2020.11.24
学びインタビュー 小内三奈

「小学0年生の考える力」第1回:コロナで激変小学校入試 「こぐま会」久野泰可室長

第1回:コロナで激変の小学校入試

コロナ禍の中、2020年も11月1日から、私立や国立小学校の入試が実施されました。大きな変化があった2020年の入試について、長年幼児教育に携わってきた幼児教室「こぐま会」の久野泰可室長に話を聞きました。小学校の受験のための学びは、幼児期にはぐくむべき「考える力」を身につける機会でもあります。小学校入学前の「0年生」のうちに本当の思考力を伸ばす方法について、久野室長に教えてもらいます。

筑波大附属小学校の入試は1カ月前倒し

──コロナ禍の試験。入試日程に変化はあったのでしょうか?

大きく変化したのが、筑波大学附属小学校の入試日程です。毎年12月中旬に行われていましたが、今年は11月15日~17日と1カ月前倒しされました。

横浜雙葉小学校や白百合学園小学校などでは試験時間が例年より短縮された他、面接日を1日増やすなどの対応をした学校もありました。

桐蔭学園小学校は男女別々の日に入試を実施し、学習院初等科では発表時間を男女別々にして密を避けました。

──試験内容はどう変化したのでしょう?

昨年までの小学校受験の中核をなしていたのが「行動観察」です。予想していた通り、今年は集団での「行動観察」はほとんど行われず、密を回避した試験に変更した学校がほとんどでした。

代わりに行われたのが、「命令指示行動」。指示通りに動けるか、運動や色塗り、ハサミなどの細かい作業を通して見ていくもので、過去に多くの学校で取り入れられていた試験内容です。密を作らないという制約がある中でも、なんとか子どもの取り組み姿勢を見て判断したい、という学校側の狙いがあったのだと思われます。

その分、面接時間に時間を割いた学校もあり、休園期間中の家庭での様子を知ろうとする質問が多く見受けられました。

ペーパー試験に特に大きな変化はなく、コロナの影響を考慮して基礎的問題の出題が中心だったことが特徴だったように思います。

行動観察の変化については、こぐま会のHPでコラムに書いています。

「ひとりでとっくん365日」の問題集

前を向くために 新たな目標を

── 憧れていた小学校にご縁がなかった。どう受け止めればよい?

最初は多くの方がショックを受けるはずです。目標に向かって頑張ってこられたのですから、それは当然のことだと思います。でも、小学校入試の結果は人生の評価でもなんでもないんですよ。

ご存知かと思いますが、小学校入試というのは必ずしも学力だけを見ているわけではなくて、良い意味でも悪い意味でも不透明な点がある。試験の成績順に上から合格していく中学以降の入試とは違うんですね。

前を向くためにどうすればよいか?ですが、言葉で慰めることより私は、「新たな目標を持つ」ようにお伝えしています。

子どもの人生は、“山あり谷あり”です。次にそびえる山に向かって頑張る。目標がある程度はっきりしていれば、子どもは次に向けて頑張ることができるんです。お父さん、お母さんの役目はこの先もずっと、それを支えていくことなんです。

── 新たな目標へと簡単に切り替えらえるものでしょうか?

こぐま会で小学校受験を目指すご家庭の6割が共働きという時代です。小学校選びの基準も昔とは変わりつつあって、ブランドに価値を感じるというより、将来の受験を想定した小学校選びをするご家庭が増えていると感じています。

仮に小学校受験で思うような結果につながらなくても、中学以降の受験という軸をもっている場合は、次の目標に設定し前を向くことができるご家庭は多いように思います。

実際、ご両親共に医師のご家庭で、上のお姉さんは私立小学校へ、下の弟さんは小学校でご縁をいただけず中学受験で私立の中高一貫校に合格されたケースがあります。その後、弟さんはスムーズに医学部に進み、お姉さんは大学受験でかなり苦労されました。

“人生山あり谷あり”なので、長い目で見ればどちらがよいかはわからないですよね。

大切なのは「当面の次の目標をどうするか」ということ。次の目標がないと、小学校受験がうまくいかなかったことだけが残ってしまいます。その時々の目標をしっかりと掲げてそれに向けて頑張る、子育てはその連続であるとぜひお伝えしたいです。

第2、第3志望の小学校に進まれるか迷われている方もいらっしゃると思います。私は「合格をいただいた学校にご縁があったということ。お子さんにとって一番合っている学校だと信じて頑張ってみてはいかがでしょうか」とアドバイスしています。この先新たな目標を見つけたなら、途中で出るチャンスはいくらでもありますから。

── これまで頑張ってきたことを否定的に考えてしまいそう…。前向きにとらえるには?

