2022.01.04
習い事Q&A 北川サイラ

「おうちモンテ」とは?始めるためのステップと100均で簡単にできるアイデア6選

自宅でモンテッソーリ教育をする「おうちモンテ」が親子の間で流行っています。低コストの材料で教具を手作りし、気軽に楽しめることが人気の理由の一つにあります。おうちモンテとはどういうものでしょうか。ホームメイドモンテッソーリ協会の藤崎達宏理事長と、横浜・大阪モンテッソーリこどものいえの伊藤あづさ代表に聞きました。100均グッズで簡単に作れる6つのアイデアなどを紹介します。

コスパが良い「おうちモンテ」 おうち時間と重なりブームに

藤崎さんにおうちモンテのブームのはじまりなどについて伺いました。

 おうちモンテとは?

A. モンテッソーリ教育とは、イタリアの医師であるマリア・モンテッソーリが100年以上前に確立した教育法。 「おうちモンテ」は自宅できるモンテッソーリ教育の実践法を指します。

日本では将棋界の藤井聡太さんが幼少期に受けた教育法として知られています。また、GAFAM(Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoft)の創始者5人のうち4人がモンテッソーリ教育を受けており、時代を切り開く次世代の子どもを育てるには豊かな幼少期を過ごすための環境を整えることが注目されています。

 おうちモンテのブームが起きたのはなんで?

A. モンテッソーリ教育を受けられる園の数は地域格差があり、限られています。モンテ園に預けようと思うと、教育費もかかります。専用の教具も買うと高いです。だったら100均グッズや自宅のものを上手く使って「おうちでモンテやろうよ!」と思う人が増えたのがはじまり。コスパが良いのは、嬉しいですよね。

ブームの背景には新型コロナウイルス感染症の影響もあると考えられます。保育園・幼稚園などが休園し、おうち時間が増えたことにより、さてどうしようかと多くの親が悩みました。お母さんたちの間で人気のSNSアプリ「インスタグラム」では、100均グッズで作るおうちモンテのアイデアがたくさん載っています。おうち時間のときにおうちモンテが身近にあったこともブームをさらに加熱させた要因だと思います。

おうちモンテをはじめる前にこれだけはおさえたい!5つのステップ

おうちモンテをはじめる際には「5つのステップ」を理解することが大事だと、藤崎さんはいいます。

【ステップ1】子どもの発達段階を知る

モンテッソーリ教育は0~24歳を4つの期間にわけて「発達の4段階」として位置づけています。

  1. 0~6歳:乳幼児期…0~3歳:無意識的に全てのことを吸収する時期、3~6歳:吸収した動きを繰り返し練習することで習得していく時期
  2.  6~12歳:児童期
  3. 12~18歳:思春期
  4. 18~24歳:青年期

かつて乳幼児期の子どもは、「何もできないから親や先生のいうことを聞いていればいい」と思われてきました。しかし、モンテッソーリは、これは大きな間違いだと指摘します。手足を使った運動、集中力や社会性など、人生を生きていくための土台となる能力の80%が6歳までにできあがるため、乳幼児期の過ごし方は最も大切だといいます。まずは、親自身が子どもの発達段階を理解しておくことが大事です。

【ステップ2】それ、イタズラじゃない!子どもの敏感期を逃さないための予習


横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供

敏感期とは、子どもが本能的に何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返す期間のこと(表参照)。マンションの6階に上がるとき、多くの人はエレベーターを使うと思います。でも、「歩く」ことに敏感な子どもは「6階まで階段で行きたい!」というわけです。逆に、この敏感の時期を過ぎると、歩くことに敏感でなくなり、「階段で上がろう!」と押しつけても苦痛に感じてやりたがりません。

ティッシュペーパーを無我夢中になって引っ張ってみたり、エレベーターやテレビのリモコンを押してみたり…。子どもはティッシュペーパーを「引っ張れるかな?」と、試したくてしょうがいないんです。「すごい~どんどんでてくる!こんなことも俺できるんだ」と、確認しながらその行為をしています。エレベーターのボタンを押し、ボタンが光るだけで、子どもにとっては大きな衝撃なんですよね。「俺は社会に対してこれだけの影響力があるんだ!」と、自分の行為が世の中のものに対して変化を与えられることに喜びを感じています。

何でも引き出したいという子どもの欲求に合わせて作られた教具「チェーンひっぱり」=横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供何でも引き出したいという子どもの欲求に合わせて作られた教具「チェーンひっぱり」=横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供

これらの行為は、大人にとっては一見、意味がわからないただの「イタズラ」にしか見えず、つい「やめなさい」と注意したり、物を取り上げてしまったりします。でも、これらの行為は子どもたちが生きていく力を身につけるために、「今」やらなければいけない課題なんです。「神様からの宿題」だと思って、子どもたちの行動を見守ってほしいと思います。

