2021.12.25
学びインタビュー 小内三奈

「受験を支える親の力~小学校と中学校受験、どっちが大変なの?」講演会 :後編

幼児教室「こぐま会」の久野泰可代表と、教育家・小川大介先生をお招きした『受験を支える親の力~小学校と中学校受験、どっちが大変なの?』の対談イベント。合計で500人を超える方に視聴いただいたイベントの後半記事では、お2人の対談と、参加者から寄せられた質問に丁寧に答えていただいた内容をお届けします。

前編:小学校・中学校入試の現状と、久野代表と小川先生の講演

後編:久野代表と小川先生の対談、質問コーナー

対談のポイント

  1. 受験を取り巻く社会の変化
  2. 合格のために大切なこと
  3. 受験を親子の幸せにつなげる秘訣

【対談1】受験を取り巻く社会の変化

――小学校受験に挑戦する家庭の層に変化はありますか?

久野:昔は、大学まで一貫校に行かせたいとか心の教育を大切にしたいという方が主流でしたが、最近は中学校受験をさせたいから、英語教育をしっかりやってもらって海外の大学を目指したいからなど、小学校受験に対する動機や考え方が多様化してきています。

小川:一部の特殊なご家庭のものというイメージだったものが、東京では小学校受験がカジュアル化した印象があります。受験現場で親御さんとのミスマッチは起きていないですか?

久野:中学校受験が難しいなら小学校からという考え方で、層は広がった感じがします。カジュアル化の一つの要因は、これまで働くお母さんは小学校受験で不利なのでは?と思われていたのが、働く親に寄り添ったアフタースクールなどを学校側が用意するようになったことで、いままでと違う層へと広がっている面があると思います。

小川:小学校受験と中学校受験では、ペーパー試験を解く意味づけ、とらえ方が違うと思います。小学校の先生は受験を通して子どもの何を見ようとお考えなのでしょう?

久野:「この点数なら入れますよね?」というご相談が多いですが、小学校受験はペーパー試験も大事ですがそれだけでは決まっていきません。行動観察、面接も含めた総合点で評価しています。そこが中学校受験とは違って、難しさは確かにあると思います。

小川:遊んだりチームワークをしたりする姿の中で、その子の思考の特性、マインドなどを見ながら、うちの学校に来た時にこの子は輝いているだろうなというところを先生たちは見つけ出そうとするわけですよね。

久野:そうですね。今年ある学校で行われた行動観察の課題の一つに「みんなで輪飾りを作って天の川にしよう」という問題がありました。同じ課題が病院のお医者さんの研修でも行われたそうです。今はチーム医療が大事ですよね。学校教育も「みんなで一つの目標に向かって頑張ろうね」ということを大事にしています。そういう点で、行動観察は意味があるかなと思っています。

【対談2】合格のために大切なこと

――合格のためにはどのようなことが大切になりますか?

小川:中学校受験も今、「21世紀型入試」などの形もあり、面接やグループ討議を採用するなど入試の方法が多様化してきています。これまで以上に、学校側からのメッセージをきちんと読み解いていくことが大事になっています。

例えば、海城中学校は時代の変化に左右されない人材育成を志して30年前から大胆な改革に着手してきましたが、そのメッセージは社会の入試問題を記述中心式に変えたことで明確に宣言されました。女子学院中学校は、社会で活躍する女性が輩出される校風ですが、スピード重視の問題が多数出題される入試は、なるほど決断力、判断力を測る出題なんだなと感じます。

入試も多様化する時代だからこそ、入試問題に込められた学校からのメッセージを受け取り、受験のその後も考えた大きなストーリーの中で受験を捉えていくことが、幸せにつながるのではと思っています。

久野:おっしゃるように学校の教育方針を反映した出題になっていると感じていて、学校側が何を意図してその問題を出してくるかを常に私たちも分析しています。

「ペーパーで測れる能力は知れている。遊べない子は伸びない。だから行動観察をやっているんだ」とおっしゃっていた先生がおられます。ペーパーテストが何十枚も出ていた時代から、今は行動観察が重視されています。その中で見ようとしているのはやはり、「考える力」です。

小川:小学校受験では、得点力的なものじゃなくて、学びを楽しむことや一歩を踏み出すその子らしさをどう育むかかが大事なのかなと、いまお聞きしていて思いました。その踏み出し方もガツガツ行く子と、みんなの様子を観察しながら、でもその子の心の中で盛り上がっている子とか色々います。子どものタイプによって小学校のスタイルとの相性が色濃く出るように思いますが・・・。

久野:どういう学校に合っているというのは教育の中で変化するものなので、今の子どもの様子を見てこの学校はいい、悪いという判断を私たちはしないですね。ご家庭として何を期待するのかが基本で、それを伺いながら学校の教育方針に合わせて少しこう変えていこう、ここを伸ばしていくと良いというスタンスでお伝えしています。

【対談3】受験を親子の幸せにつなげる秘訣

――たとえ不合格になっても、受験を親子の幸せにつなげるための秘訣はどんなことでしょうか?

