2020.11.27
習い事最前線 関和音

サッカースクールもオンライン化 元Jリーガーの新たなチャレンジ

サッカー界にも大きな影響を及ぼした、新型コロナウイルスの感染拡大。明治安田生命J1リーグでは2020年2月に開幕戦を実施後、第2節以降の公式戦延期を決定。7月より試合を再開するも、厳しい入場制限が続いています。影響はサッカーを学ぶ子どもたちにも及び、全国各地のサッカースクールやクラブ活動が活動休止を余儀なくされました。こうした中で、注目を集めているのが元Jリーガーが立ち上げたオンラインのサッカースクール。テクノロジーを活用した新たなサッカーの学び方を、ご紹介します。

北海道からオンラインでサッカー指導

北海道を拠点とするオンラインサッカースクール「HERO’S FOOTBALL ACADEMY」では、LINEやビデオ通話アプリを活用し、電話や動画のやり取りを通じた指導を行なっています。

代表を務めるのは、元Jリーガーの古田寛幸さん。自身も北海道出身で、現役時代には北海道コンサドーレ札幌で活躍。引退後にオンラインでサッカー指導を行うことを決意した理由の1つには「北海道ならではの、サッカーを学びたい子どもたちの悩み」がありました。

「HERO’S FOOTBALL ACADEMY」とは

「HERO’S FOOTBALL ACADEMY」は、通常のサッカースクールと異なり、練習場でのトレーニングやミニゲームなどは行いません。

代わりに、元Jリーガーのプロの知見に基づき、送られてきた個人の練習や試合の動画を細かく分析した上でフィードバック。練習メニューの考案や動画を活用したテクニック面の指導、さらにはプロになるために必要な考え方やメンタル面の指導も行なっています。

元U-19日本代表・コンサドーレ札幌のJリーガーが運営

運営を行う古田さんは北海道札幌市出身。元U-19日本代表で現役時代は北海道コンサドーレ札幌に所属していました。

古田さんが考える北海道の従来型のサッカースクールの課題は「十分な指導が受けられなかったり、近くにサッカースクールがなかったり、母校に少年団がない」ケースが多いこと。

北海道は広く、近隣のスクールへの送迎にかかるコストが大きかったり、そもそも通える範囲にスクールがなかったりすることが少なくありません。

こうした課題を解決しつつ、従来型のスクールよりもきめ細やかにマンツーマンで子どもたちの指導をし、相談にも乗ることができる方法として、古田さんが始めたのがオンラインによる指導でした。

オンラインでどのようにサッカーを学ぶのか?

古田さんが始めた「HERO’S FOOTBALL ACADEMY」では、オンラインでどのようにサッカーを指導しているのでしょうか。同校の指導方法の一部を紹介します。

スマホ・タブレットでマンツーマンの直接指導

同校の指導は、スマホ・タブレットなどの端末を活用したオンラインでのマンツーマンで行われます。

生徒は北海道だけでなく、関東や東海など各地方にいるため古田さんはパーソナルコーチとしてメールや電話、ビデオ通話でやり取り。練習メニューを教えたり、古田さんのレクチャーやテクニック動画を送信したりしながら、子どもが学べる環境を作っています。

試合動画や練習動画のやり取りにも対応

オンラインで試合動画や練習動画のやり取りにも対応。たとえば試合動画のやり取りでは、生徒から送られてきた試合の動画をパーソナルコーチが分析。ボールの持ち方や状況判断、体の使い方など一つひとつのプレーにフィードバックをします。

従来型のサッカースクールではビデオを使った分析は導入が進んでいるものの、1人の選手に特化した分析が行われることは珍しく、プロサッカーでも多くはないため、貴重な機会です。

子どもの動画を見た後、試合中の動き方などについてオンラインで細かく指導をする

プレーだけでなく、サッカー選手としてのメンタルも学ぶ

オンライン指導では、プレーだけでなく「サッカー選手になるための考え方」「メンタル」についても学ぶことができます。

従来のサッカースクールや少年団では、プロサッカー選手による指導は「単発で学校を訪問して、指導する」ことに留まるケースが少なくありません。

その場でも、サッカー選手になるための考え方を伝えることは可能です。しかし単発の指導では子どもの個別の事情や、サッカー選手としてのポテンシャルをくみ取った上で指導を行うことは難しいのが現実です。時間に制限がある上、一度に多くの子どもの練習をチェックしなくてはいけないためです。

