2021.01.04
学びをはぐくむ 斎藤幸恵

コロナで心にストレス 子どもの7割以上 イライラしている子への接し方

新型コロナウィルス感染症の流行で大きく変わってしまった日常。子どもたちの心はどのような影響を受けているのでしょうか。「国立成育医療研究センター」(東京都世田谷区)では、コロナ禍における子どもたちの生活と健康状態に関する調査「コロナ×こどもアンケート」を実施しました。いま、親は子どもたちにどのように接していけば良いのか。同センターこころの診療部・田中恭子医師に聞きました。

「コロナ×こどもアンケート」は0歳から高校3年生までの子どもと保護者を対象に、これまで3回実施しています。今回は第2回調査(2020年6月15日~7月26日)の結果をもとに、いま、子どもたちの心に何が起こっているのかを読み解き、不安を感じる子どもたちにどう接していけばいいのかを探ります。

72%の子どもにストレスがある

まず、現在の子どもたちが、どんなことを感じ、どんなことに困っているのかについて聞いたアンケート結果から見ていきます。

この結果から、年代によってストレスの感じ方が違っているということがわかります。

小学生低学年で多かったのは 『コロナのことを考えると嫌な気持ちになる』を選んだ子どもです。9歳以上の小学校高学年や中学生、つまり思春期になると『すぐにイライラする』や『最近、集中できない』も増えてきます。

また、高校生では『最近、集中できない』が突出して多い結果となりました。一方で、『なかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めたりする』という睡眠の問題も、どの世代でも25%ほどの子どもに当てはまります」(田中医師)

全体では72%の子どもに何らかのストレス反応や症状がみられているとのこと。コロナ前がどうであったのか比べることはできませんが、身体や心への影響を気を付けて見ていく必要があるでしょう。

子どもたちの心をケアしていくためには、その子がストレスを感じているのかどうかに大人が気づけなければなりません。子どもたちが受けたストレスのサインは実際にどのように表れるのでしょうか?

私が日々の診察の中で感じているのは、腹痛や食欲不振、じんましん、頭痛、朝起きられない、夜寝つけないといった身体症状がある子どもが出ています。検査しても身体的要因がはっきりせず、心の問題が疑われるケースが増えてきたということです。

人がストレスを受けた際、それを自覚できず自分の内面に溜めていくことを心理学の用語で『抑圧』と言いますが、子どもはこの状況が長く続くと、自分を守ろうとして、赤ちゃん返りや、登校・登園しぶり、からだの症状などでSOSを訴えることがあります。

ですからまずはストレスに気づいて、そして誰かに話を聞いてもらうということがとても大切になってきます」(同)

「悔しいね」「寂しいね」子どもの心を代弁してあげる

こういう時だからこそ、普段以上に、子どもの話をよく聞くことが重要になってくるのですね。では具体的に、家庭では子どもたちにどのような声がけをしたらよいでしょうか?

子どもは、自分の気持ちを客観的にみることが難しく、イライラや不安に気づいたり、おさめたりする力も不十分です。

『楽しみだったのに悔しいね』『お友達と会えなくて寂しいね』など、子どもが感じているかもしれないことを、場合によっては大人が代弁してあげるといいでしょう。

また、体調不良を訴えたり、登園や登校をしぶったりする場合は、無理に行かせようとせず、『お腹が痛いね、あたためようか』『気持ちが悪いとつらいよね』など、体調を気遣ったり、いつもよりもゆっくりとした優しい口調で『何か心配なこと、気になること、嫌なこととかあるのかな?お話できそう?』などと話しかけるのもいいと思います」(同)

子どもが話し始めたら、しっかり聞き手にまわり、仮に「つらい」「しんどい」などネガティブな言葉が出てきても否定せず、「大変だったね」「頑張ってきたんだね」と共感してあげることが大切とのこと。このように気持ちを共感してあげるだけで、ある程度の子どもたちは安心を取り戻して、少しずつ回復することがあるそうです。

「コロナになったら秘密にしたい」 周りの目を気にする子ども

ストレス反応以外にも「自分や家族がコロナになったら秘密にしたい」「秘密にしたいと思う人は多いだろう」といった、感染に対する差別的な意識を持っている子どもが一定数いることも、注目すべきポイントです。

