2021.12.20
学びインタビュー 小内三奈

「受験を支える親の力~小学校と中学校受験、どっちが大変なの?」講演会:前編

「みらのび」1周年を記念して12月5日、幼児教室「こぐま会」の久野泰可代表と、教育家・小川大介先生をお招きし、『受験を支える親の力~小学校と中学校受験、どっちが大変なの?』の対談イベントを開催しました。合計で500人を超える方に視聴いただいたイベントを、2回に分けてレポートします。小学校入試と中学校入試それぞれのメリットとデメリット、受験という機会をとらえて親はどんな力を身につけたら良いのかなど、様々な疑問にお答えいただきました。

前編:小学校・中学校入試の現状と、久野代表と小川先生の講演

後編:久野代表と小川先生の対談、質問コーナー

増加する小学校と中学校受験の現状

最初に「みらのび」の平岡妙子編集長が、増加が著しい小学校と中学校受験の現状について解説しました。

2022年度入試の首都圏での主な私立小・都立小の志願者数の速報データが下の表です。洗足学園小学校(神奈川県川崎市)は、HPにも「本校では卒業生のほぼ全員が、有名国私立中学校へ進学しています。進路サポートルームがあります」とはっきりと書かれていることもあり、中学受験も視野に入れた志願者が増えています。東京農業大附属稲花(とうか)小学校(東京都世田谷区) は、1年生から毎日英語科のカリキュラムがあることで人気です。全国で初めてとなる都立の小中高一貫校、都立立川国際中等教育学校附属小学校は驚くほどの志願者を集め、倍率は30・98倍となっています。

中学校受験も過熱する一方です。下記の表は首都圏の小学校6年生の児童数と中学受験者数の推移です。リーマンショック後に減ったのですが、2015年を機に増加を始めました。2014年に文科省が大学入試改革をすると発表したことで、親がいろいろと不安を感じたことが要因になっていると思われます。さらに来年2月の2022年度入試はこれまでの模試の受験者数から、昨年度比103%の増加になると予想され、過酷な受験になると言われています。

これだけ増加していると聞くとどうしたら良いのか、親は不安になってしまいますよね。 中学校受験があまりに過酷なので、小学校から受験した方が良いのか。でも、それも大変なのではないかと悩みが尽きません。このことを踏まえて、久野先生と小川先生にお話をいただきます。

こぐま会久野代表が語る「小学校受験のメリットとデメリット」

小学校受験の特徴と難しさ

小学校受験には教科書がありませんし、どんな問題が出るかという情報が学校側からほとんど開示されていないのが特徴です。
また、小学校受験は主に「ペーパー試験」「行動観察」「三者面接」の3つの総合点で評価されます。
これは中学校以降の受験との大きな違いで、対策しようにも学習のやり方がわからないところに難しさがあります。
そのため、過去問を使ったトレーニングに陥るケースが多くあり、子どもに相当大きな負担がかかりますし、教え込みの教育は将来の子どもの成長の芽を摘み取ってしまいかねません。

子どもの主体性をどう育てるのか

小学校受験をメリットにつなげるには、学びのスタートとして小学校受験を考えて、その後につながる力をどう育んでいくか、というとらえ方が大切になります。
こぐま会で最も大切にしているのは、「子どもの主体性をどう育てるか」ということ。小学校側は、「自分で考え、判断し、行動できる子」を評価していると思います。
主体性を育むために大切になるのが、親子関係の取り方です。

ポイントは3つあります。1つ目は、一緒に学ぶことの前に、まずは一緒に遊ぶ経験をいかにもつか。子どもは遊びの中で学ぶのです。
2つ目は、「子どもを信じる」こと。信じることによって子どもの成長に期待し、それを見守る姿勢が大事です。
3つ目は、「試行錯誤する時間を大切に」する。幼児期には、知識を与えるのではなく、子ども自身が失敗を繰り返しながら試行錯誤する時間が大切。大人はその時間を辛抱強く待つことが必要です。

