2022.04.08
学びインタビュー 小内三奈

対談イベント「好きを仕事にできる子の育て方」㊤ 宝槻泰伸さん×高濱正伸さん

「探究学舎」の宝槻泰伸代表と、「花まる学習会」の高濱正伸代表のオンライン対談イベント「好きを仕事にできる子の育て方」を3月11日、 開催しました。合計で3300人を超える方に視聴いただいたイベントを、3回に分けてレポートします。第1回目は、親は子どもにどう接すれば良いのかや、2人のたどってきた道のりを語り合います。

第1回:対談イベント「好きを仕事にできる子の育て方」㊤ 宝槻泰伸さん×高濱正伸さん

第2回:「好きを仕事にできる子の育て方」㊥ 子どもの適性を見極める

第3回:「好きを仕事にできる子の育て方」㊦ 目の前にいる子どもの個性を愛する

なぜ今みんな「好き」を見つけようと必死なのか?

「好き」を見つけることが大切だという世の中の風潮

高濱:今、なぜ「好きが見つけられない」っていうお悩み相談になっているかというと、世の中で成功している人たちが「これからは没頭力だ。好きなことに没頭しよう」と言って、教育に参戦しているからですよね。

いままでは右向け右で同じことをやらされていた教育だったのが、それでは太刀打ちできない時代がきている。何かを突き詰められる人を作らないといけないという大きな声が表に出ている。

だから「うちの子、何が好きかわからないんです」という悩みが増えましたよね。

本当に大事なことは何だろうかと考えてもよくわからないと、「やっぱり学歴は大事」と中学受験にすがっていく部分もあります。

宝槻:なぜ今、人々が「好き」や「夢中」を関心事にして、「好きを仕事にする」と言い出しているのか。

社会的な構造的背景があることを、僕は哲学して探究しきったので、あとで聞いてもらって良いですか。

どうすれば「好き」を見つけて、「好き」を仕事にできるか?

大前提として、基礎学力は必要

高濱:おぉ、その話してみたいね。でもまず、最初に言えるのは、「没頭力だ」と声高に言っている人たちって、実は高学歴の人なんです。土台となる基礎的な学習、漢字などは最低限やっておかないといけません。

そこが穴ぼこのまま外遊びばっかりしているとなると、高校に行けなくなるよ、というか、やりたいことをやりたくなったときにハンディを背負った人になる。基礎となる土台の上に強みがあった方が、食いっぱぐれなく楽しく生きていけるのは確かなのでで、できる人は強みの話ばかりしています。

でも、土台となる基礎は大事というのは大前提だとは最初に言っておきます。

「好き」はどんな子どもにもある

高濱:幼児期って、なんでも好きで、全部が楽しい、そこが原点。それなのになぜ「好きが見つからない」と言い始めるか?というと、やっぱり「人の目」です。

みんなができるのに僕だけできないって恥ずかしいなぁとか、僕はこれを楽しいと思うんだけど、あれ、僕の方が変なの?とか。「下手だ」と笑われたり、「お前、何やってんの?」と言われたりして。僕は絶対に虫が好きってわかっているのに、人の目が気になって、徐々に、周りの枠組みの方に合わせはじめていきます。

すべてはあなたの心を第一に見ればいいのに、それを見失ってしまうのが現代的な病だなと思います。自分の心を見つめ続けていれば、何歳になっても楽しいはずなんですよ。

宝槻:そもそも好きなことに反応するスイッチを持って生まれているのに、大人になっていくプロセスの中で、そのスイッチをオンにすることに恐怖を感じてしまうんですよね。

僕らの話をすると、先生も枠からはみ出まくった若者でしたよね。

道なき道を恐れず歩める力は、遊びの中から生まれる

2人が教育者になるまでの道とは?

高濱:3浪して大学入って、4留してますからね(笑)。20代はずっと遊んでいました。真面目に遊んでいただけで、なぜすぐに就職しないといけないのかと思っていたんですよ。「今やりたいことは?」と心に問えばバックパッカーだったし、映画だ、お芝居だ、落語だって、まさに自分の心が何にワクワクするかっていうところだけにこだわっていました。

その中で振り返ったとき、自分の心を見たら間違いなく子どもといるときが一番飽きずに遊び続けられたというのがあったんです。子どもと一緒にいられる自分をどうにか作ろうって決めて塾の道に進みました。

宝槻:僕は高校を1年で退学しました。優等生だったので周りからは「もったいない」とか、「人生終わった」とかいろいろ言われましたけど、僕からすると、お前らこそ牢獄みたいなところで勉強だけ3年間するなんて、「もっと自由自在に生きろよ」っていう感じでしたね。大学で1留したあと、就職活動は一切せず起業の道を選びましたが、全然不安とかなかったです。

高濱:まだ起業したばかりで何も形になってないときに出会ったときにも、目が強気だったもんね。目が鋭くて、よく覚えてますよ。

なぜ恐れずに、道なき道を進めるのか?

宝槻:私や高濱先生にある「たくましさ」の正体は何かっていうと、けもの道を行っているということ。多くの人は舗装された道を歩みたい。安全で安心だから。けもの道は、道なき道で危険だし不安です。そこになぜ恐れずに自信を持って突っ込んでいけるのか。どうしたらわが子も、舗装された道路思考ではなくて、けもの道思考にスイッチしてくれるのだろうと思っている人がいると思いますが、生い立ちが関係してますかね?