久野:色々な選択肢がある時代です。小学校受験で目指す学校に合格できたからもう安心だと考えると、次の段階で問題が起こりやすいです。受験は成長の通過点と受け止め、次にまた大きな目標があるんだという考え方で進んでいってもらえるとご家庭の一つの幸せにつながっていくのではないかと思っています。

小川:中学受験は取り組む期間が長いので、この子すごいなと思えるチャンスが沢山あります。大変なことがずっと続くのですが、色々な経験をしながら、この子なりになんとかなるだろうという気持ちをいかに育むかが親側の秘訣だと思います。

子ども側は、ご縁のあった学校をどう好きになるか。入学してからのその子なりの時間、喜びをどう作っていくかという点に目を向けられれば、1、2年経てば頑張って良かったと言えるようになります。子どもは強いです。それまでの子どもの努力はもう身に備わっているので、全く心配する必要はないです。

だからこそ、これからをどう応援し、楽しみにしていけるか、親側の捉え方さえ気をつければ子どもは勝手に幸せになりますよ。親側の心構え、心がけが一番大事ですよね。

久野:小学校受験がなかったら、これほど夫婦で子どもの将来について話し合ったことはなかったという感想が毎年すごく多いです。そういう風に考えられれば幸せなんじゃないかと私は思いますね。

すべての子どもに可能性がある

読者の皆さんからいただいた質問にお答えいただきました。

小川:その子の今現在の状態を切り取って向いている・向いていないを判断する必要はなくて、どの子もポテンシャルはもっています。
ただ、受験を家族で歩んでいくだけの状況、環境が整えられるかはケースバイケースだと思います。
子どもの好奇心の度合いや性格などによって、その子に応じた環境を整えてあげる必要があります。能力、才能の話ではなく、今ご家庭でそれが理想的にできる状況なのかによって違うだろうと思います。

久野:小学校受験の場合、ご自身が受けてきた教育環境の違いから、受験すべきかどうかという段階から夫婦間で揉めるご家庭も多いんですね。意見の食い違いがあるとちょっと向いていないかなという感じがします。

もう一つは、子どもの成長のプロセスを楽しめるか、一緒に子ども自身と成長していくとう気持ちになれるかです。お父さんお母さんが怖い先生役になってしまうと、結果として子どもを潰すことになってしまいますから、そういうご家庭には難しいと思います。
どんなお子さんも参加する資格がありますし頑張ってほしいですが、決めたことは徹底して実践し乗り越えるだけの意志がないと厳しいかなと思います。

小川:親御さんが、早めに第三者に相談する能力をお持ちかどうかも小学校、中学校受験での大切な要素だと思います。それから、東京と地方では受験についての環境、事情が大きく異なりますから、地域特性を踏まえて考えた方が良いですね。

小学校受験は遊びの中で学ぶ 中学校受験でも休む時間は必要

久野:自然に触れ、その中で色々なことを学びとることが前提になければ絶対合格につながりませんし、行動観察は集団で行うテストですから、一人で勉強すればいいということではないです。お友達と遊んだり、一緒に自然に触れたりするという時間がとっても意味があると思っています。

ですから、小学校受験の場合には勉強漬けの日々にするは必要ないですし、逆にそれはマイナスに働くケースが多いです。

小川:学習のカテゴリーの中でいかに遊べるか。理科で学んだことを植物園に行ったときに家族で盛り上がれるようなご家庭だといいですね。とくに、小学校1年から5年の6月くらいまで、いかに学びの中で遊べるかはポイントかなと思います。

学習することによって1日中遊ぶことはできなくなっても、勉強漬けはまずいです。学年が上がるにつれて勉強量が増えますけど、6年においても1日にせめて30分でもいいからボーっとしたり、何をしているかよくわからない時間っていうのは是非作ってあげてほしいです。
取り組んだものを子どもが使えるためには、手を止めている時間が必要なんですよ。

