2021.11.17
学びインタビュー ちゃみママ

発達障害の僕を「すごか~」と全肯定した親に感謝 書道家・武田双雲さん

ちゃみママが聞く 発達障がいの子の伸ばし方


発達障がいの息子(小4)の子育てに奮闘しているちゃみママです。今回は書道家、アーティストとして世界で活躍中の武田双雲さんにお話を伺います。大人になってから「もしかしたら自分はADHD(注意欠如、多動症)かも?」と気づいた双雲さん。まずは子ども時代の話や、親御さんとの関係性についてお話を聞いてみました。2回に分けてお届けします。

【プロフィール 武田双雲(たけだ・そううん)さん】

1975年熊本県生まれ。書家である母、武田双葉に3歳から師事。東京理科大学理工学部を卒業後、NTT東日本に入社。約3年間の勤務後、書道家として独立。NHK大河ドラマ「天地人」、映画「北の零年」など多数の題字やロゴを創作。音楽家、彫刻家らと積極的にコラボレーションし、国内外で個展などを開催。著書に「ポジティブの教科書」(主婦の友社)、「『子どもといること』がもっと楽しくなる 怒らない子育て」(主婦と生活社)などがある。

前編:発達障害の僕を「すごか~」と全肯定した親に感謝

後編:発達障害を強みに変えるには

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不幸感はないけれど、ひとりだった

――武田さんはどんなお子さんでしたか。

とにかく元気で勢いのある子どもでした。先生が怒って僕に注意しても「何?何?先生、なんか言った~?」と、大きな声で明るく先生に聞き返しているような感じでした。

――小さい頃から元気で勢いがあったんですね。3歳からお母さまに書道を習っていたそうですが、習い事は書道一筋ですか。

書道のほかにもいろいろやりましたよ。スイミングや音楽など。でも書道以外は続かなかったですね。たぶん楽しさを見いだせなかったんだと思います。

――でも習い事もたくさんやって、学校でも元気で明るいとなるとクラスの人気者ですよね。学生時代はずっとそんなキャラだったんですか。

いや元気で勢いあるキャラは小学校4年まで。小学校4年の後半~5年生あたりからだんだん暗雲が立ち込めていったんですよ。

――暗雲ってどんな感じになったんですか。 

先生に怒られることが増えたり、友だちからちょっと変な人と見られることが多くなったりしました。当時は自覚無かったんですが、今思うと自信を失くしていたかもしれません。

――ちょうど思春期に入る頃ですよね。中学校ではどうでしたか。

僕が中学生の頃は、ヤンキー=カッコいいみたいな時代だったんです。だから、ヤンキーとかけ離れたところにいた僕は、小学校の時よりも殻にこもってましたね。うまくいかないことが多くなって、気持ちとしては鎖国の中で一人じっとしている感じでした。好きな量子力学とか宇宙のことをよく考えていました。その状況を不幸だと思ったことはないんですが、自分の好きなものを友だちと共有する楽しみはなかったですね。

――ご自身がADHDだと気づいたのは大人になってからだそうですが、どういったことがきっかけでしたか。

たまたまADHDのことをニュースで知って「どんなものなんだろう?」と調べ始めたら、ADHDの可能性があるかのチェックテストをみつけたんです。それをやってみたら全部あてはまる!そこで「僕ってADHDの可能性があるんだ」と気づいたんです。40歳ぐらいのことでしたね。そうかぁって、ものすごいラクになったんですよ。全部自分のせいにして、自分が悪いと思っていたんですよ。でもこれは、特性なんだってわかったので。知るだけですごくラクになりましたね。

※ADHD(注意欠如、多動症)は、「不注意」や「落ち着きのなさ」「衝動性」を主な特徴とする発達障がいの特性の一つ。

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実はADHDの子は周りの空気を敏感に感じ取っている

――私の息子もまさに4年の2学期から学校の先生に怒られる回数がグーンと増えました。クラスメイトとの差も開き、授業も彼だけ聞いていないからか、テストでも珍回答が多くて……。

珍回答って、例えばどんな?

