2022.06.09
学びをはぐくむ 石田勝紀

地頭を作る家庭でのアクティブ・ラーニング(前編) 教育専門家・石田勝紀さん

地頭を高めたいと思う人は少なくありません。しかし、地頭は生まれつき持っている賢い頭脳という印象が強いため、その意味を問うことなく何となく使っている言葉でもあります。確かに、地頭は先天的な要素が強いですが、後天的にも身につけることができます。しかし、学校で身につけることは用意ではありません。そこで、今回は地頭を家庭で、しかも日常の雑談をテーマとした対話を通じて作る方法についてお話します。

地頭が良いとはどういうことなのか?

ゲッティイメージスジャパンGetty Images

 地頭という言葉を聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

「地頭が良い」という言葉に代表されるように、生まれつき頭が良いという意味で使われることが多いのではないかと思います。それもあって、頭の良さは元々決まっていて、その後の努力で多少は伸びるものの、出来が元々違うため一種の諦めにも似た感情を持つこともあります。しかし、果たして生まれつきだからということで片付けられるものでしょうか。

筆者は「同じ勉強していてなぜ差がつくのか?」「地頭を育てる5つの習慣」の本で、地頭に関わる内容を書きました。これらの本は、34年間に渡る子どもたちの指導の結果に基づきまとめた本です。
そこでは、次のように書いています。「地頭は確かに先天的(生まれつき)という側面はあるが、後天的(学習)に育てることができる。」

そもそもこのお話をする前に、地頭とは何か?という点についてお話しなくてはなりません。

地頭とは考えることが出来る頭脳

この漠然とした用語は、実態が不鮮明なまま使われていることが少なくありません。辞書的な定義はおいておき、筆者の定義では、「地頭とは考えることができる頭脳」としています。

簡単に言えば、「考える力」です。考えることができる子とそうではない子の差が、学力の差をつけていることは明らかです。考える力があれば、記憶力も高まりますし、応用力もあります。

考える力とは何なのか?

しかし、ここでまた疑問が出てきます。「考える力」と言いましたが、考える力とは何でしょうか?

学校でも「考えてみよう!」とか「よく考えなさい」と言われます。しかし、考えるとは何かよくわからずに先生も使っている可能性があります。当然、子どもたちは「考える」の意味すらわからず、その言葉を聞いています。ですから子どもたちは考えるのではなく、悩むのです。「考える」と「悩む」は明らかに異なります。

そこで筆者は考える力についても定義しました。
「考える力」とは「疑問を持つ力」と「まとめる力」のことであると捉えています。人によって定義は異なるかもしれませんが、この2つの力がつくことで、考える力がつくことはわかっています。

ここまでの内容をまとめると次のようになります。

「地頭が良いとは、考える力があることであり、考える力とは、疑問を持つ力とまとめる力があること」

本来はこの2つの力を学校で身につけることができればいいのですが、なかなか難しいのが現状です。

そこで、家庭において、しかも日常の些細な雑談を通じた会話で、この力をつけてしまおうというのが、今回の内容です。

アクティブ・ラーニングを家庭で取り入れる

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 もう一つ説明が必要な言葉があります。それは「アクティブ・ラーニング」という言葉です。2020年から小学校、2021年から中学校の学習指導要領を改訂されましたが、そこで新しくこの言葉が登場しました。正確には「主体的・対話的で深い学び」といいますが、イメージとしてはグループ学習に近いものです。2人でペアになって行うペアワークもそれに入ります。

この形式は、その名の通り、主体的であり、深い学びができる方法として注目されています。企業研修では従来から行われている形式ですが、それが小中高の学校で導入されました。

この手法を家庭で取り入れてしまうのが今回の提案です。つまり、地頭を鍛えることを日常生活の対話「アクティブ・ラーニング」で行ってしまうということです。

では、具体的にどのような対話をしたらいいでしょうか。

そのためのポイントは2つあります。

  1. 観察する目を持てる問いかけをすること。
  2. 事実を分析する問いかけをすること。

具体的には次のような問いかけをしていきます。

観察する目を持つための問いかけとは?

「家まで帰る間に、いつもと違う変わったこと(気づき)を5つあげてみよう!」

「駅から見える看板で、何色の看板が一番多いかな?」

「周囲をみて、お年寄りに共通する年齢以外のことは何があるだろう。服装のタイプや、歩き方など」

「(秋に)葉っぱが色づく木と緑のままの木はどういう違いがあるだろうね」

要するにこれらの質問は「YES、NOで答えられない“クイズ”」のようなものです。このような問いかけをされると、よく観るようになります。人は問いかけられなければ、興味があること以外観ることはしません。

しかし、問いかけをされると観るようになります。例えば「周囲の赤を探してください」と言われると、赤色のモノを探しますよね。それまでは赤色を意識していなかったにもかかわらず、問いかけられると赤色があることに気づきます。これをカラーバス効果といいます。

これを適用し、まずは考える前に観るための問いをしていきます。

疑問を持つための問いかけとは?

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 観ることの問いが終わったら、次に疑問を持つ問いかけをします。
例えば、「駅から見える看板で、何色の看板が一番多いかな?」と質問したあとに、お子さんが「ん~、黄色や赤色も結構あるけど、青が一番多い」と答えたとしましょう。

そうしたら次のように聞いてあげましょう。

「なぜ、青が多いのかな。青を使っているところは赤色や黄色をなぜ使わないのかな?」
つまり、「なぜ?」という問いを投げかけます。このなぜという問いかけが、考える力を引き出すマジックワードの1つです。

皆さんも、「家の住所はなんですか?」と問われれば、答えられますよね。しかしそれは頭に入っている単なる知識です。知識は頭に入っていれば答えることができます。学校の勉強ではこの知識を習得することを中心にやってきました。しかし、それではまだ考えたことにはなりません。

そこで次に「なぜ、そこに住もうと思ったのですか?」聞かれたらどうでしょうか。「ん〜?」と思いませんか?これを「考える」と言うのです。つまり、人は「なぜ?」と問われた時の頭脳で起こる反応のことを「考える」といいます。

この考えるための問いに対して、仮に子どもは「ん〜、わからない」と答えたとしましょう。しかし、それでも全く問題ありません。なぜなら、「ん〜?」という状態のときに考えているからです。考えるという行為には、正解か不正解はなく、そのような「状態」でさえあれば問題ないのです。

このような対話を日常で時折入れていれば、子どもは、学校や勉強する場で、「なぜだろう?」という観念が勝手に出てきます。つまり「考える状態」が自然と作られることになります。

その結果、もともと地頭の良い子と対等なレベルになっていくということです。地頭は鍛えることができます。以上のように、後天的に対話を通じて鍛えていけばいいのです。

ぜひ、日常生活の雑談をテーマとして使ってみてください。

次回の記事では、もう一つの「まとめる力」をつけるにはどういう問いかけをすればよいかについてお話します。

「ぐんぐん伸びる子の育て方 教育専門家・石田勝紀さん」の記事一覧

石田勝紀
石田勝紀

(一社)教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。20歳で起業し塾を創業。現在はMama Café、講演、連載記事を通じて全国の保護者への教育活動を行っている。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』他多数。子どもの頃の習い事は「書道」。今でも筆で書いたり、活字への関心に繋がっています。

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