2020.12.13
学びインタビュー 小内三奈

「小学0年生の考える力」第2回:マスクで低下する幼児のコミュ力「こぐま会」久野室長

第2回:マスクで幼児のコミュニケーション力低下が心配 親としてできること 

マスクをつけたままでの遊び、子どもの園での行事の中止など、コロナによって子どもを取り巻く環境が大きく変化しました。友だちと関わる中でコミュニケーション力を身につけていく幼児期だけに、どのような影響があるのか、気になる保護者も多いはずです。子どものために、親としてできることなどについて、長年幼児教育に携わっておられるこぐま会室長・久野泰可先生にお話を聞きました。

友だちとかかわっての成長が失われた

── 春に、幼稚園、保育園が長期にわたって休園となりました。子どもに与えた影響は大きいでしょうか?

休園期間中は遠足をはじめ楽しい行事がたくさんあったはずで、春に運動会が予定されていた園もあったでしょう。また、年長さんで特に大切な行事が夏に行われる「お泊り保育」。親元から離れて「友だちと一緒に1日生活できた!」という自信を得ることには大きな意味があり、毎年ここでぐんと成長するお子さんが多いと思います。

友だちとの関わりの中で成長していくのが、この年齢の子ども達の本来の姿です。その体験が少なかったことで、自分の考えを相手に伝える、相手の意見に耳を傾けるなどのコミュニケーション能力は少し弱いと感じる部分はありますね。

学習という面では、家庭で過ごす時間が長かった分よくできると感じました。でも逆に、「やらされている」と感じている子どもが多かったのも事実だと思います。

「長いお休みの間、楽しかったかな?」と尋ねると「勉強が忙しかった」と答える子どももいたんです。プレッシャーがかかればかかるほど、子どもの「もっと知りたい」「もっとやりたい」という意欲はどんどん失なわれてしまうものなんですよ。

自分の思いを言葉で伝える力が低下

── いまはほとんどの園で通常に近い保育が再開しています。子ども達を見てどのような変化をお感じでしょうか?

こぐま会では、11月から年中さんの新クラスがスタートしました。元気いっぱいの子ども達ですが、コミュニケーション力という意味では、幼稚園、保育園の休園明けに感じたことと同じことを感じました。

私が話しかけても発言する子どもが少なく、しーんとしてしまう、という状況が例年より多いですね。もちろん、積極的にお話をしてくれる子どももいますし、その子本来の性格にもよります。でもやはり、自分の考えや思いを相手に言葉で伝える、という力が若干劣っていると思います。

これは、子どものせいではありません。今は先生方も皆さんマスクをつけて保育をしています。でも考えてみてください。赤ちゃんとお母さんは、言葉を交わさなくてもお互いの表情を見てコミュニケーションを取りますよね。言葉が話せるようになっても、幼い子どもほど、先生と関わる上で表情から考えや思いを読み取って成長しているわけです。

お友達との関係でも同じことがいえます。一緒に遊んでいても、マスクをつけたままではお互いの気持ちを感じることは少し難しい面があると思います。密になって遊んでいたら、「離れてね」と言われてしまうようなシチュエーションもあるかもしれません。

幼い子どもにとって大変重要な、相手がどういう表情でどういう言葉を発しているのか、ということを学ぶ機会が失われてしまっているんです。

幼児期の子どもにとって、マスクをつけたままのコミュニケーションを続けてよいものか、私自身も悩んでいます。

「対話式」絵本の読み聞かせ

── 親として、今子どものためにやれることはどんなことでしょうか?

ぜひ、これまで以上に人間関係を広げる努力をしてもらいたいです。いまは意図的にやる必要があると思っています。

コロナによる制約がある中で、家族の関係はこれまで以上に密になったご家庭が多いかと思います。その範囲を少し広げ、例えば親戚のご家族など身近なお付き合いの中で、人と関わる機会を積極的に作ってあげてほしいですね。

今できる新たな取り組みとして考えているのが、「絵本の読み聞かせ」です。「毎日やっている!」というお父さん、お母さんも多いと思いますが、私がやりたいのは「対話式」絵本の読み聞かせ。

アメリカでは、なんと冒頭を読み始めたときから、自由に意見したり会話したりするそうです。日本では、途中に口をはさまずお話の最後まで静かに聞く、というのが普通ですよね。感想を聞くとしても、最後に「どこが面白かった?」「どんなお話だった?」などと確認するスタイルだと思います。

アメリカでは、途中で感じたこと、思ったことをどんどん自由に言葉にしていき、子どもと対話しながら絵本の読み聞かせを行うことで、言語教育を行っているのです。とても興味深い取り組みです。

コロナの影響によって心配される、子どもの会話力やコミュニケーション力。お父さん、お母さんがご家庭で絵本を読んであげるときにも、ぜひお子さんが感じたことを自由に表現できるように工夫していただくとよいと思います。

── コミュニケーション力を身につけたくても、なかなかお友達を誘いにくい状況です……。

まずは、こんな時期だからこそ、お父さん、お母さんが目一杯一緒に遊んであげてください。寒い時期でもお天気がよい日には外に出て、公園等で意図的に遊ぶ機会を作ってあげることが大切です。

公園に行けば、同じように遊んでいる子ども、ご家族がいらっしゃるはずです。子どもというのは、周りが遊んでいれば子ども同士で勝手に仲良く遊んだりするものですね。今まで以上に子どもを外に連れ出す努力が必要だと思います。

東京などの大都市でも少し足を伸ばせば、自然を満喫できる場所が沢山あります。いざ自然の中に入れば、子どもは子ども自身で自由に遊びを考えます。ぜひそういう体験をさせてあげてほしいです。

子どもと取り組んだことを「記録」して

── 家庭ではどのように関わるとよいでしょうか?

まずお伝えしたいのは、コロナの経験を無駄にしてほしくない、ということ。長い休園期間中には外出にも制限がある中、ご家庭でお子さんと色々なことにチャレンジしたりしたはずです。特に、日頃忙しく働く共働きのご家庭にとっては、お子さんとじっくり関わることのできた貴重な時間だったかもしれません。

今はほとんどの方が日常に戻り、また忙しく過ごしているかと思いますが、ぜひご家庭でお子さんと楽しんだこと、取り組んだことを「記録」として残しておいていただきたいなと思います。

そして、子どもはいつでも、お父さん、お母さんと一緒に何かをするのが大好きですね。中でも興味があるのが、お料理です。

ご家庭で時間があるときには、ぜひ一緒にお料理を楽しんでみてはいかがでしょうか?論理的な思考力をつけるのに料理は最適だとも言われていますね。

さらに発展させて、作ったお料理のレシピづくりもおすすめです。お料理を作って食べて終わりではなく、オリジナルのレシピ本を完成させて記録として残すことで、遊びと生活がリンクしていきます。

文字だけでなく、絵を描いたり、写真を撮っておいて貼るのもいいですね。幼児期の親子との関わりで、このような生活に根ざした体験を重ねることにはとても大切です。

すごろくやトランプなどのゲームもいいですね。家の中で過ごす時間が長いときには、ぜひ意識して遊びと学びがリンクするような関わりを楽しむとよいと思います。


プロフィール:久野 泰可(くの やすよし) 

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/

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小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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