2022.03.04
学びインタビュー 平岡妙子

子どもの探究心を持続させる方法とは? 「探究学舎」宝槻泰伸代表

子どもに好きなことを見つけて、夢中になってほしい。いまの時代の多くの親が持つ願いです。好きなことが見つかっても、「すぐに飽きてしまう」「どうしたら夢中を継続できるのか」という悩みもあります。驚きと感動の種をまく授業を毎月3000人の子どもたちに驚きと感動の種をまく授業をする「探究学舎」の宝槻泰伸代表に、探究心を持続させるために必要なことについて聞きました。

前編:子どもの探究心を持続させる方法とは? 「探究学舎」宝槻泰伸代表

後編:夢中を「広げる」と「深める」ことで身につく力

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子どもの夢中には2つのタイプがある

――子どもが本当に好きなこと、夢中になれることを見つけるには、どうしたら良いでしょうか。

いまの時代の親は、「与えられた勉強を要領良くやって、残りの余った時間で好きなことをやるのならば良い」という親は少なくなってきているのではないですか。逆に「子どもが夢中に取り組む姿を応援したい」と思う親が増えていると思います。親が応援したい夢中というのは、どうやって生まれるのかが知りたいんですよね。

――そうですね。夢中になれるものを見つけるために、「うちの子は何が向いているのかな」と習い事を探す親が増えています。習い事を増やせば、その中から夢中が見つかりますか?

まず、子どもの夢中には2種類あります。応援したい夢中と、応援したくない夢中。

応援したくない夢中は、YouTube、ゲーム、漫画。これ、親は応援したくない。でも、子どもたちは、むちゃくちゃ夢中になっていますよ!ゲームや漫画の中にも、感動して心が震えるよう良いものはたくさんある。なのに、なぜ、親は応援したくないのか。ひと言で言えば「依存型の夢中」だからです。

依存型というのは、お酒や煙草みたいにそれがないと楽しめない、リラックスできないというものですね。いわゆる、中毒です。ゲームやYouTubeがないと、楽しいことを見つけられないとなっている子どもは、中毒症状ですね。それに依存してしまっている。「ほど良く楽しんでいるならば良いんだけど」と思う親は多いですよね。

――時間を決めてパッと切り上げてやめられるのなら、親は怒らないですよね。

でも、やめられない子も多い。なぜのか。それは中毒になっているからですよ。依存型の夢中にハマることには、リスクがあります。それがないと楽しめないという状態は、目が悪くなるなど身体のこと以上に、心まで不健康になってしまう。だから、親は依存型の夢中を応援できないのです。

自発型の夢中には創意工夫がある

――依存型の夢中には、なるべくハマらないでほしいですね。

もう一方の、応援したい夢中は「自発型」の夢中です。自ら取り組む、という意味ではない。だってゲームは自ら取り組んでいるでしょ。自発型という意味は、創意工夫があるということ。クリエイティビティがあり、試行錯誤をするということです。具体的に言うと、昆虫採集、図画工作、スポーツなどが自発型ですね。

――自発型なものなら、ずっとやり続けていても応援したくなりますね。

そう、オタクのようにそればっかりやっていても、親はイライラせずに応援できます。だけどなぁ、親は自発型のものに夢中になったうえで、勉強も出来て中学受験にも受かって欲しいとか、考えたりしますよね。そのうえで依存型の夢中は「ほどほどにならやっても良いわよ」なんて思ったりしますけど、それは欲張りですよ(笑)。そんなに思うとおりになんてならないですよ。

夢中には「入門」「中級」「上級」編のステップがある

――そうですね、親は欲張りな生き物ですね(笑)。自発型の夢中は、どうやって身につけたらいのでしょうか。

夢中の道のりは「入門編」から「中級編」「上級編」までに分かれていると考えてください。例えば、音楽。いまなら、「うっせぇわ」や「NiZiU」が入門編。子どもたちが、聞いた途端にすぐに楽しめるものです。JAZZなどは中級編、クラシックが上級編となります。日本独自の芸能でいえば、漫才が入門編、落語や歌舞伎が中級編、能は上級編となるイメージですね。どの分野に夢中になるにしても、分かりやすくてすぐに楽しめるものからまずは入りますが、次第に知識が必要になり、だんだん奥が深い世界になっていきます。

どんな分野に取り組むにしても、何を手に入れると自分の子どもが夢中を深めていけるかについて、大人には「目利き」が必要になります。

――子どもが何を好きになれるのか、親が見抜いてあげる「目利き」力が必要だということですか?

