2022.03.10
学びインタビュー ちゃみママ

つらかった子ども時代を変えた方法は? 軽度発達障がいの小島慶子さんの生き抜く知恵

元TBSアナウンサーで、現在はエッセイスト、タレント、大学院の客員研究員など幅広く活躍されている小島慶子さん。軽度の発達障がい・ADHD(注意欠如、多動性障がい)だと40歳を過ぎてからわかりました。子どものころは、まわりの人とのつき合い方にとても苦労しました。自分の特性とどんなふうに付き合ってきたのでしょうか。その経験を子育てに、どのように役立てているのか、2回にわたって伺います。インタビューは、発達障がいの息子(小4)の子育てに奮闘しているちゃみママが担当します。

【プロフィール 小島慶子(こじま・けいこ)さん】

1972年オーストラリア生まれ。1995年 学習院大学法学部政治学科卒業。TBSに入社し、アナウンサーとしてテレビ・ラジオに出演。1999年に第36回ギャラクシー賞DJパーソナリティー部門賞を受賞。2010年にTBSを退社し、独立。現在はエッセイスト、タレントとして活躍中。東京大学大学院情報学環客員研究員。2014年家族でオーストラリア・パースに教育移住。自身は日本で働きながら、オーストラリアとの間を往来している。

【前編】辛かった子ども時代を変えた方法は? 軽度発達障がいの小島慶子さんの生き抜く知恵

【後編】好きなことが新しい世界へ連れて行く 軽度発達障がいの小島慶子さんの子育て法

毎日が退屈で怒られてばかりの子ども時代

――小島さんはどんなお子さんだったのでしょうか。

自分自身も親や先生にとっても「大変」な子どもでしたね。幼稚園や小学校では、とにかく飽きっぽくて気が散る子でした。興味のない話は、退屈で聞いていられない。授業中、先生によく注意されていました。「空気をよめない」ことで、友だちともうまく関係を築けませんでした。

――親御さんはどう接していたんでしょうか。

家族も大変そうでした。母はいわゆる過干渉気味だったこともあり、こんなによくしてやっているのになぜ慶子は素直に喜ばないのだろうと理解に苦しむことも多かったようです。私は自分の気持ちや要望を親に伝えたかったのですが、親は「反抗」「ひねくれている」と感じたようです。その様子を見ていた9歳上の姉が「慶子がママを苦しめているからきちんとさせなきゃ」と思って、さらに私を厳しく叱ることもありました。

――友だちとうまくいかないと感じたのは、いつごろからですか。

幼稚園から中学校までは苦労が多かったですね。

私はオーストラリアで生まれ、3歳まで暮らしたんですが、その間はほぼ「母子カプセル」。父は多忙で出張が多く、姉は昼間は学校で、母は私にかかりきり。幼少期に家族以外との接点がなかったことが、子ども同士の自然な人間関係の構築に不慣れだった理由の一つではないかと思います。

――なるほど。家族しか知らない生活からいきなり幼稚園へ行ったら大変ですよね。

帰国してから幼稚園へ入園したのですが、子どもたちの集団に馴染む方法がわからない。運転に例えるなら、基礎講習なしで高速道路に放り込まれたみたいなものですね。

――小学校ではどうですか。

日本の地元小学校、シンガポールの日本人学校、香港の日本人学校、帰国してまた地元小学校、と転校を繰り返しました。シンガポール転入時にはいじめにあい、帰国して昔の友達と再会した際に、仲間外れにされたのもきつかったですね。

人付き合いの下手な自分を責めることが多かったですが、身長が高いとか帰国子女とか、色々な要因が複合的に作用していたように思います。

中学で知った「格差」と自分を変えた先生

――中学は学習院女子を受験されたそうですが、ご両親の意向でしょうか。

母は「将来のことを考えて中学受験をした方がいい」という考えでした。私は学校の勉強もつまらなかったし「小学校と同じような環境の地元の中学へは行きたくない!」という気持ちが強かった。あとはセーラー服が着たいというのもありましたね。

――セーラー服、かわいいですよね。中学受験はどうでしたか?

