マタニティスイミングとは?4つの効果と教室選びを解説
大きいお腹を抱えた妊婦さんも気軽に楽しめる「マタニティスイミング」。ベビースイミングに通うお母さんたちの中にもマタニティスイミング経験者が多くいるそうです。どんなことをするのでしょうか。効果などについて、可世木婦人科ARTクリニック(名古屋市)の産婦人科医で、長年マタニティスイミングについて研究してきた浅井光興先生に伺いました。浅井先生は現在も日本スイミングクラブ協会の妊婦水泳研修会で講師を務めています。
<今日のポイント>
- マタニティスイミングとは、妊婦さんが体力増進や気分転換を目的にしたスポーツ
- レッスン内容は水中ウォーキングや水中坐禅など
- メリットは「体に負荷をかけずに運動できる」「分娩時の呼吸が学べる」など
- マタニティスイミングをはじめる前に主治医に相談しよう
- 医師や助産師が常駐しており、医療機関とつながりがあるスクールを選ぼう
マタニティスイミングとは、妊婦さんが体力増進や気分転換を目的にしたスポーツ
マタニティスイミングとはどのようなスポーツなのでしょうか。まずは概要について説明します。
マタニティスイミングとは?
A. 妊娠中のお母さんがプールに入って、体力増進や気分転換を目的にしたスポーツです。
マタニティスイミングに通う理由には「妊娠中の運動不足や肥満を解消したい」「リラックスして分娩できるようになりたい」などがあげられます。一般的には、流産しやすい時期を過ぎた妊娠12週以降で、主治医の先生から承諾を得た妊婦さんであればはじめることができます。
レッスン内容は水中ウォーキングや水中坐禅など
レッスンではどんなことをするの?
A. プールの中で出産時の呼吸法を学び、水中ウォーキングやクロールや背泳ぎなどを泳ぎます。
スクールによってレッスン内容は異なりますが、準備体操と水中ウォーキングをした後、ビート板を使ったバタ足や平泳ぎの足(妊娠末期は横泳ぎの足)、ドルフィンキック(バタフライの足)などをします。水中で座禅を組み、最長30秒まで息を止めたり、水の上で仰向けになったりして分娩時の呼吸法を練習します。
マタニティスイミングのメリット4つを紹介!
マタニティスイミングをやるとどんなメリットが得られるのでしょうか。ここでは4つ解説してもらいました。
①水の浮力を活かし、体に負荷をかけずに運動できる
マタニティスイミングは浮力を活かして体を動かすことができるため、陸上でのスポーツに比べて体にかかる負荷が少なくてすみます。日ごとに赤ちゃんが大きくなる妊娠後期でも比較的体を動かしやすいでしょう。
②腰痛とむくみが緩和される
妊娠中期からお腹が大きくなるため、バランスを取るために腰を反ることが多くなり、これが腰痛の原因になります。水中だと浮力のおかげで子宮が持ち上げられるため、腰への負担が軽くなります。また、妊娠中は、ホルモンバランスの影響や血流が滞りがちになるため、むくみやすくなります。水中で水圧の影響を受けると、血流が促されてむくみが減り、血圧が下がることも研究で分かっています(※1)。
(※1)引用文献:1988年2月~1997年12月実施の小林加奈子氏らの妊婦水泳の調査。愛知医科大学医学会雑誌27掲載、調査対象は妊婦水泳教室受講者573例。
③分娩時の呼吸が学べる
マタニティスイミングでは、水中で息を止めた後、水面から顔を出してすぐ息継ぎをする練習をすることで分娩時の呼吸法を習得します。実際の分娩時には陣痛が収まっているとき(陣痛と陣痛の間)に全身の力を抜いて呼吸を整え、リラックスすることが非常に大切です。リラックスした背浮きの姿勢で呼吸法を練習しておくと、本番のときも落ち着いて分娩に入りやすくなります。
④友達ができ、妊娠、出産の不安を解消できる

同じくらいの時期に出産を迎える友だちができます。また、スクールのスタッフと顔なじみになり、妊娠中の不安を気軽に相談できるメリットがあります。「マタニティスイミングをして良かったこと」について42人にアンケートを取ったところ、「友人ができた(20%)」が最も多い回答でした(※2)。
注意点は?マタニティスイミングをする前に主治医に相談を
マタニティスイミングをするうえで注意することは?