お子さんのためにも、ぜひ頑張りのプロセスを評価する気持ちを持っていただきたいです。幼児期の学びは、試験のためだけにやるものではないからです。

どの小学校に進むにしても、学んできたことはすべて「小学校に入ってからの教科の前提となる基礎教育としてやってきたのだ」ということを今一度思い出してください。

子どもには「頑張ることが大事なんだよ」と

── 子どもに結果をどう伝えるべきでしょうか?

私は子ども達に「できることは大事。でも、できなくても考えることがもっと大事。頑張ることが大事なんだよ」と繰り返し伝えています。

試験結果をどのように伝えるかは、それぞれのご家庭の考え方、お子さんの様子で違ってきます。ただ、ぜひ、お子さんが受け止めやすい理由で結果を伝えていただきたいと思っています。

たとえば、「お家から少し遠いから、もう少し体が大きくなったら来てくださいと言われたの。小学校の間は近くの学校で頑張ろうね」という風に。やはりストレートに「駄目だった」と言わない方がいいですね。

「あのお姉ちゃんと同じ学校に行きたかった」という風にお子さん自身が明確な理由を持っている場合は、後に残りやすいので注意するとよいと思います。

お子さんによっては1校に絞らず2校、3校と受けて、1つでも合格体験を持てたから前に進めた、という場合もあります。

お子さんの性格も考えて、ぜひ慎重にお話してあげてください。

夫婦で悩んだ時間こそが財産

── 夫婦としてどう向き合うべきでしょうか?

受験に挑むにあたりご夫婦で何度も話をし、お子さんについて「ああしよう、こうしよう」と悩まれたと思います。実は、そこに費やした時間こそ、とっても貴重な財産なんですよ。

こぐま会では年に数回お父さん向けのゼミを行っているのですが、結果を冷静に受け止められるのはやはりお父さんの方。そして皆さんおっしゃるのが「受験がなければ、夫婦でこれほど真剣に子どもの将来について話し合うことはなかった」ということです。

「結果がだめでもそこに意味があったと受け止めたい」ともおっしゃいます。まさにその通りです。次の目標に向けてお子さんを支えていただきたいと思います。

── 受験から解放された今だから取り組むべきことは?

自然に足を運んで、実際に体験する機会をつくってもらいたいです。海に行ったことがない、川に入ったことがない子どもが毎年います。川に入ったら足がすくわれるほど水の流れが速くてびっくりした、というような経験が今の子ども達には足りないんです。

知識が豊富で、わかったつもりになっていることってたくさんありますが、この時期の実体験はとても大切です。その体験こそが、より深く学ぶ、疑問を持って調べる学習につながっていきます。小学校入学前にそのきっかけをつくってあげることが大切だと思っています。

今はコロナでいろいろと制約もあるかとは思いますが、遠出しなくても近くの自然を楽しんだり、社会問題に目を向けたりするだけでも十分ですよ。

本物の学力は試行錯誤で身につく

── 将来伸び続ける「考える力」を開花させるためには?

まず、これまで身につけた「学ぶ習慣」を継続すること。子ども自身が学ぶ楽しさを知っているはずなので、入試が終わったからといって学びを止めず、ぜひ同じリズムで続けてください。

本物の学力をつけるには、試行錯誤する時間を大切にすることです。ペーパーを大量にこなすのではなく、1枚のペーパーをどれだけ深く学ぶか。答えを導き出すまでのプロセスを自分で説明できるようになる。これこそ、本物の学びです。

試行錯誤しながら苦労してやった学習は、しっかりと身につくものです。それは、時間が経過しても残っていくものだということをぜひ肝に銘じていただきたいと思っています。


プロフィール:久野 泰可(くの やすよし)

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

撮影:伊ケ崎忍(タイトル、1、2枚目)

「小学0年生の考える力 こぐま会・久野泰可室長」の記事一覧

小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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