やってよかったと思っています。塾の勉強が面白かったですね。

ただ、母が受験に一所懸命になりすぎて、私がちょっと息抜きに読んでいた岩波の推薦図書を、「なんで本なんて読んでるの~」と目の前で引き裂いた時は、「受験って狂気だな」と思いましたが。

――確かに中学受験はどうしても親がヒートアップしますよね。入学された中学での生活はどうでしたか。

勉強は面白くなりました。でもバブル期の私立校でしたから、富裕層や名家と言われる家庭の子たちとの埋めがたい「格差」を知り、ふてくされて反抗的な態度を取るようになったんです。

――反抗はどのくらい続いたんですか。

中1はずっと反抗していましたが、中2で体育(ダンス)担当の小泉先生が担任になりました。言葉遣いも悪いし、声もガラガラでスモーカーのおばあちゃん先生。

――そんな先生も学習院にいらっしゃるんですね。

生徒たちが服装違反などをすると、「おまえら、学習院やめな~」って言うんです(笑)。で、「なにが学習院らしいか自分で考えな~」って。

私が他の先生に反抗的な態度をとるたびに、小泉先生に叱られたんですが、「小島は本当はとっても優しい、いい子なんだよ」とも繰り返し言ってくれました。厳しいけれど、いいところも見てくれた小泉先生のおかげで、「この環境になんとか適応したい」と思うようになりました。

――緩急のメリハリがついた指導、すばらしいですね。

心に響いたのは、自ら考えさせる教育ですね。皇族もいて、サラリーマン家庭の子がいて、秀才も変人もいるこの学校の「らしさ」ってなんだろうかと真面目に考えましたね。この「学習院らしさ」を考えたことは、その後「自分が何を大切にして、何に誇りをもって生きていくか」を考える土台になりました。

ひねくれ者から一転、楽しい学校生活に

――小泉先生、個性強めの先生ですが、とてもいいことおっしゃる先生ですね。

生徒の良さを認めたうえで注意をしてくれて、考えを一方的に押し付けない指導が、とても私に合っていました。

――「この学校に適応したい」と考えるようになった後、ご自身で変わった部分はありましたか。

「高等科に進んだら生まれ変わろう!」と決心し、中3の1年間は、周囲とぶつかってばかりの自分を変える準備を徹底的にやりました。

――準備とはどんなことをしたんですか。

まず、人に好かれている同級生をじっくり観察しました。人気のある人の行動をマネれば、上手くいくのではないかと思ったからです。ものの言い方や間の取り方、ふるまいなど「ほほ~う、こうすればいいのだな」と学習しました。

――「好かれている人を観察する」という発想と行動力がすごいですね!

人に好かれている子たちのいろんな「型」を中学3年の1年間で覚えたんです。そして高等科へ入学。最初の1カ月間、覚えた「型」を実践してみました。

まずは無口で人に好かれている子の型を試しました。友だちとの会話でも「そうね~」ってひたすら笑顔であいづちを打つのに徹しました。そうしたら、効果てきめん!

中等科の3年間一緒に過ごしてきたはずの友だちから「慶子ちゃんって、おとなしいよね」と言われ、ビックリ(笑)。たった1カ月でこうも印象が上書きされるというのは、大発見でした

――それはすごい!

