2022.03.25
学びをはぐくむ 石田勝紀

ほめ方・叱り方のガイドライン Part.2〜叱る前に必要なこと 石田勝紀さん

「叱る・怒る」とは何か、どのようなとき叱るのか、怒るのかという点について知ることはあまりないことでしょう。ほめる場合に比べて、叱る・怒るは強い感情を伴うため、一歩間違えると人間関係を破壊し、ときに人格否定することすらあります。このように使い方に注意が必要です。そこで、「叱る・怒る」のガイドラインを書いてみました。一つの指針として、ご利用下さい。

「叱る」はしつけ「怒る」は感情

今回は前回に続く回となります。テーマは「叱り方」です。前回の「ほめ方」同様、叱るということに対して、世の中には共通した考えはありません。どのようなときに叱るのか、どの程度叱るのか、基準が示されていない以上、多くの場合、「その場の親の感情や感覚」に委ねられています。

ほめる場合と異なり、叱る場合は子どもの育成につながる一方で、一歩間違えると人格毀損やトラウマになることもあり、慎重さが必要になります。

【叱ると怒る】
「叱る」と似たような言葉に「怒る」という言葉があります。「叱る」はしつけ的な要素を含んだ言葉であり、「怒る」という言葉は感情的要素を含んだ言葉です。筆者はこの2つについては次のように区別をしています。

◆「叱る」は道徳的・倫理的に誤ったことで、本人がそれを認識していない場合に、それを緊急的に正すため、その場で直接、口頭で行うことと定義しています。

◆「怒る」は命にかかわることや今この瞬間一撃で変えないと一生が駄目になってしまう緊急事態において直接、口頭で行うことと定義しています。

「叱る」と「怒る」ときの共通点

「叱る」と「怒る」の違いは程度の問題になりますが、共通点は5つあります。

(1)緊急であること

緊急時の行うため、日常生活においては頻繁にあるものではありません。

(2)本人が自覚していないこと

本人が反省をしていたり、間違いを認識していたりするときに叱ると反発する可能性があります。

(3)口頭であること

言うまでもありませんが、体罰は完全アウトと考えています。体罰で育てられた子は、やがて親になったときに同じことをする可能性が高いことが指摘されています。

(4)親が世の中の道徳的・倫理的判断基準を持っていること

この点が難しいかもしれません。中にはしつけと称し、虐待をする親もいるからです。道徳観・倫理観はある程度大人になれば身についていることを前提に社会が動いているため、判断に迷いがある場合は、身近な人に相談する必要があります。

(5)中途半端ではないこと

中途半端な「叱る、怒る」を行うと、恨みを残すことがあります。

以上からわかることは、「かなり大変で、大量のエネルギーを消費する」ということです。叱られる、怒られる方も大変ですが、する方はもっと大変です。つまり、日常において、叱ることや怒ることをやってしまうと、中途半端で全く効果がなく、ただの徒労で終わることになりかねません。また、叱られることに慣れると、もはや叱るという行為自体に意味はなくなります。

もちろん、子育てという長い期間では、叱る、怒る場面はあることでしょう。しかし、それほど頻繁にはないということです。

叱るのではなくて「教える」「諭す」

「叱るまではいかなくても何か言わなければ、いつまでもやらない場合はどうすればいいか」と思われるかもしれません。そのときは、「教える」「諭す」をします。子どもは、わからないからやらない、知らないから間違ったことをやってしまうことがあります。ですから、普段の生活では、まずは教えてあげます。または「◯◯のときは△△するのよ」と諭していきます。この方法で、子どもにまつわる出来事の大半は、解決していきます。

「教えても、諭しても、まだ駄目です」という場合はどうすればいいでしょうか。その場合は、もう一度教えたり、諭したりします。なぜなら「子どもはまだ理解ができていなかったからだろう」というのがその理由です。「そこまでしなくてはいけないのですか」と思われるかもしれませんが、そこまでします。何度も叱って、怒って正すことと、何度も教えて、諭して正すことでは、どちらが、子どもが素直に受け入れる可能性が高いでしょうか。

子ども含め人間は、理不尽な扱いを受けた時は、納得しません。納得しないだけならまだしも、逆恨みすることもあります。親子関係であれば、こうして信頼関係が失われていきます。では、子どもに媚びを売ったり、放置したりすればいいのかというとそうではありません。子どもが知らないことは教えてあげるという姿勢だけです。それを「教育」と言います。

よく聞くのは、親は教えているつもりでも、子どもから見たら「怒っているだけ」ということがあります。感情が出ている段階では、子どもは親が話す内容は耳に入らず、感情のみを受け取ります。ですから、叱っても、怒っても何も効果ないという現象が起こります。(叱る、怒るが全く必要ないという意味ではありません)

「教える」「諭す」の2つのモード

そこで以上をまとめるとこうなります。

【通常モード】
日常においては、「教える・諭す」ことを中心に進める。

<注意点>

  • このモードでは感情は出さない。淡々と教えてあげます。
  • 一度でわからなければ、何度も伝え方を変えて教えてあげます。
  • 親の力で変えるのではなく、子どもが自分から変わるようにします。 

【非常モード】
本人が自覚せず、緊急において今変えなければならないときは「叱る」「怒る」が発動される。

<注意点>

  • 本気であること
  • 頻繁には使わない。
  • 目的は子どもが良くなることであって、親の感情のはけ口ではない。 

以上が、「叱る、怒るに関するガイドライン」です。子育て中は色々なことが起こります。一番忙しいときほど、叱りたくなる、怒りたくなることもあります。多少、感情的になって叱ったり、怒ったりしても、そう簡単に子どもは間違った方向にいくことはありませんが、できれば同じ時間を共有するのであれば、穏やかに楽しく過ごしたいものです。

そのために、今までなら、すぐに叱ったり怒ったりしていた場面で、一呼吸おいてみてください。叱るのではなく、教える・諭すという手段を知っていれば、ずいぶんと楽になると思います。完全に実行しようとは思わず、一歩一歩前進する感じでされてみてください。

「ぐんぐん伸びる子の育て方 教育専門家・石田勝紀さん」の記事一覧

石田勝紀
石田勝紀

(一社)教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。20歳で起業し塾を創業。現在はMama Café、講演、連載記事を通じて全国の保護者への教育活動を行っている。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』他多数。子どもの頃の習い事は「書道」。今でも筆で書いたり、活字への関心に繋がっています。

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