2021.08.25
学びをはぐくむ 黒澤真紀

「おいしさを世界に広めたい」日本さかな検定1級に小5で最年少合格・伊藤柚貴さん

自分の好きなことを突き詰めて、好きな分野の検定に合格した子どもを紹介する「検定キッズ」。第2回は、小学5年生で日本さかな検定(以下・愛称:ととけん)1級に合格した福岡県在住の中学1年生、伊藤柚貴さん(12)に話を聞きました。魚の漢字が並んだお寿司屋の湯飲みから、魚に興味を持ち始めました。魚を自分でさばいて食べる。知識を体験にしたことから、魚への探究心が深まりました。魚のおいしさと珍しさを調べ続けた結果、『レアうまさかな図鑑』(日東書院本社)の本まで出版しました。魚へのあふれる思いとは。

初めておろしたカツオの刺身の味が忘れられない

 柚貴さんは上手な包丁さばきでアイブリを三枚におろします

柚貴さんと魚との出会いは5歳の時。お寿司屋さんの湯飲みにずらりと並ぶ魚へんの漢字を、面白いと思ったのがきっかけです。3歳の頃から漢字が大好き。難しい魚へんの漢字を鰆=「三人日で春」のように読んでいきます。そのうち、「春を告げる魚だから鰆」など意味があることに興味が湧き、鰯、鮃、鰍……。魚へんの漢字と特徴をどんどん吸収するようになりました。

 漢字から本物の魚に関心が移ったのは、幼稚園の年長のとき。サンタさんに「頭と内臓付きの魚をください」とお願いをしてからです。サンタさんから「家族と相談して買っていいよ」との返事があり、スーパーへ。魚屋さんからカツオを丸ごとさばくコツを教えてもらい、尾頭付きのカツオを一匹買って帰りました。

 骨と頭はお父さんに落としてもらい、初めてカツオの三枚おろしに挑戦。この時の刺身の味は今も覚えているそう。「本当においしかった!」。カツオの全てを知りたいと、さばいたあとの頭や内臓も全部スケッチしました。

子どもの興味を育てることが大切です。知識を体験に変えたことで、探究心がどんどんふくらんでいきました。

 おいしさと入手しやすさを「魚食ノート」に記録

 6歳から12歳の今も更新中の「魚食ノート」

柚貴さんが年長から食べてきた魚は420種類(2021年5月15日時点)。それらを全てランク付けし、「魚食ノート」に記録しています。

 おいしさは1~5に分けています(1.あまりおいしくない 2.まあまあ 3.おいしい 4.とてもおいしい 5.文句なくおいしい)。

手に入る難易度はA~F(A.とても簡単に手に入る B.簡単に手に入る C.普通に手に入る D.地域や季節によっては手に入る E.なかなか手に入らない F.ほとんど手に入らない)に分けます。

 最新のシロカサゴは、D・4の評価。「メジャーな魚だけではなく、最近は珍しい魚も食べるようになりました」。行きつけの魚屋さんがめずらしい魚を〝柚貴用″と取っておいてくれるそう。食べた魚のスケッチも6歳から続けています。

 「特に好きなのは、アイブリとホウセキキントキ」。どちらも市場価値は安定しておらず、値が付かず破棄されてしまうこともあるそう。

「どちらも刺身がおすすめ。上品な味わいでくどくありません。アイブリはちょっと手をかけて味噌漬けもいいですね。切り身を3時間くらい味噌につけておくと、アイブリの身のほっくり加減と、脂の感じが味噌とマッチして最高です」。 自分がおいしいと感じたかどうかが大切です。

 一番の勉強法は魚をさばくこと

 小さな頃からイラストを描くのが大得意。どこでどんな魚が獲れるか、自分で日本地図にまとめます。暗記シートも活用。

ととけんを受けたきっかけは、愛読書『からだにおいしい魚の便利帳』を買ったときに入っていたパンフレットの模擬試験に全問正解したこと。「本番も受けてみたい!」と1年生で見事合格。3年生で2級に合格。5年生で念願の1級に合格しました。

 ととけんは、魚の知識はもちろん、気候や地理に関する問題も出題されます。魚の産地や漁獲量を調べるうちに、都道府県、県庁所在地、気候は自然と頭に入っていったそう。おかげで今でも社会は得意科目。「特に水産業は先生よりも詳しいくらいです(笑)」。

 一番の勉強方法は魚をさばくこと。自分でやってみると魚の体のしくみがよくわかるし、産地や生態などをもっと知りたくなります。

 「ととけんのたびに魚に詳しくなれるのが嬉しい」と話す柚貴さんは、6年生でも1級に合格、今年も1級を受検するつもりです。

 ととけんで全国の魚から土地まで詳しくなった

 尾山雅一さんと初めて会った時の柚貴さん(小学2年生当時)。

ととけんの主催者・尾山雅一さんは、試験会場で受検者に検定の感想を聞いたり、魚の情報交換をしたりすることから受検者の間で人気者です。柚貴さんも尾山さんを慕う一人です。検定会場で会うたびに問題の感想や最近の魚についての情報交換などを話し、気づいたら1時間経っていたことも。魚を愛する尾山さんの存在は、柚貴さんにとって憧れであり目標です。

 「ここまで魚好きになれたのはととけんがあったから」。

 図鑑ではわからない食文化を知ることができ、福岡に住んでいながら全国の魚やその土地の特徴を知ることができるのも楽しいそうです。「魚のことを考えていると、楽しくて、ワクワクした気分になります」。

