2021.09.06
学びインタビュー 小内三奈

読解力のある子に育てるために、幼児期にやるべき3つのことは?

教科書レベルの読解力がない中高生が増えているという調査があります。読解力を身につけるために、自分で本を読める前の幼児期から、家庭でできることがあります。「こぐま会」の久野泰可代表に、幼児期にやるべき3つのことを聞きました。小さなころから大切にすることは、どんなことなのでしょうか?

教科書が読めない子どもにならないためには?

――「読解力」のない子どもが増えているというのは本当でしょうか?

新聞や教科書などを読み取る基礎的な読解力を身につけないまま中学を卒業する生徒が増えているという調査があります。教科書レベルの読解力がないというのはかなり深刻な状況です。

「読解力」とは、相手の言いたいことや気持ちを深く理解できる力です。

これは実は、絵本を読んでもらって聞いてイメージする、友達の話を聞いて相手の言い分を理解する、自分の考えを言葉で表現するという幼児期の大事な経験の積み重ねです。

今の子どもたちの周りには、友達と会って会話をしたり意見交換したりしなくても、楽しく遊べるツールがあふれています。ゲーム、スマホアプリ、YouTube等に長い時間を費やし、人と関わって考えていることや感じたことを言葉で表現する経験が少なければ、将来の「読解力」が高まらないのは当然の結果だと思っています。

読解力がある子どもは幼児期に「聞く」「話す」体験が豊富

逆に、お父さん、お母さんと毎日たくさん会話する子どもは、言葉にできない想いや考えを汲み取ってうまく言葉にしてもらえているため、読解力の元となる「聞く力」「話す力」をどんどん高められます。

友だちとたくさん遊びながら意見を伝え合った子どもも、自然と「対話力」をぐんぐんと伸ばし、「読解力」の元を培っていきます。

小学校の授業も、「主体的・対話的な学び」にフォーカスした双方向の授業へと大きく変わろうとしているのをご存知でしょうか?今後は仲間とディスカッションし、みんなの前でプレゼンテーションするような場が増えていくはずです。

「勉強は机の上でだけやるものではない」と私は常々言っています。これからは、いわゆる「対話力」がなければ、授業に参加することも難しい時代だと認識しておくことも必要です。

小学校、中学校と学年が上がるにつれて底力を発揮する子どもとは、「聞く力」「話す力」がある子どもなのです。その力を伸ばすチャンスは幼児期にある、と知っていただきたいです。

「聞く力」「話す力」を身につけるのはどうすればよいのか?ご家庭で取り組んでいただきたいポイントを以下にまとめてみます。

1つめはまず、親以外の人と「話す」

対話の場を積極的につくり出すことがカギ

●親以外の人(友達、祖父母、異年齢の友人)と接する場をつくる

子どもにとって、お父さん、お母さんは「対話」しなくても何でも伝わる楽な存在です。でもそれでは子どもの話す力は育ちません。

無理のない範囲で、お友だちの家に遊びに行く、家に招くなど関わる場をつくりましょう。

祖父母宅に一人で遊びに行く、従兄弟やお友だちの兄弟に遊んでもらうなど、異年齢と関わることも意識的にやるといいと思います。

●子どもと同じ体験をして、同じ目線で会話する

子どもと一緒になって遊んで、思い出をたくさん共有しましょう。

「今日は幼稚園で何をした?」と聞いても楽しい会話は長く続かないかもしれません。でも、親子で同じ経験をした後の会話は大いに盛り上がるはずです。

●絵日記をつけて、描いた絵を見ながら親子で会話する

1日の様子を絵で表現してみます。親子で振り返りながら一緒に描くのも楽しいですね。描いた絵を見ながら話をすることで、不思議と会話が広がります。

もう一歩進んで、会話をより深める工夫を

●「どうして○○なの?」「そうすると、どうなるの?」と繰り返し聞いて、子どもの意見を引き出す

幼児は「○○が楽しかった」「○○が嫌だった」などと一言で話しがちです。そこで大切なのが、親の聞く力。

「嫌だったんだね」と受け止めた上で、「どうして嫌だったの?」と「なぜ?」を繰り返して、言葉にならない言葉を引き出します。低年齢の場合は、身体表現や表情などからも汲み取ってあげましょう。

●表現するための適切な言葉を教える

言葉でうまく伝えるために、適切な言語(概念語)を教えます。上位概念を表す言葉を知らない子どもの説明はどうしても長く、まどろっこしくなりがちです。

「お茶碗とかコップとかお箸とかを並べた」と言うのを「食器を並べたんだね」、「Aちゃんに1個、Bちゃんに1個、Cちゃんに1個あげた」と言うのを「お友達に1個ずつあげたんだね」という風に、説明がラクに、わかりやすくなる言葉を適宜教えてあげましょう。

2つ目は「聞く力」 絵本の内容を正確に聞き取る力を

お話の詳細まで注意深く聞く

●絵本の読み聞かせから、お話の内容が理解できる力を養う

聞く力を身につけるには、絵本の読み聞かせが一番です。ただ読んで聞かせて終わりではなく、成長に合わせて「お話の内容理解」を促すような工夫をすることで「聞く力」が養われます。

具体的には、登場人物には誰がいたか、誰が何をしたか、どういう順番で行ったかなど、お話の詳細まで注意深く聞く練習をすること。毎日の絵本の読み聞かせの時間を通して、一度で正しく聞き取る力を無理なく習得することができます。

絵本の読み聞かせは文字が読めるようになっても継続

●絵本選びの基準は参考程度に、子どもの興味を優先

2、3歳頃であれば、生活経験を思い起こさせるテーマ、単純で繰り返しが多い絵本を選ぶのがおすすめですが、あまり難しく考えず、昔から読み継がれている絵本や子どもが興味のあるテーマの本を選ぶとよいでしょう。

●自分で読めるようになっても、絵本の読み聞かせは続ける

文字が読めるようになるとどんどん自分で本を読む子もいますが、それとは別に、絵本の読み聞かせは続けてあげてください。

だれかに読んでもらうことで子どもは想像を膨らませて空想の世界で遊ぶことができます。さらに、集中力も高まります。声の雰囲気、読み方一つを変えるだけでも、子どものイメージする力は、より鍛えられるものです。

3つめは「どんどん発言」する絵本の読み聞かせ

●「対話式」絵本の読み方で、どんどん意見を言い合う

黙って最後まで聞く必要はありません。むしろ、「最初のページから思ったこと、気づいたことをどんどん言ってみてね」と伝えて、自分の意見をたくさん表現する機会を増やしましょう。

●登場人物の気持ちを考える

「このときどういう気持ちだったのかな?」「なんでこう言ったのかな?」などと投げかけ、登場人物の気持ちを親子で考えてみましょう。

絵本の世界を楽しみながら、人の立場に立って考える、別の視点をもつことを学ぶよい機会となります。

「話す力」「聞く力」があれば、すべての学習の基礎となる「読解力」が自然と身についていきます。ぜひご家庭で親子のコミュニケーションの時間を増やし、楽しく対話する力を伸ばしてあげてください。


【プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)さん】 

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/


「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可室長」の記事一覧

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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