しかも、このアンケート結果で気になるのは、自分がそう思っているというよりも、「周りがそう思っているのではないか」と周りの目を気にしている子どもが多いということ。つまり、新型コロナウイルス感染症にかかったら、周りの友達から嫌がられてしまうかもしれないと心配しているということが読み取れます。

これは、テレビなどで感染者についてネガティブに報道されていることが影響を与えていると考えられそうです。

テレビの影響は大いにあると思います。そのような報道からは極力遠ざけたいですね。一緒にいる大人が、何が正しくて何が間違っているのか認識し、情報を取捨選択して教えてあげる必要があります。コロナにかかってしまうことがいけないのではない。誰だってかかりたくてかかっているわけではないことや、正しく予防することが大切ということを、親から子どもにしっかり伝えることが大切です」(同)

「三密を避ける行動をしていれば感染する可能性は低いよ。それでもこのウイルスは人が大好きで感染してしまう可能性はあるんだ。かかっても一定期間経過したら人にうつす心配はなくなるよ。だからもしコロナにかかったお友達が学校に戻ってきたら、今まで通りのお友達の1人として接しようね」などとしっかり話してあげてほしいとのこと。

なお、コロナに関係があるいじめやトラブルがあるのかどうかですが、実際にいじめにあっている子どもは、全体の1%程度。ただ、友達との関係に悩んでいたり、周りに悩んでいる子がいるという子は一定数いるようです。

親もストレス 低学年の親の7割が「感情的に怒鳴った」

次に親子の関わりについてみていきます。下記は子どもたちに保護者の関わり方について聞いた質問です。子どもの年齢が低いほど、親がしっかりフォローをしていることがわかります。

ストレスを抱えている親御さんも多いと思いますが、あまり抱え込みすぎず、『大丈夫、コロナ禍で大変だけど、それなりにやれてるよね』と少し楽観的に考えてもいいと思います。そうすることで親の気持ちが子どもに投影され、子どもの不安がやわらぐということもあります」(同)

一方、保護者に聞いた下記のアンケート結果から、保護者が子どもに対して過去1カ月間に「感情的に怒鳴った」という声も多く見られました。コロナに関係なく、日常的にもあることだと思いますが、どのようにフォローしたらいいでしょうか。

気をつけてほしいのは、子どもが同じことをしても、ある日は大声で叱ったのに、次の日は叱らずに好き勝手にさせているというような、一貫性のない関わりです。これが繰り返されると子どもにとっては、安心安全の場を失うことにつながります。

ただ、私も子を持つ親なのでよくわかります。人間ですから、思わず大きな声を出してしまうことはあります。

大声で子どもを叱ってしまったら、素直に謝って

そんなときは『さっきはごめんね。お母さんもイライラしちゃってね』と素直に謝ること。そして『ちょっと疲れてるから今日は早めに寝るね』など、親自身が自分のストレスに気づいて、自分でケアしようとする姿を子どもたちが見ていくことも、子どもにとって大事な経験になると思います」(同)

子どもを大声で叱ってしまった経験がある人も多いと思いますが、その後のフォローが大事ということなのですね。

今後もしばらく続きそうな新型コロナウイルス感染症の流行。子育てや子どもの様子で気になることや困ったことがあった場合、ついつい家庭だけで抱え込んでしまいがちですが、状況を悪化させないためにも、保育園や学校の先生、かかりつけ医、行政が運営する機関などに早めに相談することをおすすめします。

※国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」(第1回調査・2020年4月30日~5月31日、第2回調査・同年6月15日~7月26日・第3回調査・同年9月1日~10月31日)。第2回調査には全国の子ども981人、保護者5791人、計6772人が回答しました。第4回調査は同年11月17日~12月20日まで。

プロフィール:田中恭子(たなか きょうこ)

国立成育医療研究センター こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科 診療部長
長野県出身。順天堂大学医学部卒業。2015年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部思春期メンタルヘルス医長、2017年より現職。専門分野は子どものメンタルヘルス。さまざまな病気や障害のある子どもとその家族のケアに従事。一女の母として子育て中。

斎藤幸恵
斎藤幸恵

月刊誌編集部勤務を経てフリーランスに。田舎暮らしや家庭菜園、DIYなどスローライフネタを中心に活動中。39歳で出産、先天性の脳障害を持つ女の子の母です。マラソンや登山を愛する根っからのアウトドア派。

関連記事 Related articles

新着 New!