親も子どもと一緒に遊び、遊びの中で学ぶ

久野:子ども自身がやりたくないものを無理やりやったって習慣化できるはずがないし、学習そのものが楽しくなかったら、集中できるわけがないですよね。もう少し楽しくできるように、お父さん、お母さんも遊びの中で一緒になって学ぶことですね。

ペーパーを習慣化するのは大事ですが、その前に生活経験や遊びを通して学び、その延長としてペーパーを行うという考え方に立っていただければ習慣化できるのではと思います。

受験をしてもしなくても、「学ぶ力」をつけてあげることが大切

小川:良い公立高校に挑戦できる子はどんな子かというと、学ぶ意欲があり、自ら学習する習慣がついていて、知識欲があり、記憶することができる子です。東京などでは最難関といわれる公立高校にチャレンジするには、公立中学校の定期試験でほぼ満点を取り続けるのが当然のように難易度が上がっています。

そうした最難関高校受験に参加している子どもたちは、小学校の間に学ぶ力は上げているわけで、それが中学校受験という仕組みを使って高めたのか、家庭の学習習慣として当たり前のように高めたのかの違いがあるだけです。

本人がやりたくなった時に勉強すればいい、それまでは勉強の積み重ねはしなくてもいい、という意味で公立中進学からの良い公立高校挑戦とおっしゃっているとすれば、さすがに厳しいと思います。他の受験生は、小学校の間に学ぶことは当たり前にしている子たちですから。首都圏の方、特に東京在住の方はよく現実を見ないといけませんね。

また、地方で公立トップ校に進むお子さんも、地域特性や周りからの声で、やはり早い時期から学ぶ力を備えて受験への意識付けがなされていた面があるでしょうから、何の取り組みも努力もなしに育っているわけではありませんしね。

傷つくのはむしろお母さん 子どもを信じて前を向くこと

久野:小学校受験では、受験という仕組みをお子さんに伝えないまま試験を受けるご家庭も多いのですが、とにかく次の目標を立てて、それに向かって頑張りましょうとお話をしています。毎年2月になると、中学校受験で○○に合格できましたというお手紙をいっぱいいただきます。

小学校受験の場合には、お子さんよりもお母さんの方が傷つきやすいところがありますが、合否によってその子の人生が決まるわけではありません。また次の山がやって来るので、次の目標をしっかり持つことで乗り越えていただきたいと思います。

小川:不合格通知を見た瞬間は、それは絶望感だと思います。でも、子どもは頑張ってきた分だけ成長する能力が高まっていますから、たくましく前を向いて歩いていきます。親御さんはその子どもの姿を見て、色々大変だったけどこうやって今頑張れている子どもでよかった、ありがたいなっていう気持ちを徐々に持つことができます。子どもへの信頼を上書きしていくことで、傷を感じないようになっていく。

失恋の傷は次の恋が忘れさせてくれるようなものです(笑)。ふと後ろを振り返ったら、そういうこともあったねという日がやってきます。

親へ向けたメッセージ

――最後に親の方へ向けたメッセージをお願いいたします。 

久野:かけがえのない幼児期をただ何となく過ごすのではなくて、子どもの成長や進路を踏まえた上で、今何をすべきかを考えていただきたいです。その中で小学校受験を考えていただくと、まっとうな教育として受験が達成できるのではと思っています。

小川:教育について考える材料が入ってきたときに、我が家の親子関係においてどう使うか、自分たちに引き戻して考えてほしいですね。受験も塾も、使うものです。これからの子どもの人生においてどういう意味づけにするのか、という使い方でですね。

――とても心に残るお話をどうもありがとうございました。


【プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)】 

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

【プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)】

教育家、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。京大法卒業後、受験指導、幼児期からの才能発掘、親子関係カウンセリングなど幅広く活動。6000回以上の学習相談、子育て相談で培った洞察力と的確な助言が評判。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』など著書は20冊以上。新刊「自分で学べる子の親がやっている『見守る』子育て」が好評発売中。見守る子育て研究所 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

関連記事:「受験を支える親の力~小学校と中学校受験、どっちが大変なの?」講演会:前編

関連記事:【速報】2022年度小学校入試を振り返って  幼児教室「こぐま会」久野泰可代表

関連記事:夢中を「見守る」子育て 第5回 「私は中学受験する子の母親にはなれないの?」

「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可代表」の記事一覧

「夢中を「見守る」子育て 教育家・小川大介」の記事一覧

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

関連記事 Related articles

新着 New!

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す