2022.04.08
学びインタビュー 小内三奈

「好きを仕事にできる子の育て方」㊦ 目の前にいる子どもの個性を愛する

「探究学舎」の宝槻泰伸代表と、「花まる学習会」の高濱正伸代表のオンライン対談イベント「好きを仕事にできる子の育て方」を3月11日、 開催しました。合計で3300人を超える方に視聴いただいたイベントのレポートの3回目です。参加者からの質問に答えました。お2人からは、「すべての子どもの個性を愛そう!」という強いメッセージが語られました。

第1回: 対談イベント「好きを仕事にできる子の育て方」㊤ 宝槻泰伸さん×高濱正伸さん

第2回:「好きを仕事にできる子の育て方」㊥ 子どもの適性を見極める

第3回:「好きを仕事にできる子の育て方」㊦ 目の前にいる子どもの個性を愛する

ゲームは中毒性があるか試行錯誤しているかを見極める

 Q:好きなものが、ゲーム、テレビ、アニメ。あまり応援したくないのですが、どうしたら良い?

宝槻:ゲームやYouTube、漫画は、中毒性があるのは確かです。でもその中にも名作はある。マインクラフトとか、頭の中で試行錯誤をするものもある。ゲームが長時間作業をしているだけか、受動的になっているだけのものかどうかが大事です。中毒になっていないか、試行錯誤系のものかどうかを見極めることがポイントだと思います。

高濱:ゲームでも作る側に行くのなら、試行錯誤があるけどね。本当に面白いことを味わっていたら、中毒からは抜け出せると思います。

大切な人の気持ちをきちんと汲み取る力は、きょうだいや友達に揉まれながら学んでいくもの。子ども時代は、画面ではないアナログ体験の総量を増やしていくことが大事な時期であることは確かです。

親が出来ることは一流の人との出会い

Q「好き」といっても面白いことだけやっていて、努力はあまりしません。練習が必要なことを、こつこつやるにはどうしたら良いですか?

高濱:こつこつ積み上げることで出来る世界は確かにあります。でもそれよりも、最初に強烈なインパクトを与えられると、「ああいうふうになりたい」と一気に自分から努力し始めます。「あのとき〇〇さんを見てかっこいい!と思ったから、頑張って練習しました」という人はすごく多い。親としてできるのは、一流の人に会わせてあげること。そこから何らかを学びます。「練習しなさい」って親が繰り返し言うだけなのは、一番しなくなるパターンだね。

宝槻:「こつこつ努力する姿が良い」という親のエゴで言っていませんか?と聞きたい。

平岡:練習するのを見ていると親が嬉しい、今までの価値観から親が満足するだけということはありますね。

宝槻:こつこつやることが大切だと、自分で深く気がつくときが来ますよ。そこまで待つしかない。出会いが大事。努力の人間、大谷翔平選手に会えたら、ばーんといきますね。

Q好きなことが、得意なこととは限りません。そのバランスをどのように育てたら良いですか?

高濱:好きなことを得意なことにしないとならないというのは、親がその好きなことを商売にしたいということ? 下手でも好きならいいんです、何かを感じています。

宝槻:親が安心したいだけだし、求めすぎなんですよ。

無条件に子どもを愛すること

Q:特に好きなものが見つからないまま子どもが思春期になりました。もっと関わって興味を広げてあげれば良かったと思いますが、親として今からできることは?

高濱:本当は好きなことだらけの幼児期であったはずなのに、親が望む「好き」が見つからない。子どもは親の価値基準に合わせようとして、わからなくなっているだけかな。

宝槻:あのね、大前提として、無条件に子どもを愛せ!あなたは自分の子どもを好きですか?

高濱:自己肯定感が一番大事です。自己肯定感があればなんでも面白くなるし、熱中できるし、ばねもあるから失敗してもぽんと立ち直れる。それを支えるのは、絶対に親の愛。何があってもこの人は私が好きと感じられていれば、なんでも楽しいと感じるもの。でも逆に、評価されていると思うと安心できなくなってきます。

平岡:子どもが反抗期になると、文句しか言わなくなってしまって、だらだらしかしていないし、それでも愛せるかと思ってしまう時期もありますよね。

高濱:反抗期にまで来ているなら、親の時代は終わっています。親が横でごちゃごちゃ言って変えようとするのがおこがましい。監督や先輩がかっこいいとか、外の憧れの人との出会いによって引っ張ってもらう時期。親ができるのは、そう思える人に出会わせること、背中を押すことです。

目の前の仕事を好きになる

 Q:好きなことを仕事にしなくても良いのでは?好きを仕事にすることは本当に幸せでしょうか?

