2020.11.28
学びインタビュー 平岡妙子

「夢中になる力」第1回:オンラインの学びを続けるコツ 「探究学舎」宝槻泰伸代表

第1回 オンラインの学びを続けるコツ

子どもたちが熱狂して学びに取り組む教室「探究学舎」(東京都三鷹市)。子どもの「もっと知りたい!」という気持ちに火をつけることが得意です。熱い思いの先生たちが授業をしながら泣いてしまうこともあり、「号泣学舎」というあだ名もつきました。多くの親が「子どもには好きなことを見つけてほしい」と思っています。夢中になる力について、宝槻泰伸代表(39)が教育移住をした長野県軽井沢で話を聞きました。

コロナが追い風 先生が熱く語る「号泣学舎」

「探究学舎」は、国語や算数などの勉強のやり方や問題の解き方を教える学習塾ではありません。「もっと知りたい!」「やってみたい!」という探究心を育てて、子どもの「興味を開発」する教室です。「宇宙編」「元素編」「戦国英雄編」などのテーマごとに授業をします。クイズや実験、映像などで子どもの関心を高めていきます。子どもを夢中にさせる話の面白さと問いかけ、子どもからの発言を繰り返すことで、楽しみながら学びを深めるしかけ作りにあふれています。

──コロナで学校が一斉に休校になり、子どもたちの学びがストップした2020年3月。素早くオンラインで授業を無料開放して、多くの子どもたちが探究学舎の授業を視聴しました。

すごかったですね。我々は2019年1月ぐらいから、教室で直接子どもたちに教えるだけではなくて、オンライン学習の仕組み作りに取り組み、試行錯誤していました。でも伸び悩んでいて、思った以上には進まなかった。子どもの熱中体験をオンラインで作ることはなかなか難しかったです。

── オンラインは受動的に見ているだけになりやすいですね。

リアルの教室だとまわりの子が熱狂していて、面白さも伝わりやすい。オンラインでは小さな子どもを集中させることのハードルが高かった。つまらなければブチッと切って見なくなるし。

ところがコロナがやってきて、リアルが封鎖され、オンライン1択しかない状況が生まれました。それが追い風になりました。3月に様々な教育コンテンツの無料合戦が始まりました。でも我々にはオンラインで見せることに一日の長がありました。徹夜続きで工夫を重ねて、無料のオンライン授業でクオリティが高いものを届けられて、とても喜ばれました。

授業をやっている先生が感動しながら熱く話して、一緒に泣いてしまう回もあった。参加者のチャットの書き込みがすごくて、「号泣学舎」というあだ名もついちゃった(笑)。学校がなくなり、みんなが質のよい学びを探していたので、喜ばれましたね。それが結果的に、4月から有料のオンラインを始める時に導線になりました。

オンライン授業「明治維新編 吉田松陰」で、志の大切さを話しながら感極まる宝槻さん(教室提供)

探究学舎は、コロナで学校が休校になった2020年3月2日から、YouTubeでオンライン授業を無料配信した。最初のテーマは「偉人編 スティーブ・ジョブズ」。ライブで約4000人が視聴し、再生回数は9万回を超えた。15日間毎朝授業を続け、通算での再生回数は52万回を超えた。

4月からは有料でのオンライン授業の配信を始めた。受講料は月額1万円。初回の「海洋生物編」の売り出し日が、4月7日の緊急事態宣言の発令日と重なり、1日で1000席が満席になった。現在、オンラインでの受講生は、のべ1800人。

オンラインでの学びを続けるためには 

── オンラインで授業をやった結果はどうですか。

授業を受けることは、始まりにすぎない。その先に、どうつなげられるのかを目標においています。具体的に言うと、「クエスト」という仕組みを作っています。クエストは、「探究」という意味です。授業が終わったあと、自宅でできる自由課題を出します。例えば、戦国武将について学んだら、かっこいい兜(かぶと)を自分で作ってみようとか。与えられたお題に、自発的に取り組む形を作り出そうとしています。まだ、やりきれている部分とやりきれていない部分がありますが。興味を引くクエストを毎週出し続けることは難しいです。

