2020.11.24
学びをはぐくむ 小宮山利恵子

with コロナの時代 子どもたちには生きるための学びを

混沌とした、未知の事象が多発する時代。そこで必要になるのが「生きる力」です。それには「観察力」が必要で、五感を使ったリアルでアナログな学びがより重要になります。デジタルで覆われた社会で、子どもがどのように生き抜けば良いか?そのヒントを記します。

コロナ禍で家庭に求められる学び

2020年初頭から日本でも新型コロナウイルスが拡大し始め、学校は休校に追い込まれました。コロナ禍で家庭ではどのような学びが求められるようになったのでしょうか?

まず「教育」というと学校での学びと考える人も多いのですが、家庭での学びも重要だと改めて認識する必要が出てきました。家庭における学習において、子どもの不安を取り除き、安心安全な場・環境を作ることが前提となってきます。

そして、子どもよりもまず親のマインドセットを変えることが必要になりました。つまり、休校中、学校によってはオンラインでの授業配信を行なっていましたが、それに親がついていけたかどうかです。

私には中学1年の男児がいますが、私たち親世代は対面での授業しか体験してきませんでした。そのため、オンラインでの授業に不安を感じていたはずです。

「対面の方が子どもたちが集中して聞けるのではないか?」
「質問があった時には、どうしたら質問できるのか?」
「親でも分からないことが出てきたら、どうすれば良いのだろうか?」

このような様々な疑問について、私たち親はうやむやにせず、何らかの答えを出せたでしょうか?

親はスマホを日々使っていますが、オンライン授業で使うデバイスやアプリはスマホとは操作性が異なる場合が多いです。その時に「私には分からない」とアレルギー反応を示さず、自分も一緒になって取り組んでみること、これが最も大事です。オンライン授業を試した上で、「自分の子どもには合っていないのではないか?」と思った時には、紙のドリルを併用してみることをお勧めします。全ての子どもがデジタルに馴染むかというとそうではありません。そして、教科によっても、学齢によってもそれは変化します。詳しくはこちらの記事(オンライン教材活用の「メリット」「デメリット」と紙教材について)を参照していただければと思います。

オンラインでの学びは普通に

オンラインでの学びは、コロナ禍でというよりも今後は通常のものとして認識しておいた方が良いと考えています。これから冬を迎えるにあたり、コロナ禍が再発する可能性もあり、それ以外でもインフルエンザは毎年猛威を振るっています。それに加えてコロナとは違うウィルスが発生し蔓延する可能性もゼロではありません。そのような状況で登校できなくなった場合、いかに家庭での学習環境を整えるかは非常に重要なこととなります。また、今回のコロナ禍で、子どもたちは「家でも学校と同じ学びができる」と知りました。

つまり新しい選択肢を持ったことになります。子どもによっては、学校に行くよりも家庭でオンラインで学ぶ方が合っていることもあります。また、学校でいじめなどにあい、通学したくない子どもにとっては、安心安全な家庭や第三の場での学習は効果があるでしょう。「不登校」という言葉が否定的にとらえられてきましたが、今後はポジティブに理解することが多くなるでしょう。登校しなくても、オンラインで学習はできるのですから。

変化の激しい時代に、必要な「生きる力」

基礎学力は最低限必要です。しかし、基礎を発展し、応用する力は、子どもの関心によってそれぞれ違う学び方が望ましいでしょう。

これからの社会は個の時代で、仕事は会社単位ではなく、プロジェクト単位で遂行していく場面が多くなります。

人生100年時代と言われている一方で、健康寿命は約80年。企業の平均寿命は約23年。80年と23年の間に大きなギャップが存在します。

つまり、1社で勤め上げる終身雇用はもはや無いと考えた方が良いのです。兼業、兼職、副業、フリーランスなど様々な形が今後より出てくるでしょう。そうなった時に、自分の強み・弱みを理解し、必要に応じて自分の弱みを補完してもらえる他者とつながる必要があります。

学校のテストでは測れない不確実な社会で、「生きる力」をどのように養うのか?教科の学習に加え、「生きる」ことに焦点を当てた授業が増えるのではないでしょうか。

米国サンディエゴにある公立学校「High Tech High」では、テストもなく、生徒それぞれの関心に沿った探究型の学びが行われており、全米で最も注目されています。

またビル・ゲイツが絶賛する『Prepared』という本で描かれている「Summit School」では、「生きる力」を重視した授業が行われています。「生きる力」とはひと言で言えば、「新しいことや変化を楽しめる力」だと私自身は考えています。「何でも面白がれる力」と言っても良いです。