その後、いくつかの型を実践し、マスターした後、自分の「個性」を出していったんです。以前と違って私本来の個性を出しても、友だち関係がうまくいくようになりました。学校生活が楽しくなり、おかげで高2、高3はむちゃくちゃ楽しかったですね。

対人トラブルが多い子には「型」のパターンを教えて

――小島さんのコミュニケーションの「型」を学ぶ方法、いいですね。

対人トラブルが多いお子さんには、コミュニケーションの「型」をサンプルとして覚えていく方法は有効かもしれません。

――型とは、どんなふうに教えればいいのでしょうか。

たとえば衝動性のコントロールが難しい特性があり、アニメ好きの子どもがいるとします。友だちに昨日見たストーリーについて言いたくて仕方がない。

思いが先走るタイプのお子さんだと、何の前置きもなしに、いきなりブワーッと話し始めることがあります。そうすると相手を困惑させたり、ウザがられたりしちゃうことも。

――あーそれ、よくあります。私の息子は電車が好きなのですが、マニアックな内容を話しすぎて、まわりがついていけないことが多いんです。

まず、相手がアニメに詳しいかどうかを確認する必要があると伝えるといいですね。「〇〇っていうアニメ、知ってる?」って。相手が詳しくないなら、「このアニメには□□という主人公と××という強いライバルがいるんだよ。昨日、その2人が直接対決する場面を見たんだよ」と基本情報を伝えてから話をすると、自分の思いが伝わりやすいということを、1つの「型」として説明してあげるといいですね。

また、相手が話を聞ける状況か確認することも大切です。

――相手を意識するように伝えるのが大切なんですね。具体的でとても参考になります。でも小4の息子にも理解できるでしょうか。

相手の頭の中に映像が思い浮かぶように話すと、伝わりやすい。もちろん、すぐには出来るようにならないです。場合によっては、専門家の助けが必要かもしれません。

ただ、子どもの脳は成長過程にあるので、物事がだんだん理解できるようになる可能性を秘めています。年齢に合わせた言い方で繰り返し伝えているうちに、ある日、出来るようになると思うんです。必ず出来るようになるはずだと思うと親子ともつらいので、あまり思い詰めないことも大事ですね。

――なるほど。繰り返し伝えることってやっぱり重要ですね。他には、友だちとのやりとりがうまくいかない子に伝えたほうがいいことがありますか。

タイミングですね。息子たちが幼い頃には「相手が何かをしている途中や、他の人と話している途中だと、話しかけても聞いてもらえないことがあるよ。今、話しかけてもいい?と尋ねるといいよ」など、話すタイミングを自分で「選べる」ことを伝えました。

あとは言い方。「それ取って」という言い方もあるけれど、「すみません、〇〇を取ってください」という言い方もある。丁寧な方が伝わりやすい。ニコッとするともっと伝わりやすい。

「型」を伝えるだけでなく、どういう言い方で伝えるかは「選べる」んだよと言いました。

私はこういうことを誰にも教わらなかったので傷だらけで自力学習しましたが(笑)、どんなお子さんにも役立つことかもしれませんね。

――なるほど。「こういう言い方じゃなきゃダメ」という強制ではなく、「自分で選べる」のは良いことですよね。

説明なしに「〇〇しなさい!」だと、子どもが思考停止になってしまう。「物事には上手くいきやすいやり方がある。他のいろんなやり方もある。どうするかは、君が選んでいいんだよ」と言うと、子どもも安心するかも。ちゃみママさんもやってみてください。

取材を終えて

私が一番印象深かったのは中3の時に人とうまくコミュニケーションをするためのサンプルとして徹底的に友だちを観察し、「型」を覚えたという話です。友だちトラブルに悩む子はトライしてみるといいですよね。また、「やり方は自分で選べるんだよ」と伝えることで、自分で考えて行動できる子になるとわかったので、子育ての中でも気をつけていきたいと感じました。

写真撮影:北川サイラ


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ちゃみママ
ちゃみママ

「乗り物オタクだなと思っていた小学4年生の息子が、ADHDと判明。確かに、小さな頃から算数と乗り物のこと以外は集中力がなく、シャツから下着が出ていてもおかまいなし。他の保護者からは、自分勝手な子、だらしのない子と見られることも……。学校などからかかってくるトラブル報告の電話におびえつつ、子育てに奮闘中。外では明るく振る舞っているものの、トラブルが続くと、「私の子育て、間違っているのかな」と自問自答を繰り返してしまう。相談ができて、背中を押してくれる人やサービスを常に探し中!

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