2021.11.11
習い事最前線 平岡妙子

留学生とオンライン英会話 好きなことから多文化を学ぶ「KIDEA」

日本に留学中の大学生から、子どもたちがオンラインで英会話を学ぶ「KIDEA(キデア)」で異文化交流が広がっています。先生はインドネシアやノルウェーなど16カ国から日本に留学している学生たち。子どもたちに料理やダンスなど自国の文化を紹介しながら、生きた英語を伝えます。子どもたちから日本の文化を紹介することもあり、様々な国の人と楽しく交流しながら、自然に英語の表現や発信する力を身につけています。

来日中の留学生と英会話 部屋や台所から異国の文化


コーチから画面を通して料理を習う子どもコーチから画面を通して料理を習う子ども

「KIDEA」には、16カ国から約40人の留学生がコーチとして登録しています。コーチが教えることが出来る、料理、ダンスやサッカー、工作にマジックなど幅広いテーマの中から、子どもたちが興味のあるレッスンを選びます。未就学児から小中学生が対象で、マンツーマンでコミュニケーションを取るため、初めて英語を学ぶ子でも大丈夫です。

留学生の出身国の文化に触れられて、英会話のレッスンだけでなく、異文化の交流にもなります。留学生の家からオンラインでつなぐため、画面を通してインテリアや台所などを見ることが出来ます。留学生が自己紹介のために、自作のパワーポイントで自分の国を紹介してくれて、インドの電車に人がたくさん乗っている様子や、ベトナムのバイク事情、インドネシアの海面上昇など、自宅にいながら多様な文化に自然に触れることが出来ます。

KIDEAは2020年4月にテストマーケティング事業を開始して、いままでに約500回のレッスンを行ってきました。留学生たちが、部屋の外からオンラインをつなぐこともありました。サッカーのレッスンでは、ウズベキスタン人のコーチが自宅前の海辺からリフティングを教えてくれたこともあります。コロナ禍が拡大したため帰国した留学生たちは、自国の部屋からレッスンをしてくれて、異国の雰囲気がリアルに伝わることもありました。

プレゼン大会で英語だけでなく、表現力も身につける

環境プレゼン大会で優勝して、大きな世界地図をもらった高松雅生くん。 環境プレゼン大会で優勝して、大きな世界地図をもらった高松雅生くん。 

 佐賀市に住む小学4年生の高松雅生(まさき)くん(9)は、2020年5月からレッスンを始め、いままでに10カ国以上のコーチと会話をしています。最初はベトナム人のコーチとバナナプリンを作りました。始めたころは英語で話すことに戸惑い、涙ぐんでしまうときもありましたが、だんだん言いたいことを表現出来るようになってきました。

雅生くんは「英語がわからないときには、日本語で1回言ってもらってから、もう一度英語で繰り返してもらう。それを真似して覚えるとわかってくる気がする」と言います。留学生は日本語も理解していて、臨機応変に対応してくれて、子どもたちは「わからない」ことに悩まずに、気軽に話す事ができます。英語だけでなく、日本語を使っても大丈夫なので、心のハードルが下がります。

KIDEAでは学んだ英語を表現する機会として、プレゼンテーション大会を開催しています。2020年のテーマは「Japan in my eyes」。雅生くんは小学校の近くに佐賀城があることから、日本のお城について発表しました。事前に資料の作り方から話す順番まで、プレゼンのやり方のレッスンも受けました。ちょんまげのカツラをかぶってお殿様になったつもりでお城について説明したり、クイズを出したり、どうしたら面白くできるのか工夫しました。

ちょんまげのカツラをかぶって、城のお殿様のクイズを出す雅生くん。ちょんまげのカツラをかぶって、城のお殿様のクイズを出す雅生くん。

 2021年8月のプレゼン大会のテーマは「環境問題」。雅生くんは海のゴミ問題をテーマに発表し、優勝しました。遊びに行った鹿児島県の海にも、ゴミがあった写真などを映しました。解決方法を2つ提示して、どちらが良いかというクイズ形式も取り入れて、大事なことは「世界で起きていることを知ることだ」とまとめました。

雅生くんは「クイズタイムを一番頑張った。伝えられるとスッキリする」と満足そうな様子。「小6の大会までには、人を笑わせられるような面白い発表をしたい」と意欲が高まっています。

