2020.12.21
学びインタビュー 今井明子

「好きを深掘り」が学びの原動力 「ロボ団」重見彰則代表に聞く

「夢見る株式会社」重見彰則代表取締役(教室提供)

ロボットを作り、動かしながらプログラミングを学べる「ロボ団」。全国122校を展開するこの教室を運営する「夢見る株式会社」の代表を務める重見彰則さん(35)は、「好きなことを深掘りしてほしい」と言います。なぜ、「好き」を学びにしたのでしょうか。自らの経験をお伺いしました。

言われたことしか出来ない人を変えたい

―― 重見さんが教育事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

大学卒業後に4年半経営コンサルティング会社に勤務し、中小企業を支援してきました。この経験が、教育事業を始めようというきっかけになりました。

経営コンサルタント時代は、リーマンショック後だったこともあり、経営が苦しくなった会社を再生するための支援をしていました。そこで気づいたのは、求められたことを時間通りにこなせても、新しいことを始めるのが苦手な人や、いままでにない社会ニーズに合わせたサービスを考えて作りこむことができない人が多いことでした。でも、それでは会社は成長できません。

なぜみんなできないんだろうと考えたときに、学校教育に原因があるのではないかと思い至りました。

学校教育では、言われたことをちゃんとやる子どもが評価されてきました。しかし、社会で本当に必要とされる力は、言われたことをできる力以上に、新しいニーズを考えて無から有を生み出す力です。学校と社会で求められている力は180度違います。これに気づいて衝撃を受けました。

社会で活躍できる人を本当に育てるにはどうすればいいのか。教育で人材育成を行う重要性に気づきました。しかし、どこの教育から改善したら良いのか。中高生になると部活や受験に追われて、もはや「試合で勝つ」とか「志望校に合格する」という近視眼的な目的でしか頑張ることができません。注目したのが、10歳までのゴールデンエイジの時代です。

―― それで、2013年に大阪府堺市で「学童保育のdone.」を始めたのですね。でも、なぜ学童保育だったのでしょうか。

教育事業でまず思い浮かぶのは塾ですよね。しかし塾では、偏差値の高い学校に入れることを親から期待されているので、結局「言われたことをできる力」を伸ばすことが中心となります。

一方で、民間学童に対して親は、「将来の投資につながるプログラムを提供してくれたらうれしい」という考えを持っています。さらに学童なら、毎日放課後の長時間を教育に使うことができます。だから、自分のやりたいことができそうではないかと思ったんです。

―― 学童保育を始めてどのようなことを感じましたか?

毎日同じ子どもたちの様子を観察して、あることに気づきました。それは、「人間というのは楽しいことには積極的に取り組むけれど、嫌いなことは頑張れない」ということです。特に子どもは大人と違って自制心がまだあまりないので、「気が進まないけれど、これはやっておくとためになるから」という理由では動きません。

よし、いままでの学びとは、真逆から行こう。子どもに何か身につけてもらいたいのなら、何であれまず「好き」になってもらう。好きを芽生えさせて、それに取り組んでいたら、学べちゃったと。そうしないと、うまくいかないことに気づいたのです。

子どもたちと一緒にロボット作りに取り組む重見さん(教室提供)

震災直後にも父は「やることがないから勉強しろ」

確かに、これは自分自身の経験を振り返ってみても納得できるんです。私の父親は非常に教育熱心で、とにかくいい学校に行けと勉強を強要しました。

私は神戸出身で、小学校3年生のときに阪神大震災で被災したんです。ものすごく揺れた地震から2時間後、まだ電気が止まっている状態で、家の中もぐちゃぐちゃ。そんな状況だったのに、父親から、「やることがないから、明るい窓際で勉強しろ」と言われたんですよ。

―― それは猛烈なお父様でしたね。

すごかったですよ。父にどつかれたくないから勉強しました。良くも悪くも、いまは感謝していますけどね。

高校も詰め込み教育で進学実績を上げている学校に通いました。毎日8時間目までの授業に加えて、100分の特別授業があり、授業が終わるのは毎日19時。卒業式は生徒の間で「出所式」と呼ばれるような、まるで刑務所のような環境でしたね。

こんな環境で育ってきたので、勉強に対してはやらされ感が強く、やりたいことを我慢してやる苦行というイメージしかありませんでした。

でも、大学に進学し、たまたま統計学に出会って、その面白さに夢中になったんです。それからは、勉強はやらされるものではなくなり、進んで数学を学ぶようになりました。

そんな経験もあって、子どもたちには、好きなことや楽しいことを思いっきりやってもらいたい。それが結果として学びにつながるという教育システムを作りたいという思いが強くなりました。

