2020.11.24
学びをはぐくむ 今井明子

子育てに悩む親のかけこみ寺「おやこ保育園」 コロナでオンライン化

保育士で起業家の小笠原舞さんと小竹めぐみさんのふたりが主宰する「おやこ保育園」。「保育園」と名前はついていますが、未就学児の子どもを持つ親向けの習い事で、通った親からは「育児の悩みが減った」「子育てが楽しくなった」という声が寄せられています。いったいどんな保育園なのでしょうか。withコロナの時代で遂げたさらなる進化についてもお伝えします。

親子で通う「おやこ保育園」の魅力とは

「おやこ保育園」は、親子で一緒に通える「保育園」です。親が仕事や病気などのために子どもを預ける保育園とは違います。全10回のプログラムで構成されている親子講座の形式です。

コロナ禍以前までは、0~2歳の未就園児とその親を対象に、1回3時間で全10回のプログラムとして開催。どの回も子どもが主役の遊びの時間と、大人が主役の子育てについて語り合う時間が設定されています。「子ども向けにできた施設でなくても、どこでもできる」と考え、これまではお寺のホールやリノベーションされたビルの一室などを借りて行ってきました。

「子どものために 家族のために」と気づかぬうちに頑張りすぎて、子育てや家事に疲弊している親たちの多くが、プログラムを通じて子どもの本来持っている力をもっと信じてあげられるようになる。そして、大人自身が自分の気持ちと向き合い、「完璧にできなくてもいいんだ」「無理していい親にならなくてもいいんだ」と思えるようになるのが「おやこ保育園」の魅力です。

参加した親からは「子どもとの遊び方のコツがわかった」「子どものために申し込んだのに、自分が変化した」「今思えば、以前は親として子どもにいろいろしてあげたいといつも力が入っていたけれど、今は今日も子どもが生きているならそれだけでいいやと、思えるようになった!」などの反響がありました。口コミで評判が広がり、2014年にスタートしてからこれまでに約200家族が卒園していきました。

コロナ禍でオンライン化に挑戦

未就園児を育てる親から支持を得て広がってきた「おやこ保育園」でしたが、2020年の春に新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、いままでのように親子が集まる形式で開催することが難しくなりました。

そこで、小笠原さんと小竹さんは悩んだ末に、この「おやこ保育園」をオンライン化することに踏み切ったのです。

新型コロナウイルスの感染は収束のめどがみえません。そして、自宅にこもることを余儀なくされた親からのヘルプの声も聞こえてきます。私たちが今、悩める親のためにできることは何なのかを考え、オンライン化に踏み切ることを決めました」(小竹さん)

自宅で過ごす親子の時間が増えたからこそ、誰かとつながる場として、「おやこ保育園」の必要性が高まっていると感じたと言います。

オンライン化したことで「おやこ保育園」はさらに魅力的に

こうして、オンラインおやこ保育園のトライアルを行ったところ、「おやこ保育園はオンラインでも効果がある」と確信したそうです。

リアルなおやこ保育園では、子どもが遊ぶための素材(日常にあるもの)をこちらが用意していました。しかし、オンライン版では各家庭で用意してもらうことになります。自分の家にあるものでもこんなに遊べるんだ!と気づいてもらうことができ、メリットを感じました」(小笠原さん)

オンラインのプログラムの様子は録画もできるので、あとで見直すことができるのも参加者にとってはありがたいポイント。また、親子が外出して一か所に集まるのではなく、自宅にいながら参加することができるので、コロナ禍でも安心です。

リアルで開催していた頃は人見知りや場所見知りが起こり、子どもたちが慣れるまでに時間がかかりました。しかし、オンラインだと、自宅にいながら参加できるので、親子ともにリラックスしたまま参加できます。子どもが遊びに入り込むまでの時間が短くなりました」(小竹さん)