よく、企業が求める人材の要素として筆頭に挙げられるのが「好奇心があるかどうか」ですが、その好奇心は何でも面白がれる力と解釈できます。自分が好きなこと以外にも、未知な情報・物が眼前に現れた時に、自分ごととして面白がれるかどうか。それが、この不確実であいまいな時代を生き抜いていく力に直結します。

五感を使ってリアルな場で観察力を養う

「生きる力」を養うには、観察力が必要となります。現在、ネット上には多くの情報があふれ、何か知りたいことがあればほとんどのことを調べられます。しかし、観察力を養うには、五感を使ったアナログ、リアルな場をどれくらい体験できているかが重要な役割を果たします。

名著『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング)によれば、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」。ネットで多くのことが調べられる今、どこで既存の要素との違いが出てくるかといえば、自分の足を動かして五感を使ってリアルに体験した情報があるかどうかです。泥臭いことをすることによって、人とは違った情報を得られます。それによって、インプットの情報がその人独自のものとなり、必然的にアウトプットもオリジナリティがあるものとなります。

従来の教育はインプット中心でしたが、これからはアウトプットまでふくめて、初めて学びとなります。

以前はいわゆるインフルエンサーと呼ばれるような人たちしか発信が許されなかったのですが、今はネットがあるので誰でも発信できます。発信することで、他者からフィードバックを得ることができ、自分の考えや作品を磨き、より次の段階へと昇華することができます。

ここで私が作成した学びの5段階をご覧いただければと思います。

「意識」「意欲」「実践」「継続」「発信(アウトプット)」

学びはこの5つをぐるぐると回すことでより深い学びとなります。それが同時多発的に多領域で行われればなお良いです。自分の子どもがどこで止まっているのか、確認していただければと思います。

学びの5段階格差(資料:スタディサプリ教育AI研究所 )

大人も学びが必要

これまで子どもについて言及してきましたが、実は学びが必要なのは大人も同じです。これは2020年7月にタイで開催された教育関連のカンファレンスにおける基調講演のスライドの一部です。MOOCと呼ばれるオンラインで受講できる大学授業のプラットフォームを提供している主要4社の、2020年の新規アカウント数が示されています。4社併せて3000万人以上が新たに学びを開始していることが分かります。コロナによる自粛で、オンライン学習者が急増したと考えられます。

MOOC主要4社の2020年新規登録者数(資料:スタディサプリ教育AI研究所 )

一方、以下のグラフをご覧ください。

これは2018年に総務省が日本における社会人対象に行った調査で、年代とともに学習時間が減少していることが分かります。そして驚くべきことに、日本の社会人は1日平均約6分しか学習していないのです。推測するに、とても多く学習している人がごく少数存在し、大多数はゼロなのでしょう。

「学習・自己啓発・訓練」の年齢階級別行動者率(平成23年、平成28年)(資料:スタディサプリ教育AI研究所 )

五感を使って「観察力」を鍛える 子どもと一緒に花を見て、声をかけよう

私自身はコロナで自粛が始まった頃、オンライン教育の「コーセラ」で授業の受講を開始し、心理学やAI、教育関連で修了証を取得しました。これはビジネス用のSNSでアップすることができ、学びを継続している証としても活用できます。

これからは「創造力」「共感力」がより重要になります。自分の仕事がどれくらいAIに取って代わられてしまうか、それぞれ考える必要があります。

そしてその2つの力の前提となるのはやはり「観察力」なのです。観察力が重要だというのは、例えば、子どもと道を歩いている時に、子どもが急に立ち止まって道端に咲く小さな花をじっと見ていたとします。そこで親が取る行動は2パターンあります。1つ目は、「行こう」と言って子どもの手を引っ張ってしまうこと。2つ目は、子どもの目線まで姿勢を下げて、一緒にその花を見て「何が気になったの?」と声をかけることです。

観察力が五感を鍛えるというよりも、五感を使うことで観察力が鍛えらえるのではと考えています。五感をフルに使うことで、小さなことに気づくことができます。

大人も子ども同様、机上の学びだけではなく五感を使ったリアルな学びが必要です。

小宮山利恵子
小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院教育学研究科准教授。早稲田大学大学院修了。留学経験は韓国、チュニジア、米国。 近著に『レア力(りょく)で生きる』(KADOKAWA、2019年)。 子ども時代には、友人たちと家でコンピュータゲームすることにはまりました。集中力、人と協働すること、何度も失敗して試行錯誤することを学びました。

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