2021.10.11
学びをはぐくむ 平岡妙子

「子どもは10歳からスマホを持て」 元埼玉県警刑事が語るスマホの危険性と親子ルール

子どもにスマホを何歳から持たせたらいいの? どの親も頭を悩ませています。いまの子どもは小さなうちからデジタルツールに親しんでいますが 、危険性については知らないことが多いです。元埼玉県警捜査1課の刑事だった佐々木成三さんに、子どもがスマホを持つメリットとデメリット、トラブルに巻き込まれないために必要なことを教えてもらいました。スマホを与えたあとで後悔しないために、親はどうやってルールを決めて、何を伝えたらいいでしょうか。

ポイント

  1. スマホは10歳から持たせて、親が危険性を教える
  2. スマホを持たせるメリットとデメリット
  3. ルールは親子で話し合って決める。束縛しても隠すだけ
  4. 親のネットリテラシーを高める方法
  5. 危険から子どもを守る4つの力

スマホを持たせるなら、ルールや危険性を親子で話し合える年齢で

――いまの子どもは、小さな時から親のスマホなどのデジタル機器を触って、ネット検索もできるし、YouTubeも見ています。子ども自身のスマホは、何歳から持たせたら良いと思いますか? 

小学生高学年になる10歳ぐらいから、スマホを持たせても良いと考えています。ただし、教育とセットが必須です。「危険だから渡さない」というのではなく、「何が危ないのか。どうしたら良いのか」を親が先生として、ルールや危険性を教えられる時期に使い始めることが良いでしょう。中学生になると反抗期が始まりますから。

――確かに、中学生になると、「わかってるよ」と親の話を聞かなくなり始めますからね。 

親が先生として、ルールや危険性を伝えることが大事です。子どもが初めて自転車に乗るときには、 親は乗り方と交通ルールや危険性などを必ず教えてあげますよね。親が危険性をよく知っているから伝えられるんです。それと同じです。

スマホを持たせるメリットとデメリット

――10歳で持たせるメリットは何ですか?

教育ができる年齢になっていて、親の手が届く間にスマホを持たせた方が良いです 。中学生になると、「友だちがやっているから」と親よりも周りの意見に左右されやすくなりますから。

もっと小さいうちに渡すと、ゲームにしか使えないと思います。友だちとのコミュニケーションツールとして使い始めるのは高学年になってから。善悪がわかる年齢になっているので、その段階でルールを教えることが大事ですね。

――デメリットは何でしょうか?スマホを与えたあとで、後悔したという親も多いですが。 

いまは指1本で、人生にダメージを受けてしまう時代です。
今年3月に起きた北海道旭川市の女子中学生が凍死したいじめでもそうですが、指1本でSNSに悪口を書き込むことで、人を傷つけることが簡単に出来てしまいます。
何がいけないことなのか、親と子どもがコミュニケーションをしっかりと取れるときに伝えていないと大変なことになります。

絶対にスマホを持たせないと親が思っても、いまは何らかの手段で持つことが可能なんです。過去に小学校6年生の女の子が誘拐された事件でも、親が使っていないスマホを持ち出して、外の無料Wifiで SNSをやっていました。いまは中古のスマホを3000円ぐらいで買うことも出来ますから。

「危険だから持たせない」としていると、「何が危険なのか」を知らないままになってしまいます。 持たせたうえで教えることが大事だと思います。

ルールは親子で話し合って決めること 束縛しても隠すだけ

――子どもに持たせるときに、ルールはどのように決めたら良いですか。  

使う時間を決めるならば、子どもが納得することが大事です。ゲームをする時間も、長い時間やるとなぜ、何がダメなのかを話し合うことですね。成績が下がったらダメ、という家庭もありますが、それもわかりやすい。ゲームやYouTubeなどを見過ぎる弊害について、親子で話し合ってください 。親が一方的に使う時間を決めても、子どもは守らなくなります。

――LINEなど友だちとのやり取りを全部見せるように、という親もいますよね。 

それをしても、子どもはメッセージを削除したり、非表示にしたり隠すことをしてしまうと思います 。LINEがダメなら、テレグラムっていうちょっと怪しいツール使うとか、抜け道を考えるでしょうね。子どものプライベートも守るべきだと思います。自分だったら、親に「見せろ」って言われるのはイヤですから。「俺のことを信用していないんだな」って思うだけ。束縛しても、隠すことを覚えてしまいます。

――子どもが知らない人と連絡しないように、親が見た方が良いという意見もあると思いま すが……

まさに、「知らない人」っていうのを具体的にしていくことが、コミュニケーションなんですよ。

オ ンラインゲームは知らない人とつながるから危険なのでやっちゃだめっていっても、子どもはやりますよ 。オンラインゲームは当たり前の時代で、そこで一緒にゲームをやったら、もう「知り合い」なんですよ 。その「ゲームで出合った知り合い」に、「リアルで会うのはだめ」、もしくは「どうしても会うのなら 、ファミレスなどでグループで会う」などのルールを話し合っておく。

知らない人だからダメ、というだけでなくて、子どもが周りの人ときちんとコミュニケーションを取れる力を育てることが大事ですよね。

――具体的に話すことが大事なんですね。それでも、子どもが出会い系などで知り合ってしまう危険性もありますよね。

いまの誘拐は、車に無理やり乗せられたというような事案は減っています。例えば、8月に起きた墨田区の女子高校生が、群馬県の夫婦に殺害された事件がありましたが、あれもSNSで知り合いました。SNSで知り合った人の車に、自分から乗って殺されてしまったわけです。