奄美大島の海にゴミが落ちていたことをプレゼンで説明。 奄美大島の海にゴミが落ちていたことをプレゼンで説明。 

雅生くんの母親は、「最初は私を頼りにするときもありましたが、いまでは一人で話しています。先生がほめてくれるので、うれしいようです」と話しています。小さいころには嫌がっていたディズニーの英語のCDも、最近は自分から聞くようになったそうです。習っている空手を、留学生の先生に披露したこともあります。「親が英語をやらせようとしてもうまくいきませんでした。いまは本人が楽しんでやっていることがとても良いですね」と喜んでいます。

英語で料理を学び、日本文化も教える

台所でオンラインをつないでレシピを教えてもらいながら、麻婆豆腐を作りました。 台所でオンラインをつないでレシピを教えてもらいながら、麻婆豆腐を作りました。 

 埼玉県に住む中1の武井そらさん(仮名)(12)は、いままでに20回近く、料理などのレッスンを受けました。最初は中国人のコーチ、ティナさんから餃子の作り方を学びました。先生が作成した餃子の作り方の動画と資料を見せてもらった後、お互いに台所へ移動。手元を画面に映しながら、一緒に餃子を作ります。そらさんは「中の具材を包むのはちょっと難しかったけれど、おいしい味の餃子が作れました」とうれしそう。餃子のルーツなど中国文化の説明も聞きました。

みたらし団子の作り方を、中国人の留学生に教えました。 みたらし団子の作り方を、中国人の留学生に教えました。 

マグカップケーキやエビチリ、ナンプラーを使ったタイ風キュウリサラダなど、いろいろな国の料理を学びました。日本のみたらし団子の作り方を教えてあげたときもあります。和菓子のおいしさを伝えたいと思ったからです。焼くときに「焦げ目をつけるって何て言えばいいんだろう」と英語表現には戸惑いましたが、無事に最後まで完成し、コーチは「すごく、おいしい!」と喜んでくれました。

そらさんは「ずっと教えてもらうことが多かったので、私からも教えられて楽しかった」と言います。留学生からも「日本語でこれは何て言いますか?」と聞かれることもあり、「ご飯をよそう」とか「しゃもじ」などを教えてあげるなど、思っていなかったような会話が始まることが面白いそうです。

英語で書いた、みたらし団子のレシピ。英語で書いた、みたらし団子のレシピ。

 母親は「ハプニングみたいにいろんなことが起きるのですが、様々な単語を自然に覚えていくし、パッと言いかえる言葉を考える力も身についていて、成長を感じられます。おしゃべり感覚が楽しいようです」といいます。ダンスやネイルのレッスンも受けるなど、幅が広がっています。中学生になり、夏休みにはスペリングコンテストへの勉強も前向きに取り組みました。文法などは学校で学び、英会話と組み合わせて学んでいます。

臨機応変に対応し、未来を切り開く力が身につく

 「KIDEA」は朝日新聞社の新規事業ビジネスの企画提案「START UP!」から生まれました。販売局の堤梨佳さんが新聞の活用方法について大学生に出張授業を繰り返していた時に、「意見を述べられない学生」が多いことにショックを受けました。その経験から、「自分の意見を堂々と言える日本の子どもたちを育てたい」との思いを抱き、ビジネス提案したテストマーケティング事業です。

この取り組みは、九州大学大学院・比較文化研究院と共同研究をしています。レッスン録画を見てもらい、受講前後の変化を調べています。わからないことがあっても何とか表現し、臨機応変に対応して伝えようとすることで、非認知能力や「自分で未来を切り開く力が身につく」のではと研究しています。留学生は立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)の学生たちです。160カ国から学生たちが来日していることから、連携協定を結びました。

「KIDEA」のレッスンは30分間か60分間を選ぶことが出来ます。料金は30分間×月4回、もしくは60分間×月2回で月額8800円。

堤さんは「留学生のコーチと楽しく話すことで、その国が身近になります。もっと知りたい、もっと伝えたいという思いが一番大事。好奇心が高まって、また話したいと思えば、自然に英語はうまくなっていきます」と話しています。

KIDEAのHPはこちら

平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。