2020.11.26
学びをはぐくむ 曽田照子

夢中を「見守る」子育て 第1回:習い事の選び方 教育家・小川大介さん 

第1回 習い事の選び方

教育家の小川大介先生は、「好きなことに夢中になった経験のある子どもは、自分で伸びる力を身につけます。親の仕事は見守ることです」といいます。子どもを伸ばすために大切なことについて、連載で話を聞いていきます。第1回目は、習い事について。何を大切にして、どのように選んだらいいのでしょうか? 

子育てビジョンを考える

「うちの子にあう習い事、どう選んだらいいの?」

習い事を選びはじめる前に、まず、わが家の子育てビジョンを家族で話しあって欲しいと思います。

僕は子育てビジョンという言い方をしていますが、わが子が「こういうふうに育ってくれたらいいな」「こういうことが好きになりそうだ」「こういうところ応援してあげたいね」という子育ての考え方、親の哲学です。

子どもは、家庭教育、学校教育、地域教育、3つの教育で育ちます。

習い事は地域教育のひとつです。

子育てビジョンに対して、学校や家庭だけでは足りない体験を、子どもに与えたいから習い事をさせるのですよね。

「この子は一体どういった環境に日々いるんだろう」と、子どもの世界を考えてみましょう。

子どもが日常的に自然と触れている生活環境、両親の趣味や周囲の人々。たとえば、父親が野球を大好きなら野球を見る機会は多いでしょう。ほかにも「うちは音楽にはあまり触れない生活だね」とか、「計算とか数字を使う生活は、うちのスタイルではないかもね」とか、家庭によって環境は違います。

そういったことをふまえて、体、感性、知能の大きな枠で、子どもにどういう技術や知識、そして場所を渡してあげたいのか、話し合います。

この「環境を渡してあげる」という感覚は、習い事をさせるうえでとても大事ですが、大多数の人はこういう観点で習い事をとらえていないように思います。

子どもの心が動くことが第一

親御さんにパワーがあれば遠い場所の教室でもいいですが、継続して通うとなると大変です。送迎の負担や本人の体力を考えて、生活の延長線上で無理なく通えるエリアには、どんな習いごとがあるのか。

体、感性、知能の大きな枠をふまえて、本人と一緒に見てみます。

・体を育てる……スイミング、体操、サッカー、武道、バレエ、ダンスなど

・感性を育てる……ピアノ、絵画など

・知能を育てる……公文、プログラミング、英語など

体験教室に参加するか、見学やホームページを見るだけでもかまいません。そして子どもが「これやりたい」と心が動くものを選ぶのを手伝う、という流れです。

このとき必ず子どもの心が動くことが先で、大人の判断はあとから入ってきます。大人がするのは、たとえば子どもがスペイン語と英語の両方を習いたいというとき、「英語からのほうがいいんじゃない?」というような判断です。

本人がやりたいことを大事にしてください。

また、子どもに選ばせると言いましたが、何もしたくないという場合もあるんです。

自分のなかにある何かをじっくり見つめたい、感覚的な何かを味わいたいときです。アーティスティックな子たちは何もしたくない無気力な時期があるんですよ。親から見れば無気力のようでも、世界の風の音や流れに意識がいっていて、何か作り始めたり歌い始めたりする。そういう子は自分の感覚に鋭敏だからこそ止まる。何もしたくないという選択も尊重してあげてもいいと思います。

親の不安から習い事を増やしてしまう

親の主導で習い事を決める人のなかには、将来のことを考えて、英語も、スイミングも、プログラミングも、音楽もあれもこれも……と習い事を詰め込んでしまうケースが見受けられます。

そうなってしまう最大の要因は「せめて標準レベルでないと」という思いではないでしょうか。

多いのはお母さんがひとりで育児・教育を担っているパターンです。「せめて標準でないと旦那さんや旦那のほうの家族に顔向けができない」と気を遣っていたりすると「あれもこれも必要」と、どんどんメニューが増えていきます。

今、そういった思考回路で崩壊しているのが公立小学校です。全員が全員「人並み」「標準」でいたいと思い、それを学校に丸投げして、家庭教育、地域教育を真面目に考えなかったことのしわ寄せで、先生が過酷な業務を強いられ、学級崩壊が起きています。

地域教育としての習い事が同じように崩壊してしまっては大変です。

あれこれやらせたくて不安になるとき「それは誰の不安なんだろうね」と鏡の中の自分に向かって問いかけてみてください。今不安なのは誰なのか。子ども本人ではないでしょうね。

