2020.11.27
学びをはぐくむ 平岡妙子

子どもが勝手に伸びる「天才ノート」の作り方

親がガミガミと叱らなくても、自分で学ぶ子になってほしい。親子で一緒に「天才ノート」を作ることで、自ら勉強する子を育てられると「ママプロジェクトJapan」の岩田かおり代表は言います。子どもを伸ばす「天才ノート」の作り方とは。

「天才ノート」はどうやって作るの?

用意するのは、どこにでもある5ミリ方眼のノート1冊。

「天才ノート」と名づけ、子どもが好きなことを書き込めるノートを作ります。方眼ノートは、定規がなくても線が引きやすく、行にとらわれずにタテヨコ自由に使えるところが良いそうです。

たとえば、電車が好きな子なら、好きな電車の写真を貼って、名前や種類を書かせてみます。駅名を一緒に調べるのも良いですね。親がするのは、子どもが調べて書いたものに、赤い花丸をつけてあげること。「くわしく調べられたね!」など、ほめる言葉を書きます。プリキュアやポケモンなど、アニメのキャラクターの特徴を調べることでもかまいません。どんな分野のものでも、子どもが好きなものであることが大事です。

「好きなことを書き込める楽しいノート」というイメージを作ります。そして、親が簡単なクイズや問題、計算などを貼って、解かせてみましょう。解いた答えが間違っていても、怒らない。字が下手でも、書き直させない。よくできたところを見つけて、赤い花丸をつけて、ほめ言葉を添えます。「すごいね!」「上手に書けたね!」と。

岩田さんは「自分が好きなものを、お母さんがおもしろがってくれる、話をよく聞いてくれる。まずは子どもが安心できる信頼関係を作ることが最重要です」と話しています。お母さんにもっと教えてあげようかな、という気持ちになると、どんどん調べて報告するようになってきます。

このときに、鉛筆の持ち方や姿勢などを、注意することはよくありません。親は気になりますが、ぐっとこらえましょう。

もし、自分が料理をしているときに、『包丁の使い方が違う』と言われたらと考えてみてください。やることがイヤになりますよね。勉強も同じ。鉛筆も姿勢も、いつか必ず自分で気がつくときがきます」。

まずは子どもの好きなことを認めて、子ども自身を「承認」することが大切です。

学びを楽しむ仕掛けを作って「戦略的ほったらかし」

10歳までは、子どもを勉強好きに育てる最大のチャンスです。どれだけたくさん詰め込んだかではありません。どれだけ、「勉強は楽しい」「本を読むのはおもしろい」「もっと知りたい」と思わせられるかが大切です。

「ドリルをやらせなきゃ」と焦る必要はありません。ポイントは、好きな素材で学ぶこと。脳が動いていれば、机に向かっていなくてもOK。

ただ、「これはどういうことなの?」などと親の助けを求めてきたときには、やっていることの手を止めて、一緒に調べ、同じ目線でつきあってあげることが大事です。そうやって、「探究」する気持ちを育てていくのです。

岩田さんは「親が子どもの力を伸ばしてあげなければいけないと考えると、しんどい。助けを求めてきたときにはちゃんと向き合う。それ以外は、戦略的にほったらかして大丈夫ですよ」と話します。

「戦略的」とは、学びを楽しめる方法を見つけること。

岩田さんは、子どもが九九を覚えるときに、お風呂に数字の表を貼って水鉄砲で答えの数字を打たせて、遊びながら覚えさせました。学びが身につくカルタで遊んだり、徳川将軍の名前が並ぶ湯飲みを使って話題にしたり、遊びと学びをミックスする方法をあれこれ工夫しました。子どもが大きくなると、親が読んでおもしろかった本や、ニュースを話題にするなど、社会に目を向ける仕掛けを作ります。それが「学びの杭打ち」となって、子どもの学びが継続していきます。

親はきっかけを作るだけ 子どもは勝手に伸びていく

岩田さんは大阪市出身。子育てを東京でし始めて、まわりの母親たちが勉強や習い事を熱心にさせる様子に心から驚きました。

東京の親って、こんなに情報を仕入れて、あれこれやらせているのね」。

しかし、熱心な母親の子どもたちが、小学校3年生をすぎた頃から目の輝きを失っていく様子を見て、心が痛んだといいます。幼児教室で講師の仕事を始めてからも、小さな子どもにドリルをたくさんやらせて、できなくて泣き出す子や、親に怒られることにおびえてしまう様子をみてきました。子どもを伸ばすにはもっと違う方法があるのではないかと考えて、「天才ノート」を使う「かおりメソッド」を作りだしました。