ある小学校から「子育ての総決算として入試を受け止めてください」とメッセージがありました。幼児教室に預けて訓練をして入試に臨むのではなく、学びは生活や遊びの中にあるもので、年齢にふさわしい学びを重ねる。その先に入試があると考えるべきだと思います。

小学校受験に挑戦することをメリットにするためには、将来の学びの基礎となる「考える力を育てる」ことを目的に考えてもらいたいです。
実際、最近の入試問題は考えさせる問題がとても多いです。試験の合否に関係なく、幼児期に考える力を身につけることは次のステップにつながっていくのだと受け止めていただきたいと思っています。

小川先生が語る「中学校受験のメリットとデメリット」

「学力 努力する力 親子が信頼する力」を育む

中学受験をすべきか色々と迷うと思いますが、メリットもあることをまずはお伝えしたいです。中学受験は、3つの力を育てくれます。

1つめは、「学力」です。受験をしない子と比較して、圧倒的に出会う「知識量」が多くなります。「知識量」が増えれば考えるきっかけが増えていくので、知識をもとにどう読み解けばよいかと「考える習慣」がつきます。そして、わからないことは「調べる習慣」も身につきます。これらの「学ぶ力」がついて、トータルで伸びたときに学力が伸びていきます。

2つ目は「努力する力」です。やれば必ずできるようになるのが中学校受験のテスト。大切なのは、テストで○がついたところを誉めることです。「頑張ったから○がついたね」という風に親子でテストに関わっていくと、「次はもう少し頑張ってみよう」という力が育まれやすいです。「頑張った分だけいいことがある」という確信をもてるのは、大きな価値だと思います。

3つめは「親子が信頼する力」です。親は毎日、課題に取り組む子どもの姿を見続けることになりますから、子どもの得意や不得意、頑張っていることに詳しくなります。子どもの側は、親が一所懸命寄り添ってくれていることを感じ、愛情のシャワーを受け続けます。 受験に健やかに関われれば、親子の信頼の柱が太くなり、その後の子離れ、親離れの力も高まっていくことになります。

「お金 時間 心」が削り取られる

一方、中学受験のデメリットは、「お金」「時間」「心」が大きく削り摂られること。とくに、親の心は削られまくります。この3つとどう付き合うべきかが中学受験を傷ついたものにするかしないかの分かれ目になります。

お金

まず、家族の人生計画における中学受験での予算を決めておきましょう。塾の言いなりになるのでなく、家庭内でお金の使い方について話し合い、コンセンサスを得ておくことがポイントです。

時間

得点を上げる学びにするには、授業、宿題、振り返り、テストという「学習サイクル」を理解することです。このサイクルを意識してあげることで勉強の無駄を防ぎ、合理的な学びのステップを提供してあげられます。

子どもの脳の使い方による「学びのスタイル」を理解することも大切です。学びやすさが変わるので、同じ時間勉強しても学ぶ量が増え、時間のコントロールがしやすくなります。

塾カリキュラムの研究も欠かせません。目の前の単元ばかり見ていると、学習にメリハリがつけにくくなります。来年、再来年の塾カリキュラムを確認し先を見通すことも重要です。

削られる心を支える方法は、人に話を聞いてもらうことに尽きます。中学受験家庭をしていくご家庭には、ぜひ家族がお互いの話を聞く習慣を育てていただきたいです。お互いの存在を大事にすることで、子どもの成長過程のさまざまな悩みに対して「我が家なりの付き合い方」を決めていくことができると思います。

後編はお2人の対談と参加者からの質問に答えます。


【プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)】

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

【プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)】

教育家、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。京大法卒業後、受験指導、幼児期からの才能発掘、親子関係カウンセリングなど幅広く活動。6000回以上の学習相談、子育て相談で培った洞察力と的確な助言が評判。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』など著書は20冊以上。新刊「自分で学べる子の親がやっている『見守る』子育て」が好評発売中。見守る子育て研究所 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

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「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可代表」の記事一覧

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小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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