2022.07.29
学びをはぐくむ 黒澤真紀

「お父さんのような公認会計士になりたい」小3で簿記検定3級に合格

小学3年生で、日商簿記検定3級に合格した新潟県長岡市・大島小学4年の西方彩花(いろは)さん(9)。受検者のほとんどが高校生で、小学生の合格は珍しい中、両親にサポートしてもらいながら見事、合格をつかみました。実は初級1回目の試験は12点で悔し泣きをしました。3級に合格するまであきらめずに挑戦し続けることができたのはなぜだったのでしょうか。

3回目の挑戦で合格。「嬉しくて涙が出た」

最初に覚えた用語は「貸借対照表」と「損益計算書」。漢字の読み方や意味は両親が教えてくれました最初に覚えた用語は「貸借対照表」と「損益計算書」。漢字の読み方や意味は両親が教えてくれました

3回目の挑戦で日商簿記検定3級に合格した時は、「嬉しくて涙が出ました」と彩花さん。それもそのはず。7か月前、初級に初めて挑戦したときは、12点で不合格だったことに悔し涙を流したからです。その後、86点で初級に合格して4か月、あきらめずに勉強を続けた結果、さらに上の3級に合格することができました。

3級は、初級からぐんと難易度が上がります。取引について説明した文章を読み取って仕入れ額や売上額を記入したり、株式会社会計についても問われたりします。企業実務に必要な力が求められるうえに、合格率も初級が60%前後なのに対して3級は40%程度。

「小3の年末に3級を2回受検して不合格だったので、残りの冬休みは猛勉強しました」。日本公認会計士協会の子ども向け講座「ハロー会計」への参加も大きな刺激になり、これまでに勉強した内容は身についていると実感できたことも自信につながりました。

「絶対に3級に合格したかった。頑張ってよかった。本当に嬉しい」と彩花さんは満面の笑みで話します。

公認会計士の父の言葉が受検のきっかけに

「タイミングを見て、簿記の勉強を進めようと思っていました。手に職をつける意味でも、将来のためになる」(父太地さん・左/彩花さん・右)「タイミングを見て、簿記の勉強を進めようと思っていました。手に職をつける意味でも、将来のためになる」(父太地さん・左/彩花さん・右)

受検のきっかけは、彩花さんが小学3年生の6月、「簿記は世界共通だから勉強してみたら?」と、公認会計士の父・太池さんに勧められたことでした。「簿記って何?」と基礎から始める彩花さんが楽しく勉強できるように両親が選んだ教材は、簿記について説明しているYouTubeです。多数のチャンネルから、登録者数が多いもの、わかりやすいもの、アニメのものなどを選んで視聴しました。そのうち、「パパ、簿記って身近にたくさんあるんだね」と言うようになり、街で「株式会社」の看板を見つけては「ママ、あれも簿記だね」と言うようになります。

太池さんの職業柄と、両親が、「お金は生活に欠かせないものだから、子どものうちから考えてほしい」と考えていたこともあり、彩花さんが小さな頃から、家族の会話にはたびたびお金の話がでました。店頭のパート募集のポスターを見て、「彩花のほしいものを買うためには、このお店で〇時間働かなきゃいけないね」という会話もその一つ。両親の影響もあり彩花さんは小さいころから数字が好きで、「これを買ったらいくらするの?」とお金にも興味を持っていたそうです。

彩花さんにとって簿記検定は、「資格取得のために勉強する」というより、これまでに両親と話してきたことの延長線上にあるものだったのでしょう。

専門用語で頭はパンク寸前 親が歌って解説

彩花さんが小さな頃から家族で登山をするのが趣味。「%」の概念がわからないときは、「30%は、山の3合目と同じだよ」と教えるとよくわかった彩花さんが小さな頃から家族で登山をするのが趣味。「%」の概念がわからないときは、「30%は、山の3合目と同じだよ」と教えるとよくわかった

公文で中学3年の数学をやるほど数学が好きで、ゲーム感覚で問題を解くのが楽しかった彩花さんですが、簿記の専門用語となると話は別です。読むのも覚えるのも苦戦を強いられました。例えば、「1万円のうち、〇何ヶ月分は当期のもので、残りの〇ヶ月分は次の会計期間のものとして考える」とテキストに書かれていても、言葉の意味も、お金の仕組みもわかりません。頭がパンクして、「もうできない」と嫌になってしまいます。

そんな時は、10年ほど前に簿記3級を取得した母、愛恵さんが、「3000円で買った彩花の体操服を、3年間着せるつもりで買うよ。 1000円は3年生のぶん、残りの2000円はまだ使ってないぶんとしてプールしておくね」と身近な例に置き換えて説明します。

