2021.12.02
学びインタビュー 小内三奈

【速報】2022年度小学校入試を振り返って  幼児教室「こぐま会」久野泰可代表

コロナ禍での2年目となる2022年度の小学校入試は、どのような傾向や変化があったのでしょうか。昨年は入試日程や試験内容などに大きな変化がありました。今年の小学校受験ではどんな力が求められたのでしょうか。長年、幼児教育に携わってきた幼児教室「こぐま会」の久野泰可代表に、最新の入試問題の分析を聞きました。

2022年小学校受験、ペーパー試験や行動観察の傾向

中学受験対策を打ち出す小学校は難題を出題

コロナ禍で初めて行われた2021年度の小学校入試は、ペーパー試験に象徴される学力試験は基本問題が多くなりました。こぐま会がインタビューを行った学校では、「問題が易しすぎたせいか、判断するのが難しかった」という声があったので、ペーパー試験は昨年より難しくなると予想していました。

実際、今年のペーパー試験の難易度は、昨年と比べると難しくなりましたが、コロナ以前に出題されていた子どもの思考力を問うような問題は、主要女子校11校を見た限り今年もなく、基本問題中心といってよいと思います。

慶応幼稚舎のようにペーパー試験自体がない学校もありますが、中学校受験対策を打ち出している進学校に限っては今年も難題が出題されました。

全体の傾向としては、コロナ禍で最初の小学校入試となった昨年よりは難しくなったものの、コロナ以前のような難しい問題を出す傾向は見られませんでした。

密を避けて「行動観察」ではなく、「指示行動」に

これまで小学校入試の中核をなしていた「行動観察」。テーマを与えてみんなで相談する、協力する中で見えてくる子どもの様子を見るのですが、コロナ禍の昨年の入試ではほとんどの学校で行われませんでした。

密を避けるため代わりに行われたのが、運動系中心の「指示行動」や「模倣体操」です。

現時点で集まった情報を見る限り、今年度も、体を使った指示行動中心という昨年同様の傾向となりました。ただ、指示行動の中に子ども同士の関わりを見る課題を含んだ、工夫された行動観察を行った学校も見受けられました。

その一例が、こんな問題です。

輪飾りを作る課題は、ある病院の新人研修で取り入れられているそうです。まわりの人と協力するチーム医療の力を高めるために重要な研修だそうですが、同じような力が、いまの時代の幼児にも求められているのです。

 

問われているのはすべて、ものごとへの主体的な関わりと、まわりの子との協力関係です。「相談してください」と具体的に指示されているわけではありませんが、どのように会話しながら協力関係を作っていくのか、学校側は子ども同士の関わりを見ています。決して訓練によって、型を教え込まれて解決する力ではないのです。

この2年間の行動観察のやり方を踏まえて、来年以降、各校で出題内容が変わってくるのではないかと思っています。その際、新たな視点が、このようなものになるのではと思います。

新設の都立小学校がもたらす新しい風

人気の小学校の受検倍率は?

今年の小学校受験の名目上の倍率は、保護者の皆さんの情報から推測すると、昨年対比でやや上がっているようです。まだ調査中の段階ではありますが、下がっている傾向にはなく、全体としては盛り上がっている状況であるといえます。

その一つの要因が、2022年春に新規開校する東京都立立川国際中等教育学校附属小学校の存在です。1次抽選の倍率は30.98倍となりました。東京都立川市という立地で、通学区域の地域制限もある中でのこの高倍率です。東京の小学校入試に及ぼす影響は大きいと考えています。

立川国際はどのような点が注目されているのでしょうか?

全国で初めての公立小中高一貫教育校です。この点に魅力を感じ、「これまで小学校受験を考えていなかったけれど、チャレンジしてみようか」と考えるご家庭も多いと思います。

もう一つは、新たな試みとして適正検査の検査方法、出題の方針、問題例、点数配分などが事前に公表された点です。
私自身これまでずっと、小学校受験は情報が公開されない点が問題だと言い続けてきました。さとえ学園小学校、開智小学校では問題例を出し、2019年新設の東京農業大学稲花小学校でも合否の観点は出していますが、ほとんどの私立小学校、国立小学校では一切情報を公開していません。
立川国際が公表した問題の中身は、これまで他の私立小学校、国立小学校でも出題されている内容で目新しいものというわけではありません。ただ今回出題の内容について、そして学校が求めている力について詳細な情報が開示されたことに大きな意味があります。ほかの学校にも影響を与え、情報公開の新たな動きにつながるかもしれないと今後に期待しています。

「聞く力」に加えて「話す力」が重視される傾向に

面接試験で特徴的な傾向はありますか?

今年の面接試験の問題から見てとれる特徴は、子ども自身に発言させる質問が以前より多くなっていることです。小学校入試で必ず出るのが、「お話の内容理解」です。これは、言語能力の課題として学校側が「聞く力」をとても大事に考えていて、将来につながる基礎的な力を見ようとしているからです。
今年は、この「聞く力」に加えて「話す力」を見ようとする姿勢が多く見受けられました。

例えば、今年の親子面接での出題内容として、子どもに絵カードが渡され、そこに書いてあるものをお父さん、お母さんに言葉で伝えてくださいという問題や、花束が2束あったら誰にあげたいか、お父さん、お母さんと相談して決めてくださいという問題などが出題されました。
学校側は、自分の意見を言える子どもを求めていることがわかります。

コロナ禍でのマスク生活が続いていることによるデメリットは以前にもお伝えしました。私自身子どもとやり取りする中で、マスクをしていると発言しなくてよいような空気感があり、声がけをしてもなかなか反応がないと感じています。
学校側もこの点に気づき、「もっと話をしましょう、マスクのいらないご家庭では、たくさん会話をしましょう」というメッセージを伝えているのかもしれません。

今年出題が目立った運筆問題

今年は例年より多く、運筆の問題が出題されたという特徴があります。
その背景に、今年6月、雑誌「AERA」の記事で、子どもの「手書き離れ」が学力低下を招く恐れがあるという報道がありました。手の力が弱いため、書いてあることが判明できないようになってきたということが、小学校の現場からも報告されていたのです。デジタル機器を使用する子どもたちが増えて、書く力が弱まっていることが問題視されています。

 これまでの小学校入試でも、点線をなぞる、迷路の中に道を書く、色を塗るなどの問題は出ていました。ただ、私たちが予想した通り、今年は例年以上に運筆問題の出題が目立ちました。まさに小学校で起きている、いまの課題を反映した出題であったと思います。

学校が求める幼少期の基礎は「主体性」

小学校入試の問題を分析していくと、学校側が求めている幼少期の学力の基礎が何かがわかります。ペーパー試験では、数概念、言語能力、図形の基礎などが取り上げられていますが、そこで共通して本質的に問われているのは「子どもが物事に主体的に関わる力」です。幼少期にどれだけ物事に主体的に関わり、自分で考え判断して行動する力を身につけてきたか、ということです。ペーパー問題をどれだけ解いたか、ということではありません。

学校側も、アクティブラーニングや主体的な学びなどをキーワードに、非認知能力をいかに伸ばしていくかという方向に舵を切り始めています。試行錯誤する学校は今、1年生に何を求めているのか。これを読み解くことは、小学校受験にチャレンジする、しないに関わらず大変意味があることだと思っています。


【プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)】

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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