A. はじめる前にメディカルチェックを受けて、妊娠中にスポーツをしても大丈夫かどうかをきちんと主治医に確認しましょう。スクールによっては医師の許可書が必要なところもあります。またマタニティスイミング中に下記の症状がみられたら速やかに中止しましょう。
妊娠中の経過が順調であること、また、毎回運動する前に血圧を測るなど、いくつかの約束をきちんと守った上でなら、安心して取り組めます。事前に主治医に相談し、早産や多胎妊娠、流産の経験など、高リスク妊娠や既往がないかを確認しましょう。可能であれば水中で不整脈が出ないかのテストをするのも良いでしょう(※3)。また、定期健診時には性器から出血がないか、子宮頸管長を測定し、流産や早産のリスクがないかをきちんと確認しておくことが重要です。
(※3)息を止めて、冷水の入った洗面器に最長30秒顔をつけた状態で、脈拍が減少して不整脈(徐脈性不整脈)を起こしていないかを確認するテスト(ダイビング・リフレックス)。
マタニティスイミング中に注意したい主な症状
- 頭痛、胸部痛、恥骨痛、おしり、背中や腰にかけての強い痛み
- 子宮からの出血、羊水流出
- めまい、まっすぐ歩けない、フラフラする
- 動悸、息切れ
マタニティスイミングと安産の関係は?
A. 今のところ、マタニティスイミングと安産の関係性を示した研究データは把握しておりません。
「安産、いわゆる短時間で苦痛やトラブルなく赤ちゃんを産みたい」と考え、マタニティスイミングをはじめる妊婦さんもいます。ただ、マタニティスイミングをしたことで、「分娩時間が短くなった」「帝王切開率が減った」などのデータは、把握している限りまだ取れていません。ただ、マタニティスイミングに取り組むことで、血圧の上昇を抑え、肥満を防ぐことにはつながるでしょう。
スクールの選び方や初期費用も解説
スクールの選び方や初期費用などについてまとめてみました。
スクールの選び方は?
A. 必ず確認しておきたいのが、スクールと医療機関とのつながりです。
その場に医師または助産師が常駐していることが望ましいですが、難しい場合は、産婦人科とすぐに連携がとれる体制かを確認してください。レッスンの前後に血圧や脈拍などのメディカルチェックをきちんと実施しているかどうかも大切です。また、マタニティスイミングでは通常の水泳教室より運動量が少ないため、通常の水温では寒いのでマタニティスイミング用に水温が1~2度(30±1℃)高くなっているかも確認をしてください。
レッスン費用はどのくらいするの?
A. 施設の規模や地域にもよりますが、週1回(1回60分)で月謝が7500円~1万円前後+入会金の施設が多いようです。
ちなみに、愛知医科大学運動療養センターでは(現在は休止)、各種検査を含めて1回あたり5000円のレッスン料でしたが、データ収集に協力していただいておりました。レッスン時には母子手帳、水着、タオル、ゴーグルなどが必要です。そのほかスクールによって必要な物が異なるので、申込時に確認をしましょう。
浅井光興先生からのメッセージ
マタニティスイミング は浮力を活かして体に負担をかけずに運動ができるので、妊婦さんが始める運動としてふさわしいものの一つといえます。普段は泳げない人でも妊娠中に泳げるようになった人もいます。運動不足が気になる人はもちろん、ママ友をつくりたいという人にもおすすめです。経過が順調で、医師やスタッフの指導を守れる方ならぜひトライしてみてくださいね。
【プロフィール:浅井光興(あさい・みつおき)】
1977年名古屋大卒。愛知医科大学産婦人科助教授、国保坂下病院副院長などを経て2008年4月に可世木病院副院長、7月に同病院院長に就任。2018年可世木婦人科ARTクリニック 診療部長に就任。マタニティスイミングの研究も務め、マタニティスポーツの安全基準を定めるための活動を続けている。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本臨床スポーツ医学会代議員、女性スポーツ医学研究会監事など。
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子育て情報誌、不妊治療情報誌などをメインにライティング、ページ制作を行っている。そのほか、旅行情報誌、ライフスタイル情報誌などの編集、原稿制作も手がけている。自身も夫もひとりっこなので、戸惑いながらきょうだいの育児に奮闘中。子どものころに熱中していたのは、自分の新しい名前を考えること。最後に「子」が付く名前に憧れ、四六時中、考えていた。小学校低学年当時、自分で考えて気に入っていた名前は「ごだいごはなこ」。