 ととけん1級合格を通じて嬉しいことがもう一つ。『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)へのテレビ出演が決まり、その放送を見た出版社から声をかけられて本の出版が決まりました。「大好きな魚の本が出せるなんて夢のよう」。

 ととけんは、惜しまれつつも2021年10月31日の第12回で終了となります。最終回記念として、受検者全員に柚貴さんの魚イラストグッズをプレゼント予定。また、第12回ととけんポスター・パンフレットには、柚貴さんが作成した春夏秋冬の旬の魚介のイラストが使われています。ととけんとともに成長した柚貴さんにとって、検定が終わってしまうのは残念ですが、魚への情熱が冷めることはありません。

 世界にたった一つ。魚への愛情あふれる『レアうまさかな図鑑』を出版

 2020年7月17日に発売された『レアうまさかな図鑑』(日東書院本社)

当初は、柚貴さんが描いた魚のイラストをまとめた絵本の予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で学校が休校になり、時間ができたことから、より詳しい文章を加えました。約7年間の「魚食ノート」から約200種類を抜粋し、魚の体や特徴を説明。おいしさと手に入りやすさの評価を加えました。他にも、長年収集している魚の骨のコレクションなど魚への愛情がつまっています。

「手書きのイラストで、唯一無二の本なので、ぜひ読んでください!」。

「未利用魚は魅力がいっぱい」。おいしさを僕が伝えたい。

「おいしく食べられるのに破棄されるのがもったいない」と未利用魚への思いを語る柚貴さん。

将来は、「未利用魚がスーパーに並ぶようにしたい」と話す柚貴さん。未利用魚とは、見慣れない魚種で市場価値が低かったり、数や大きさがそろわなかったり、傷ついたりしていることが理由で市場に出回らない魚のこと。調理しづらい、味が悪いと偏見を持たれることが多い未利用魚ですが、そのあり方を見直せば、フードロスを減らすことができ、一回の漁でもきちんと値がつく魚が増えるので、漁師は何回も漁に出なくて済みます。

 未利用魚は「魅了する魚」だと聞いてから、柚貴さんは「未利用魚」=「魅了魚」と考えるように。

 「未利用魚のおいしさを世界中に広めたい!」。夢はまだ始まったばかりです。


 「好き」をとことん突き詰めるポイント

  1. 自分の手を動かす。
  2. 「なぜこうなっているんだろう?」という疑問を掘り下げる。
  3. 尊敬できる大人とのつながりを大切にする。

母親の話 

柚貴は子どもの頃から絵や文字を書くのが好きな子でした。魚の前には恐竜、車、電車、折り紙、お絵かきなど、興味を持ったものには没頭しました。私はずっとその様子を見守っています。柚貴が作りあげるもの、考えていることがとても楽しそうなので、「その先をもっと見てみたい」と。尾山さんや、魚屋さん、市場の方など、周りの大人の方が優しく接して下さることに感謝を忘れず、これからも好きなことを追いかけて欲しいと思います。

 ★日本さかな検定について

日本さかな検定は、日本さかな検定協会が2010年から実施しています。どのような目的で始まり、どんな問題が出るのでしょうか。同協会の尾山雅一代表理事に、お話を聞きました。

Q.日本さかな検定を実施した目的は?

2006年に、日本人の1人1日当たりの摂取量は初めて肉類が魚介類を上回りました。それを受けて、「もっと魚のことを知ってほしい。もっと豊かな食生活が送れるようになってほしい」と考えたからです。

Q.合格率は?

第11回までの平均で、1級14%、2級53%、3級86%です。これまでの最年長は89歳(2級)、最年少は5歳(3級)と幅広い年齢層の方が受検しています。

 Q.どのような問題が出題されますか?

魚を食べたくなる出題形式にしています。「問題そのものが知識になる」「問題を解いていると魚が食べたくなる」と受検者の声もあります。

 Q.勉強方法を教えてください。

公式ガイドブックは「からだにおいしい魚の便利帳 全国お魚マップ&万能レシピ」、「からだにおいしい魚の便利帳」。それぞれ受検級に合わせて読んでください。また、2021年版副読本はととけんHPにて発売中。楽しく魚の勉強ができると思います。

 Q.受験を考える親子にメッセージをお願いします。

子どもたちが「お父さんお母さん、一緒に勉強しようよ」と、親御さんを連れてくることが多いですね。3級は総ルビ、1、2級は難しい読みにはルビがついているので、小学生、未就学児のみなさんもぜひ挑戦してみてください。

日本さかな検定

第12回 2021年10月31日(日)

会場:石巻、東京、名古屋、大阪、[初開催]大分県佐伯市

申込締切:10月7日(木)個人・ペア受検WEB申込締切/郵便振込票・団体(5名以上のグループ)申込は9月27日(月)必着)


関連記事:「地球に似た惑星を調べたい」小3で天文宇宙検定2級に合格・岡山市の沖本正太郎さん

 

黒澤真紀
黒澤真紀

1977年生まれ。愛媛県出身。旧姓、井上。都内の学習塾に勤務した後、結婚、出産を経てフリーライターに。教育を専門に学びたいと、中学生と小学生の息子を育てながら都内女子大の修士課程を修了。大人になっても「学びは楽しい」と実感する。海と山に囲まれて育ち、虫が全然怖くない。子どもの頃は自然の中で遊ぶのに夢中で、得意だったのは押し花と走ること。

関連記事 Related articles

新着 New!

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す