2020.12.14
習い事最前線 福角元伸

サッカー×プログラミングを一緒に学ぶ 論理的思考力でうまくなるキック術とは

プログラミングで、サッカーのキックの技術を伸ばそう!2020年春から小学校で必修化され、注目されているプログラミングと子どもの人気スポーツのコラボレーション「サッカー・プログラミング体験教室」が、神奈川県川崎市のプロサッカークラブ「川崎フロンターレ」運営の「フロンタウンさぎぬま」で開催されました。どのようなイベントだったのでしょうか。

ボールを蹴る動きをプログラミングで試行錯誤

体験会は12月6日の日曜日に開かれて、小学1~5年生の児童10名が参加しました。サッカーが上手な子はレベルアップを。運動が苦手な子でもプログラミングを使い「思考」することで、少しでも能力を上げようというのが狙いです。

「先生!動かし方がわかりません」。プログラミング教室では、冒頭から子どもたちの元気な声が聞こえてきました。使われたのは、優しい操作でプログラミングができるスクラッチ。講師の指導を受けると、すぐに「ほんとだ!面白い!」と声をあげていました。自由にゲームなどが作れるので、あっという間になじんだようです。

今回はペナルティーキック(PK)ゲームで、ボールを蹴るキッカーの動きなどを、子どもたちがプログラミングしました。例えば「ボールを蹴るまでに何歩走るか」や「ボールまでの走る角度」を設定します。スムーズに動く数字の完成例は「3歩」と「30度」となっています。それぞれ10歩で走った場合や90度で蹴りにいった場合など、極端な数字で試しながら、キッカーがスムーズに動かせる数字を見つけて入力していきました。

講義を担当した富士通オープンカレッジの齊藤真紀さんは「どういう動きをしたいのか目標を決め、思い通りの動きになっているか何度も試しながらゲームを作りました」と話していました。

ほとんどがプログラミング初心者の子どもでしたが、ゲームが完成すると大喜びで、何度もプレーを楽しんでいました。

プログラミングの思考能力でキックを練習

ここからが、この体験会のポイント。プログラミングで作った「ボールを蹴る」までのプロセスを、今度は隣接するフットサル場で本物のボールを蹴ることで、リアルな体験に変換させます。川崎フロンターレの高善一スクール普及コーチが、子どもたちを芝生の上に集合させました。

ただ蹴るだけではダメだよ。自分に合うボールまでの距離や歩幅を考えて。どの位置から蹴るのか、どの角度がいいかもプログラミングでやったのと同じように考えよう」。

子どもたちの頭の中でプログラミングとプレーが接続できるように、何度もコミュニケーションをとっていました。

実際にキックまでの助走の長短を試したり、走るスピードに変化を加えたりする子もいました。

「ようし、うまくいった!もう1回だ!」
「あれ?さっきと違うな。ボールが蹴りにくい」

キーパーを担当するコーチに向かって、子どもたちが一列に並び、1キック、1キックを考えながら、ベストシュートに近づけていく作業が繰り返されました。

ボールへ伝える力や蹴る角度などを何度も深く考え抜くことで、自分のイメージするシュートの軌道が作られていきます。高コーチは「技術習得には練習量と時間が必要で、この場で劇的に良くなるわけではありませんが、プレーを考えるきっかけとなり、結果的にサッカーの上達につながれば」とプログラミングとの相乗効果に期待しました。

シュートが決まった!

好きなサッカーがテーマなだけに、子どもたちも楽しそうでした。

「シュートを決められて、うれしかった。プログラミングもサッカーも真剣にできたよ」と、小学2年の波多宗優くん。

サッカー歴7年の小学5年・内田柑那さんも「サッカーとプログラミングのつながりを感じました。これからシュートに生かしたい」と話していました。

保護者も小学校で必修化となったプログラミングへの関心は高いようです。好きなサッカーと一緒に学べるのであれば、一石二鳥。チームに所属する小学5年の鳴海遼くんの父親・淳さんは「私がプログラミングをさせたかった。これで少し興味を持ってくれれば」と積極的な様子でした。

小学1年の綿野悠くんが参加した、母親のひとみさんは「サッカーを始めたばかり。運動と頭を使うプログラミングがリンクできれば、上達の近道になるのではないでしょうか」と、企画の意図に納得していました。

論理的思考力で、体力がない子でも活躍できる

主催は川崎フロンターレと、富士通オープンカレッジ武蔵小杉校などを運営するアルファメディア。多くの子どもたちにサッカーとプログラミングを普及したいという両者の思惑が一致する形となりました。アルファメディアの小湊宏之社長が体験会の可能性を説明してくれました。

子どものスポーツでは運動神経がいい子や体力のある子が活躍する。そんな中でもプログラミングの特性でもある論理的思考力を駆使し、体力がない子でも、運動ができる子に少しでも対抗できて、『スポーツは面白い』と思ってもらえれば。逆にスポーツができる子にはプログラミングに触れてもらい、ITを近くに感じる契機にしてほしいですね

今回のスポーツ×プログラミング体験会はトライアルとしてのイベントでした。参加費は6000円(税込)で、4時間のうちプログラミングとサッカー教室を交互に2度ずつ実施しました。今後、定期的に開催するかどうかは、現時点では未定ということでした。

川崎フロンターレ事業推進部の黒木透さんは、プログラミングとサッカー両面に理解度が深いコーチの育成など課題を挙げつつも、「継続してこの取り組みを推進し、全国へと広げていきたいですね」と前向きに話していました。

今回は募集人数を絞っての開催でしたが、小湊社長も「コロナがなければ、レギュラーコースとして立ち上げたかったのですが……」と残念そうでした。来年以降、新型コロナウィルスの影響が静まってくれれば、新たな展開が期待できそうです。

イベント終了後のアンケートでは、80%の参加親子が大満足という回答でした。一見、交わりそうもないスポーツとプログラミングですが、知識や技能、思考力と判断力などが必要という共通点が多く、相性がいいように見えました。スポーツを入り口にしたプログラミング教育は、必修化となった学校教育の現場でも注目されるかもしれません。

福角元伸
福角元伸

1974年生まれ。朝日新聞東京スポーツ部、デスクなどを経て、現在はオリンピック・パラリンピックスポーツ戦略室勤務。趣味は筋力トレーニング。子どもの頃は、プロ野球選手を目指して少年野球に夢中でした。スポーツ記者時代は子どもの頃に見ていたプロ野球選手に直接話を聞けて、文章にする仕事にやりがいを感じていました。

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