そしてそれらの行為を思う存分、快く遊べるのが「教具」の役目です。そのためには、子どもが今どの敏感期にいるのかを予習し、敏感期に合った教具を与えましょう。 

【ステップ3】子どもの「夢中」を観察する

子どもが今、どの敏感期にいて、何に興味を持っているかを知るためには子どもを観察することが必要です。1日に10分だけでもいいので、手も口も出さず、ただ子どものやっていることを見守りましょう。きっと子どもが集中していることや、日常生活の中でつまずいていることが見えてヒントになるはず。

【ステップ4】ホームメイド教具で子どもの環境を整える

<教具をつくるポイント>

  • シンプルさ…一つの教具に一つの目的があり、説明なしで瞬時にやることがわかることが望ましいです。できることがたくさんあると子どもはどの能力を伸ばしたら良いのかがわからず、混乱してしまいます。
  • 見た目が魅力的…本物の自然素材を使って五感を刺激するのも良いでしょう。
  • 子どもサイズ…教具だけではなく、子どもの背の高さに合った机と椅子を用意することで、一人でできる環境を整えましょう。
  • 安全性…誤飲を防ぐために、口にものを入れない適齢期にあわせて与える教具を考えましょう。

【ステップ5】子どもに教具を提示

教具を提示するときは「やってみますか?」と子どもに聞いてみましょう。子どもが自ら教具を選ぶことが大切なので、もし「やらない」と答えたら「じゃあまたやりましょうね」と教具を片付けましょう。その日の気分でやりたくないと答えたのかもしれませんし、「こんな赤ちゃんみたいなことやりたくない」もしくは「難しくてやりたくない」と思ったのかも。

1週間後にやりたいか再度聞いてみて、やらなければ、「その子にぴったりの仕事を提示できなかったんだな」と思い、別の教具で再チャレンジを。子どもが何度も繰り返してその教具を使うようでしたら、それはその子が教具にはまっている証拠。飽きるまで、存分に取り組ませしょう。

100均で簡単につくれる!おうちモンテのアイデア6選

これまで300種類のおうちモンテの教具を考案し、モンテッソーリ教育の教室を運営している伊藤さんに、100均の材料で簡単に作れるアイデアを紹介してもらいます。

 ①小さいピッチャー(1歳半~)

敏感期:運動(そそぐ・手首をひねる動作)

用意するもの:ピッチャー4個(深さ4~10センチ)、粒の大きな豆(白豆や小豆など)、水

やり方:白豆などが入った小さめのピッチャーを手に取り、空のピッチャーにそそぐ教具。手首をひねり、最後の1粒まで入れることは子どもにとってなかなか難しい動作です。白豆をあけ移すことができたら、小豆や米など、粒が小さい物に挑戦しましょう。ひねる動作は蛇口をひねったり、水筒を開けたりするときの動作にもつながっています。上手にできるようになれば、牛乳やジュースなどをそそぐこともできるようになります。

②ストロー刺し(1歳半~)

敏感期:運動(落とす、刺す動作)

必要なもの:穴が空いているシェイカー、ストロー(10センチ×10本)、ストローを入れる容器

やり方:ストローを穴に入れて落とす教具。3本の指で鉛筆のようにストローを持つように意識しましょう。手でストローを握りながら、シェイカーの穴をめがけて刺すという動作は目と手を連動する練習になります。ストロー刺しができるようになったら、小さい穴が一つ空いている容器に楊枝を刺してみましょう。対象が小さくなるほど、集中力が要求されます。

*楊枝の先端が尖っている場合ははさみなどで丸めてください。

横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供 横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供 

 ③トングでうつす(2歳~)

敏感期:運動・感覚(はさむ、うつす、わけるの動作)

用意するもの:キューブが小さい製氷皿、小さめのポンポン(数は製氷皿のキューブに合わせる)、トング

やり方:ポンポンをトングでつまみ、キューブに入れていく教具。何回も同じ活動をすることで、集中力が研ぎ澄まされます。様々な色のポンポンを混ぜると、色ごとにきっちり分けながら移したい衝動に駆られます。同一のものをペアリングしながらカテゴリーごとに分類する力が自然と身につきます。

④蝶結び(3歳~)

敏感期:運動(結ぶ動作)

用意するもの:穴が空いているパンチングボード、色違いの紐2種類(30センチ×12本)、セロテープ

やり方: 靴紐やおお弁当包みなど、「蝶結び」をする場面はたくさんあります。子どもがはじめて蝶結びをするときは、手の動きがわかるように、色違いの紐を使うようにしましょう。ボードの穴に通しやすいように、紐の片端だけセロテープを巻き付けましょう。紐をボードの穴に通し、紐が抜けないようにそれぞれの端に結び目を作ってください。蝶結びをする歳には、普段の8分の一程度のスピードでゆっくり手本を見せましょう。「青のトンネルを赤が通るよ」とわかりやすく伝えてみるのも良いでしょう。