宝槻:いいんです!目の前の仕事を好きになるというのももちろんあって、その仕事の良いところを見出す、意味を見出す、やりがいを見出すこともできる。目の前のわが子を愛することと同じ。

高濱:僕はね、独房にいたとしても刑務官の足音で人を当てようとか、なんでも楽しめる精神がある。どこにいたって楽しむっていうことが、一番重要な生きる力。

平岡:今、目の前にあるものを好きになることが大事ですね。

宝槻:親の家業を継いで、何十年か経ったら好きになってそれがライフワークになる人もいますよね。エーリッヒ・フロムの『愛するということ』という本もヒントになるから読んでみてほしいです。

すべての子どもの個性が愛される時代

Q:好きなことが、安定的な収入が見込めない職業の場合、それを応援すべきですか? 

高濱:ワクワクの度合いが大物をつくるんですよ。どれぐらい儲けられそうかとか、こざかしいことを考えちゃダメ。きちんとした道じゃなくても、自分がワクワクするか、「この道がいい」と心から思えるかどうかが大事です。

宝槻:「ミドリムシで世界を救う」と起業した「ユーグレナ」の社長の出雲充さんも、子ども時代にザリガニに熱中しまくって、試行錯誤しまくっていたんですよ。そうやって没頭することを身につけていったわけで、対象は何でもいい。

高濱:ちゃんとした道か、けもの道を行くのか、の二項対立ではなくて、「好きな道」だけだから。子ども自身が楽しいかどうかが一番大事なことですよ。

宝槻:でも中には舗装した安全な道が好きなマイペースな子もいて、その子にけもの道を無理矢理行かせる必要はないです。

平岡:何が起こっても楽しければいいじゃないかと、親が思えるかどうかですね。「マストを手放しベターを楽しむ」ことも、修行だと先ほど言っていましたが、そんなに簡単には考え方を変えられないですからね。

宝槻:僕も20代の頃は、子どもが産まれたら高学歴にしてやろうと思っていましたから。でも5人子どもが産まれたら、いろんなタイプの子がいるんですよ。それを今は楽しめています。どんなふうになるんだろうなって。高濱さんのお子さんは車いすですよね。

高濱:僕も子どもが生まれてから、「この子はこの子として幸せならいいや」と思えるようになった。生徒を医学部に入れる仕事をしていて偏差値の価値観から逃れられなかったけれど、成績が出ないような息子は何なのかと考える中で、生きる哲学の再構築が出来たんですよ。

宝槻:高濱先生を修行に導いてくれる、天使が授けてくれた子どもですね。

高濱:正解!まさにそう。妻もまったく同じことを言っていた。心からそう思います。

平岡:子育ては、目の前の子に教えてもらいながら、親の古い価値観をどれだけ手放せるか、ということかもしれませんね。

2人からのメッセージ

高濱:皆さん悩みが深いし、どうしても枠組みにとらわれちゃうのは普通のことです。最終的には本当にわが子が生き生きしているか、幸せになるのかなっていうところは外さないでほしいと思います。

宝槻:昔は学歴や偏差値が大事で「適合派」の子どもが生きやすくて評価されやすかったですが、は、すべての子どもの個性が愛される時代にどんどんなってきています。わが子の個性が自分と望むものと違っていても、目の前の子どもの個性を愛するという心意気があれば、うまくいきますよ!

次回はぜひ、焚火を囲みながらトークしましょう!


【プロフィール:宝槻泰伸(ほうつき やすのぶ)】

1981年生まれ。京都大学経済学部卒。著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』『今日から塾をやめてみた』など。子どもたちに驚きと感動の種をまく、興味開発の授業を提供する「探究学舎」を2011年東京都三鷹市で開校。

【プロフィール:高濱正伸(たかはま まさのぶ)】

1959年生まれ。東京大学農学部卒、同大学院修了。「思考力」「国語力」「野外体験」で生きる力を育てる「花まる学習会」を1993年に設立。「メシが食える大人、魅力的な人に育てる」ことを目指して、子どもが意欲的に学ぶ教育法を全国で展開している。著書に、『わが子を「メシが食える」大人に育てる』、『小3までに育てる算数脳』など多数。

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小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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