「決算きたら、減価償却~♪」、「貸借対照表、損益計算書、合わせて財務諸表~♪」と替え歌を作って一緒に歌って覚えたことも。

ある時は、太地さんがコンビニの店員を演じました。商品の仕入れから陳列、お客さんが購入したあとお金はどう動くのかを簿記の流れで説明しながら実演して見せました。

泳ぐのが大好きな彩花さんは、スイミングで気分転換をしながら、徐々に簿記の専門用語を理解していきます。両親がわかりやすく、そして楽しく、かみくだいて説明したことで頭に入るようになりました。

「寝る前の10分」が習慣に

「問題集から入ると嫌になってしまうので、まずはYouTubeやアプリを活用することから始めました」(母、愛恵さん)「問題集から入ると嫌になってしまうので、まずはYouTubeやアプリを活用することから始めました」(母、愛恵さん)

初級を合格した2日後には「3級を受けたい!」と、意欲がどんどん湧いてきたという彩花さん。平日は学校や習い事があるので、寝る前に10分、簿記のYouTubeを見たり、問題を何問か解いたりするようにしました。最初は母親と一緒にやっていましたが、そのうち何も言わなくても自分からやるようになります。

愛恵さんは「勉強が習慣化し、決めたことを続ける力がついたと思う」と言います。「寝る前の10分」の積み重ねが大事だと感じています。

父のような公認会計士になりたい

家族で新潟県三条市の「しただ新緑ロードレース」に参加後、新潟県景勝100選に選ばれた「八木ヶ鼻」に登ったとき家族で新潟県三条市の「しただ新緑ロードレース」に参加後、新潟県景勝100選に選ばれた「八木ヶ鼻」に登ったとき

3級合格後、彩花さんは母親と共に2級に向けて勉強を続けています。将来の夢は「父のような公認会計士になること」。楽しそうに仕事をする太地さんは彩花さんの憧れです。

簿記を勉強するようになって彩花さんは、円高のニュースにも関心を持ちはじめ、投資の仕組みも両親と一緒に勉強するようになりました。

「最初は難しかったけど、両親と一緒に勉強するうちにどんどん簿記が楽しくなりました。頑張れば目標に届く。あきらめたら届かないと思うと頑張る力がわいてくるんです」。

彩花さんの公認会計士への道はまだ始まったばかりです。

両親の話

彩花は子どもの頃から恥ずかしがり屋で、幼稚園や学校でもあまり発言しませんでした。簿記検定を通じて自信がついたのでしょうか。あきらめない心が育ち、「もっとがんばるぞ」とやる気がどんどん湧いてきて、嬉しかったですね。子どもが何かに取り組むとき、親がそれを一緒にやれるかどうかが大切かなと思います。親も学ぶきっかけだと考えるのもよいのではないでしょうか。子どもの挑戦は、自立につながります。これからも彩花の夢を応援していきたいです。

簿記検定について

Q. 簿記検定 を実施した目的は?

A.企業活動に必要とされる人材の育成を目的としています。ビジネス実務に直結する知識・技能を重視しており、試験内容は、ビジネスを取り巻く環境の変化に対応したものになっています。

Q.合格率は?

A.直近では、1級が10.2%、2級が17.5%、3級が50.9%、初級が64.2%ですが、回によって違います。
詳細はこちらをご覧ください。

Q.どのような問題が出題されますか?

問題に関する内容については公表していません。代わりに、教育機関等からのご協力を得て、 日商簿記検定2級・3級受験の学習に役立つ、各種の情報コンテンツ、学習ツールを提供するサイトを開設しています。会員登録(無料)すれば、自由にご利用いただけますので、ご活用ください。
 https://cloud-cafe.biz/users/sign_in

 Q.勉強方法を教えてください。

A.公式・公認の学習教材のほか、出版社や教育機関が独自に作成した参考書や問題集、通信教育などもあります。自分に合ったものを利用して学習を進めていただけるといいかと思います。

Q.受検を考える親子にメッセージをお願いします。

A.簿記検定は、業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身につけておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格です。専門的な知識やスキルを身に付けるためや自分自身のスキルアップのために、年齢は関係なく、ぜひ挑戦してみてください。

日商簿記検定の公式サイト
https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping

黒澤真紀
黒澤真紀

1977年生まれ。愛媛県出身。旧姓、井上。都内の学習塾に勤務した後、結婚、出産を経てフリーライターに。教育を専門に学びたいと、中学生と小学生の息子を育てながら都内女子大の修士課程を修了。大人になっても「学びは楽しい」と実感する。海と山に囲まれて育ち、虫が全然怖くない。子どもの頃は自然の中で遊ぶのに夢中で、得意だったのは押し花と走ること。