2022.06.29
学びをはぐくむ 石田勝紀

地頭を作る家庭のアクティブ・ラーニング(後編) 教育専門家・石田勝紀さん

地頭を作る方法は「考える力」をつけることですが、その力を2つに分解すると「疑問を持つ力」「まとめる力」となります。後編では、「まとめる力」をつけるための方法についてお伝えします。方法はある言葉を問いかけるだけです。つまり、日常の親子の会話の中で自然と使ってしまうことで、まとめる力がつき、さらに考える力がつき、結果として地頭のスペックが上がっていくという流れができあがります。

「地頭が良い」とは「考える力」があること

前回の記事では「地頭」の前編について書きました。今回はその後編になります。後編では、「地頭を作るための『まとめる力』をつける方法」についてお話します。

地頭について詳細な説明は前回の記事をご覧いただければと思いますが、簡単に振り返っておきます。地頭とは簡単に言えば、「考える力」のことと定義しています。地頭が良い子は例外なく考える力が高い子と言っても過言ではありません。しかし、「考える」とは、そもそもどういうことか説明がないままこの言葉が一人歩きしているため、地頭は生来のものと考えられてしまうと前回の記事で書きました。

「考える力」とは様々な定義ができるかもしれませんが、筆者はこれまで34年間子どもたちを育ててきた経験から、「疑問を持つ力」と「まとめる力」のことであると捉えています。つまり「地頭が良いとは、考える力があることであり、考える力とは、疑問を持つ力とまとめる力があること」ということになります。

「まとめる力」のつけかたとは?

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前回の記事では、疑問を持つ力をつけるにはどうすればよいかという点についてお話しましたが、今回は、もう一つの「まとめる力」のつけかたについてお話します。

「まとめる」という言葉を別の言葉で表現すると「抽象度を上げる」という言葉になります。これができる人は、世の中では「賢い人」と言われ、「考える力を持っている人」の最大の特徴です。

抽象的、具体的という言葉があります。

昔、国語の授業を受けていたと思いますが、そのとき書かれていた文章も、普段しゃべっている日常の会話も、「抽象、具体の羅列」によって成り立っています。しかし、子どもは、この認識ができていません。もしかしたら大人もできていないかもしれません。国語ができない子や意味が理解できない子は、この区別がついていないため、国語の文章を字ズラだけを追ってしまうという現象が起こります。つまり、「考えない」という状態に陥るのです。

「抽象」と「具体」の違いは

抽象とは簡単に言えば「ざっくり言うと、こういう感じ」というものであり、具体とは「はっきりとしていてわかりやすいもの」というイメージと捉えるといいかもしれません。

さらにわかりやすくするために、こういったお話をします。この例は私がいつも講演会でも触れている内容です。

例えば、山田さんがチワワを飼っていました。石川さんもチワワを飼っていました。山田さんのチワワも石川さんのチワワも具体的ですね。具体的な世界というのは比較、争いが起こります。

山田さんはこういいます。「石川さんのチワワは耳大きすぎない?うちのチワワの方が断然可愛いわ〜」と。しかし、山田さんのチワワも石川さんのチワワも、「チワワ」というカテゴリーに入っています。つまり同じですね。

すると今度は、内田さんのトイプードルが登場します。すると今度はまた比較、争いが起こります。

内田さんは「チワワなんてうるさい犬よく飼うわね〜。うちのトイプは全然吠えないし、お人形さんみたいで可愛いわ〜」と。しかし、チワワもトイプードルも一段上に上がって見れば「小型犬」というカテゴリーです。同じ部類になります。

するとさらに、今度は木村さんのゴールデンレトリバーが登場します。すると、また比較争いが起こります。

トイプの内田さんは「よくあんな大きな犬飼うわね〜。えさ代かかるし、信じられない」と。しかし、トイプもゴールデンも一段上に上がって見れば、「犬」というカテゴリーになります。同じ部類です。

このように、「チワワ→小型犬→犬→ほ乳類→脊椎動物→動物→生物」と上がっていくことを「抽象度が上がる」というのです。どの視点から見るかによって、判断が変わってきます。

「抽象度が上がる」勉強とは?