一方でオンライン指導のマンツーマンであれば、一人ひとりの子どもと長期に渡って向き合うためより深く、具体的なサポートができます。

親からの子育ての悩みや進路相談にも対応

ビデオ通話や電話でのやり取りは、子どもとの1対1だけでなく、親も行うことができます。

「子どもがサッカーと学業を両立させるにはどうすればいいか」「強豪校に子どもを進学させたい場合、何をすべきか」「近隣にスクールや少年団が存在しないため、チームを紹介してほしい」などの相談や依頼に対応しています。

従来型サッカースクールとの違い

ここからはオンラインのサッカースクールと、従来型のサッカースクールの違いを見ていきます。

既存のサッカースクールは「地域格差」が大きい

従来型のスクールでは、グラウンドを使った練習やミニゲームが可能。他の子どもとトレーニングをしたり、他校と試合ができることがメリットです。

一方で少子高齢化の影響もあり、特に地方では「サッカースクールを運営しても、思うように子どもが集まらない」というケースも増えています。

たとえば2017年には、J1・名古屋グランパスが運営する三重県四日市市のサッカースクールが「スクール生の集まりや収支、生産性などの状況」を理由に閉鎖しました。閉鎖の告知前に新しいユニフォームを購入してしまい、困惑したスクール生もいました。都会とは違い、通える範囲内に住む子どもの数がそれほど多くない地方もあり、運営が厳しい状態のスクールもあります。

また「強いチームに優秀な子どもが引き抜かれ、少年団の活動が停滞し潰れてしまう」というケースも少なくありません。

よって、近隣に少年団やサッカースクールがない地域が増加。地域によって十分な指導が受けられる子と、そうでない子がいるという地域格差が生まれています。

オンライン・マンツーマンは「パーソナルコーチ」

オンラインレッスンでは、従来型のスクールのようなグラウンドでの練習や試合はできません。一方で、指導者が子どもの「パーソナルコーチ」として接することができます。

スクールの練習では、コーチに聞きたいことがあっても「恥ずかしくて聞けない」「質問時間を十分に確保してもらえない」ことがあります。シャイな性格の子どもだと、他の子の前では「言いたいことがあっても言えない」ことは珍しくありません。

オンラインだと、グラウンドでのフィジカルトレーニングや試合形式での練習はできないものの、子どもたち一人ひとりのプレーを分析し、悩み相談に対応し、最も効率的なトレーニングやキャリアを提案することができます。マンツーマンならではの強みを生かして、パーソナルコーチの役割を発揮できることが特色と言えるでしょう。

「北海道コンサドーレ札幌」で活躍していた古田寛幸さん

プロにもパーソナルコーチ活用が広がる

パーソナルコーチを活用したトレーニングは、プロサッカー選手の間でも広がり始めています。

たとえば日本代表MFの久保建英選手は、小学生時代からパーソナルトレーナー・中西哲生さんの指導を受けています。(※1)

中西さんはプロ入り前からスペインに渡っていた久保選手の映像を見て課題を抽出し、コメントをする形で指導。久保選手が年に2回、帰国するタイミングで直接の指導も行なっていたとのこと。

インターネット環境と映像を活用したパーソナルトレーニングは、今後、プロ・アマや年代を問わずに新たなサッカーの指導法・教育スタイルとして定着していくかもしれません。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大やリモート学習の普及を背景に、注目され始めている「オンラインのサッカースクール」の取り組みについて、ご紹介しました。

オンラインのサッカースクールはグラウンドでの練習やフィジカルトレーニングには対応できない一方、指導者が一人ひとりのパーソナルコーチになれるというメリットがあります。

サッカーのパーソナルトレーニングは、日本代表・久保建英選手も小学生時代から取り組んでいたとのこと。

今後、従来型のサッカースクールと並ぶ「新たな教育スタイル」としてオンラインを活用したパーソナルトレーニングは広がっていく可能性を秘めているのではないでしょうか。


(※1)「建英のドリブルはピアニストのフォームのようでしょ」パーソナルコーチ中西哲生氏が明かす〝レアル久保建英〟誕生秘話

関和音
関和音

音楽ライターとしてアーティストの取材をする中、2016年『Bjork Digital』の取材からVRに関心を抱く。テクノロジーに関する執筆を開始して、プログラミングスクールのサイトのSEOを担当。子どもの頃はカードゲームやファンタジーが好きで、給食の時間が苦手。個性を活かした自由度の高い教育に興味があります。

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