その他にも、オンラインのメリットは多岐にわたります。ひとつの画面の中に参加している親子が並ぶので、子どもの個性の違いが一瞬でわかることや、リアルの場では子どもがざわざわしていて、講師の声が聞き取りにくい場面もありましたが、参加者の音をミュートにすれば、講師の声がクリアに聞こえます。

何より大きなメリットは、全国どこからでも参加できるようになったこと。これまでは関東と関西2か所での開催だったので、親子で通える範囲の方しか通えませんでした。全国に住む親子と交流でき、つながれたのがうれしかったという声も多く寄せられました。

講座以外の時間はSNSを活用して、参加者同士のグループを開設。リアルの場ではプログラムの時間が終わって参加者同士が別れてから次回までは空白の時間でしたが、参加者同士でちょっとした雑談ができるようにしたところ、これも参加者からは好評でした。

コロナ禍のピンチをチャンスに変える。オンライン化することでさらに良質なものを、求めている人に提供する。小笠原さんと小竹さんの前向きな姿勢はとてもすがすがしく感じます。

おやこ保育園では、わずかな時間ではありますが、親同士が真剣に対話を重ねます。コミュニケーション、個性、イライラなど、その日のテーマに従って、ワークショップスタイルで進められます。明確な答えのないことについて考えを話し合うと、『ほかの人は子育てでここを大切にしているんだな』ということがわかり、そこで自分はどうしたいのかを考えるきっかけになります。日々子育てをしていると、心の余裕がなくなりがち。自分を見つめ直すきっかけになればいいなと思っています」(小笠原さん)

無償化のためにクラウドファンディングも

さて、オンラインのトライアル版を行って手ごたえを感じたため、10月から全10回のおやこ保育園がスタートします。これまでリアルで開催していた時には5万円で設定していましたが、小笠原さんと小竹さんはこれを無償化しようと考え、クラウドファンディングを行うことに。

そして、2020年7月31日から2020年10月14日の期間に行ったクラウドファンディングは見事に達成し、300人を超える方々から、約400万円を集めることができました。

おやこ保育園の卒園生や過去にお世話になった方などが、『これからおやこ保育園に参加する方のために』と支援してくださいました。クラウドファンディングを通じて、私たち2人が出会って子どものための事業を始めてから10年、さまざまな方に支えてもらってここまできたのだということをかみしめています」(小笠原さん)

クラウドファンディングの期間中には、おやこ保育園の卒園生から「オンラインなら地方に引っ越していった友達にもすすめられるからうれしい」「おやこ保育園は社会に必要な事業だと思うから頑張って」などのあたたかいエールがたくさん届いたそうです。

集めたお金は、軌道に乗せるまで、事業を続けていくために使っていく予定だといいます。

おやこ保育園が広がっていくことで『やさしさの循環』が起こるといいなという願いから、『恩送り』形式にチャレンジすることにしました。無償化になったおやこ保育園を卒園された方がもし、もっと多くの人に体験してほしいと思った場合、次の人へバトンを渡す。お金でもいいし、自分の時間やスキルを使ってサポートするのも大歓迎。何らかの形で自分以外の誰かへ思いをつなぎ、寄付をする。それによっておやこ保育園が継続し、新しい親子の未来が明るくなる…それを目指したいと思います」(小笠原さん)

関連記事:「おやこ保育園」の2人が悩み相談 「子どもがネットづけ。どうしたらいい?」 

教室情報

「オンラインおやこ保育園」

対象:0~6歳の未就学児の親子
期間:3カ月で全10回
詳細やお問い合わせ:https://kodomo-mirai-tankyu.com/oyako-hoikuen

今井明子
今井明子

サイエンスライター。気象予報士。科学・教育・育児などの分野で執筆。おもな執筆媒体は「Newton」「暦生活」。著書に「天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)など。防災講師や気象科学館の解説員も務める。子どもの頃から生き物に夢中。舞台に立つのも好きで、中高は演劇部、大学はフィギュアスケート部。

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