2020.11.24
習い事Q&A 狩野さやか

何の役に立つの? 子どもの「プログラミング教育」

小学校でプログラミングを学ぶと聞いたけど、何の役に立つのかわからない? いえいえ、英語ができると世界が広がるように、プログラミングも子どもたちの可能性をぐんと広げる大切な力になります。なぜプログラミング教育が必要なのか、どんな目的があるのか紹介します。

プログラムは見えない「生活必需品」

私たちの身のまわりにはどれくらいコンピューターがあるでしょう。パソコンやタブレット、スマートフォンは、どれも高機能なコンピューターです。テレビ、電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、給湯器など、ふだん使っている家電や家の設備にも、マイコンと呼ばれる小さなコンピューターが組み込まれています。これらを動かす指示書のようなものがプログラムで、プログラミングはプログラムをつくることです。

今や必須のメッセンジャーや地図アプリ、ゲームなど、さまざまなソフトウェアもプログラムで動いています。ネットショッピングや、フードデリバリーサービスなど、インターネットを使って利用する便利なサービスの仕組みもプログラミングで作られています。スマートスピーカーやVR、車の自動運転装置など、次々に生まれる新しい技術にも、その機能をプログラムしている人たちがいます。

その存在は、目に見えないものや、手で直接触れられないものが多く、実感しづらいものですが、生活のすみずみに浸透しています。

テクノロジーが身近になる

これだけ日常にあふれているわけですから、コンピューターやプログラムの働きについて小学校で学ぶのは、とても自然なこと。これからの社会をつくる子どもが、積極的に身のまわりにある技術を知ろうとする発想を持ち、技術の担い手になる可能性を広げることが大切です。

小学生のうちにプログラミングを体験すると、「これもプログラミングで動いているんだ!」という発見が生まれ、テクノロジーを身近に感じやすくなります。

パソコンを使いこなし、サービスを安全に利用するユーザーとしての技術や知識も身につく一方で、自分でアプリやサービスをプログラミングして生み出す発想もできるようになります。

「生み出す側」の発想力が育つ

プログラミングと出合った子どもが、将来、誰もが驚く新しい仕組みを生み出すこともあるでしょう。プログラマーにならなくても、プログラミングで作られる製品やサービスに、企画、デザイン、PR、営業など、様々な立場で関わる人は増えていきます。

ある農家では、これまで熟練者の目に頼っていた野菜の等級分け作業を、AIを活用して自動で判定できるようプログラムを組み、大幅に効率アップ。プログラミングの専門家ではなくても、独自に技術を学んで問題解決をしました。

自分の力で何かをより便利にしたり、困っている人を助けたりする仕組みを作ろうという視点と同時に、その手段を持つことができるのです。

ITを使いこなす幅広い力

2020年度から始まった小学校の新しい教育課程では、読み書きと同じような基礎力として「情報活用能力」を身につけることが重視されており、その中にプログラミングも含まれています。

パソコンを使った資料づくりやプレゼンをしたり、インターネットで得た情報の活用や情報モラルを身につけることと共に、学習のさまざまなシーンでプログラミングに取り組むことになっています。

基礎的な力のひとつですから、小学校では職業訓練のようにプログラミングの専門的な技能を身につけることを目指しているのではありません。プログラミングを体験しながら、「プログラミング的思考」を育てることを目的のひとつとしています。

「プログラミング的思考」を育む

 小学校で「プログラミング的思考」を育む目的は、新学習指導要領では次のように説明されています。

子供たちが将来どのような職業に就くとしても時代を越えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」(自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組合せが必要であり,一つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせたらいいのか,記号の組合せをどのように改善していけば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論理的に考えていく力)を育むため,小学校においては,児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動を計画的に実施することとしている。
(平成29年告示 小学校学習指導要領 解説 総則編 p.85より)

「プログラミング的思考」は、プログラミングをする時の思考プロセスです。ロボットをゴールまで走らせたい時には、ルートを見立て、走らせる手順を考え、その手順をロボットがわかる言語に置き換えて、プログラミングのルールに従って組み立てます。もし思うように動かなければ、原因を探して何度でもやり直します。

このような思考プロセスは、広い意味でとらえればプログラミング以外のシーンでも役立つ論理的な思考力であることから、「子供たちが将来どのような職業に就くとしても時代を越えて普遍的に求められる」力と表現されています。

また、身のまわりにあるテクノロジーに気づき、テクノロジーを使った問題解決の視点を持つことも、小学校のプログラミング教育の目的としてあげられています。

プログラミングに取り組むねらいは…(中略)…論理的思考力を育むとともに,プログラムの働きやよさ,情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き,身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと
(平成29年告示 小学校学習指導要領 解説 総則編p.85〜86より)

子どもの可能性を引き出す

プログラミング教育を行っている小学校で様子を聞くと、「普段そのほかの学習では積極的な態度を見せない子どもが、とても熱心に集中する姿もある」といいます。これは、今まで見えにくかった子どもの可能性を、プログラミング教育が引き出し、育てているという一例でしょう。

プログラミングでは、暗記した知識でテストに答える力とは違った能力がより強く求められます。その場で調べた情報を応用する力、試行錯誤を繰り返す力、エラーの原因を効率よく見つける力、プログラムを完成させるまで粘り強くやり抜く力などさまざまです。社会で生きていくために役立つ多様な力が育まれるのです。

狩野さやか
狩野さやか

株式会社Studio947のライター、デザイナー。技術書籍や記事の執筆、ウェブデザインに携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、プログラミング教育やICT活用について情報発信している。子どもの頃習っていたピアノやブラスバンドなどで続けたフルートで、技術の習得に近道はないと実感。ステージ上で演奏する緊張感を繰り返し味わったことはいい経験になっている。

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