2022.07.25
学びをはぐくむ 白根理恵

習い事と中学受験、どう両立させる?~ケース別に解説 後悔しない方法とは:前編

朝日新聞オンラインフェス「学びと受験のヒント」が7月9日に開催され、中学受験プロ家庭教師の安浪京子さんを迎え、「習い事と中学受験、どう両立させる?~ケース別に解説 後悔しない方法とは」というテーマでお話をお聞きしました。中学受験の塾に通い始めると、習い事はやめた方がいいのか。どの家庭でも悩みが尽きません。中学受験に向けた心構えや習い事との両立の仕方、習い事を続けるかやめるかの決め方などについて、安浪先生が詳しく解説してくれました。イベントの内容を、前編と後編に分けてお届けします。

【前編のテーマ】

1.中学受験に向けた家庭の心構え 

2.子どものタイプ別解決方法

3.安浪家の場合は? 

中学受験に向けた家庭の心構えは?

安浪先生によると、中学受験への取り組み方のスタンスは3つに分けられるといいます。習い事をどうするか決める前に、どのスタンスで中学受験に向かうかを決めておくことが大切だというのが、安浪先生の考えです。

中学受験に取り組むスタンスは3つ!

──まず、安浪先生がおっしゃる「中学受験に取り込む3つのスタンス」について教えてください。

安浪:現在の中学受験はとても多様化していて、受験への取り組み方も親世代のころとは変わってきています。そこで私は、中学受験に取り組むスタンスをアスリート型、マイペース型、スタンダード型の3つに分けました。

アスリート型は、まるでオリンピック選手を育てるように、志望校に絶対入学すると目標を決めて家族一丸で受験を乗り越えていくタイプです。

実は10年ほど前までは、このアスリート型での中学受験が主流でした。小学6年生の夏休みにはどこにも出かけず、ひたすら勉強、勉強というタイプです。

マイペース型は最近増えてきているスタンスで、勉強だけでなく他に頑張っている習い事や、家族の時間も大切にしたいというタイプです。

親も何が何でも中学受験で私立や中高一貫の国公立に行かせたいと思っているわけではなく、もし受験で落ちたら地元の公立中学校でもうちの子は輝けると考えています。こういうご家庭は家庭教師や個別指導をカスタマイズして勉強していることが多いです。

スタンダード型は現在一番多いスタンスです。勉強はやらせたいけれど、頑張りすぎると子どもも潰れてしまうし親子げんかも増えてしまう。常に悩みながらも、基本的に中学受験の進学塾で勉強しています。

── 習い事を辞めるか続けるのかを考える前に、中学受験の方針を家庭で決めておくことが一番大事なのでしょうか。

安浪:そうですね。うちはアスリート型で行くぞと決めても、お子さんがマイペースだったら親子の衝突が増えるだけです。うちの子はどのタイプで、どういうやり方なら潰れずに頑張れるのかということと、親の意向も含めて家族で受験に対するスタンスを決めることが大切です。そこを決めておかないと、習い事をどうするか、考えられません。

子どものタイプ別解決方法


子どものタイプを4つに分け、受験勉強と両立させるための解決方法についてタイプ別に答えていただきました。

ケース①習い事は4つ!どれも辞めたくない器用な女の子

── ピアノや水泳、英語、ダンスと4つの習い事をやっていて、どれも上手に器用にできてしまう女の子です。そろそろどれかやめた方がいいんじゃないの?と聞くと、どれもやめたくないと答える子です。

安浪:大手進学塾などでは特に、小学4年生から本格的なカリキュラムが始まるので、4つの習い事と両立させるのは難しいのが現実です。まず習い事の優先順位を本人に決めさせましょう。

どれかやめなさいというのではなく、いったん受験が終わるまでお休みしていいかなと思うものや、4~5年生までは頑張りたいけど6年生になったらお休みしようと思うものを考えてごらん、と具体的に聞いてあげることです。

塾と習い事4つと考えるのではなく、塾の科目の中にも優先順位を付けてみる方法もあります。例えば国語がすごく得意なら、習い事と塾の国語の日が被ったときに国語の塾をちょっと間引いて、習い事の方に行ってみるというやり方です。

ただ、家庭学習でどれだけカバーできるかにかかってきますし、6年生になると受験も本格化してきて科目を間引くことは難しくなるので、まずは習い事の中で優先順位をつけてみるのがよいでしょう。

ケース②サッカー命!集団、スポーツを習う体育系男子

── みんなで一緒にサッカーするのが大好きな体育系男子。コーチや仲間に悪いから、自分だけ練習を休んだりチームをやめたりできないケースです。

安浪:これは難しいですね。監督が厳しかったり、5、6年生になると模試と試合が重なったりしますから。この場合も、まず本人の気持ちが大事です。チームに迷惑がかかるからやめられないというのであれば、受験とチームスポーツとどちらをとるかを家族で話し合ってみましょう。

そこでもしチームスポーツを取ると言ったら、どういうチームでやるかという選択をします。今のハードなチームで続けるのか、もう少し練習もゆるめなチームに移転するのか。もし今のチームでガッチリ続けたいといったら、腹をくくるしかないです。