本人が不安でないのに、先回りして不安がっているのは……もしかしたら自分のためかもしれません。

「この子が将来傷ついたら」と思うと胸が張り裂けそうだから、今のうちに対策しておきたい、という親心。これ、自分のため、なんですよね。

自分のために子育てしている、ということに直面する時期が父親にも母親にもいつか訪れます。僕は、これは親が親として育っていくうえでの通過儀礼だと思っています。しんどいけれど、これを受け止めたとき、親として大きな成長があります。子どもの習い事も楽しんで付き合うことができるようになります。

「うちはいらないよね」が話し合えているか

「早くやらせないとあとで困る」「やらせなければ遅れてしまう」という「与える教育モデル」に染まっている人が多くいます。

与えた分だけ子どもは伸びる、与えなければ伸びない、という、間違った思い込みです。

たとえば、子どもが英語に興味を持って、かつ家庭のなかでの英会話を親がやりながら、日本語でも会話をきちんと組み立ててコミュニケーションを楽しく続けられる家なら、早期教育をやればいいと思います。

でも、ほとんどの家庭はそうではありません。週に1回教室に行っただけで英語を使えるわけがない。子どもが日常の行動のなかで英語を使う環境を親が確保して、やり切ってあげられなければ、早期教育が挫折して「なんちゃって早期教育」になりかねません。

習い事を選ぶ前に「わが家はどうだろう」と冷静に顧みることが大切になります。

うちの息子は2歳のとき、半年だけ英語教室に行ったんですが、なじめないのでやめました。耳を育てる環境を僕たち親が作り上げられる状況にありませんでした。僕も奥さんも英語を日常で話さないし、海外旅行に頻繁にいくこともない。形だけ英語をやるより、本人が得意な論理力や数学系を育てたほうが強みになると考えて「英語は今はできなくていいよね。うちは後から伸ばす方針が向いているよね」と夫婦で話しあいました。

この「できなくていいよね」という言葉に対して、ほとんどの人が引け目を感じます。

「できない=ダメだ」という考え方です。

でも、それと習い事とをくっつける必要はありません。

そっちを選ばない、というだけのことですから、何か別に選びたいことを見つければいいのです。

「やりたくないだけやな」「タイミングじゃなかったな」「こっちじゃなかったなー」と、僕はそう言いますし、教育相談でもいつもそうアドバイスしています。

現在息子は中学生ですが、幼児の頃に英語教室に通わなかったからといって、英語の授業で不自由することはありません。将来、英語で伝えたいという意思が芽生えた時に必死で単語を覚えて、練習もしたら、彼はしゃべれると思いますよ。他教科の学習を通して、学ぶ力は育っているので。ネイティブの発音ではないでしょうが、英語が使えればそれでいいだろうとわが家では考えています。

「できるようになること」だけを習いごとの価値と思わないことが、親の知恵だと思います。

体操教室で、本人は全然やろうとしない、あんまり乗り気のようには見えない、でも行きたがる、という子がいました。その子は自分がやりたいのではなく、演技をするお友達を見て「すごいなあ」と観察することを楽しんでいた。ずっと観察を続けて、1年くらいすると急にでき始めた。そういう子もいるんです。その環境でその子が得るものが必ずあります。

子どもには、幸せな人生を歩んで欲しいと誰もが思います。でもその人生は、本人のものです。だからこそ、習い事を選ぶとき、親として自分たちは子どもの人生にどう関われるんだろう、どういった学びの場所、人に出会わせてあげるといいんだろう、と夫婦で話し合っておくことが大切なのです。

習い事選びのポイント

①わが家の子育てビジョンのなかで習い事をどうとらえていくか夫婦で話し合う

②子どもに選ばせ、子どもの心が動いたものを候補にする

③判断して、子どもを応援するのが親の役割


プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)

教育家、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。京大法卒業後、受験指導、幼児期からの才能発掘、親子関係カウンセリングなど幅広く活動。6000回以上の学習相談、子育て相談で培った洞察力と的確な助言が評判。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』など著書は20冊以上。見守る子育て研究所  中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

「夢中を「見守る」子育て 教育家・小川大介」の記事一覧

曽田照子
曽田照子

ライター。広告制作会社を経て20代前半でフリーに。「親から子への言葉かけ」をメインテーマに、書籍やWEBで書いています。小学5年生で手芸クラブに入部、フェルトをちくちく縫ってマスコット人形を作っては周囲にプレゼントをしていました。今は和裁を習っています。娘3人+猫の母親です。

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