は、お申し込み時に入力いただいたメールアドレス宛てに、9月14日(火)頃にお送りします。

申込方法・詳細

こちらからお申し込みください。

【主催】
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)
※多様な実演芸術の創造と享受機会の充実により、心豊かな社会をつくることを目的に俳優、歌手、演奏家、舞踊家、演芸家、演出家、舞台監督など実演家の70団体で構成されている公益法人です。

【本件に関するお問い合わせ】
芸団協・実演芸術振興部内 「芸能花伝舎クラブ」係
〒160-8374 東京都新宿区西新宿6-12-30 芸能花伝舎2F
TEL:03-5909-3060(平日11:00~16:00)
※メールでのお問い合わせは、こちらのお問い合わせフォームよりお願いします。「お問い合わせ内容」の欄に、「芸能花伝舎クラブ」に関する問い合わせであることを明記してください。

【備考】    
*新型コロナウイルス感染症や天災事変等の影響により、内容を変更または中止する場合があります。 
*送迎の用意はございません。稽古場等への往復途上での事故等については、主催者は責任を負いません。
*本事業にかかわる以下の広報等の活動に協力いただく場合がございますので、予めご了承ください。
・主催団体や主催団体の認める者による報道・記録・広報を目的とした取材・撮影
・本事業に関し、制作・発行される媒体への写真・映像の掲載(テレビ、新聞、雑誌、WEB、SNS等の媒体を含む)
*参加者等から取得した個人情報は、本事業を実施するために必要な範囲で使用いたします。個人情報の取り扱いについては、法令その他の規範を遵守いたします。
*所定の参加人数に満たない場合、開講しないことがあります。

菅野浩二
菅野浩二

ライター、編集者、株式会社ナウヒア代表取締役。教育やビジネス、カルチャーやスポーツなど幅広いジャンルで取材、執筆、編集を行い、ホームページの制作も請け負う。子どものころの習い事は習字、そろばん、サッカー、英語。趣味は海外旅行。二児の父であり、娘の習い事歴はピアノとチアダンス、息子は絵画とサッカー。

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