――これはちょっと前の話なんですが、国語で授業のおさらいテストがあったんです。テスト用紙には真っ赤に実ったトマトの写真が載っていて、問題文は「この写真からわかるトマトの様子を書きなさい」でした。そこに息子は、「おとなしくていい子」って回答していて……。先生から×をつけられて、「『例:真っ赤なトマトが5つみのっている』などを書く」と訂正されていました。

へぇ~、なるほど。でもその回答って実はとっても深い意味があるかもしれません。

息子さんが最後に「いい子」ってつけたのは、トマトに自分を重ね合わせているのかも。普段、じっとしていなくて怒られることが多いけれど、本当はこのトマトみたいに自分もおとなしくしていたいという気持ちの表れかもしれません。

そう考えての答えだと思うとなんか切ない気持ちになってきますね。その答えに×をつける先生がいることにもちょっとショックです。

――私は答えを見た時、「おとなしくしている」という部分に思わず笑ってしまったんです。でも武田さんの考えを聞き、息子にそんな感性があるなんて言われると、意外な気持ちです。

ADHD=衝動的に行動する人っていうイメージが強いんですが、実はとても冷静な面もあります。周りの空気を敏感に読んだり、俯瞰で物事をとらえることができるたりするんです。実際、僕がそうでした。周りの反応とか敏感に察知できるんです。でも頭では周りの反応や状況が分かっていても、行動が伴わない。まったく違う動きをしてしまうことがあるんです。

――え~、そうなんですか。

息子さんはトマトと自分を冷静に客観視できるから、あの深い答えが出てきたんだと思います。考えと行動がリンクしていないから気づきにくいけれど、隠れた能力を持っている可能性はあると思います。

――なんか冷静な面も持ち合わせていると言われてうれしいです。でも、考えと行動がリンクしないから周りから理解されづらいですよね?

そうなんです。冷静に物事を見られる、空気を敏感に感じられるから、いろいろなことが気になって集中できなかったり、気が散ってやるべきことがスムーズにできなかったりすることも。それが続くと先生から怒られることが増え、徐々に自信を失ってしまうんだと思います。

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自信を保てたのは両親が褒めてくれたおかげ

――考えと行動がリンクしないことは、自分ではコントロールできない部分ですよね。でもそこを周りに理解してもらえないと二次被害、いわゆるひきこもりやうつを発症する可能性が出てきます。双雲さんも「怒られることが増えて自信失くしてたかも」とお話されていましたが……。

僕の場合、自信を完全に失くしたわけではなかったですね。

――そうなんですね。その理由って思い当たりますか。

それは、うちの親のおかげです。僕のこと、とにかくほめてくれたんです。何をやっても「すごか~」って。ありのままの僕を全肯定してくれたところが大きいと思います。

――その明るさとポジティブさもご両親のおかげなんですね。

自分をほめて全肯定してくれる場所があるので、学校で先生に怒られてもへこまない土台ができているんだと思います。

あと、うちの親から将来のことを言われたことがないんです。

――将来?将来の目標を持ちなさいとかですか。 

「将来のために今、〇〇しなきゃダメ」とかまったく言われたことがないんです。「今がよければそれで良し!」でした。

僕も計画通りに物事をやるということがほとんどない。計画を立てても数分後には違うことをやってることが多い。「今」しか生きられないんです。だから親に何かを強制されたことってほとんどないんです。

――双雲さんにとって家はのびのびできる環境だったんですね。ご両親の姿勢、すばらしいです。

だから僕は反抗期がありませんでした。だって反抗って、何か抑圧するものに対して抗うことだけれど、その「抑圧」がなかったので。両親のおかげで本当にのびのびと成長できたと思っています。

取材を終えて(前編)

子どもの頃の話も明るく話してくれた武田さん。ADHDの子の多くが学校生活で経験する「壁」にぶつかりながらも、乗り切れたのはご両親の接し方にあるということを知り、ハッとしました。私も頭では武田さんのご両親のように「ほめたい」と思っていても、学校の先生から連日のように注意や報告があったり、自分が疲れていると、ほめるどころか、「なんで同じことばかり繰り返すの?」など無意味でいやみな質問をしてしまうことが…。次回は、どうすれば武田さんのご両親のように接することができるか、また子どもの特性の活かし方などについて、武田さんにお話を伺います。お楽しみに!

写真撮影:篠田英美

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ちゃみママ
ちゃみママ

「乗り物オタクだなと思っていた小学4年生の息子が、ADHDと判明。確かに、小さな頃から算数と乗り物のこと以外は集中力がなく、シャツから下着が出ていてもおかまいなし。他の保護者からは、自分勝手な子、だらしのない子と見られることも……。学校などからかかってくるトラブル報告の電話におびえつつ、子育てに奮闘中。外では明るく振る舞っているものの、トラブルが続くと、「私の子育て、間違っているのかな」と自問自答を繰り返してしまう。相談ができて、背中を押してくれる人やサービスを常に探し中!

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