子どもに合った習い事が続く6つのステップ 教育専門家・石田勝紀さん
子どもの習い事が続かないという相談をしばしば受けます。「継続は力なり」は確かに正しいですが、問題は、どういう気持ちで継続しているかです。「せっかく始めたのだから続けなさい」という言葉を発している状態では続けても成果は上がりにくいでしょう。そこで、「①子どもに合っていそうな習い事の選択 ②習慣化(ルーチン) ③成長の見える化」という3つの手順を踏んでみるといいでしょう。本文ではさらに詳細は6つのステップに分けてお伝えしています。
せっかく始めた習い事 続けるためには?
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新年度が始まると新しいことを始めることがあります。習い事もその一つでしょう。でも、せっかく始めた習い事が続かないということで悩む親御さんは少なくありません。筆者がMama Caféというママ向けライトなカフェスタイル勉強会を始めて6年になりましたが、その間、1万人のママさんから相談を受けました。その中でも、この時期は習い事に関わる質問がたくさんあります。家で練習をしない、行きたがらない、宿題や課題に後ろ向き、さらには継続できないというものです。
今回は4月ということもあり、せっかく始めた習い事をどうすれば継続することができるのかというお話をします。
「子どもに合った習い事が続けられる」ためには、まずは子どもに合っていなければなりません。
ですから、合ってもいないことを続けさせることは、義務感のみが残るか、その習い事に対して将来にわたってマイナスイメージをもちかねません。いわゆる“トラウマ”に近い状態です。
そこで、継続するためには、「継続できるものを残していく」という考え方をはじめに持ちます。継続できそうもないことを続けさせることは不可能ではありませんが、かなりの注意が必要です。
しかし、そのようにして子どもに合っていたとしても、その習い事が継続できるかどうかは別の問題です。
ただ単に子どもの意に任せていたのでは、気分の上下で行くか行かないかが決まってしまったり、たまたま課題をやっていないことで行きたくない言ったりすることもあります。
楽しめる仕組みや続けたくなる仕組みを、周囲の大人が作っておくことが継続の秘訣になります。
全体のイメージは「①子どもに合っていそうな習い事の選択 ②習慣化(ルーチン)③成長の見える化」の3つの手順です。
続けるための6つのステップ
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それを詳細に6つに分けて順に説明していきます。
①習い事で親は子どもに過度な期待をしない
習い事を始めるうえで、親御さんが子どもに過度な期待をすることがあります。「この習い事をやって能力や才能を引き出したい」という気持ちが過度になると、やがてやってくる「絶望」へと変換されることが少なくありません。さらに「周囲がやっているからうちの子も」という同調圧力に基づいて習い事をさせたいと思って始めた場合も、90%の確率で続きません。
それよりも、経験として子どもに習い事をやらせてみようという感覚で始めるほうが親も子どもも楽しめるようになります。
この初めのマインドセットがかなり大切になります。ここを間違えるとボタンの掛け違いが発生します。
②子どもが小さいときは親が習い事の選択をする
子どもが小さい時、つまり友達がやっているから自分もやりたいと言えない年齢の場合は、親が習い事を選択します。どのような習い事がいいのかという判断に迷うことでしょう。
習い事ランキングはネットで検索すればすぐにでてきます。しかし、それに振り回される必要はありません。
実態としては、家から通える範囲となります。子どもが小さいときは親が送り迎えをするからです。家の周囲の情報にアンテナを立てておくことは必要かもしれません。またママ友からの情報で決める場合もあります。それも悪くないと思いますが情報収集にとどめ、同調圧力を感じる必要はありません。
いずれにしても、この段階ではまだ続けられる習い事を選ぼうとしないことがコツになります。
子どもが自分で自由に動けるような年齢の場合で、子どもから習い事を始めたいという希望がある場合は、それを尊重していくといいでしょう。
③子どもにお試しを促して反応を見る
選択した習い事について子どもに話をしていきます。動画を見せてみるのもいいでしょう。言葉だけでは子どもはイメージができないため、映像や画像などをつかって、楽しそうな感じで話をしてみます。