そういうチームだとだいたい6年生の秋まで試合があるので、模試と重なったら振り替えやオンラインで試験を受けるなど、勉強の穴を埋めるために自分で時間を捻出して埋めていくしかありません。でも、そういう選択をした子どもは朝早く起きて宿題をやったり、試合がない日曜日に朝から晩まで勉強したり頑張ってやっています。

大手進学塾ではなく、個別カスタマイズした勉強方法を選んだり科目を絞ったりするなど、別の勉強の仕方も考えてみるといいと思います。

 ケース③発表会に出たい!ピアノやバレエひと筋コツコツ系女子

── 習い事の発表会などがあって、そこまでは絶対に続けたいという女の子です。この気持ちは尊重してあげたいですが、いかがでしょうか。

安浪:これは尊重してあげていいです。ただピアノのコンクールに出るとかバレエで主役を踊るなど、力を入れて練習しなければならないとなると、チームスポーツのときと一緒ですよね。ずっと頑張って練習も出たいというのであれば、どのように勉強を進めればいいのか。家族で話し合うことが必要です。

ところが学年が上がってくると宿題の量がとても多くなるので、家庭だけで勉強の優先順位を付けるのが難しくなってきます。塾の先生に、事情を詳しくお話してみるのがいいでしょう。勉強の優先順位を相談するなど、塾の先生を味方につけることです。先生からも「発表会1週間後だろ、頑張れよ」と言われたら、子どもは勉強も発表会も頑張れます。

ケース④いま辞めたらもったいない!親が続けてほしい英語やプログラミングお役立ち系習い事

── 英語やプログラミングなどのように、「お役立ち系」の習い事の場合、親の方が続けてほしいと思うこともあるようです。この場合はどうしたらよいでしょうか。

安浪:親からすると技術習得的な習い事を続けてほしいというのが本音ですよね。一番大事なのは子どものやる気があるかどうかですが、もし習い事を続けさせたいなら、回数や時間を少なくするなど負担を少なくしてみましょう。細々とでも続けていれば親も安心できるのではないでしょうか。子どもにとっても勉強の気分転換になることもあります。

中学受験は、親がいかに機嫌よく、心が安定しているかも大事なことなんです。親の心が安定していると、家庭の雰囲気も良くなります。

安浪家の場合はどうしてる?


安浪先生には小学5年生の息子さんがいます。安浪家の習い事事情について聞いてみました。

学年や忙しさに合わせて、習い事や塾の通い方をカスタマイズ

── 息子さんは今までどのような習い事をしてきたのでしょうか。

安浪:保育園の時からピアノを習っていて、小学校に入ってからスイミングも始めました。ダラダラやるより短期間で習得できるようにとマンツーマンで習っていました。泳げなかったのでせめてクロールと平泳ぎ、できれば背泳ぎまでできるようになってほしかったのが理由です。どれも泳げるようになったところで、息子に「どうする?」と聞いたら、「やめたい」と言いました。マンツーマンで本格的に教えられるのが嫌で、イヤイヤ通っていたところもあったんです。

スイミングをやめたのでピアノと塾だけになると思っていたら、水泳の代わりに合気道をやりたいと言い出したんです。親としては合気道もマンツーマンでと思ったんですが、本人がゆるくやりたいと言ったので集団で楽しくやれる合気道教室に通うことにしました。今5年生ですが、ピアノと合気道を週に1度ずつやっています。

ただ5年生になって塾が忙しくなってきたので、ピアノのレッスンを短くしてもらったり、週に4日行っていた塾の授業の半分をオンラインに切り替えたりしました。塾に行くと帰りが21時ころになってしまうのが嫌だったようですが、今は2日だけになったので機嫌よく過ごしています。合気道も気分転換になっているようです。

子どもの意思を尊重して、親は全力で応援する!

── 親は習い事をやめてほしいのに、子どもは続けたいと思っているときはどうすればよいでしょうか。

安浪:休むかやめるかを家族で相談するときは、親として子どもがやりたいと思っていることは何でも全力で応援すると伝えてほしいです。いつでも軌道修正できるのだから、親の顔色を見るのではなく、後で振り返って後悔しないような選択をしていいんだよと安心させてあげるのが大事です。


後編は習い事を続けるかやめるかを決めるポイントと安浪先生からのメッセージをレポートします。

関連記事:習い事と中学受験、どう両立させる?~ケース別に解説 後悔しない方法とは:後編


7月9日に配信された朝日新聞オンラインフェス「学びと受験のヒント」は、8月8日まで見逃し配信で視聴できます。こちらからご応募ください。

https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11008046

 

プロフィール:安浪京子(やすなみきょうこ)

1976年生まれ。神戸大学卒業。中学受験の算数を教えるプロ家庭教師。関西と関東の大手進学塾で算数を指導した後、プロ家庭教師として20年以上にわたり現場で指導をしている。親のメンタルサポートを提供する「アートオブエデュケーション」を設立。著書に「親がやるべき受験サポート」(朝日新聞出版)など。

白根理恵
白根理恵

本業は会社員の副業ライター。ジャンルを問わず、知らない世界にも無謀にチャレンジするのが唯一の強み。身につけたスキルはスキマ時間の活用能力。映画をこよなく愛する2児の母でもあります。