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算数の場合

これを、算数に当てはめてみましょう。

問題集1ページに10問の問題があったとします。抽象度の低い子は、全て10問とも別々の問題と思っています。「これは、分数が出ている。これは小数があって、この問題は分数と小数があって」と。しかし、抽象度の高い子は、これら全て10問の問題は“同じ”であることが見えています。ただ、違いも認識できています。この問題は分数、この問題は小数という表面的に形が違っているけど、「やっていることは同じ」であると“見えて”いるのです。

国語の場合

国語に当てはめてみるとこうなります。

例えば国語の説明文。1つの段落で言いたいことは1つしかありません。抽象度の低い子は、書かれている文章の用語が違っているし、構造が違っているから、全て違っていることが書いてあると錯覚をしています。だから字ズラを追い、設問では答え探しが始まります。しかし、抽象度の高い子は、表面的な形は違っていても、「言っていることは同じ」ということが“見えて”います。

このような見え方、感じ方ができているかどうかは、端からみてもわかりません。ただ問題を解いている様子、文章を読んでいる様子としてしか見えないからです。しかし、実態は、全く異なります。抽象度が高い子は、上から物事が見えるので、ポイントを即つかんでしまいます。でも、そうでない子は大変です。何しろ、全ての問題や文章が違って見えているのですから、いくら勉強しても無限にある問題としてしか認識できず、そうなると勉強のやる気など出るはずがありません。

抽象度を引き上げる魔法の言葉とは?

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では、次に気になるのは「抽象度を引き上げるにはどうしたらいいか」ということになります。一見、難しそうに思えますが、実に簡単な方法で、抽象度を上げることができます。それはある言葉を問いかけるだけです。筆者はそれをマジックワード(魔法の言葉)と呼んでいます。

その言葉とは「要するにどういうこと?」という問いです。人は「要するにどういうこと?」と問われると、枝葉をそぎ落として、幹だけを選択するようになります。つまり、まとめるという作業を自動的に行うようになるのです。

先ほどの例でいえば、「チワワは要するに何?」と問われると、「犬」となります。「犬は要するに何?」と問われると「ほ乳類」というように、徐々に抽象度が上がっていきますね。ですから、「要するに?」というのは、抽象度を引き上げる魔法の言葉なのです。

小さい子には「同じ部分は何かな?」と問いかける

子どもが小さいときは、「要するに」という意味がわからないこともあるので、その場合は「同じ部分は何かな?」と聞いてみてください。

共通部分が見抜けるとき、それは抽象度が上がっているときです。例えば、「チワワとトイプードルの共通点は?」と聞かれたら「犬」とか「小さい」とか答えますよね。抽象度が上がった回答がでてきます。

共通部分が見抜けると、例えば過去問も5年分ほどやれば、共通したパターンを見抜くことができます。しかし、抽象度が低いとすべてが具体的な異なった問題としてしか認識できないため、いつまでたっても応用できません。初見のものはすべてできないということになってしまいます。

このように、「まとめる力」がついてくると、考える状態になり、地頭が良くなるという結果をもたらすのです。本来は、学校教育でこのような問いかけをすることで子どもたちの地頭のスペックを上げてほしいのですが、難しいこともあるので、ぜひ家庭で行ってみてください。

すると勉強が面白いという副産物まで手に入ることもあります。

「ぐんぐん伸びる子の育て方 教育専門家・石田勝紀さん」の記事一覧

石田勝紀
石田勝紀

(一社)教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。20歳で起業し塾を創業。現在はMama Café、講演、連載記事を通じて全国の保護者への教育活動を行っている。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』他多数。子どもの頃の習い事は「書道」。今でも筆で書いたり、活字への関心に繋がっています。