熱心な親ほど「子どもが苦手なことを克服させたい」と考えますが、岩田さんは逆効果だといいます。習い事は、放課後に子どものエネルギーを満々にさせるためにやるもの。

好きなことをもっと楽しむという観点から選んでほしい

習い事も勉強も、親がこれをやりなさいと無理やりやらせ続けると、指示がないと動けない子になってしまいます。親が頑張りすぎるほど、無気力で勉強嫌いな子供になってしまう。「ありのままの自分のことが好きじゃないのだな」と子どもに思わせてしまいます。

岩田さんは「これからの時代は、ユニークさが大事です」と力を込めました。

好きなものを見つけて、自信を持つ。それがYouTubeや漫画でも、好きなものを認めてあげて親も一緒に楽しむ。

「天才ノート」を作っても、すぐに子どもは変わらないかもしれない。でも、好きなことを半年ぐらい続けさせて、ほめ続けていると、子どもは生き生きとしてきます。その方が、あとでずっと伸びる力がつくと言います。

「良い学校=偏差値の高い学校」「勉強ができる子=間違いの少ない子」という考え方でいると、天才ノートを始めても子どもは嫌がるでしょう。「良い学校=子どもがのびのび過ごせる学校」「勉強ができる子=間違いを恐れない子」という視点が重要だといいます。

岩田さんは、子育てに力が入りすぎてしまう親を、もっとラクな気持ちにするために活動を続けています。

親が出来ることは、きっかけ作り。親が教えてあげて子どもを伸ばそうとしても、思い通りにならないことも多い。どんな子も、子ども自身に『成長欲』があります。好きなことをつぶさないようにしていれば、子どもは勝手に伸びていきますから、大丈夫。子どものことを信じてあげてくださいね。そう出来るようになると、成長の節目節目に、わが子の輝く姿に遭遇することができますよ」。

天才ノートで伸びた子供の話

長男(小3)と一緒に「天才ノート」を作り続けて23冊目となった品川区の池田志織さんに、話を聞きました。

4年前に「天才ノート」を始めて、最初は迷路や漢字の問題集などを貼って書かせていました。気をつけていることは、ダメ出しをしないこと。漢字のはねやとめを直したくても、ぐっと我慢。赤字で直すと、子どもがシュンとして楽しくない気持ちになってしまいます。親の忍耐が必要ですね。

そのうち、正解にこだわらなくなって、子どもの発想をおもしろがれるようになってきました。「牛」を使って文章を作ろうという問題に、「牛がうっしっし」と書いたので、大きく花丸をして「ウケる!!」「ぷぷぷー!」と笑って書いてあげました。

歴史が好きなので、聖徳太子やペリーなどの絵をノートに貼っておきます。「この人の名前は?」とクイズにして、名前を書かせます。あだ名をつけさせると面白いし、自然に覚えて自分からも調べるようになります。「歴史マスター!」「さすが!」と赤ペンでほめます。自分が言われたら、うれしい言葉を書く。あとから見返すと、親も気持ちがほっこりします。長女(小1)も「天才ノート」を始め、気になったことを調べるのが好きです。

子育てでも、イライラすることが減りました。できたことに目が向くようになったからだと思います。ほめるポイントに、細かく気がつくようになりました。「ママが好き」って子どもがいつも言ってくれます。遊びタイムから勉強タイムへの移行も、気持ちよく流れてくれます。「天才ノート」は、お互いに宝物ですね。


プロフィール:岩田かおり(いわた かおり)

株式会社「ママプロジェクトJapan」代表取締役。1975年生まれ。夫と18歳から12歳までの3人の子ども。第1子、第2子をお受験塾に入れずに、都内の国立小学校に合格させた経験から、幼児教室やそろばん教室を運営。ガミガミ言わずに、勉強好きで知的な子どもを育てる家庭教育法「かおりメソッド」を広めています。

平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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