── オンライン学習を続けさせる親の悩みは、みんな同じです。親が一緒についてないとやらなくなってしまう。続かないことに悩んでいます。

そう。敵は「鬼滅の刃」や「ヒカキン」。タブレットやパソコンで見ているから、子どもにとっては同じ。ああいう強敵に勝つには、「夢中にさせる魔法」を授業の中に宿さないとならない。探究学舎は、授業で盛り上がって楽しかったと思わせることには自信があります。

でも、「あー、面白かった」だけでは終わらせない。一歩前へ出る。さらに、夢中になって取り組む姿を作り出すことに力を入れています。織田信長の授業を受けて、「俺は信長のここをもっと知りたい」と自分から調べ始めるのはハードルが高い。

なのでこれをやってみたら、と次につながる行動を、面白い課題を出すことで推奨しています。「ホップ・ステップ・ジャンプ」と段階を踏むことに力を入れています。

── 興味を育てるということですか。

最初は教室側から興味関心を育てて、「もっとやってみたい」という課題を与える。もともと授業がめちゃくちゃ面白くなかったら、やらないですよ。親は、「虫でも動物でもなんでも好きなモノを自由に見つけて研究したら?」と思うかもしれない。でも子どもからしたら、いきなり自分から調べられないですよ。何をやったらいいのかわからない。

自分なりに深く調べ始めるて「ステップ」させるには、大人が導く必要があります。

── ステップの段階で、技がいるということですか。

そうそうそう。「ホップ」から「ステップ」へ行く段階を、僕たちはプロフェッショナルとしてやれるようになりたい。興味を育てて、最後は自分からどんどん調べ始めるようになることが「ジャンプ」です。

全国の子どもたちとオンラインでかけ合いをしながら授業をする(教室提供)

好きそうなものを数珠つなぎに与える

── 最初は、親や周りの大人が用意してあげないとならないのですね。

親が導いてあげることは必要。いきなり子どもたちが「ジャンプ」することはなかなかない。でも家庭でやるのは、難易度が高いと思います。探究学舎だって、あの手この手でやっても苦労しているのだから。親がやるコツは数珠つなぎにすることです。

── どんなふうにですか。

お題を次々に与えること。子どもが自分から「これやってみたい」と言い出すまでは、与え続けてあげなければならない。「ここ連れてって」「これ買って」と自分から言い出すようになるまでは、親が導いていかないと。宇宙が好きそうなら、本や図鑑、「宇宙兄弟」の漫画などを与えて、プラネタリウムに連れて行く。そのあと満天の星空を見に行くとか、数珠つなぎに発展させていく。興味を開発する必要がありますね。

子どものタイプを見極める

── 親はすぐに「うちの子飽きっぽくて」とか言いがちですよね。

興味が続かないというのは、悪いことではない。子どもには「一筋タイプ」と「好奇心旺盛タイプ」がいます。魚好きを究めた「さかなクン」や、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんは一筋タイプ。好奇心旺盛タイプの子は、小学校低学年は昆虫、高学年になるとサッカー、中学生でロボット作り、高校生は実験とか、興味あることがどんどん変わる。僕は好奇心旺盛タイプでしたね。自分の子どものタイプを見極めることが大事です。

── 親が次々と興味がありそうなものを与えてあげたら良いのですね。

親がきっかけを与える人になろう、というのは聞こえがいいし、そうあるべきだとは思います。でも実際には、親がやり続けるのはけっこう難しい。だから僕は、興味開発型の習い事に通わせることも、ひとつの形だと思います。

いまは、面白い習い事がたくさんありますから。興味をどんどん育てる習い事があふれてくれば、子どもたちの夢中な時間が増えていく。一筋型も好奇心旺盛な子も、自分の興味を開発できるところを探し出して通うことが現実的かな。あれこれとトライアンドエラーをする時間が大事だと思いますね。


プロフィール:宝槻泰伸(ほうつき やすのぶ)

京都大学経済学部卒。著書に「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」。「探究学舎」代表。

撮影:工藤隆太郎

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平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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