2022.01.08
学びインタビュー 小内三奈

図形センスを身につけるためにできる3つのこと 幼児教室「こぐま会」久野泰可代表

センスがある子どもはぱっとひらめき、苦手意識のある子どもはなかなか解法の糸口を見つけられないと、その差が顕著に出るのが算数の図形問題です。図形感覚は遺伝的なものではなく、生まれた後にどれだけものごとに働きかけたかの差によるものと言われています。幼児期に図形センスを磨くため、具体的にどんなことを工夫すればよいのでしょうか?こぐま会の久野泰可代表に話を聞きました。

図形感覚が備わっているかを判断するには?

――幼児期に、図形感覚が養われているかどのように判断するのでしょうか?

心理学者のピアジェいわく、空間概念や図形的センスはもともと人間に備わっているものではなく、生まれた後にどれだけものごとに働きかけてきたかの経験によるそうです。残念ながら小学校高学年になり「図形問題が苦手で困った・・・」となってから一生懸命勉強したからといって、図形センスというものはすぐに身につくものではないようです。

私自身、幼児期の子ども達と図形分野の学習に取り組んでいると、「理解力や解決するまでの時間に、どうしてこれほどの差が出るのだろうか」と感じることがよくあります。

子どもにどの程度の図形感覚が育っているかを判断する1つの材料として、古くからある丸、三角、真四角、長四角、ひし形の5つの基本図形の模写が知られていますが、4~5歳の子どもには「ひし形」をどの程度正確に描けるかどうかが大きなチェックポイントとなります。

三角、四角から一歩進んでひし形をうまく描くには、平行な斜めの線を2組書かなければならず、線4本すべてが斜めである点が幼児にとってはとても難しいのです。到達点を意識していない子どもは斜めにまっすぐな線を描くことができず、歪んでしまうことがほとんどです。

図形感覚が備わっているかどうか、さらに顕著に表れるのが「立方体」の模写です。お手本を見ながら立方体を描いたとき、立体の奥行きを表す斜めの線が把握できる子どもは「図形をしっかりとイメージできる子ども」です。

これはさらに難解で、実際には、真四角だけ書いて終わる子もいれば、下の図の①のように、真四角の横に長四角を描き、上にもう一つ長四角を描く子もいます。

  立方体のとらえ方≪子どもたちの模写から≫ (こぐま会提供)  立方体のとらえ方≪子どもたちの模写から≫ (こぐま会提供)

積み木を実際に見せて「この積み木を描いてみましょう」という場合にも、同じように描き方に違いが出てきます。

真四角は描けても、立方体となったときに真四角の背景にあるものをどうイメージ化したのか?何をイメージしたのか?図形感覚や空間を把握する力がどの程度身についているかがはっきりと差として表れてきます。

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試行錯誤し、自分の力でゴールにたどり着く経験

――三角形の図形をすぐに作れる子の特徴とは?

では、図形センスはどうすれば身につくのでしょうか?そのヒントとなるエピソードをご紹介します。

下の写真のように、二等辺三角形のパズル8枚を組み合わせて見本とおなじ形をつくってもらうとします。「3分間で6パターンの形をつくってください」と説明していざスタートすると、時間内に次々と完成させていく子がいる一方で、10分かけても2つくらいしか完成させられない子ども、うまくいかず早々に諦めてしまう子どもがいます。

三角パズルを使ってお手本通りに図形を作る様子(こぐま会提供)三角パズルを使ってお手本通りに図形を作る様子(こぐま会提供)

 特徴的なのは、途中ですぐに諦めてしまう子どもは、数枚のパズルを組み合わせて見本と同じ形にならないことがわかるとすぐにやめてしまうのです。三角形をもう一回転させてみたりひっくり返したりしたらできるのに、一度うまくいかないとそこで手が止まってしまう。大人でも、一回組み合わせただけではなかなか同じ形にならないもの。回転させながらあれこれやるうちにやっと同じ形にたどり着けるのです。

一方、時間内にすべて完成させた子どもは、とりあえずやってみて、だめならどんどん手を動かします。回転させてみる、だめならもう一度回転させてみる、と繰り返しながら見事にお手本通りに完成させていきます。

