2020.11.24
習い事最前線 小元佳津江

「YouTuberになりたい!」を応援 クリエイター魂を磨く「FULMA Academy」

東京・恵比寿に本拠地を構える小中学生向け動画制作スクール「FULMA Academy(フルマ・アカデミー)」は、「YouTuber(ユーチューバー)になりたい!」という子どもたちの声に応えるため、2017年にスタートしました。小学生向けとして日本初でもあるその教育プログラムは、翌年には子どもの創造性を伸ばす優秀な取り組みとして、NPO法人キッズデザイン協議会主催の「キッズデザイン賞」を受賞。一体どんな授業内容なのでしょうか。気になるあれこれを聞いてみました。

子どもたちの思いが炸裂するパワフルな動画

FULMA Academyの前身は「YouTuber Academy(ユーチューバー・アカデミー)」。都内近郊に10校展開してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年4月から全ての授業をオンラインに切り替えています。8月下旬、恵比寿のオフィスで授業の様子を見せてもらいました。

静かな会議室の一角で、講師の中條武さん(25)と中村真奈さん(22)が、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ってパソコン越しに呼びかけると、子どもたちの元気な声が返ってきました。この日は、小学4年生から中学1年生の7人が参加。パソコンの横にはiPadがたくさん並び、子どもが操作するiPad画面が映し出されています。

子どもたちが取り組んでいたのは、ネットで話題の水をはじく「ぬれない砂」を紹介する動画。砂と水を入れるコップに焦点を当てて大きく映す子もいれば、材料や作業内容を言葉やイラストで解説する子もいます。テーマが同じでも、子どもによってクローズアップする部分は実に様々です。

講師2人は、困っている子どもに「その画面でここを押して」と指導したり、動画内容に対し「しゃべった言葉とテロップが出るタイミングがピッタリだね!」とほめたり、オンラインながら和気あいあいとした雰囲気です。

最後は、それぞれが作った動画をみんなで見る「ミニ上映会」の時間。カラフルなテロップが踊るように出たり、楽しい効果音が満載だったりと子どもらしいパワーにあふれつつも、トランジション(場面転換時のつなぎ方)やイラストの使い方などは大人顔負けのクオリティー。

作品は、基本的に保護者だけが見ることができる「限定公開」に設定してから、YouTubeにアップします。子どもと保護者が希望すれば、全ての人が視聴できる「一般公開」に設定することも可能で、40万回再生を達成した子もいるそうです。

高原京さん(小4)の作品

吉本真都さん(小4)の作品

映像制作の基本が、順を追って理解できる

FULMA Academyのプログラムを受けた子どもは、これまで5000人以上。授業は大きく、「動画制作」の時間と、YouTubeに動画をアップする際の注意点などを学ぶ「リテラシー」の時間からなっています。

動画制作の時間は、企画撮影編集編集講の4つで構成されています。まず、「企画」で動画の設計図の作成方法や絵コンテの描き方を教わり、「撮影」でカメラの使い方や視聴者に伝わりやすい話し方などを学び、自分で撮影。「編集」では動画編集ソフトを使い、撮影した動画に文字や音楽を加えるなど、編集作業に取り組みます。「編集講座」では、動画を使った独自のデジタル教材に取り組みながら、動画の文字に色をつける方法などを学びます。

ネットを正しく使いこなすためのリテラシー教育も

リテラシーの時間では、スクールが自作したアニメの教材を使いながら、個人情報の守り方や公共の場での撮影時に気をつけること、肖像権の問題などをクイズ形式で学びます。

ネットや動画でのコミュニケーションが身近になっている中、子どもにだけそれらに触れさせないというのはほぼ不可能です。それなら、どうやって上手につきあっていくかをきちんと学ぶほうが健全だと思うんです。子どもたちには、ネットに触れる場所と時間にも注意するよう伝えています。ネットをする場所は自室ではなく、親の目が届くリビングで。時間はお家の人と決めた時間内に(講師・中條さん)

子どものやる気を応援しつつ、家庭内で視聴ルールも

授業終了後、後藤日月さん(中1)と中田宗助さん(小6)と、保護者の方にお話を聞きました。

入会のきっかけは2人とも「YouTubeが大好きだったから」。「トランジションの方法や、テロップや効果音の入れ方などがわかり、できることが増えてうれしい!」と楽しげに語ってくれました。 

とはいえ、保護者からすると、ネットを見る時間が増えるといった懸念もあったのでは?