高濱:小さいときの遊びの質。主体的な遊びっていうか、自分で決めてやり抜く繰り返しをしてきたかどうかだと思います。自分で決めたからこそ面白いっていうことを心の底から知っていると、型にはまった舗装された道路が本当に面白いのか?って思うわけです。何があるかわからないから面白いはず、それは遊びの中で体験してきたこと。

宝槻:なるほど。遊びの中に、けもの道を行くっていう体験がたくさんあるってことですね?

高濱:子どもって、普通の道じゃなくてこの崖を登るとか、この石垣の方が面白いよねって普通に始めますよね?どこの子どもだって、当然もともと持っているんだけど、途中から危ないからやめましょう、とか目的を決められてセットされたことをやらされてしまうようになる。

宝槻:うちの場合は、父親が「ザ・けもの道」なんです。小さい頃からけもの道を行くことがカッコいいことで、舗装された道路は歩むことはダサいことだっていう帝王学がもう染み込んじゃって、その影響がある。山歩きとか川遊びはよくしました。キャンプは親子で100回くらい行ったと思います。

親自身がワクワクして生きているのか?

 親がハッピーに生き直す

高濱:その体験が芯を作っているね。キャンプは自分で面白さを見つけることができる。

宝槻:釣りでイワナやヤマメをどうやって釣るかに没頭するわけじゃないですか。イクラとか餌で釣るのは邪道、ルアーで釣るのがエクセレントです。そして、うちの三男はモリで突く。

高濱:俺もやった、モリが一番面白いって。そうやって、それぞれが自分のゲームを設定するわけ。たくさん魚がいるところでやれば釣れるけど、それでは面白くない。溺れるかもしれないのに潜るところに喜びみたいなものがある。

宝槻:そのときに、舗装された道を進ませたい親だったら、危ない!ってなります。そうではなくて、絶対に危険なことだけは伝えてあとは好きにしていいよ、となれるか。

高濱:今日聞いて初めてキャンプしようと考えるとしたら、絶対に危ないことだけは親がやっぱり抑えないといけないですよ。実験でも何だってそうですが、それはダメというのは言わなきゃいけない。

宝槻:親のキャパシティを子育ての中で拡張していく。それができれば、わが子が遊びの中でけもの道に踏み込んでしまっても、ある程度は寛容になれるかな。

高濱:まず、親自身がワクワクしているのか? 親が何にワクワクしてきたかを思い出して、親こそがハッピーに生き直すというか、自分が何をやりたいかをもう一度見つめ直す。好きなことを前向きに、一生懸命やっている親の輝く姿を見ると子どももうれしいし、「ああなりたい」みたいになる。子どもだけじゃなくて、大人も楽しんでいますか?

マスト思考でなくベター思考になろう

少し視野を広げて軽やかな親を目指す

宝槻:親の顔を見るとよくわかるんですけど、四角い親と丸い親がいますね。四角い親は、「ねばならない」「~すべき」というMust(マスト)思考。逆に、丸い親はBetter(ベター)思考。「~~だったらいいよね」という言葉が多いです。

「一流大学に行けたらいいよね、でもスポーツも楽しめたらいいよね、恋愛も楽しめたらいいよね」と考えられる人は、顔もひきつってないし、軽やかな感じがします。

高濱:まったく同じ意見。今はこうした方が良いという情報に飲み込まれすぎている親がいるよね。

宝槻:「マストを手放し、ベターを楽しもう」と僕は言っています。親が、ベター思考になるには、日々修行、鍛錬していかないといけないと思います。

高濱:「ねばならない」という正解思考の方が、答えがあるから人は安心するんですよ。でも、不幸の方程式を紹介すると、「人目」「比較」「コンプレックス(心)」「やらされ」の4つ。特にこの中の「やらされ」は、「ねばならない」というマスト思考によるものですね。

宝槻:その4つって「ザ・学校」ですよね。学校は、社会性や協調性を身につけるためには良いのだけど、ダークサイドとして、比較されて、やらされて、点数つけられて、自信をなくしてしまうという面がある。お互いに空気を読み合って、自分の本心を出せなくなってしまうんですよね。

※次回の記事は、子どもの適性を見極めることについて話しています。

【プロフィール:宝槻泰伸(ほうつき やすのぶ)】

1981年生まれ。京都大学経済学部卒。著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』『今日から塾をやめてみた』など。子どもたちに驚きと感動の種をまく、興味開発の授業を提供する「探究学舎」を2011年東京都三鷹市で開校。

【プロフィール:高濱正伸(たかはま まさのぶ)】

1959年生まれ。東京大学農学部卒、同大学院修了。「思考力」「国語力」「野外体験」で生きる力を育てる「花まる学習会」を1993年に設立。「メシが食える大人、魅力的な人に育てる」ことを目指して、子どもが意欲的に学ぶ教育法を全国で展開している。著書に、『わが子を「メシが食える」大人に育てる』『小3までに育てる算数脳』など多数。

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小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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