2人1組で話し合いながらロボットを作る(教室提供)

―― それがロボ団の事業を始めるきっかけになったのでしょうか。

はい。たまたま、「学童保育のdone.」では定期的にロボット教室をしていました。これが人気になり、学童に入っていない家庭からも「ロボット教室を受講できないか」という問い合わせが入るようになりました。そこで、土日に学童に入っていない人向けの教室も行ったところ、申し込みが殺到。こうして、ロボット教室の事業を独立させて、「ロボ団」の運営を始めたのです。

「好きを深堀りする」ことはなぜ大切なのか

―― 子どもたちがロボ団に通うことでどんな力を身につけてほしいと考えていますか?

「好きを深堀りする力」ですね。就職活動をする際に、夢は何なのか聞かれて答えられない人がたくさんいます。自分が何をしたいのかを考えるためには、興味のあることを考えなければいけません。興味のあることを見つけたとしても、深掘りの仕方がわからない。

子どものうちに興味を持ったことを深掘りする経験をしておくと、大人になって何かに興味を持ったときに、子どもの頃の経験を思い出して深掘りできるようになります。

ロボットを動かすときも、2人で相談しながら試行錯誤を続ける

―― どうやれば深掘りできるようになるのですか。

それはトライ&エラーを繰り返し、達成感を味わうことです。もっともっとやりたいという気持ちが生まれ、深掘りにつながります。これは自分が興味を持ったことでないと絶対にできません。興味さえあれば、たまに達成感を得られないことがあっても、また挑戦してみようと思えます。

ロボ団では、毎回レッスンごとにゴールを設定しているのですが、ある回で達成できなくても、次回達成できることでやる気が続くような仕組みにしています。

―― ロボ団で学ぶためには、入会試験などはあるのでしょうか。

あります。ロボ団の入会資格はちょっと特殊で、子ども自身が「やりたい」といわないと入会できません。これは、大人がトップダウンで子どもにやらせるのではなく、子どものやりたい気持ちを大人が応援できるかどうかを重視しているからです。

ロボ団の授業時間は上のクラスになると3時間の長丁場です。3時間のレッスンなんて普通は苦痛ですが、好きな気持ちがあれば集中できます。実際にレッスンが終わるころには頭を使いすぎてフラフラになっていますが、この時間が確実に学習になっていますね。

「小さな自信が好きにつながり、夢を描くきっかけになる」と語る重見さん(教室提供)

オンラインの新しい教室もスタート

―― 最近始めた新しいサービスについても教えてください。

11月から「つくロボ」という新サービスを開始しました。これは自宅でロボットとプログラミングの仕組みを学べる子どものためのサービスです。ロボ団をそのままオンライン化したわけではありません。というのも、ロボ団の内容だと横についてサポートしなければいけない親に、かなり高いITリテラシーが求められるからです。

ですから、「つくロボ」ではプログラミングができない親にも合わせたレベルにし、料金もロボ団よりも安く提供しています。内容もロボ団とは違ってロボット作り6割、プログラミング4割となっています。

オンラインの場合は、子どもの横で親が見ているので、親が子どもの変化に気づきやすいというメリットがあります。しかし、家には集中力をさまたげる誘惑がたくさんあるし、親のサポートも必要になります。そこで、子ども専用のSNSなどの仕組みをアプリで管理して、子どもが勝手にやりたくなるように工夫しています。

子どもの「もっと、もっと」という気持ちに火をともしてあげたいですね。


プロフィール:重見彰則(しげみあきのり)

夢見る株式会社代表取締役。株式会社エディオン教育事業統括部長。1985年兵庫県生まれ。関西大学総合情報学部卒業。大学在学中は神戸YMCAにて野外活動ボランティアを経験し、小学生を対象とした企画・運営を行う。卒業後は経営コンサルティング会社で中小企業の支援を行う。その後、2012年に夢見る株式会社を設立し、教育分野に携わっている。

撮影:伊ケ崎忍(4枚目)

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今井明子
今井明子

サイエンスライター。気象予報士。科学・教育・育児などの分野で執筆。おもな執筆媒体は「Newton」「暦生活」。著書に「天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)など。防災講師や気象科学館の解説員も務める。子どもの頃から生き物に夢中。舞台に立つのも好きで、中高は演劇部、大学はフィギュアスケート部。

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