SNSの世界では良い人を装えますし、なりすましも出来ます。SNSでは相手の本当の姿がわからないという危険性を伝えておかないといけないですね。

――小学生がターゲットになる危険は、どういうものがありますか。

小児愛者ですね。女の子が裸の写真を送ることはダメだと強く伝えるべきです。警察がいま一番頭を悩ませているのは、児童ポルノなんですよ。可愛いねと言われて、裸の写真を一度でも送ってしまうと、デジタルタトゥーとなって一生消えないということを教える必要がありますね。

――なかなか10歳の子どもに、そんな話もしにくいですけど……

それが日本の性教育の遅れでもありますね。身体のプライベートゾーンは、人に見せるものでないし 、写真を撮ったら絶対にダメだと話しておくことは大事です。

知らない人ではなく、同級生の間で裸の写真を撮らせるいじめも起きています。未成年同士だったとしても、撮らせた側も「児童ポルノ禁止法違反」になるんですよ。

もしも高校生同士で、彼女の裸の写真を撮ったとしたら、児童ポルノ法ではそれはもう「製造」の罪になります。スマホで保存したら「所持」 、SNSで拡散したら「提供」。それでもう3つの罪を犯したことになります。そういった「違法性の認識 」を持つことが大事です。

居酒屋などのバイトで、食品を使ってイタズラのような動画をSNSにあげるようなバイトテロも起きていますが、違法性の認識がないんですよね。

一つのミスで取り返しがつかないようなことにならないように、親が小さい時から教えておかないと。

親のネットリテラシーを高める方法

――親のネットリテラシーをあげることが大事だと思いますが、どうやって学べば良いでしょうか。

フィルタリングは大事ですけど、どんな対策も100%防止できる対策はない。それを抜けることができると知った方が良いですよね。防犯意識を親が持って、常に情報をアップデートする必要があります。例えば、警視庁サイバーセキュリティー対策本部のTwitterをフォローして学ぶこともオススメします。

いろんなツールを使いこなせると良いですね。子どものスマホの中身は見ないけれど、「スクリーンタイムは確認させてね」と話し合っておく。「設定」→「スクリーンタイム」から、アクティビティを確認できます。ゲームをやっていた時間や、変なアプリを使用していないかを見ることができます。 YouTubeやゲームなどのアプリの使用時間を制限することもできます。

便利な方法はいろいろありますので、そういった知識を親が得ておくことも大切ですね。

――小学生のうちはキッズ携帯で、と考える親は多いですが、どう思いますか。 

「スマホを持たせなければ安心」ではなくて、持たせたときにどうするのかを考えることの方が必要ですね。スマホは、いつかは使い始める生活に必要なツールです。使うときに 、自分が危険なのだけでなくて、人にもダメージを与えないということも教えないといけないですよね。

――「うちの子が被害にあったらどうしよう」と親は心配しがちですが、加害者になる可能性もあるということですね。

そうです、加害者になる危険性も高いです。SNSの誹謗中傷は、気軽な気持ちでしてしまいます。みんながやっていたとしても、ダメなんだと教えないといけません。

SNSに依存させないために、親は何ができるのかということだと思います。
可愛いねとかSNSで「いいね」と言ってもらいたいのは、承認欲求を満たしたいという気持ちです。知らない人からの100の「いいね」よりも、近くの親や友だちからの1の「いいね」の方が良い。だからリアルな生活のなかで、承認欲求を満たせるような体験をさせてあげたいです。

危険から子どもを守る4つの力

――子ども自身がスマホに依存しないですむ力を身につけないとならないですよね。 

いまの子どもに必要なことは4つの力だと考えています。

  1. 直観力
  2. コミュニケーション力
  3. 想像力
  4. 受容力

直観力というのは、自分の過去の経験にから読み解く力です。「SNS をフォローすれば100万円が当たる」という情報を、あり得ない、おかしいなと読み取る力です。

コミュニケーション力は、友だちとの交流では、誤解も起こりうることを知る力です 。いまの子はスマホでのテキストメッセージが多い中で育っていますが、それでは思い違いが起きてしまうことを知る。気持ちのすれ違いも起きることを知って欲しいですね。

想像力は、何をすると相手が傷つくのかを想像する力ですよね。その想像力がないと、SNSで書き込んだことがいじめになるんだということが、感じられない。自分の行動がどんなリスクにつながるかもわからない。

受容力は、自分と違う価値観の人も受け入れることですね。いろんな人がいるなと考えられると、 LINEで既読スルーされても気にしすぎることがない。無視ではなくて、忙しいんだろうなとか相手の状態を受け入れる力ですよね。

こういった力をどうやって子どもに身につけさせられるのか。

自然の中で一緒に遊ぶとかリアルな体験をして、親子で会話を繰り返す中で伝えていくしかないだろうなと思っています。


【プロフィール・佐々木成三(ささき・なるみ)】

1976年生まれ。元埼玉県警刑事部捜査一課・警部補。デジタル捜査班の班長として、スマートフォンの解析やサイバー犯罪の捜査にも関わってきた。2017年に「事件を取り締まるのではなく、犯罪を生まない環境を作りたい」との思いから退職。現在はテレビ番組のコメンテーターや講演活動などを行っている 。一般社団法人「スクールポリス」理事。著書に「スマホで子どもが騙される」(青春出版社)、「あなたのスマホがとにかく危ない」(祥伝社)など。

写真撮影:北川サイラ

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平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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