このようにして話をしても、子どもが乗ってこない場合があります。そのときは、それ以上は勧めません。
しかし、子どもは日に日に変わるため、今日は興味がなくても、来週は興味がでることもあります。ですから、期間をおいて再度話をしてみることも悪くはありません。ただし、何度も何度もしつこいことは問題です。期間をおいて2回かせいぜい3回ぐらいでしょうか。
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④まずは1ヶ月または2ヶ月という区切りをつける
子どもがやってみてもいいという感じになったら習い事を体験します。何事も相性というものがあります。特に、指導者がどのような人か、これは習い事では極めて重要なファクターになります。教育は何をやるか以上に、誰が教えているかで決まるからです。1回だけの体験ではなかなかわかりませんから、最低でも1ヶ月(4回)は見極め期間として考えておくといいでしょう。その習い事に体験期間が1ヶ月ある場合は、それを使い、ない場合は1ヶ月間または2ヶ月間はお試し期間と親側が考えておきます。
その際、子どもには事前に「1ヶ月だけやってみようね。続けるかどうかはそこでまた考えよう」と伝えておきます。つまり、終わりがあるということを伝えておきます。これがないと、ずっと続け“なければならない”という気持ちが子どもの中で湧き上がり、それが継続心を阻んでいきます。
「せっかく始めたのだから続けなさい」という呪いの言葉があります。「継続は力なり」は確かに正しいのですが、どのような状態で継続するのかが大切です。ですから、仮に1ヶ月でやめることになっても、継続よりも、よい経験をしたということに意識を置き、ポジティブにとらえてください。
⑤その期間で、ルーチンをつくり習慣化させる
始めたら1ヶ月ないしは2ヶ月の間でルーチンを作ります。ルーチンとは習い事に関わる一連の作業を習慣化させていくことを意味します。つまり、習い事が始まると、通う曜日と時間が決まります。さらにそのための準備や課題・宿題がある場合もあります。復習や練習が必要な習いごともあるでしょう。それらを1週間の中で決まった曜日と時間を設定して習慣化させていきます。私が考案した「子ども手帳」を使ってもいいでしょう。またホワイトボードに書いていくことでもいいでしょう。いずれにしても、いつ何をやるのかという作業のパターンを作っていきます。
習慣化されれば、努力が不要になります。自動的にやるようになるからです。毎日の歯磨きをするのに努力は必要ありませんよね。それと同じようにします。
ただし、家で行う課題や宿題などの作業は、1回あたりの時間を短くしていくことがコツになります。年齢にもよりますが子どもの30分は大人でいえば2時間〜3時間ぐらいだと承知しておきましょう。
⑥どれだけ伸びているか、成長しているか見える化させる
習慣化されれば継続きますが、そのうちマンネリ化がやってきます。するとテンションが落ちていき、その気持ちからだんだんと「やりたくない」「いきたくない」「面倒」と感情が芽生えることがあります。そこで、大切なことは、成長度合いを見える化させることなのです。
ゲームも成長が「見える化」されているから子どもは熱中します。飽きる場合は、なかなか成長できた感じがしないときと、そのゲームをすべてクリアしたときです。同じように、どれだけ成長しているかを習い事でも実感できる仕組みを作ります。
例えば、検定試験があれば、検定を受けることでもいいでしょう。または日々の練習時間数を数字でカウントして、グラフにしたり、シールを貼ったりするでもいいでしょう。(※より詳細なケースは、「はじめての子ども手帳」「勉強しない子には1冊の手帳を与えよう!」をご覧ください)
以上、子どもに合った習い事が続くためのコツについてお話してきました。単純に、「せっかく始めたのだから続けなさい」という言葉では、続きません。このように習い事を始める前段階から手順を追って進めていくといいと思います。

(一社)教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。20歳で起業し塾を創業。現在はMama Café、講演、連載記事を通じて全国の保護者への教育活動を行っている。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』他多数。子どもの頃の習い事は「書道」。今でも筆で書いたり、活字への関心に繋がっています。