そう聞くと、こんな答えが返ってきました。

「ネットを見る時間は増えるけれど、どのみち見るならば、ただ見るのではなく、人に見てもらえる動画の作り方を勉強してほしいと思いました」(後藤さんの母・麻弓子さん)

後藤さん自身も動画制作を通して「自分が前に出るよりは、後ろで計画したりするほうが好き」ということにも気づきはじめたそうです。

取材に応じてくれた後藤日月さんと母麻弓子さんら

「息子が好きなことをやらせたいと思いました。僕ら親もYouTubeを見て楽しいと感じるので、子どもが見てしまうのも仕方ないかなと。ただ、ダラダラ見るのはよくないので『宿題が終わったら』などのルールは決めています」(中田さんの父・貴之さん) 

中田さんは将来YouTuberになりたいそう。動画の中で物おじせず説明する中田さんの姿を見て、貴之さんも「結構自分から積極的に動ける子だと気づきました」と話していました。

「伝える力」を伸ばしてクリエイター魂を磨く

「YouTuberは、数年前から子どもたちの『なりたい職業ランキング』上位に入るようになりましたが、世間的には偏見や批判的意見も多い状況でした。私たちは、会社設立当時から“子どもたちのやりたい!をカタチに”を理念に掲げています。子どもたちがやりたがっているのに、社会が応援できていないものの最たるものがYouTuberだと感じ、それなら自分たちでつくろう!と思いました」(講師・中條さん)

講師の中條武さん(左)と中村真奈さん

YouTuberはあくまで一つの手段にすぎず、映像制作についても、そのスキルを高めること自体が目的ではないといいます。

「それよりも、自分のやりたいことができた、考えたことが形にできた、という成功体験を積むことで自信がもてたり、ほかのことも頑張れたりするサイクルをつくりたい、というのが根幹にあります。映像制作に限らず、子どもたちのやる気を子ども目線で応援したいんです」(講師・中村さん)

一方で、映像制作に限っていえば、将来的にこんな力が身につく、という視点ももちろんあるそうです。

「今後、クリエイターのような仕事は増えていくと思いますが、それはある意味正解のない仕事です。より人に伝わりやすく表現するにはセンスや個性が大事で、これからの時代において大きな強みになると考えます。でも、自分の考えを表現し、発信する場は、学校生活のなかでも意識してつくらないとなかなかありません。自分の考えをまとめ、伝える工夫をし、発信する。そうしたクリエイター魂を磨くことで、より能動性、自発性が身につき、未来を生き抜く力になるのではないかと思うんです」(同)

取材を終えて

取材を通して感じたのは、「これが最先端のスクールには違いないけれど、これからのニュースタンダードなのかもしれない」ということです。それは純粋に、動画制作に取り組む子どもたちが楽しそうであり、保護者も講師も一緒に楽しんでいたことが大きいのかもしれません。

そういえば、YouTubeが大好きな我が家の長女(小3)も、この前ふと見たら、YouTubeをまねたスライムの商品紹介動画をiPadで撮っていました。動画を見たり撮ったりすることがいかに今の子どもたちにとって身近なものになっているか、改めて感じました。人に何かを見せ、伝える力は、社会人になると求められる場面が非常に多いと思います。動画を作るということは、その普遍的な力を磨くことにつながるのはないか。私も一人の親として、FULMA academyの授業内容に大きな魅力と可能性を感じました。

教室情報

「FULMA Academy」

運営会社:FULMA株式会社
住所:東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイスタワー27階
ホームページ:https://fulma.com/
お問い合わせ:media@fulma.co.jp

小元佳津江
小元佳津江

出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。ジャンルは、健康・育児などの実用から文芸、人物インタビューまでさまざま。執筆本は『ストーリーで学び直す大人の日本史講義』(祥伝社)など。現在、女児2人の子育てに奮闘、尽きない悩みと愛おしさを満喫中。子どものころに夢中になったものは、小6でたまたま手にした『源氏物語』。その雅な世界に惚れ込み、一時は研究者を目指した。今も、悩んだら駆け込む座右の書。

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