そこで思うのは、すべて完成させた子どもには、明らかに図形感覚、空間概念が備わっているということです。自分の手を動かして何かを作っては壊し、壊してはまた作ってという経験をたくさんしてきたのだろうと思われます。

生まれてから現在に至るまでの間に、試行錯誤を繰り返し自分の力でゴールにたどり着くという経験が豊富な結果であると思うのです。

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「図形を分割」する力は、砂場のお山づくりから

三角パズルを使った「図形を組み合わせてある形をつくること」からさらに進むと、小学校では図形をある形に分ける、補助線を入れて角度や面積を求めるなど「図形を分割する」問題へと発展していきます。

この「図形構成」と「図形分割」は裏腹の関係なので、幼児期に積み木などを使って「図形構成」を学ぶ中で自然と「図形分割」も学んでいることになります。

ただ、「図形分割」では、物事を多角的にみる力、別の視点に立って考える力も合わせて求められます。この「図形分割」もまた、図形センス、空間概念が備わっている子どもは、いとも簡単にクリアーすることができます。

幼児期に、砂場で思いっきり遊んだり、パズルや積み木に多く触れたりした子どもは図形センスが育ちやすいと思います。でも、砂場で山やトンネルを作ろうとしても、いつもいつも自分の思うようにいくわけではありません。作ってはみたもののうまくいかなかったら壊す、別のやり方でもう一度作ってみる、と諦めずにチャレンジする忍耐力も必要です。

大きなお山を作ろうと思うなら、友達と協力する、役割分担をして作ることも必要となるでしょう。そう考えると、幼児期に試行錯誤しながら遊んだ経験が豊かな子どもは、図形的なセンスを身につけるだけでなく、他者の立場に立って考えること力も自然と養われるのだろうと思います。

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図形センスを身につけるため、生活の中でできること3つ

ここまでのお話で、幼児期に図形センスを身につけるために必要なのは、自分の身体を使って楽しみながら試行錯誤を繰り返す体験だということがおわかりいただけたと思います。そして大切なのは、どれだけ時間がかかっても子ども自身が「納得できるまで」取り組むことです。

日々の遊び、生活の中で、ぜひ以下の3つの点を意識することをおすすめします。

1.試行錯誤している時間を大人はゆったりと待つ

試行錯誤しているお子さんの隣にいるお父さん、お母さんの仕事は「待つこと」です。ついついヒントを与えたり、正解を言ったりしまったり、口は出さなくても手を出したりしがちです。でも、我慢強く見守る姿勢が大切です。忙しい毎日の中でも、意識してゆったりとした気持ちで見守りましょう。

2.子どもが簡単に壊せるおもちゃで遊ぶ

高価なおもちゃや完成したおもちゃは、最初は楽しそうに遊びますが、なかなか遊びの幅が広がっていかないことが多いです。むしろ、暮らしの中で使っているものの中にこそ遊べるおもちゃがたくさんあると思います。段ボール、ペットボトル、牛乳パックなどを活用しましょう。子どもが想像力を働かせて自由に作ることができ、すぐに壊してまた別の形に作り替えることのできるおもちゃが効果的です。一見すると廃品物のような素材こそ、幼児期にぴったりのおもちゃだと考えます。

3.積み木、パズル、粘土、砂場遊びなどで遊ぶ

積み木やパズル、粘土や砂場遊びなども、子どもが楽しみながら自由に作っては壊し、壊しては作りと繰り返すことのできる伝統的な遊びです。小学校に上がる前の幼児期にこそ、生活、遊びの中で意識的に取り入れたっぷりと遊ぶ時間をつくりましょう。

お父さん、お母さんのちょっとした工夫、関わりで、小学校入学後に図形が得意な子へと成長する土台をつくることができるはずです。子どもの図形的センスを伸ばすために、幼児期にどれだけ試行錯誤する時間を与えてあげられるか。ぜひご家庭で工夫していただきたいと思います。

【プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)】 

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

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「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可室長」の記事一覧

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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