そうだな、難しい言葉なんですけど、「最近接領域」という専門的な言葉があります。
ちょうど良い課題とは何ですか、という言葉です。

高すぎるリンゴは、取るのを諦めてしまう。落ちているリンゴでは、取ることに飽きてしまう。ちょっと背伸びしたら手に入る。そういうリンゴは夢中になって取りに行く。それが「ちょうど良い課題」という意味です。子どものリンゴの置き場所を、工夫する必要があるということです。

子どもが興味を持てる「ちょうど良い課題」

――さらに深い興味を持てるようにするには、少し背伸びするような「ちょうど良い課題」が必要なんですね。

わが子がいま、どのレベルにいるのか。どの課題をあげたら、その夢中が持続するのかが重要です。子どもにとって「ちょうど良い課題」こそが、一生懸命に夢中になって取り組むようになるのです。

でもほとんどの親は、子どもの夢中を伸ばす目利き力を持っていない。身につけることは難しいのです。

――親がちょうど良い課題を与える続けるのは、難しいのでしょうか。

親に出来るのは、良質な入門編、最初の入り口を用意することです。魚が好きな子に、この水族館より、あっちの水族館の方が楽しめるんじゃないかな、ということは親にわかりますよね。でもその先は子どもが飽きてしまって関心が深まらない。中級編にまで知識も関心も進まない、ということはよくあります。

東京海洋大学名誉博士のさかなクンの親も、子どものころにタコがものすごい好きだったので、魚屋からタコを丸ごと買ってきて、よく観察して絵を描くようにさせてあげることは出来た。でも魚の知識をもっと深めるには、さかなクンは魚屋さんで聞いたでしょう。親が出来るのは、タコを唐揚げにして食べさせることまでですよ(笑)。

親ができるのは、適切な専門家を選ぶこと

――「うちの子、好きなことが続かないのよ」と嘆く親がいます。子どもが好きだというので図鑑をそろえるけれど、そのうち興味を失う。「あんなに図鑑を買ってあげたのに」と嘆くだけで、その先をどうしたら良いのかわからない。

好きになったものを深めて、その知識や夢中になる力を中級編のレベルに連れて行くには、専門家に頼むしかないんです。選択肢はそれ一択。

ちょうど良い課題の「最近接領域」とは、子どもの発達を促すため、自力では難しいけれど、誰かの協力があれば出来るようになる領域のことなのです。だからこそ次の段階に進むには、専門家の力を借りること なんですよ。

好きな分野の専門家とのマッチングをサポートすることが、親の仕事です。専門家選びが大切です。

――親が何でも教えてあげよう、興味が持てるようにしてあげよう、と自分で頑張らなくても良いんですね。

それは無理。親が知っていることや出来ることは限られていますから。さらに次の段階に行くには、専門家に頼むしかないですよ。

――何でも「親の力」と言われる時代なので、親の力には限りがあると聞くと、ちょっとホッとしますね。好きな分野の専門家を頼れば良いのですね。


※後編は、夢中になった力は他の分野にも応用できることと、「探究学舎」のリニューアルについてお話を伺います。

【プロフィール:宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)】

1981年生まれ。京都大学経済学部卒。著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』『今日から塾をやめてみた』など。子どもたちに驚きと感動の種をまく、興味開発の授業を提供する「探究学舎」を2011年東京都三鷹市で開校。

写真提供:探究学舎

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平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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