*動画では紐6本を使用しています。


⑤小さい黒板(4歳~)

敏感期:言語・秩序(書き順を意識)

用意するもの:A6サイズのバインダー、半透明でザラザラしているクリアホルダー1枚、チョーク、黒板消し、チョーク入れ、ひらがなの用紙

やり方:何かを書きたい気持ちが強くなる時期におすすめなのが「なぞり文字」。バインダーにひらがなの用紙とクリアホルダーを一緒に挟み、クリアホルダーの上からチョークで文字をなぞります。黒板消しで何度もチョークを消すことができるので、繰り返し使えます。チョークは筆圧が弱い子どもにとってもおすすめ。順番にこだわる秩序の敏感期でもあるので、正しい書き順をまず親が見せ、文字を書き終えたらひらがなの文字を声に出しましょう。

⑥イチゴの消しゴム(4歳~)

敏感期:数の敏感期

用意するもの:1~10までの数字が書かれた用紙、小さいもの(くだものの消しゴムやボタンなど)

やり方:数字と現物と数詞を一致させるための教具。数字を声に出したら、数にあわせて消しゴムなどを置きます。奇数であれば、最後の消しゴムが上の2つの消しゴムの間にくるように置きます(写真参照)。並べ終えた際に、真ん中に消しゴムがあるものは「奇数」、ないものは「偶数」だということをぱっと見て教えるためです。どの数字が割り切れて、割り切れないのかを瞬時にわかることは、算数力にもつながります。

完璧を求めなくていい 「ゆるモンテ」で十分

横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ提供

おうちモンテを実践するうえで、藤崎さんと伊藤さんに親の心構えについて伺いました。

親から「おうちモンテは毎日どのくらいすればいいのですか?」と聞かれることがよくあります。でも私たちは、これくらいすればこうなる、という結果を求めるような思考は危険だと考えています。子どもはマニュアル通りに成長しない。このくらいやればこうなるという方程式も存在しません。 

子どもに教具を与えても、親が想像もしない行動をとる子もいます。あれしちゃいけない、これしちゃいけないといわず、ときには脱線するのも良しとする。与えられた教具を受け身で取り組むのと、自ら遊びをどんどん自分流に創り出すのと、どっちが尊いかというと、後者だと思います。思うようにいかなくても、子どもが集中できて楽しければいいのです。子どもの「今」に目を向けて、ゆるく見守っていただけたらと思います。ぜひ親子でおうちモンテを楽しんでください。

写真撮影:北川サイラ

【プロフィール藤崎達宏(ふじさき・たつひろ)】

一般社団法人ホームメイドモンテッソーリ協会理事長。1962年生まれ、横浜出身。明治大学商学部卒業後、外資系金融機関に20年勤務。その後独立し、4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した子育てセミナーを全国で開催。日本モンテッソーリ教育綜合研究所認定講師(0~3歳)、国際モンテッソーリ教育協会認定講師(3~6歳)。著書に「0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!」「3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!」(三笠書房)など。

【プロフィール:伊藤あづさ(いとう・あづさ)】

大阪生まれ。15歳の母。 横浜・大阪モンテッソーリこどものいえ代表。教室には月間250人の子どもが通っている。日本モンテッソーリ教育綜合研究所認定講師(0~6歳)。手話やジェスチャーを使って赤ちゃんとコミュニケーションする育児法「ベビーサイン」の講師。2012年に自宅で幼児教室の運営をはじめ、おうちモンテを提唱。SNS「インスタグラム」でもおうちモンテのアイデアを発信中。

藤崎さんと伊藤さんは保護者ら向けに「モンテッソーリ教育オンライン講座」を開いています。6カ月間受講し、所定のレポートを提出後、一般社団法人ホームメイドモンテッソーリ協会より「ホームメイドモンテッソーリ認定講師」の資格が授与されます。定員20人。講座情報はこちらから。

関連記事:モンテッソーリ教育とは?子どもはどう育つ?特徴・メリット・注意点を解説

関連記事:シュタイナー教育とは?子どもはどう育つ?特徴・メリット・注意点を解説

関連記事:レッジョ・エミリア教育とは?子どもはどう育つ?特徴・メリット・注意点を解説

おすすめの「知育・幼児教育」教室一覧

北川サイラ
北川サイラ

1992年生まれ、神戸出身。2016年に朝日新聞社入社。静岡、大津総局を経て、2020年10月から現職。小学生のころは器械体操に夢中でした。趣味は家庭菜園、寺社や銭湯めぐりなど。

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す